蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
警報が鳴ったのは、夕刻だった。
『エネルギー反応を確認』
『前回と同種……だが、規模が異なる』
次元リアクター管理局。管制室の空気が、一瞬で張り詰める。
「降下座標、ポイントα03!」
「反応、急速拡大中!」
モニターに映る空。歪み。
そして――
「……でかいな」
誰かが呟く。
影が、落ちてくる。
自宅。
エリスはテーブルに皿を並べていた。
「……」
ふと手を止める。遠くで、何かが鳴っている気がする。
でも。
「……ユーヤ、遅い」
小さく呟くだけ。何も続かない。
管制室。
ユーヤが入ってくる。
「状況は?」
「大型個体を含む群体!」
モニターに映る敵。明らかに前回より“重い”。
その時。
ナツキ。
「各国、迎撃部隊展開中!でも……」
言葉が詰まる。
「……押されるわ」
予測できていた。ユーヤは一歩前に出る。
「出る」
短い。その声には覚悟が宿っていた。
「待て」
ゲンゾウの静かな声。
「まずは量産機の対応を見る」
「……間に合わない」
「分かっておる」
ゲンゾウはモニターを見つめる。量産機部隊。新装備を纏った機体たち。
「どこまでやれるか、見極める必要がある」
その言葉は冷静だ。だが――
「ユーヤ」
視線を向ける。
「準備はしておけ」
「……ああ」
戦場。
量産型バスターアームズが空を駆ける。
新型ライフル。高機動パッケージ。
『いける……!』
最初は押していた。だが。
『硬い!?』
弾が弾かれる。大型個体。従来より厚い外殻。
『回避が追いつかない!』
機動も違う。振り下ろされる一撃。一機、撃墜。
『くそっ……!』
戦線が崩れ始める。
次元リアクター管理局管制室
「やはりか……」
ゲンゾウが呟く。ユーヤが苦虫を噛み潰している表情を浮かべる。
「もういいだろ!」
ゲンゾウは数秒だけ目を閉じる。そして。
「――フリューゲル、出す」
その一言で、ユーヤはすでに動いていた。
格納庫。
コックピットに滑り込む。
『神経接続、開始』
意識が機体と繋がる。
「フリューゲル、発進許可!」
「フリューゲル、出る!」
射出。光の翼が広がる。
戦場。
崩れかけた空域に、白い機体が突入する。
一瞬で状況が変わる。
高速機動。正確な射撃。大型個体に接近。
「――ッ」
回避。懐へ。インパクトショット。直撃。
だが――
「……浅い」
破壊しきれない。初めてだった。フリューゲルの一撃が
“足りない”。
『装甲強度、上昇してる!』
ナツキの声。ユーヤは歯を食いしばる。
「なら――」
ライフルを構える。連射。弱点を探す。
動きは止まらない。だが確実に、戦いは厳しくなっている。
巨大個体の奥、さらにギアノイドが飛来する。
まだ、来る。
ユーヤは空を睨む。
「……いくぞ」
戦いは、まだ始まったばかりだった。