蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章⑦その名前

頭の中で警鐘が鳴る。

聞くな。

やめろ。

頭の奥で、

何かが叫んでいる。

 

「……っ」

 

ユーヤは歯を食いしばる。

奥歯が軋む音が、やけに大きく響いた。

 

本能が叫んでいる。

それ以上、踏み込めば。

——戻れない。

 

それでも――――

止まらない。

止まれるはずがない。

 

「……その人間は」

 

ユーヤの声が、わずかに震える。

 

 

「誰だ?」

 

 

 

沈黙。

長い。

異様なほどに。

時間が、引き伸ばされる。

冷や汗が流れる。

 

やがて、

静かに、

逃げ場を残さず、リョウイチは答える。

 

 

 

「……エリスだ」

 

 

 

——時間が止まる。

音が消える。

思考が、空白になる。

 

思考が理解を拒絶する。

「……は?」

 

「……違う……そんなわけ……」

言葉が、自分でも信じられないほど軽い。

 

リョウイチは続ける。

その真実を淡々と口にする。

「定期的にエリスは量子ネットワークに接続していた

「通常の健康診断に偽装して」

「本人は知らない」

「ただの定期的な健康診断だと思っている」

「その際にワタシはエリスの脳波を通じ、量子ネットワークに侵入、ギアノイドの情報を入手」

ユーヤはリョウジの話を聞いていたが頭に入ってこない。

頭が、理性が理解を拒む。

「…な…んで………」

「そして取得したギアノイド側の情報ををもとに戦略を練っていた」

 

「そして現在も——“端末”として機能している」

 

めまいがする。

思考が、切れる。

ぷつりと、音を立てて。

 

ユーヤはゆっくりと。

無意識に。

まるで他人の身体のように。

銃を持ち上げる。

 

標的は蜘蛛型ロボット。

その内部にいる。

 ——“父”。

 

過去に経験したことのないほどの怒りに満たされる。

「……ふざけるな」

低い。

だが、抑えきれていない。

「ふざけるなよ……ッ!!」

引き金がかかった指に、力が入る。

 

父を撃ち殺してやりたい。

撃て。

こんなもの。

狂ったことを言う父。

全部——壊せ。

今この場で殺すべきだ。

そう、脳が判断する。

 

だが―――――

止まる。

ほんのわずかに。

 

理由はわかっている。

撃っても、

何一つ、戻らない。

変わらない。

 

エリスは―――――

その先を、考えることを拒絶する。

 

歯を食いしばる。

腕が震える。

視界が、滲む。

 

トリガーにかかった指が震える。

引き金をあとわずか力を入れれば発射されるであろう弾丸。

 

しかし―――――

——止まる。

済んでのところでる。

聞くな。

やめろ。

頭の奥で、

何かが叫んでいる。

 

「……っ」

 

ユーヤは歯を食いしばる。

奥歯が軋む音が、やけに大きく響いた。

 

本能が叫んでいる。

それ以上、踏み込めば。

——戻れない。

 

それでも――――

止まらない。

止まれるはずがない。

 

「……その人間は」

 

ユーヤの声が、わずかに震える。

 

 

「誰だ?」

 

 

 

沈黙。

長い。

異様なほどに。

時間が、引き伸ばされる。

冷や汗が流れる。

 

やがて、

静かに、

逃げ場を残さず、リョウイチは答える。

 

 

 

「……エリスだ」

 

 

 

——時間が止まる。

音が消える。

思考が、空白になる。

 

思考が理解を拒絶する。

「……は?」

 

「……違う……そんなわけ……」

言葉が、自分でも信じられないほど軽い。

 

リョウイチは続ける。

その真実を淡々と口にする。

「定期的にエリスは量子ネットワークに接続していた」

「通常の健康診断に偽装して」

「本人は知らない」

「ただの定期的な健康診断だと思っている」

「その際にワタシはエリスの脳波を通じ、量子ネットワークに侵入、ギアノイドの情報を入手」

ユーヤはリョウイチの話を聞いていたが頭に入ってこない。

頭が、理性が、理解を拒む。

「…な…んで………」

「そして取得したギアノイド側の情報ををもとに戦略を練っていた」

 

「そして現在も——“端末”として機能している」

 

めまいがする。

思考が、切れる。

ぷつりと、音を立てて。

 

ユーヤはゆっくりと。

無意識に。

まるで他人の身体のように。

銃を持ち上げる。

 

標的は蜘蛛型ロボット。

その内部にいる。

 ——“父”。

 

過去に経験したことのないほどの怒りに満たされる。

「……ふざけるな」

低い。

だが、抑えきれていない。

「ふざけるなよ……ッ!!」

引き金がかかった指に、力が入る。

 

父を撃ち殺してやりたい。

撃て。

こんなもの。

狂ったことを言う父。

全部——壊せ。

今この場で殺すべきだ。

そう、脳が判断する。

 

だが―――――

止まる。

ほんのわずかに。

 

理由はわかっている。

撃っても、

何一つ、戻らない。

変わらない。

 

エリスは―――――

その先を、考えることを拒絶する。

 

歯を食いしばる。

腕が震える。

視界が、滲む。

 

トリガーにかかった指が震える。

引き金をあとわずか力を入れれば発射されるであろう弾丸。

 

しかし―――――

——止まる。

すんでのところで。

 

ユーヤは、銃口を。

わずかに、下げる。

 

撃てなかった。

それが。

——“まだ人間である証”だった。

 

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