蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章④遺された意思

ユーヤは、思考を切り替える。

混乱を押し込み、

次の問いを選ぶ。

 

「さっきの質問に、まだ半分しか答えてもらっていない」

銃は下げない。

「次元粒子がギアノイドのエネルギー源と同じ物だということは分かった」

「だが――それを父さんは、どうやって手に入れた?」

一歩、踏み込む。

「一人の研究者が作り出せるものじゃない…バスターアームズが完成するより前に、人類はすでにその恩恵を受けていたはずだ」

視線を鋭く向ける。

「次元粒子は地球外来のエネルギーだと言ったな…その入手経路は?」

 

蜘蛛型ロボットは、

間を置かずに答える。

「発見は偶然でした」

 

「関谷リョウイチが、日本の山中にて、既に機能を停止していたギアノイドを発見したことが、すべての始まりです」

 

ユーヤの目が見開かれる。

「……は?」

「ギアノイドの……死体?」

「父さんが発見した……?」

息が詰まる。

「それは……いつだ」

 

「あなたが生まれる以前」

「人類がエネルギー枯渇問題により、滅亡へ向かっていた時期です」

 

「関谷リョウイチは、停止したギアノイドの中枢から五つに分割された核を回収しました」

「それらは未知のエネルギーを放出していました」

「無尽蔵と錯覚するほどの出力を持つ、エネルギーの結晶体でした」

 

背筋が、冷える。

 

「……おい、待て」

ユーヤの声が低くなる。

「まさか……」

「次元粒子ってのは……」

一拍。

「次元リアクターってのは……」

 

機械は、ためらわない。

「ギアノイドの核から発せられるエネルギーです」

「先ほども申しましたが次元リアクターはその模倣です」

 

唖然とするユーヤをよそに、蜘蛛型ロボットは続ける。

「現在、世界に四基存在する次元リアクタープラント」

「その中心――ブラックボックス領域には、当時回収されたギアノイドの核が使用されています」

 

ユーヤの視界が揺れる。

「……なん、だと……」

 

それはつまり――

人類は、

ギアノイドの“死骸”を、

エネルギー源として利用している。

 

点と点が、

線になる。

 

「……どうりで」

かすれた声。

「ギアノイドが、次元粒子を捕食するはずだ」

「もともと……同じものなんだからな」

 

さらに続ける。

「そんな途方もない技術を父さんが1人で作れるわけだ…もともとあったものを人間が使えるように組み替えただけなんだから…」

一から作ったわけではない。

それが真実。

 

沈黙。

蜘蛛型ロボットは、

何も答えない。

「…さっき核は5つといったな」

「…4つは次元リアクタープラントの中心。残り1つは?」

ユーヤは問いを投げかけたがその答えには心当たりがあった。

そう、自身の最も近くにあったはず。

「フリューゲルの核として機能しているブラックボックス領域です」

「…やっぱりそうか…」

予想通りの答えが返ってくる。

フリューゲルが次元リアクター管理局の予測を超えた出力を発していたのはその為。

ギアノイドの核。

それを直接搭載している。

めまいがする。

それを知らずに、疑問に思わずに使っていた自分自身に。

 

これまでの話を聞いてユーヤの中で、

一つの答えが固まる。

 

「……お前」

銃口を、わずかに下げる。

「父さんに作られたんだよな」

 

「はい」

変わらない機械音声。

「関谷リョウイチによって設計・製造されました」

 

ユーヤの目が細まる。

「……父さんは、どうなった」

一切の迷いなく。

「既に死亡しています」

 

そんなはずはない。

核心がある。

あの時聞いた声は幻聴なんかじゃない!

空気が、凍る。

 

「――ウソをつくなッ!!」

怒声が、空間を裂く。

拳が震える。

 

「あの時聞こえた声は幻聴なんかじゃないはずだ!」

ロボットは何も答えない。

微動だにせず静止している。

「今ここにいるじゃねえか……!」

「そのロボットが…お前が!………父さんなんだろ!!」

 

詰め寄る。

一歩、踏み込む。

「本人以外に……こんなことできるわけねえだろ!!」

怒りが満ちる。

「いい加減……そのロボット口調をやめろ!!」

 

まだ返答はない。

ただ――

機械が静止する。

数秒。

だが、

永遠にも感じられる間。

 

わずかに。

音声の質が変わる。

機械的な抑揚が、

ほんの少しだけ崩れる。

そして懐かしい音声がロボットから発せられる。

 

「……よくわかったな」

 

ユーヤは息を呑む。

 

その声音。

その間。

忘れるはずがない。

 

「……父さん」

 

死んだはずの男は――

確かに、

そこに“いた”。

 

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