蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章⑩蒼と黒の境界線

静かに、

五つの影が降り立つ。

白い空間へ、音もなく。

人の形をしている。

だが、

人間ではない。

その存在感だけで分かる。

異質だ。

生命としての在り方そのものが違う。

ユーヤは宇宙服をチェックし、コクピットを降りる。

これは対話。

対等な立場で語る必要がある。

ブラウフリューゲルtypeⅡの銃口は下して向き合わねばならない。

ユーヤは宇宙服のスラスターを吹かし移動。

そして、

6体の人型ギアノイドと対峙した。

 

最初に、一体が前へ出る。

「まずは改めて名を、アダム」

低く落ち着いた声。

続いて、

「カイン」

鋭い視線を持つ男型。

「アベル」

穏やかな笑みを浮かべた存在。

「セト」

感情を感じさせない無機質な瞳。

「ヤハウェ」

最後の一体だけが、どこか柔らかな微笑を見せていた。

 

 

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ユーヤは彼らを順番に見渡し、苦く笑う。

「……ユーヤだ」

そして、何とも言えない表情を浮かべた。

「ついさっきまで、殺し合ってた相手と」

乾いた笑いが漏れる。

「自己紹介か…変な気分だ…」

誰も笑わない。

 

アダムが淡々と口を開く。

「状況を共有する」

空気が変わった。

「現在、人類とサタン一派が交戦中」

一拍。

「壊滅寸前だ」

「……っ」

ユーヤの表情が険しくなる。

時間がない。

もう本当に。

残されていない。

六体の上位個体が沈黙する。

だが、その間にも何かが行われていた。

言葉はない。

視線も動かない。

それでも、

情報が共有されている。

量子ネットワーク。

彼らは会話すら必要としない。

そして、

アダムが結論を告げた。

「我々は人類の絶滅を良しとしない」

さらに続ける

「そして、我々の生存にも人類の協力、“蒼き翼”の助力が必要だ」

その言葉に、空気が張り詰める。

「取引の過程において、現時点で人類を“味方”と定義する」

ユーヤの瞳が揺れる。

アダムは続けた。

「サタン一派との戦闘に介入、人類防衛を開始する」

一瞬の静寂。

「異論は?」

すると。

「……無し」

カイン。

「無し」

アベル。

「無し」

セト。

「無し」

ヤハウェ。

「無し」

イブ。

決まった。

あまりにもあっさりと。

ユーヤは思わず笑ってしまう。

「はは……」

乾いた笑い。

「なんだそれ」

頭を抱えたくなる。

「マジか…笑えねえよ…」

だが、

彼らは本気だった。

人類を守るために動こうとしている。

ギアノイドが人類を守るために。

その事実は、現実感を完全に狂わせていた。

    

 

一方、連合艦隊は既に崩壊寸前だった。

「第七ブロック突破されました!」

「左舷防壁消失!」

「弾薬残数、限界です!」

艦橋に怒号が飛び交う。

機体は損耗。

弾薬は尽きかけ。

戦線は瓦解寸前。

誰の目にも、終わりが見えていた。

 

ヴェスペリオンも半壊している。

装甲は焼け落ち、各所から火花が散る。

それでも。

まだ戦っていた。

艦橋は異様なほど静かだった。

誰もが理解している。

ここまでだと。

「敵影接近!」

「目標――ヴェスペリオン艦橋!」

「ちょ…直進コースです!」

オペレーターの声が震える。

回避不能。

迎撃不能。

終わりだった。

 

ゲンゾウが静かに目を閉じる。

「……ここまでか…」

ナツキが歯を食いしばる。

「くっ……!」

リョウイチは何も言えなかった。

覚悟するしかない。

その時だった。

――閃光。

「なっ……!?」

別角度から、高速接近する影。

次の瞬間、

突撃してきた黒いギアノイドが、横から吹き飛ばされた。

轟音。

衝突。

誰も理解できない。

「な、何が……!」

さらに。

一体。

二体。

三体。

次々と光が降り立つ。

ギアノイドが。

ギアノイドを迎撃していた。

「馬鹿な……!」

「…いったい…どうなって…」

「敵同士で戦ってるのか!?」

混乱が広がる。

青い光の群れが、防壁のように展開されていく。

包み込むように。

ヴェスペリオンを守るように。

その機体は発光していた。

透き通るような蒼。

 

 

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対して、

迫り来る敵は、濁った黒。

 

 

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黒が喰らう。

蒼が守る。

まるで思想そのものが色になったようだった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……なんだ」

「何が起きている……」

「味方……なのか?」

誰かが呟く。

ありえない。

理解不能。

だが、

事実として。

守られている。

ナツキが呆然とその光景を見つめる。

「……この色」

記憶に焼き付いている。

忘れるはずがない。

蒼い光。

希望の色。

そして彼女は小さく呟いた。

「まるで……」

ゲンゾウが静かに続ける。

「蒼の英雄……」

 

戦場に、

新たな線が引かれた。

蒼か。

黒か。

世界は今、二つに分かれようとしていた。

 

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