蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
通信が開く。
ナツキが呼びかける。
「ユーヤ、一度着艦しなさい」
「……理由は?」
ナツキは即答。
「次元粒子を充填する」
「こんな時のために確保していたの」
「最高のコンディションで送り出してあげるわ」
粒子貯蔵タンク。
消費した粒子の強制充填。
限界まで回復が可能。
だが、
ユーヤは難色を示す。
「……だが…その間、ヴェスペリオンはどうする」
「ここは敵のど真ん中だぞ」
ナツキ少しだけ笑う。
「すぐ済むわ」
「それに――何とかもたせる」
ゲンゾウが続ける。
「ヴェスペリオンは、人類最強の宇宙戦艦じゃ」
「問題はない」
リョウイチが会話に加わる。
「ユーヤ」
「どのみち超長距離の量子テレポーテーションには大量の次元粒子が必要だ」
「アークレイズシステムとナイトランサーシステムの同時起動で、理論上は指定座標まで到達は可能だ…」
「失敗は許されない…一度着艦しろ」
沈黙、そして短くユーヤが応答する。
「……了解」
進路変更。
ヴェスペリオンへ着艦する。
巨艦へ。
蒼い機体が、滑り込む。
格納庫
ロック。
固定。
即座に作業開始。
光が流れ込む。
次元粒子が、満ちていく。
コクピットは静寂。
通信は開いたまま。
家族四人。
画面越しに繋がっている。
ユーヤは言葉を探す。
だが――うまく出てこない。
リョウイチがナツキへつぶやく。
「……迷惑かけたな」
ナツキは即答。
「ほんとよ」
だが――声は優しい。
「あとでちゃんと全部聞かせてよ」
ゲンゾウの声。
「ユーヤ、お前一度自分の墓を見に来てたじゃろ」
「まったく…心配させおって」
ユーヤはばつがわるそうに答える。
「……悪かったって」
リョウイチは少しだけ間を置く。
そしてユーヤに声をかける。
「……よく、ここまで来たな」
「いろいろなものを背負わせてしまったが…」
「最後まで…頼む」
ユーヤは父に答える。
「そっちこそ」
「途中で投げ出すなよ」
リョウイチはわずかに笑う。
「……言うようになったな」
沈黙する。
だが――それが心地いい。
完了音がする。
充填、終了。
システム全項目――正常値。
ナツキが名残惜しそうに言う。
「……終わったわ」
一瞬、静寂。
ユーヤは深く息を吸う。
「……行ってくる」
父、母、祖父三人の家族の言葉が重なる。
「「行ってらっしゃい」」
それは――家族の言葉。
また、待っているという意思表示。
その決意。
ロック解除。
カタパルト起動。
ブラウフリューゲルtypeⅡ射出。
すぐさま加速。
一瞬で戦場へ。
そして――
「アークレイズシステム――起動」
蒼が、弾ける。
さらに―――
「ナイトランサーシステム――起動」
黒き霧。
その内側で――蒼が燃える。
最大出力。
今までで、最も強い輝き。
超長距離量子テレポーテーションの条件はクリア。
同時刻。
連合艦隊
状況は悪い。
戦線は――崩壊し始める。
「……もう……」
兵士に諦めが、漂う。
だがその時――
遠方
敵陣深部。
光。
蒼。
一直線に走る。
誰かが叫ぶ
「……あれは!」
確信する。
「蒼の英雄だ!」
ざわめきが広がる。
「まさか…生きていたのか……!」
「帰ってきてくれた……!」
再び灯る。
希望の蒼。
「まだ希望はある!」
奮起する。
「持たせろ!」
「まだ諦めるな!」
「まだ終わっていないんだ!」
宇宙。
蒼い軌跡。
流星のように翔ける。
人々の希望――そのすべてを乗せて。
極限速度。
光。
そして、
無機質な機械音が告げる。
「超長距離テレポーテーション――開始」
消える。
蒼の流星は。
最終決戦の地へ――
飛び込んだ。