蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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1章②初出撃

 

【挿絵表示】

 

群がるギアノイドの群れ。

国連軍バスターアームズ編隊が押されている。

その最中、白い機体が戦場へ降り立った。

ユーヤが操縦操縦桿を強く握り直す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ライフルを構える――刹那、三体が同時に撃ち抜かれる。

動きが違う。

速い――いや、“消えている”。

次の瞬間には、すでに別の位置にいる。

本来の武装は揃っていない。

あるのは、一本のライフルと――右腕のみ。

接近。

ギアノイドの一体が振り下ろす腕を、紙一重で回避。

そのまま懐へ潜り込む。

右拳を突き出す。

「――ッ」

光が弾けた。

インパクトショット。

接射専用の近距離エネルギーショットガン。

至近距離で叩き込まれた次元粒子が、内部から敵を

破壊する。

巨体が崩れ落ちる。

だが――

「ちっ……多い」

ユーヤが呟く。

空間の歪みが、さらに広がる。

次々と現れるギアノイド。

その数は異常だった。空が埋まっている。

裂け目から溢れ出す群体は、金属質の外殻を軋ませな

がら、ほとんど無音で飛翔していた。

その中心に、フリューゲルがいる。

ライフルを連射。

正確無比の射撃で次々と撃ち抜くが――

「……足りない」

火力が足りない。

殲滅が追いつかない。

『各機、後退しろ! ラインを下げるな!』

国連軍の通信が錯綜する。

量産型バスターアームズは必死に応戦しているが、

押されているのは明らかだった。

「なんだ、あの機動……!」

誰かが息を呑む。

白い機体が空を裂く。

残像を引き、瞬間的に位置を変える異常機動。

フリューゲル――それでもなお、数が多すぎる。

群れが一斉に突撃してくる。

回避、反撃、撃破。

だが、その隙間を縫うように次が来る。

囲まれる。

「ユーヤ、聞こえる!?」

ナツキの声が割り込む。

「このままじゃ押し切られる! 追加装備を回す!」

「……遅いんだよ」

短い返答。

焦りはない。ただ、冷静な判断だけがあった。

その瞬間。

一体の大型ギアノイドが突進してくる。

回避が間に合わない距離。

「――ッ!」

衝撃。

フリューゲルが弾き飛ばされる。

『右腕部、負荷上昇』

警告音。

体勢を立て直すが、すでに次の群れが迫っていた。

――その時。

『フリューゲル、補給パッケージ投下する!』

上空。

高速で接近する輸送機。

下部ハッチが開き、コンテナが投下される。

「……来たか」

フリューゲルが加速する。

群れをすり抜け、コンテナへ接近。

射撃。

一発でロックを破壊。

コンテナが空中で展開する。

オーバーヒート寸前の汎用ライフルを投げ捨てる。

二丁の専用ライフル。フリューゲルの出力を前提にした特注品。

「装備接続、開始」

空中で接続。

マウントが展開し、武装が吸い付くように固定される。

『粒子供給、安定!』

出力が一段階跳ね上がる。

視界が変わる。

処理速度が上がり、敵の動きが遅く見える。

「――いける」

次の瞬間。

フリューゲルが“消えた”。

一瞬で三体、四体と撃ち抜かれる。

クロス射撃。

死角からの迎撃。

動きが、完全に変わる。

「なんだあれ……!」

量産機のパイロットが息を呑む。

フリューゲルが突っ込む。

群れの中心へ。

回避、射撃、接近。

一体を蹴り飛ばし、別の個体へ叩きつける。

そのまま懐へ。

右手を突き出す。

「終わりだ」

インパクトショット。

光が炸裂する。

内部から爆散。

――だが、その直後。

空が歪む。

「……っ」

ユーヤの目が細まる。

ギアノイドが更に飛来する。

現れたのは――質量が違う。

巨大。

これまでの個体とは、明らかに別格。

『大型反応確認!』

『各機、散開しろ!』

重圧のような存在感。

空気そのものが押し潰される。

その時。

ユーヤの背後で、光が広がった。

翼。

青い光が、静かに展開する。

『……制限を超えています!』

『出力が――』

ユーヤは答えない。

ただ、前を見る。

「……やるしかない」

フリューゲルが加速する。

光の尾を引き、一直線に突っ込む。

巨大ギアノイドが腕を振り上げる。

迎撃――

だが、届かない。

その瞬間。

フリューゲルの軌道が“消える”。

次の瞬間には、懐。

「――ッ!!」

インパクトショット、全出力。

閃光。

衝撃が空を揺らす。

巨体が、内側から崩壊していく。

光が漏れ、砕け、消える。

静寂。

残存していたギアノイドが動きを止める。

そして――撤退するように、重力など感じさせないような

動きで上空へ消えていった。

戦場に、沈黙が戻る。

「……終わったのか?」

誰かが呟く。

フリューゲルは、その場に浮かんでいた。

光の翼が、ゆっくりと消えていく。

ユーヤは何も言わない。

ただ――空を見ていた。

まだ、いる。

そんな確信だけが、残っていた。

 

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