蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

47 / 79
1章㊷中枢宙域

それは、視界を埋め尽くしていた。  

人類総力戦。  

連合軍宇宙艦隊。  

その目前。  

ギアノイド群勢。  

ついに到達。  

無数。  

ただ、ただ、無数。  

ギアノイド。  

群。  

層。  

壁。  

その奥。  

異様な存在。  

巨大な球状に無数の触手が生えた物体。  

中枢と思われるもの。

   

沈黙が満たしていた。  

誰も言葉を発しない。 理解している。  

ここが。 終点だと。   

そして―始まる。

ゲンゾウが静かに告げる。

「……全艦」  

一拍。

「攻撃準備」

各艦艇が砲門を一斉に開放する。

ゲンゾウもヴェスペリオンクルーに指示を出す。

「砲撃用意!」

ヴェスペリオン火器管制担当オペレーターが緊張感を持った声で指示を飛ばす。

「ミサイル発射管、全門追尾ミサイル装填!」

「全砲門開け!」

「艦載砲、全砲門標準合わせ!」

「主砲発射用意!」

時が一瞬止まる。

ギアノイド群勢がじりじりと迫る。

そして―――瞬間。  

 

ゲンゾウの合図。

 

「てええええええええええ!!!!」

 

各艦艇の追尾ミサイルが一斉に弧を描く。  

戦場が爆発する。  

艦隊の主砲が火を吹く。  

光が走る。  

ギアノイドを撃ち抜く。  

開戦直後の飽和攻撃。  

予定通り。  

少しでも数を減らす。  

だが、問題はここから。    

群勢は止まらない。  

無数の反撃。  

ビーム。

突進。

そして始まる。

バスターアームズを駆使しての乱戦。

「全艦隊バスターアームズ隊、出撃!」

「各機、突撃!」

ゲンゾウの檄が飛ぶ。

戦いは始まったばかりだ。  

たちまち宇宙が戦場に変わる。  

爆発。  

閃光。  

破片。  

死と隣り合わせ。

 

ヴェスペリオン艦橋。  

中央で指揮を執るゲンゾウ。

「第一艦隊、押し上げろ!」

「第二、左翼を支えろ!」

押し返せない。  

敵の数が。  

異常。

「突破できない……!」

 

一方、ヴェスペリオン発進カタパルト。

ブラウフリューゲルコクピット内のユーヤは俯き、静かに操縦桿を握る。

俯きながらユーヤは考えていた。

泣き崩れていた愛しい人を。

「………エリス…………ごめん…」

だがその声は届かない。

届くはずがない。

その時、ヴェスペリオン艦橋オペレーターより通信。

 

『ブラウフリューゲル、発進シークエンスに入ります』

 

ユーヤは前を向く。

もう俯かない。

前を敵を見据える。

自分が成すべきことをするために。

「了解」

 

オペレーターの誘導が続く。

『射出カタパルト展開』

『カタパルトレール、ロック完了』

『機体固定ボルト、接続』

『次元粒子出力、安定域到達』

『進路クリア、発進コース、オールグリーン』

『射出準備完了』

『射出管制をパイロットへ』

 

ユーヤの眼が鋭くなる。

「了解、射出管制譲渡を確認」

 

ユーヤとゲンゾウの目がモニター越しに合う。

だが何も言わない。

お互いやるべきことはわかっている。

もう迷いはない。

ゲンゾウの低い声が響く。

「ブラウフリューゲル、発進せよ!」

 

 

「了解!ブラウフリューゲル、出る!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ヴェスペリオンカタパルトから蒼い機体が射出される。  

光の翼、展開。  

戦場へ突入する。 

一直線に。  

無数のギアノイドが雪崩のように迫る。  

流れを変えるため、蒼い閃光が戦場を舞う。  

このままでは到底、中枢までは到達できない。  

誰もがそう思う状況。  

 

「まずは道をこじ開ける!」  

ユーヤがブラウフリューゲルの砲門を一斉展開する。

「フルバーストショット!」  

ライフル。 レールガン。 収束ビームランチャー。

撃つ。 撃つ。 撃つ。

高速機動を描きながら、舞うように撃つ。  

撃破。 撃破。 撃破。

圧倒的命中精度。

敵陣に穴が空く。

道をこじ開ける。

「来た……!」

「蒼の英雄……!」  

ユーヤは無言。  

ただ前へ。  

単騎突貫。  

誰とも組まない。  

誰にも頼らない。  

ただ一機で。  

突き進む。  

敵を斬り裂く。  

撃ち抜く。  

貫く。  

奥へ。  

中枢へ。  

確実に。  

距離を詰めていく。

「……頼んだぞ」  

ゲンゾウは小さく呟く。  

人類の全てを背負い、蒼い機体は、闇の中心へと突き進む。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。