蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章⑫蒼き翼、新生

扉が、開く。

差し込む光の中に――

“それ”はあった。

ブラウフリューゲル。

だが――

違う。

 

かつての青い機体は、

装甲はより深い蒼へ、フレーム部分も各所に改良が見られる。

より深く。

より鋭く。

まるで――影そのもののように佇む機体。

 

「……これ…は」

ユーヤは思わず、息を呑む。

 

「ブラウフリューゲルtypeⅡ」

 

リョウイチは静かに告げる。

全高22メートル。

基本構造はブラウフリューゲルと同一。

だが――

中身は、完全に別物と化している。

 

 

【挿絵表示】

 

 

リョウイチの説明は続く。

「基本構造はブラウフリューゲルと大差ない」

「だがブラウフリューゲルの戦闘データを取り入れ改良を重ね完成させた」

「ワタシが作り得る事のできるバスターアームズ…その最高傑作だ」

 

佇む機体を見つめるユーヤ。

「…最高傑作ね…」

 

リョウイチは詳細を語り始める。

「変更部分を説明する」

「ブレードビットは廃止した、代わりに――」

 

左肩から腕にかかるほどの巨大な盾。

複数の装甲が折り重なっているような形状。

リョウイチは静かに解説する。

 

マルチプルビット。

合体することで盾状ユニットなる。

ブレードビットの発展型。

展開時に八基となる。

 

「次元粒子によるバリア展開」

「粒子ビームによる射撃」

「近接時はビームサーベルを形成」

攻防一体。

死角を持たない、完全オールレンジ兵装。

 

「お前の脳波で、全基を同時制御する」

「…ブレードビットの倍以上の数になる、できるか?」

ユーヤ息を呑む。

それが意味する負荷も、理解していた。

「…やってやるさ」

 

さらに追加武装。

両腰に折り畳み式収束ビームランチャー(レーヴァテイン改)

「レーヴァテインより小型かつスラスターの一部を砲身としないことでデメリットを回避している。従来のレーヴァテインもそのまま装備されているがね」

 

次に出力。

「次元リアクターは過去の稼働データをもとに最適化済み」

「出力は従来比……1.8倍」

更に―――

「アークレイズシステムの負荷も軽減されている」

「出力配分を最適化することで、使用後の戦闘不可になるリスクを回避している」

 

だが――

それは、前座に過ぎない。

リョウイチは一歩、前へ出る。

 

「……本題はここからだ」

ユーヤの視線が鋭くなる。

 

「量子テレポーテーションシステム」

 

「名称“ナイトランサーシステム”」

 

その言葉が落ちた瞬間、

空気が変わる。

 

「短距離の量子跳躍を可能にする。敵の攻撃は――当たらない。完全回避を実現する」

「発動時、機体は粒子化し、黒い霧状へと変化する。その副産物として、機体はステルス性を獲得している。機体表面だけを量子化すれば連合艦隊のレーダーにも探知されない」

ユーヤは驚きの声を挙げる。

「攻撃の完全回避⁉」

ユーヤが目を見開くが、リョウイチは構わず続ける。

「そうだ、だが万能ではない、弱点も明確に存在する」

完全回避、そう聞けば最高の回避システムとしか思えない。

ユーヤは尋ねる。

「弱点?」

リョウイチの詳細な説明。

「まず粒子使用量、量子テレポーテーションは次元粒子を極限まで圧縮して初めて作動する。圧縮時間を含め連発は不可能だ。ブラウフリューゲルとて粒子生成量には上限が存在する」

ユーヤは納得したような表情。

「なるほどな…」

そしてリョウイチが更なるデメリットを提示する。

「そして量子化後の再構成の位置に異物があればそのままダメージになる」

「内部崩壊を起こす…出現ポイントには十分注意しろ」

万能ではない。

どんなシステムにも弱点は存在する。

ユーヤは改めて納得する。

「…わかった」

 

だがリョウイチは続ける。

「そしてもう一つ、最大の弱点」

「ナイトランサーシステムの起動は、ユーヤ、お前が自身で意図をもって行う事」

ユーヤは意味が分からない。

「?なんでそれが弱点になる?」

リョウイチは解説する。

「ナイトランサーシステムは自動で発動するわけではない」

「完全回避を実現するが“自動回避”ではない」

ユーヤは父が言いたかったことをようやく理解した。

「…連発、常時発動は不可能」

「つまり、俺が必要なタイミングで起動しなければ、完全回避は成立しない」

リョウイチは肯定する。

「そうだ」

つまりユーヤの使い方次第。

リョウイチはそう言いたいのだ。

ようやく父が言いたいことを理解したユーヤ。

「…わかった」

 

わずかに沈黙。

そして――最も重要な一言。

「これは試験機だ」

「長距離量子テレポーテーション…それを成功させるためのな」

その言葉の意味を、理解する。

「……行けるのか」

ユーヤの声が、わずかに震える。

「エリスのところに」

 

一切の迷いなくリョウイチは告げた。

「エリスの詳細座標を特定」

「長距離量子テレポーテーションを成功させる」

「これ以外に方法はない」

 

静寂。

選択肢は、ひとつ。

 

これは――

戦うための機体じゃない。

“会いに行くための翼”だ。

 

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