蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
沈黙が、重い。
量子化。
転移。
次元粒子の隠された能力。
そもそも一人の科学者が、
ここまで技術革新を進められるものなのか。
「……なんなんだ」
低く、
押し殺した声。
「じゃあなんだよ……俺たちが普段使っている次元粒子は…いったい…何なんだ」
視線を蜘蛛型ロボットへ向ける。
逃げ場はない。
「ブラウフリューゲルは……次元リアクターは……次元粒子ってのは……」
一拍。
言葉を選ぶように。
「そもそも、何なんだ」
迷いはない。
「説明します」
蜘蛛型ロボットは淡々と告げる。
「次元粒子とは、本来、地球上には存在しない外部由来のエネルギーです」
ユーヤが驚愕の表情を浮かべる。
「外部…地球上には存在しないだと…?」
理解が、わずかに揺らぐ。
「ギアノイドが活動する際に観測されるエネルギー反応と同一のエネルギーです」
静止する。
その一言が、
深く突き刺さる。
「次元リアクターとはその粒子を人為的に制御・循環させる装置です」
つまり――――
「簡潔に言えば、ギアノイドの構造を模倣し、利用する機関です」
同じ。
根源から。
完全に。
「……つまり」
ユーヤ声が、かすれる。
「ブラウフリューゲルは……バスターアームズは…ギアノイドと同じ力で動いてるってことか」
「はい、肯定します」
長い。
重く、
逃げ場のない時間。
戦っていた相手。
その力。
それを――
自分は使っていた。
拳が、震える。
「……じゃあ父さんは…最初から全部わかってて……」
蜘蛛型ロボットは続ける。
「関谷リョウイチは、ギアノイドの性質を解析し、対抗するために同質の力を選択しました」
「未知の存在には、同質の力でしか対抗できないと判断したためです」
選択。
その一手が、
すべてを決定づけた。
ユーヤは目を閉じる。
過去と、
現在を、
一度、切り離すように。
そして――
開く。
過去の疑問の答えにたどり着く。
「……そうか」
視線を蜘蛛型ロボットへ向ける。
迷いは、もうない。
「ブラウフリューゲルの図面…戦闘データの更新…最適化……」
一歩、踏み出す。
「全部、お前がやってたのか」
一瞬の間。
蜘蛛型ロボットは告げる。
「正確には、関谷リョウジの意思を継承したシステムによるものです」
「私は、その実行端末です」
父は、いない。
だが――
“残っている”。
意志として。
設計として。
この場所に。
静かに、呟く。
「……どこまで仕込んでんだよ」
人類とギアノイドの境界は、
すでに――
曖昧になっていた。
ユーヤは深呼吸をする。
心を落ち着ける。
(今俺が受けている説明は…人類の根幹を揺らすものだ…)
覚悟を決めてその続きを聞く必要があった。