蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
灼ける。
すべてが。
視界も。
機体も。
この身さえも。
自らを焼き尽くす蒼い炎を身に纏い、ブラウフリューゲルは一直線に光跡を描く。
そして、
地球大気圏へ到達する。
――突入する。
ためらいなく。
もはや防御手段などないにもかかわらず。。
摩擦で外装が燃える。
装甲が赤熱し、白く滲む。
剥離した破片が、炎を引いて流れていく。
粒子の蒼い輝きと。
大気との摩擦が生む炎が混ざり合い、
機体は、まるで燃えながら落ちる蒼い流星のようだった。
ユーヤは歯を食いしばる。
全身に叩きつけられる振動。
重力と加速が、内臓を引き剥がそうとする。
視界が揺れる。
警告音が、もはや意味をなさないノイズになる。
中核ギアノイド本体も燃えながら、
それでも速度を落とさず地球へと落ちていく。
距離は縮まる。
確実に。
わずかずつ。
だが、確かに。
――ついに。
射程圏内。
最後の機会。
これを逃せば、もうない。
(ここだ……!今しかない!!)
思考が、鋭く研ぎ澄まされる。
だが、環境が違う。
大気圏突入。
乱流。
不規則な衝撃。
機体は安定しない。
照準補助は機能していない。
ブレードブラスターを構える。
腕が、重い。
照準を合わせようとする。
だが、
揺れる。
ぶれる。
合わない。
まったく。
焦点が、定まらない。
(無理…だ……)
意識が霞む。
指の感覚が遠のく。
このままでは――
『お前ならできるさ』
聞こえる。
ノイズの奥。
はっきりと。
優しく。
懐かしい声。
父の声。
幻聴でも何でもいい。
背中を押してくれている。
静止する。
世界が、止まる。
炎も、
振動も、
一瞬だけ、遠のく。
ユーヤの意識から、全てのノイズが排除される。
補助はない。
照準システムも、意味をなさない。
頼れるものは、
ただ一つ。
――自分。
「……やれるさ」
短く。
自分に言い聞かせる。
だが、揺るがない。
揺れを読む。
風を読む。
機体の軌道を読む。
相手の落下を読む。
すべてを、
数値ではなく、
感覚で。
身体で。
積み重ねてきた戦いの中で得た“経験”で。
完全手動。
補助なし。
補正なし。
人間の感覚だけでの照準。
の限界線。
――その先へ。
ぶれが、消える。
世界が、一本の線に収束する。
迷いは、ない。
引き金に指をかける。
指に、力が入る。
震えは、止まっていた。
もう何も考えない。
ただ信じて引き金を――――――引いた。
光が走る。
灼熱の大気を切り裂き。
ただ一直線に。
ただ一発。
すべてを賭けた、最後の一発。
反動に耐え切れずブレードブラスターは砕け散り爆散する。
もはや防御手段を持たないブラウフリューゲル本体もさらに半壊する。
機体が跳ねる。
制御が―――飛ぶ。
視界が白く焼き付く。
ユーヤは力が抜ける。
張り詰めていた意識が、途切れる。
身体が、沈む。
着弾は――見えない。
その前に意識が消えた。
深い闇に沈む。
すべては。
その一発に、託された。