新スタートレック(TNG)×マギクラフト・マイスター   作:転々々

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「機関室、どうか?」

 

 その日何度目になるだろうか。ピカードは同じ質問をする。

 ラ=フォージはコンソールを一瞥し、すべてのパラメータが基準内にあることを確認した。

 

「レッジ、そっちはどうだ?」

 

「こちら第二船体ブリッジ、いつでも始められます」

 

「いつでも始められます」

 

「では、始めてくれ」

 

 ラ=フォージの確認を請け、ピカードが指示を下した。

 

 

 

「ラ=フォージよりバークレー。

 ワープフィールド停止、構造維持フィールド最小限。船体強度が25%を切ったら適宜フィールド強度を自動調整する。

 送還魔法は質量そのものに作用する。干渉は最小限にしたい」

 

「バークレー了解。構造維持フィールド強度異常無し。送還シークェンス開始」

 

 ドーサルネック両側のマギ・クリスタルが輝きを増すと、エンタープライズ前方時空に歪みが現れ、急速に拡大する。船体は徐々に引き込まれてゆく。

 魔素の奔流がブリッジクルーの意識を揺さぶる。蓬莱島の魔素を含んだ食事のおかげで、召喚時よりも耐えられているが、摂取が少なかったウォーフが気を失った。次々倒れてゆく。

 データは前方に別の宇宙と、エンタープライズの後ろ姿を見た。そのエンタープライズは時空の歪みに引き込まれてゆく。

 

 

 

「艦長、大丈夫ですか?」

 

「ん? あぁ。大丈夫だ。ありがとう、データ」

 

 周囲りではクルーが自力で意識を取り戻しつつある。

 

「全艦は現状を維持。医療班は別命あるまで待機。

 各セクションは損害を確認。重大な損傷や異変が無い限り、報告は後でいい」

 

 ライカーが指示を飛ばす。

 

「どうかな? データ」

 

「連邦標準時信号にアクセス完了。我々が召喚された日時です。天文観測データも同じ宙域を示しています」

 

「還ってこれた、か……。

 一旦、帰投するが、その前に上級士官を会議室に集めてくれ」

 

「了解」

 

 

 

 会議室では特に議論は行われなかった。

 

 まず、船外のマギ・クリスタルを転送で細切れにしつつ魔力子(マギトロン)を中性子に置換し、構成原子をエネルギーに戻す。

 同様に船体に浸透した微量の魔力子も、魔力を消費させることで中性子に変換する。

 内外全ての魔力子を消したら、マギ・ディテクタやマギ・レプリケータを解体・消去する。

 

「マギ・レプリケータの設計情報は、現在フラクタル暗号で保護した上で隔離しています。これは帰投して我々の宇宙であることを確認したら消去します。

 決してガイナンを信用していないわけではありません」

 

「解ってるわ、データ」

 

 ガイナンはデータを一瞥し、微笑を浮かべる。

 

「それでは、船外はラ=フォージ、船内はデータの指揮で作業を進めてくれ。

 解散」

 

 

 

「艦長、浮かない顔ね」

 

 会議室に残ったピカードに、ガイナンが声をかけた。

 

「データが見たエンタープライズ、我々が我々自身をあの宇宙に押し出したのではないだろうか?」

 

「そうかも知れないわね」

 

「我々の行動が、過去の我々に影響を及ぼしたとすれば、あるいは時間の因果律に抵触したのではないだろうか?」

 

「あのエンタープライズとこのエンタープライズは、この宇宙に同時には存在していない。抵触したのではなく、因果の円環を閉じたのよ。

 大丈夫、あっちのエンタープライズも戻ってこられる。私たちと同じにね」

 

「ガイナンがそう言うなら、それを信じよう」

 

 

 

 蓬莱島では礼子と老子が空を見上げていた。

 

「行ってしまわれましたね」

 

「はい」

 

 礼子は空を見つめている。その方向にエンタープライズがいたはずだった。もっとも、送還は安全を確保するため1光年ほど離れた場所で行われるため、それを観測できるのは来年だ。

 

「この経験は、私たちを成長させるでしょう」

 

「そうですね。この星の人類が宇宙を目指すのはどれぐらい先になるのでしょうか」

 

「それは誰にも判りません。私たちはそれを見守るのみです」

 

 

 

 艦長室ではピカードはマーカーだったクリスタルを眺めていた。無論、転送によって魔力子は中性子に置き換えられており、それはレプリケートされたクリスタルでしかない。

 しかしそれに伴う経験は、艦隊の理念を問われ、誘惑に克つ心を試される、自身の在り方を改めて見直させられるものだった。

 ピカードはそれを布で包み、レシクの笛とともに保管した。

 

 背後で呼び鈴が鳴る。

 

「入れ」

 

「艦長、差し入れよ」

 

 ガイナンがポットを持ってきた。

 グラスを並べポットから注ぐ。

 

「これは……」

 

「ペルシカジュース。ただしレプリケートだから、後味のすっきりした桃のジュースね」

 

「あるいは、思い出の味になるかな。

 バーラウンジで出すのか?」

 

「そうね、内輪だけの隠しメニューかしら」

 

「その方がいいだろう」

 

 

 

恒星日誌、宇宙歴XXXX.X

 

 改めて簡単な補給を終えたエンタープライズは、未知の星域へ向かっている。この領域の星図(チャート)作成が目的だ。

 我々が作った星図によって、いずれはここも辺境でなくなるに違いない。




 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 スタートレックを知らない方が置いてきぼりになる内容だったと思います。仮に知らずにここまで読まれた方がいたなら、是非ともスタートレック本編も視ていただければと思います。

 日本人好みなのは『The Next Generation』で、この二次創作もその哲学に着想を得たものです。くれぐれも映画から入らないように。映画は良くも悪くもハリウッド的で、本放送版のスタートレック的な良さが目減りしていますので。

 スタートレックは日本ではあまり知られていませんが、米国では大河ドラマと水戸黄門を合わせたぐらいの知名度があるSFです。
 いわゆるSFというと、駅馬車の代わりに宇宙船、二丁拳銃の代わりにレーザーガンといった、西部劇を翻案したものを思い浮かべるかも知れません。時代劇なら、悪代官などが出てきて殺陣があるドラマ。
 それに対してスタートレックは、回にもよりますが、殺陣のない時代劇に喩えることが出来ます。今日的課題をSFという設定の中で翻案ないし比喩し、視聴者に問いかけるエピソードが非常に多い。
 SFの入門としては、非常に間口が広い。

 ピカード・ライカー・ウォーフといった主要メンバーが全く活躍しないのは残念かも知れませんが……、たまたまクロス先として選んだ世界がそれだったので。あと、ウェスリーは絡ませるとメアリー・スーになってしまい、ガイナンが活きません。
 同郷と言うことでケイコ・オブライエンも話にと思いましたが、ストーリーやテーマと関係がないので……。

 こういう話は、テーマや結末が明確に定めやすいので、筆が進みました。これぐらい、エタっている話も書ければ良いのですが。
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