蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章⑭裁く人

長い沈黙の中――

ユーヤはゆっくりと口を開く。

「……父さん」

そして選択する。

長い長い葛藤の果て、決断を下す。

「完全に許したわけじゃない」

一拍、間を置く。

「でも、裁きは受けてもらう」

 

それがユーヤの答え。

父親がしてきたことを全て受け入れるわけでなはい。

それ相応の罰が必要。

リョウイチは自らそれを望んでいる。

そう感じたからこその決断だった。

 

リョウイチ本人もなんでも受け入れるつもりだった。

「……殺すのか?」

即答する。

「殺さない」

迷いはない。

その言葉は、揺るがない。

「殺して楽になんかさせない、絶対に」

断言する。

 

「最後まで責任取れ、今更逃げ出すことなんて、それこそ許さない」

 

静寂が走る。

その一言は――

刃よりも重く、深く突き刺さる。

 

ユーヤはさらに言葉を重ねる。

「父さんを裁けるのは」

一拍。

「俺じゃない」

それは―――

 

「母さんだ」

 

一瞬――

空気が止まる。

父へ言葉で追撃する。

「一番苦労かけたんだからな、ちゃんと会って…謝れ」

これが結論。

「それが父さんの償いだ」

 

リョウイチは絶句する。

機械の身体に明らかな動揺が、表に出る。

リョウイチのわずかに震える声。

「……こんな体で」

自分の身体を見るような動きをする。

蜘蛛のような機械の躯体。

「どんなに罵倒されても…拒絶されようと…それでも、会えと?」

ユーヤは当然のように答える。

「当たり前だろ」

一拍。

そして――

わざと、間を置く。

 

「ちなみに母さん、再婚の話も前に出てたな」

その言葉がリョウイチに直撃する。

動きが、止まる。

さらに追撃する。

「もう父さんのこと…愛してないかもな」

完全な沈黙が落ちる。

リョウイチはわかりやすく、肩を落とす。

機械の身体にもかかわらず、とても人間らしく見えた。

空気が重い。

だが――

ユーヤはふっと、口元が緩む。

「……嘘だよ」

「そんな余裕、母さんにはないよ」

「ちょっとした嫌がらせだ」

静寂。

唖然とするリョウイチ。

 

けれど、その空気は――

ほんの少しだけ、軽くなっていた。

 

それでも。

背負うものは変わらない。

生きて――償え。

それが結論だ。

 

ユーヤは父親への仕返しのつもりで皮肉を言う。

「機械のふりしてたくせに…めっちゃ人間臭いじゃねーか…母さんの話が出たとたん動揺するのは昔と何も変わってないじゃないか」

 

リョウイチは無言で答えない。

ユーヤは悟ったように告げた。

「あんたは間違いなく関谷リョウイチだよ。たとえ脳みそだけになっても同じさ…間違いなく父さん本人だよ…」

 

リョウイチが分かりやすく話題をすり替える。

「っ……これからのことを説明する…」

ユーヤは少し笑う。

「ああ…約束…守れよ」

リョウイチは、ばつがわるそう返答する。

「…善処する…」

 

 

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