イエスタデイ   作:永嶋 誘

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#10 どこにも行けず、ただ砕けるなら

 

「なんか探してるな……」

 

 学校につくや、燈が校舎の植え込みのところでガサガサと何かを探している様子が見れた。

 燈の隣にしゃがみこんで、一緒に探してみることにした。燈は私の顔を見るや面食らった顔をする。

 

「なんか捜し物? 手伝うよ」

「ううん。そうじゃなくて、捜し物というか……その、石とか葉っぱを……」

「石とか、葉っぱを」

「拾ってて……」

「拾ってて」

「うん……」

「なるほど……私、なんかそういうの気持ち分かるなぁ」

 

 手頃な形の良い石を広い、形が比較的綺麗な葉っぱを拾って、顔に近づけ、眺めて見る。

 

「うん、うん。冬木さん、分かって、くれるんだ」

「分かるよ。子どもの頃に、お姉ちゃんと公園で遊んだ時に、意味もなく石とか葉っぱ集めて持って帰ったことあるから」

「子どもの頃の話、なんだ」

「あ、これとかどう?」

 

 ゴツゴツとした歪な形の石を拾って、燈に見せて見る。燈はしばらく眺めた後、その石を受け取ってブレザーのポケットにしまい込んだ。

 

「小学校の頃に学校で銀杏集めてて、ポケットに入れてたら、全部潰れちゃって酷いことになったりしたこともあったなぁ」

「大丈夫、だったの……?」

「家に帰った後にお母さんにこっぴどく叱られちゃった」

 

 燈は反応に困ったような、苦い顔をする。もしかしたらその時の様子を想像したりしたのだろうか。

 

「蓮ちゃん、昨日あれからどうしたの?」

 

 お昼休みになって、いつものベンチで愛音と一緒に座っていた。私は相も変わらずギターを弾いている。今日は違うカバー曲を弾いていた。

 

「楽奈といつも一緒にいくパーキングに一人で行ったんだけど、いつもみたいにバーバラを可愛がってたら、そこに柚月さんが来て……バイクに乗って」

「柚月さんって! えーと、確かうちの三年生の……先輩の人だったと思う! なんとかってバンドのベースの人!」

「随分曖昧な知識じゃん?」

 

 人差し指を立てて、それを振りながら得意げに愛音は言っていた。

 

「もう今は、ベースも、バンドもやってないみたいだけどね」

「え〜。辞めちゃったの!? それって、もったいなくない!?」

「私に言われてもなぁ……」

 

 柚月がベースやめてても、バンドやめてても、私には関係ないはずなのに、どうしてなのか、胸がすっきりしない。

 

「でも、確かに正直ガッカリしたかなぁ……」

「やっぱそう思うでしょ〜? ライブやるくらいには有名になれたのにね〜」

「そんなことよりも、お姉ちゃんのお気に入りの人って聞いてたから、もっと凄い人だと思ってたし」

「嫌になっちゃったとか」

「嫌に?」

「ある程度有名になったから、もう音楽とかやんなくてもいいかな〜ってなっちゃったとか、そうじゃない?」

「そんな。愛音じゃあるまいし……有名なんて関係ないでしょ」

「ちょっと〜。それ、どういう意味〜?」

 

 ギターを持って、ベンチから立ち上がって飛び出していた。「ちょ、早っ!」と愛音の声が後ろから聞こえてきた。柚月の所に行こうと思ったけど、クラスも知らないし、お昼休みも、終わってしまった。

 

「椎名どん」

 

 放課後になって、RiNGでお茶を飲みがてら、立希の顔を見に来ていた。

 立希は呆れかえって、はぁとため息を一つ吐いた。

 

「椎名どどん」

 

 両手を広げてアピールするように言ってみる。ははぁと『どどん』に呼応するかのように、ため息を二つ吐いた。

 

「椎名どんどん」

「もういいから。今日は何しにきたの」

 

 立希は、ホットミルクティーを私の座るテーブルに置くや、小言を一つ。

 

「今日はちょっと、会う人がいるんだよね〜」

「野良猫ならまだ来てないけど」

「違うんだな。楽奈じゃ、ないんだな」

 

 っていないし! 私の話を聞く気なんてないのか、他のお客のところに行ってしまった。さっきの愛音も、今の私と同じ気持ちだったのかも。

 

「蓮ちゃん。ごめんね。待てせちゃったかな」

「あ、そよ……」

 

 そよが私のテーブルの向かい側に座った。息を飲んだ。

 

「ねえ。祥子ちゃんの、いい話を、期待してもいいのかな」

「相変わらず圧迫感が怖い……」

 

 バイト中の立希が、私とそよを横目に見てくるのが見えた。今は凄く立希のことが頼もしく見えてくる。

 

「れん、抹茶パフェ」

「楽奈!」

 

 そよの圧迫感で気づかなかったけど、いつの間にか来ていた楽奈に腕を引っ張られる。なんかこれは、楽奈にせがまれた抹茶パフェだの、立希がいるから(意味不明)だので、そよに祥子の話をする時間もなくなったのではないだろうか。

 

「なんかもう、祥子のお話するどころじゃなくなっちゃったし。今日はやめとこっか」

 

 微笑みながら、そよは紅茶をしばく。

 それから、カップをソーサーに置いてから、テーブルの上で両指を組み、それ越しに私を見つめてくる。やっぱり独特な指使いだと感じた。

 

「あ、そっか。この流れだとやっぱダメか」

「れん、抹茶パフェ、はやく」

 

 楽奈は、なおも私の腕を掴んだまま引っ張ってくる。

 

「怒られこそ、しなかったけど、めっちゃ詰められた……これはこれで、怖かったなぁ……」

 

 祥子にも愛想つかされ、そよにも詰められ……。

 

「最近ろくなことないなぁ……柚月さんもバンド辞めちゃってたし」

 

 バンド、と自分で口に出しておいて、また頭がモヤモヤしてきた。両手で頭を抑える。

 バンドって、楽しいのかな。すっきりするのかな。ギター弾きだしたのも、お姉ちゃんと一緒にバンドやるためで、ハルにギターを教えてもらってから、そのバンドも興味が無くなって、何がしたかったのかも分からなくなってきた。

 気づけば、私の足は考えるよりも先にある場所に向かっていた。

 目的の場所に着いた。昨日も来た、二階建てのアパート。

 階段を駆け上り、奥の部屋のインターホンを鳴らす。中から「はーい」と声が聞こえた。

 

「あれ……蓮ちゃん? どう今日もうちに来たの。どうしたの?」

 

 私が突然押しかけたからか、柚月は驚いた顔をした。

 

「柚月さん! 私と一緒に、バンド組んでくれませんか!」





ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
それではまた次回お会いしましょう。
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