蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

82 / 100
2章㉑交差する光

限界が見えてきた。

光が、少しづつ尽き始めた。

連合艦隊が疲弊していく。

弾薬、

エネルギー、

人員、

すべてが、削られていく。

それでも撃つ。

それでも進む。

だが――もたない。

このままでは押し切られる。

誰もがそう考える。

それでも、

止まれない。

後ろには無防備な地球。

守るべきものがすべてそこにある。

立ち止まる選択肢はない。

連合艦隊間で怒号のような、祈るような通信が飛び交う。

「撃て撃て!撃ちまくれ!!」

「全部落とせ!落とすんだ!」

「引くな!引いたら終わりだ!後ろに何があるか思い出せ!!」

「押し返せ!!何としても!!」

「俺たちが人類の最後の壁なんだ!」

誰もが奮闘する。

もう後が無い事を誰もが自覚しているから。

たとえ命を散らすことになっても。

 

 

 

同時刻。

敵陣深部。

ブラウフリューゲルtypeⅡは戦闘を継続中。

しかし、

黒が、揺れる。

「……っ」

ユーヤの反応が鈍る。

連続戦闘。

神経負荷。

蓄積した疲労。

 

背後には張り付く影。

リョウイチは演算を続けている。

覚悟は決めている。

演算の手を緩めることはない。

だが――――

間に合わない。

そういう未来が見える。

 

「……せめて」

「もう少し、演算能力があれば……」

リョウイチが嘆く。

無いものねだりをしても現状は変わらない。

「…弱音吐いても仕方ないだろ、父さん…」

「…わかっている…」

 

ユーヤの消耗も激しい。

肩で息をする。

呼吸が乱れる。

「ハアハア…まだまだ…」

その瞬間、ギアノイドは狙いすましたかのように動く。

前後左右。

ギアノイド。

ギアノイド。

ギアノイド。

完全包囲される。

逃げ場は、ない。

「しまっ――」

ユーヤの疲労による一瞬の判断遅れ。

ナイトランサー起動――

間に合わない。

壁のようなギアノイドの壁からの同時攻撃。

まずい。

当たる。

やられる。

だが―――

その瞬間――

 

閃光が走る。

後方から。

圧倒的な火線。

包囲が、一瞬で吹き飛ぶ。

“何か”が来る。

とんでもない速度で、

ブラウフリューゲルtypeⅡを包囲するギアノイドへめがけて突っ込んでくる。

ユーヤは窮地を脱したが、その状況に困惑する。

「くっ⁉…なんだいったい…」

それは―――

巨大。

重厚。

対象を識別する。

ユーヤはそれが何なのかようやく理解した。

「……ヴェスペリオン⁉」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ヴェスペリオン艦橋。

ゲンゾウの響く声。

「ほれ見ろ、ナツキ。やはりおったじゃろう」

一拍。

「“我々の英雄”がな」

ナツキは静かに、笑う。

「ええ…いるに決まってるわよ!」

 

通信が飛ぶ。

開かれる回線。

ゲンゾウの声が響く。

「こちらヴェスペリオン」

「ブラウフリューゲル聞こえるか」

さらにナツキの声が続く。

「ブラウフリューゲルを援護する!」

「ミサイル発射管、全門追尾ミサイル装填!主砲発射用意!」

「てええええええ!」

戦場に再び――

光が灯る。

ヴェスペリオンから発射されたミサイルと艦砲射撃でブラウフリューゲル周辺の敵を駆逐していく。

ユーヤは目を見開く。

 

もう、孤独ではない。

亡霊—――いや、英雄は――

1人で戦っているのではない。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。