蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章⑬裁きの資格

ブラウフリューゲルtypeⅡの説明が一通り終わる。

だが、これは手段だ。

ユーヤにはまだ聞かなければいけないことが残っていた。

 

静かだった。

先ほどまでの熱が、

わずかに落ち着いている。

「……父さん」

低く。

だが今度は、感情ではない。

「エリスのことだ」

一拍、間を置く。

「全部……話せ」

 

リョウイチは否定はしない。

隠しもしない。

ただ、受け止める。

「……あの子の存在は」

ゆっくりと語り出す。

「次元リアクター管理局内でも、ワタシを含め三人しか知らなかった」

「私の計画に賛同してくれた人たちだ」

「……ギアノイド襲撃で、共に亡くなっているが…」

「現状はワタシとお前の2人になったが」

ユーヤは間を置かず、問いを重ねる。

「……エリスの両親は、本物だったのか?」

リョウイチは迷いなく答える。

「ああ、エリスは、その研究者2人、その夫婦から精子と卵子の提供を受けて生まれた」

「人工的に受精卵を培養し――その過程で、ギアノイドの量子ネットワークに同期できるよう調整した」

一瞬、リョウイチの言葉が重くなる。

今まで機械のように淡々と言葉を発するリョウイチの言葉がわずかに揺らいだ。

「……どうしても必要だった…ギアノイドに接続できる存在が」

視線は逸らさない。

「ワタシは、それを利用していた」

はっきりと、言い切る。

 

沈黙が走る。

重い静寂が落ちる。

 

ユーヤは何も言わない。

だが――

内側では、激しく揺れていた。

 

エリスのこと。

知らないところで、利用されていたという事実。

 

拳を強く握る。

骨が軋むほどに。

だが―――

爆発しない。

理解してしまったからだ。

ユーヤはつぶやくように告げた。

「……でも…その計画がなかったら」

一拍。

「エリスは……生まれてこなかった」

ぽつりと、零れる。

否定できない。

矛盾、

怒りと、

感謝が、

同時に存在している。

 

どうすればいいのか――

わからない。

 

ふと、ユーヤはここで目覚めたときことを思い出す。

あの部屋。

最初に目覚めた場所。

違和感がある。

なぜ、あそこに――

拳銃があったのか。

遅れて、繋がる。

「……父さん」

ユーヤはゆっくりと顔を上げる。

「最初から……置いてたな…俺が見つける場所に、わざと銃を」

 

沈黙。

リョウイチは答えない。

確信した。

「撃たれてもいいって思ってたんだろ」

「俺に……殺されても…それでいいって」

リョウイチはわずかに、下を向く。

肯定も否定もない。

だが――

それが答えだった。

ユーヤは苦く笑う。

「罪悪感か?…それとも……」

 一瞬、間が空く。

「俺に裁いてほしかったのか?」

 

静寂が満ちる。

重い。

だが、逃げない。

撃たなかった理由は――

今、はっきりしていた。

まだ、

終わっていないからだ。

 

 

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