蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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閑話③見つけられたもの

時は三ヶ月に戻る。

光が、貫いた時へ。

 

ブラウフリューゲルの一撃。

中核ギアノイド本体を、

寸分の狂いもなく――

撃ち抜いた。

 

崩壊。

爆散。

巨体は内側から裂け、

完全に消滅する。

 

誰もが思った。

――終わった、と。

 

その内部。

さらに奥。

 

残っていた。

小型の存在。

燃え尽きる中核ギアノイド本体からまだかすかに動くもの。

通業のギアノイドと比べても小型。

だが――

不完全なまま、なお存在している。

 

燃え尽きない。

破壊されない。

しぶとく、

執拗に、

“残る”。

 

そして降下する。

地球へ。

静かに。

だが確実に。

 

落下軌道は日本。

 

次元リアクタープラント周辺。

厳重な防衛体制。

日本周辺の残存戦力のすべてが、

そこに集結している。

 

当然の帰結。

敵は――そこを狙うはず。

 

地上部隊の通信が飛び交う。

『日本近海に飛来物有り!』

『ギアノイド反応!降下されました!』

『戦力は!?』

『敵数1。小型一体のみです!』

『よし!我々だけでも守り切れる!』

『各小隊!1体だけでも気を抜くな!』

『確実に仕留めろ!』

『『了解!!』』

 

 

だが――――違った。

 

 

小型のギアノイドは、

一直線にとある進路を取り、

進路を変えない。

誘導にも反応しない。

次元リアクターのプラントへは向かわない。

 

別の場所。

別の“何か”へ向かう。

 

 

静かな家。

人の気配の薄れた、

ひとつの生活の跡。

 

エリスは一人。

床に座り込んでいる。

 

あの時から――

ずっと。

 

涙は、止まらない。

声も、出ない。

泣くことしか、

できない。

 

最後の別れ。

閉じていくハッチ。

届かなかった言葉。

伸ばした手。

 

ただ、

泣き続けた。

時間だけが過ぎていく。

 

ふと、

何かに引かれるように、

顔を上げる。

 

窓の外。

そこに――

なにかが“いる”。

 

ギアノイド。

静かに、

音もなく、

そこに浮かんでいた。

 

言葉はない。

振動も、気配もない。

だが――

確かに“何かを伝えてくる”。

 

直接。

意識の奥へ。

侵入するように。

 

そして――――

エリスは声なき声を聞いた気がした。

 

 

――ミ――ツ――ケ――タ――

 

 

エリスの息が、止まる。

身体が動かない。

逃げるという選択すら、

思い浮かばない。

 

次の瞬間――

轟音。

 

家が、

内側から砕ける。

壁が裂け、

消し飛ぶ。

崩壊。

 

煙で視界が、

すべて覆われる。

 

遅れて、

ナツキが自宅へ急行する。

地球残存部隊も現場へと到着する。

だが――そこには何もない。

瓦礫が散乱し火の手が上がっているだけ。

 

エリスの姿も、

ギアノイドも

どこにも、

存在しない。

 

 

「……生存反応、なし」

 

 

静かに、

無機質に告げられる。

 

 

「……死亡と判断します」

 

 

ナツキは言葉を失う。

理解が、

追いつかない。

「…な…なんで……どうして…」

 

それは、

戦いの終わりではなかった。

むしろ――

“選ばれた”ことの、

始まりだった。

 

 

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