蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章⑪蒼の意志

静かな空間。

白い世界の中で、イブがわずかに首を傾けた。

「……味方だと、理解していただくために」

そして淡々と言う。

「あなたの色にしてみました」

ユーヤが眉をひそめる。

「……俺の色?」

「はい」

イブは頷いた。

「人類側データベースを参照」

「あなたは“蒼”のイメージと強く結び付いていました」

少し間を置き。

「問題はありませんか?」

一瞬。

沈黙。

そして、

「……ははっ」

ユーヤは思わず吹き出した。

肩を震わせながら笑う。

「たぶんな」

外宇宙へ視線を向ける。

「伝わってると思うぞ…」

     

 

宇宙。

蒼い光が広がる。

黒に覆われた戦場の中で。

その色だけが、異質だった。

人類はそれを呼び始める。

管理局オペレーターは、それをこう名付けた。

 

「…じ…人類に敵対していない個体…人類の防衛にまわっている青いギアノイドを…便宜上…ブルーギアノイドと呼称します…」

 

――ブルーギアノイド。

かつての敵。

だが今は、

人類を守る盾。

黒いギアノイドが襲い掛かる。

蒼いギアノイドが立ちはだかる。

激突。

閃光。

爆発。

言葉などない。

それでも、

確かに伝わってくる意思があった。

 

――これ以上、傷つけさせない。

 

蒼いギアノイドが前へ出る。

砲撃を受ける。

装甲が砕け散る。

それでも。

退かない。

人類の前に、

壁として立ち続ける。

 

     

ヴェスペリオン艦橋。

誰もが言葉を失っていた。

モニターに映るのは、信じ難い光景。

ギアノイドが、

ギアノイドと戦っている。

しかも、

人類を守るために。

「……なんだよ、これ……」

オペレーターが呆然と呟く。

「夢……じゃないよな……?」

誰も答えられない。

 

その中で。

ゲンゾウだけが。

静かに笑った。

「…はっはっは!…ユーヤじゃ…」

低い声。

だが確信に満ちている。

「こんな芸当ができるのは…アヤツしかおらん」

ナツキが振り向く。

「お父さん……」

ゲンゾウはモニターを見つめたまま続ける。

「ギアノイドを…味方につけおったか……!」

感嘆が滲む。

「まさかのう…」

肩を震わせ。

「ギアノイドに救われる日が来るとは…」

そして豪快に笑った。

「はっはっは…わからんものじゃな、人生とは…!」

艦橋にざわめきが広がる。

混乱。

困惑。

だが、

徐々に、連合艦隊全体にも理解が広がっていく。

「……青い……」

誰かが呟く。

「この色……」

別のクルーが目を見開いた。

「蒼の英雄だ……!」

一気に空気が変わる。

「やったのは彼だ!」

「蒼の英雄が帰ってきた!」

「また奇跡を起こした!」

「今度は……!敵を味方に……!」

絶望が塗り替わっていく。

沈みかけていた心へ、

熱が戻る。

「まだ終わってない!」

「戦える!」

「生き残れる!」

連合軍が再び前を向き始める。

 

その中で、

リョウイチだけが静かにモニターを見つめていた。

「……予測外だ」

ナツキが隣を見る。

「何が?」

リョウイチは小さく息を吐く。

「ユーヤの選択だ」

静かな声。

「私は…中枢撃破による統率崩壊」

「その後の生存確率の最大化」

「それしか想定していなかった」

だが、と続ける。

「……あいつは違う」

モニターに映る蒼い光を見る。

「ギアノイドと……共闘した」

「相互理解という選択を取った」

ナツキは黙って聞いていた。

信じ難い。

普通なら不可能だ。

だが、

現実として、目の前にある。

リョウイチは小さく笑った。

「……すごいな…ユーヤ」

するとナツキは即答する。

「当たり前よ」

誇らしげに。

「私たちの息子よ」

蒼い光が。

戦場を塗り替えていく。

これは奇跡じゃない。

誰かに与えられた救済でもない。

ユーヤが選んだ。

その結果だった。

 

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