蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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1章㊺届かぬ巨影

(動け!止まるな!)

 

ブラウフリューゲルは損傷甚大。

右腕、喪失。

装甲、各所が損壊。

火花が断続的に散る。

それでも――

まだ、蒼い閃光を放ち戦場を舞っている。

 

対する中枢超巨大ギアノイド。

圧倒的質量。

圧倒的存在。

その巨体がわずかに動くだけで、

触腕を振りぬくだけで外敵を排除する。

 

(まだだ!…まだ…終わってない)

ユーヤの呼吸が荒い。

視界が狭まる。

思考すら、途切れかける。

それでも――

前を見る。

(俺が諦めたら地球はどうなる!宇宙艦隊は!じいちゃんは!母さんは!エリスは!!!)

 

「諦めて…たまるかぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

スラスター全開。

一直線。

迷いはない。

迎撃が来る。

触腕が迫る。

一本ではない。

複数。

逃げ場を塞ぐように、包み込む。

それを回避しきる。

最小動作で。

無駄を削ぎ落とした機動。

掠める。

――その“掠め”だけで。

装甲が削れ、火花が弾ける。

それでも、懐へ。

巨体の内側へ、潜り込む。

残された左手。

ブレードライフルで連撃を加える。

今までで与えた損傷個所を狙い、叩き込む。

間断なく。

呼吸すら挟まず。

傷は、入る。

更に傷口は広がる。

だが――浅い。

あまりにも浅い。

反撃が来る。

直撃する。

回避は間に合わない。

「ぐぅぅっ……!!」

機体が、弾き飛ばされる。

回転。

視界が流れる。

上下の感覚が消える。

止まらない。

「……くそっ!」

スラスター、強制噴射。

無理やり姿勢をねじ戻す。

フレームが悲鳴を上げる。

警告音が鳴り止まない。

エネルギー、急速低下。

各部、限界域へ。

それでも―――

(削るしかない……!)

他に道はない。

ただ、削る。

それだけだ。

 

再び、突っ込む。

躊躇は捨てた。

ブレードライフルの斬撃を再びねじ込む。

至近距離。

逃げ場のない間合い。

強引にねじ込む斬撃。

斬撃が、確かに“通る”。

外殻が――

わずかに砕ける。

(……効いてる)

初めての、確かな手応え。

ほんの、わずか。

だが――

確実に、削れている。

 

同時に。

機体への負荷が跳ね上がる。

フレームが軋む。

ユーヤの身体が悲鳴を上げる。

視界が白く焼ける。

意識が飛びかける。

思考が途切れる。

闇が迫る。

だが、踏み止まる。

(ここで……止まるな……!)

意識を、無理やり引き戻す。

歯を食いしばる。

血の味が広がる。

それでも――武装は手放さない。

 

何度も。

何度も。

叩き込む。

削る。

削る。

削る。

もはや戦術ではない。

ただ前へ出るための、執念。

 

美しさはない。

洗練もない。

ただの――生存と突破への意志。

 

わずかに。

ほんのわずかに。

動きが鈍る。

だが――

まだ、倒れない。

 

壊れかけの機体。

壊れかけの身体。

それでも――

止まらない。

止まれない。

その先にしか。

未来が、ないからだ。

 

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