蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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2章㉓座標

ナツキの涙は――

終わらない。

だが、

拭う。

無理やり止める。

戦場だからだ。

立ち止まっている暇はない。

 

ゆっくりと離れる。

だが、手は――

まだ触れている。

「……あとで、ちゃんと話しましょう」

リョウイチは短く返す。

「ああ」

切り替える。

すぐに。

「来て、艦橋よ」

二人は進む。

金属の通路。

絶えない振動。

戦闘の余波。

だが、足取りに、もう迷いはない。

 

艦橋へ到着する。

扉が開く。

視線が一斉に集まる。

ざわめきが広がる。

ナツキはっきりと言う。

「こっちよ、あなた」

 

一瞬、全員が止まる。

言葉の意味に――理解が追いつかない。

だが一人だけ。

ゲンゾウは目を見開く。

「……まさか」

一歩、前へ。

「リョウイチ君か!?」

蜘蛛型の機械が、わずかに頭を下げる。

「……すみません、お義父さん」

「こんな体ですが…帰ってきてしまいました…」

一瞬、沈黙。

だが――

ゲンゾウは笑う。

大きく。

腹の底から。

歓喜の笑い。

「はっ……ははは……!」

「そうか……!…帰ってきたか!」

「娘婿も…孫も…両方とも帰ってきたか……!」

声は震えている。

「こんなに嬉しいことはな……」

 

ナツキは静かに微笑む。

だが、すぐに切り替える。

やるべきことがある。

 

ユーヤは耐えていた。

溜る疲労。

だが止まらない。

ブラウフリューゲルtypeⅡは戦い続けている。

漆黒を帯びた蒼き英雄が舞う。

「ハァァァァァァァ!」

フルバーストショット。

疲労していてもその命中精度は落とさない。

集中力はもう切らさない。

 

だが押し寄せる。

無数に。

ギアノイドが。

それでも、前に出る。

守る。

ヴェスペリオンを。

「……父さんの演算が終わるまで、一切傷つけさせない」

 

通信回線が開く。

「ユーヤ」

ゲンゾウの力強い声。

「状況は大まかに聞いた」

「今、リョウイチ君が、ヴェスペリオンの演算能力で解析を行っている」

「もう少し…耐えろ!」

ゲンゾウの後ろからナツキの声も聞こえる。

ユーヤは少し安堵した。

 

(よかった…父さんはちゃんと母さんに会えたようだ…)

 

「……了解」

 

ゲンゾウはぽつりと。

言葉を漏らす。

「……すまんかったの…いろいろ背負わせて」

「…」

ユーヤは何も答えない。

 

ナツキは続ける。

「ユーヤ」

強い声。

「正念場よ」

「…まだ再会できていない家族がいるわ」

「絶対、連れて帰ってきなさい」

ユーヤはわずかに笑う。

「……ああ…当然だ!」

 

その瞬間

艦橋に――リョウイチの声が響く。

「――演算完了」

全員が息を呑む。

「座標、確認」

表示される。

スクリーンに映し出される。

異常な数値。

未知の領域。

 

そこが――

最終決戦の場。

 

扉が。

今、開く。

 

 

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