蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章⑰亡霊か、死神か

静寂。

格納区画。

無機質な空間。

その中心に、蒼き翼。

ブラウフリューゲルtypeⅡ

沈黙している。

だが、その圧は違う。

コクピットにユーヤが座る。

リョウイチがオペレートを行う。

「神経接続、開始」

ユーヤの意識が沈む。

世界が広がる。

「……すごいな、これ」

機体だけではない。

“自分の身体”だ。

情報が流れ込む。

出力。

応答速度。

演算補助。

「……マジかよ、この数値…次元リアクター管理局の技術者が見たら腰抜かすぞ…」

あり得ない領域。

リョウイチから通信。

「当然だ、限界を前提に作っている」

起動は出来た。

だが、ここには発進口がない。

「発信口がないぞ、どうやって出る?」

リョウイチは即答する。

「不要だ、初めから存在しない、そのまま行け」

ユーヤの一瞬の理解。

「量子テレポーテーション…」

リョウイチは続ける。

「地上から大気圏外程度なら、短距離の範疇だ」

「これがtypeⅡ初めての量子テレポーテーションとなる」

ユーヤは息を吐く。

「……やっぱ…そういうことかよ」

ここやtypeⅡの存在は公にできない。

それ以外の発進手段はない。

「…わかった」

ユーヤは一旦深呼吸をした。

そして―――起動する。

「ナイトランサーシステム、スタンバイ」

ユーヤに緊張が走る。

「…行くぞ」

リョウイチが返答する。

「…ああ」

 

ブラウフリューゲルtypeⅡが徐々に輪郭を失っていく。

そして満ちる濃厚な次元粒子。

 

ユーヤは覚悟を決めたように操縦桿を握り直す。

 

 

「ブラウフリューゲルtypeⅡ、出る!!」

 

 

その瞬間。

空間が歪む。

ブラウフリューゲルtypeⅡが消える。

そして――

宇宙空間。

一瞬で出現する。

静寂と星。

「ふう…」

ユーヤが少し安堵する。

量子テレポーテーションは完璧に作動している。

短距離転移なら問題はない。

後は長距離転移の調整。

そして戦闘にどう組み込むか。

 

センサーに反応が表示される。

ギアノイド残党群。

ユーヤは一呼吸。

「さて……やるか」

 

ブラウフリューゲルtypeⅡ初戦闘開始。

ナイトランサーシステムのステルスモードを起動。

機体表面のみ量子化し視認できない存在へと変わる。

その後、加速。

桁違いの速さ。

敵反応が止まって見える。

遅い。

ブレードライフルですれ違いざまに切り裂く。

一閃。

ユーヤが苦悶の表情を浮かべる。

「……クソッ…俺の方がtypeⅡの反応速度についていけていない…」

思考を切り替える。

マルチプルビット展開。

八基。

同時制御。

すぐさま反撃。

射撃攻撃モードへ移行する。

ビームによる射撃。

近接攻撃モードへ移行。

近接用ビーム展開。

斬撃。

再度防御モードへ。

バリア防御展開。

八機すべて同時に操作する。

「くっ…ビットの隊列が乱れた…」

リョウイチはその光景を、端末を通して見ていた。

口は挟まない。

ユーヤはギアノイドを刈り取りながら、その制御に全神経を集中させていた。

「乗りこなしてみせる!」

そしてtypeⅡの象徴たるシステムを使用する。

「ナイトランサー!」

機体が完全に崩れ、形が解ける。

黒い霧。

存在全てが完璧に曖昧になる。

そして―――

一瞬。

別の位置へ。

また消える。

 

跳ぶ。

跳ぶ。

跳ぶ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ギアノイドが、次々と。

“気付く前に壊される”。

 

それはもはや戦闘ではない。

その光景は―――

狩り――いや、処刑。

 

その遠方。

連合軍機。

交戦中。

 

その時、黒い影が現れる。

一瞬で通過。

気付いた時には―――敵が消滅している。

連合軍パイロット。

「……今のは……何だ?」

別の声。

「なんだよあれ……」

さらに別の声。

「…英雄だ…助けてくれた」

「げ…幻覚じゃないのか…幽霊にしか見えなかった…」

「…英雄は消えたはずじゃ…」

「……英雄の亡霊だ」

ざわめきが広がる

通信が揺れる。

 

宇宙では黒い霧が舞い、そして消える。

さながら亡霊、いや、死神の処刑場のようだった。

瞬く間に、一帯のギアノイド反応が消える。

 

再び空間が歪む。

ユーヤ、帰投。

コクピットで息を整える。

「……まだ甘いな」

リョウイチの冷静な分析

「本番までに、完璧に仕上げるさ」

ユーヤの眼には闘志が映っていた。

 

最終決戦は、もうすぐそこだ。

 

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