蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
警報が鳴り響く。
次元リアクター管理局
中央演算システム。
膨大なデータが、瞬時に流れ込む。
オペレーターが震えながら演算結果を確認する。
「…嘘…だろ…」
「……また…来る」
「…更なる大規模侵攻だ…」
地球の遥か彼方に再びギアノイド群体――
再編成。
増強。
そして――
“次”は桁が違う。
その情報は瞬く間に、世界へ拡散された。
混乱。
恐怖。
そして、絶望。
一般市民。
「もう無理だ……」
「終わりだ……」
声は瞬く間に広がる。
各国首脳会議。
怒号。
責任の押し付け合い。
意見の衝突。
「あれが中枢ではなかったのか!」
「先の戦いで我々はどれほどの損失を被ったと思っている!」
崩壊寸前。
統制は、もはや取れない。
だが――――
二人だけは違った。
ゲンゾウ。
腕を組み、黙って見据える。
ナツキ。
冷静に資料を整理する。
やがて、ゲンゾウが立ち上がる。
一言。
「……静まれ!!!」
空気が変わる。
場が凍る。
そして当然の宣言をする。
「我々は、まだ生きている」
事実。
誰も、否定できない。
「ならば、やることは一つだ」
浮足立ち、混乱する会議場を落ち着かせる。
まだ希望はあると言わんばかりに。
指示を飛ばす。
具体的に。
的確に。
やるべきことが提示される。
ナツキが補足説明を入れる。
補完するように。
戦力配置。
補給、
防衛ライン、
次々と整理されていく。
混乱は――
次第に、行動へと変わる。
しかし――
誰も知らない。
二人の中には、一つの確信があった。
あの戦場。
あの動き。
あの意志。
名前なき存在。
“英雄の亡霊”
口には出さない。
だが――
確信がある。
あの子は、ユーヤは、まだ戦っている。
世界の混乱を収めるため、次元リアクター管理局が代表となり、地球全土へ放送を行うことが決まった。
地球全土、全人類向けた放送。
人類がこの危機に対し、どうするか決定する瞬間。
ゲンゾウが画面に映る。
そして静かに演説が始まる。
「……諸君」
低く、重く。
「現実は厳しい」
それは事実。
「次の侵攻は、これまでとは比較にならない」
間が空く。
だが――
「それでも、我々は生き残る」
「生き延びねばならない」
呼びかける。
全ての人類に。
「そのために、全ての人々の協力が必要だ」
具体案を提示する。
「次元粒子の節約」
「軍への志願」
演説は続く。
「全ての人間に必ずやれることは存在する」
「各自の役割を果たせ」
「人類の未来を勝ち取るために」
厳しさを含んだ言葉。
優しい言葉はない。
現実だけがそこにある。
だが―――
一瞬、ゲンゾウの目がわずかに変わる。
その言葉には重みがある。
「……希望はある」
静寂が訪れる。
世界が、その声に耳を傾ける。
「先の戦いで、蒼の英雄が示したように、我々には、まだ可能性がある」
皆思い出す。
あの光。
あの軌跡。
青い流れ星。
誰もが見た。
「生き残る可能性は残っている」
軍人たちの目が変わる。
あの戦い。
あの背中。
思い出す。
蒼の英雄の奮戦を。
「人類の未来は、まだ定まってはいない!」
一般市民は空を見上げる。
奇跡が起きた日の、あの青い流れ星を、思い出す。
まだ終わっていない。
人々の意思が固まる。
ゲンゾウの激が飛ぶ。
「人類の、そして自分自身の未来を紡ぐため各自行動を開始せよ!!」
最終決戦へ――
世界は、一つになり始めていた。