蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
地球は――
終わりに向かっている。
ギアノイド。
その群体は、確実に“変化”していた。
リョウイチは現状を説明する。
「……先の戦いで、奴らは“大隊”の一つを失った」
ユーヤは目を細める。
「大隊……」
リョウイチが続ける。
「人間で言えば、腕を一本失ったようなものだ」
沈黙。
軽くはない。
だが――
致命でもない。
「奴らは学習する」
「地球の戦力は、単独の大隊ですら落とせないと判断したはずだ」
一拍。
「次は――さらに大規模な群体が来る」
地球に、猶予はない。
ユーヤは目を細める。
「…どうするんだ?」
リョウイチはプランを説明する。
「次元リアクター管理局には、情報をリークしておく」
「少しでも準備させるためだ」
ユーヤは静かに頷く。
だが―――
本質は、そこではない。
リョウイチは今一度告げる。
「生き残るには一つしかない」
一歩、踏み込む。
「量子テレポーテーションで、真の中枢へ直接飛び込み――叩く」
一拍置いて。
「その過程でエリスを救出する」
しばし間。
その言葉を、遮るように。
ユーヤは小さく、笑う。
「……逆だろ」
視線はまっすぐに、射抜く。
「エリスを連れ帰る」
一拍。
「そのついでに、ギアノイドを止める」
リョウイチが、わずかに固まる。
「……人類を救うのが“ついで”とはな」
ユーヤは笑う。
「問題あるか?」
沈黙。
そして――
リョウイチも小さく笑う。
「……いや、お前はそれでいい」
方針が決まる。
進むべき道は、決まった。
リョウイチが行動方針を示す。
「まずは準備だ。地球周辺には、先の戦いの残党が、まだ残っている」
「それを狩る、地球側の戦力をこれ以上消費させないために」
ユーヤのうなずく。
「…そうだな」
リョウイチはさらに続けた。
「同時に――typeⅡの調整を行う」
「長距離テレポーテーションの成功確率を少しでも上げるために」
ユーヤは納得したような表情。
「…了解」
だが、ひとつだけ引っかかる。
「一つ聞く」
「俺たちの存在は、次元リアクター管理局に知らせないのか?」
リョウイチは即答する。
「知らせない方がいい」
「私の存在、エリスの真実、次元粒子の発生源、量子テレポーテーション技術」
「どれも――」
「知られれば、厄介なことになる」
「人類間での揉め事にさいている時間はない」
リョウイチがこう断言するほど人類は追い込まれている。
ユーヤはわずかに考える。
最優先はエリスの奪還。
そして、人類に時間もない。
やがて、頷く。
……分かった」
だが――
一言付け加える。
「全部終わったら」
一瞬、間を置く。
「ちゃんと母さんに会えよ」
リョウイチはわずかに、目を逸らす。
「……わかっている」
蒼は、再び飛ぶ。
今度は――
世界を飛び越えた先。
境界の、その向こう側へ。