2人の少女に先頭されている。姉妹と言うだけあって、顔の造形がとても似ている。姉…ララだったか。ララは切れ目の美人系少女だ。赤髪で頭頂部にある1本角が勇ましい。歳は15で種族は淫魔らしい。てっきり鬼かと思った。
怯えを隠して気丈に振る舞う様は非常に好ましい。あとどことは言わないが、ぺったんこだ。素晴らしいな。
俺はロリコンじゃない。
妹はリリというらしい。タレ目の可愛い系少女だ。青髪で狼耳が忙しなく動いている様は非常に愛らしい。なんで犬系の耳ってあんなにもふりたくなるんだろうね?歳は13でこれまた種族は淫魔らしい。狼人じゃないのね。もう分からん。
死ぬほど俺を警戒している。敵意をぶつけたいけど姉の邪魔はしたくない、そんな考えが手に取るように分かってまだまだ幼いのだなと思う。あとどことは言わないが、姉よりはある。成長期に期待といったところか。俺はそのままでも良いと思うぞ。
俺はロリコンじゃない。
軽く自己紹介をしつつ、3人で歩いていると目的地に着いたらしい。え?何もないけど?
「今、隠蔽の術を解きます。狭いところですが、どうかお寛ぎください」
ララがそう言うと、目の前の地面から階段が出現した。全然魔力の残滓が無かった。ララは保有してる魔力量に見合わず、相当程度に魔力の扱いが上手いのだろう。
そんなことを褒めるとキョトンとした後に顔を背けてしまった。え?変なこと言ってないよね?怒らせちゃった!?ごめん!この世界で魔力量が少ないね的なことを言うのは御法度なのかもしれん。でも君には俺の行動方針を決めてもらわなきゃ行けないから逃さないよ(最低)
「こほん。早速になりますが、この魔大陸についてのご説明とクーヘン様の今後の行動方針をどうしていかれるかを、私と愚妹が僭越ながら話し手となって進めて参ります」
「精一杯、務めさせていただきます」
「よろしく〜。ただその話し方、素じゃないでしょ。今この場は俺達は対等だろう?畏まった言い方はせずに、肩の力を抜いてくれ。なんならタメ語でいいぞ」
「タメ語!?い、いえ、流石にクーヘン様にタメ語は無理でございます。彼我の力量差は私達がよく分かっております。同じテーブルについていることから既に異常なのです。あまつさえ、私達淫魔を相手に目を見て話していただける…。どうか、敬わせてください」
「そ、そうです!お姉ちゃん以外で目を合わせて会話したことなんて、もう覚えていないくらいなんです!しょ、正直まだクーヘン様が恐ろしくて仕方ないですが、それでも追手を追い払ってくれた…。私達のヒーローなんです!対等なんてとてもとても!」
なんかすげぇ勢いでタメ語を拒否された。別に悪い気はしないけど、ちょっと寂しい…。まぁでも、悪の親玉がタメ語で話されてるのはイメージと合わないか。
あと目を合わせる云々は気になるけど、取り敢えずこの世界を知りたいな。
「まぁ、好きにしてくれていいけども、もう少し柔らかい言葉でいいぞ(ぶっちゃけ何言ってるか分からんし)」
「わ、わかりました。で、では簡単にご説明いたします。疑問点があれば、ご遠慮せずにご質問ください」
そう言ってララは鈴の音のようなキレイな声で説明を始めた。
曰く、この世界には大きく分けて二つの大陸がある。1000年前に魔族と人族の史上最大規模の戦争が起こった。その結果、東大陸を魔族が、西大陸を人族が治めることとなった。
曰く、大戦争から今まで人族とは若干の小競り合いはあるものの、大きな衝突はなく、むしろここ500年ほどは魔族同士の戦争が多い。
曰く、基本的には魔族は種族ごとに国家を持つことが多く、現魔王が支配している南東地域には巨人族の国がある。現在地にあたる北端は未開の土地であり、すぐ南方にある狼人族の国と亜人族の国が互いを牽制しながらこの地を治めようとしている。2人は亜人族の国から逃げていたらしい。
あと吸血鬼族の国はないらしい。1000年前の大戦争で吸血鬼の全てが滅んだらしい。同族が居ないのは…別に寂しくないな。むしろオワリーワンな感じが良き。
総評としては、前世とあんまり変わらない世界情勢と言えよう。どんな世界でも人種の違いでいがみ合うのはお決まりらしい。
ちなみに、淫魔族の国はつい8年前に滅ぼされたらしい。この世界は長く生きれば生きるほどに、魔力量が増えていくのだが、淫魔族だけは、性行為をすることで魔力を相手から奪うことが出来るのだとか。2人の母親も150歳という豪傑であったが、その淫魔族の特異性に危機感を覚えた周辺国が同盟を組み、戦争を仕掛けたらしい。その戦争で母親とララの姉達は戦死。約1000年続いた淫魔族の国の歴史が幕を閉じたとのこと。
「その淫魔族のあれこれが多分目を合わせる云々に繋がるんだね?」
「仰るとおりです。淫魔族の国は滅びましたが、淫魔は実はいろんな国にいたのです。歴史の長い種族なだけあって、異種族でありながら国の中枢を担う淫魔も多くいたと聞いています。周辺国の族長及び魔王は各地の淫魔族が結託し反乱を起こさないよう、ある定説を流布したのです」
「ある定説?」
「はい。【淫魔と目を合わせると問答無用で操られる】です。もちろん、事実無根ですが、効果覿面でした。なにせ、淫魔族は実際に魔族を操ることのできる魔眼を持っているからです。しかもこの定説を東大陸の過半数の族長と魔王が共同声明として出したのです。疑う者など少なく、疑った者は殺されました。」
ひどい話だが、魔王らの手腕は見事なものだろう。強大な敵に対して策を練り、協力して打倒する。魔族をただの荒くれ者と考えるのはやめておこう。
「辛いことを話させて悪かった。しかしどうしても気になることがある。なぜ目を合わせないことがそこまで淫魔族への抑止力になるのだ」
「それは、淫魔族は性行為をしないと生きていけないからです。しかも。その性行為には淫魔の相手からの愛の感情が必要なのです。情愛でも親愛でも友愛でも、愛欲でもいいのです。淫魔を求め、愛しむ心があって初めてその性行為に意味が生まれるのです。」
「なるほどね。目も合わせない性行為に愛なんてあるわけないか」
「そう言うことになります。だからこそ、クーヘン様が目を合わせてくださり、本当に嬉しかったのです」
「なんだかこの嬉しさだけで当分生きていけそうなくらいだよね!お姉ちゃん!」
「ふふっ。そうねリリ。………。ねぇ、リリ」
「分かってるよ。お姉ちゃん。私も同じ気持ち。どうせもう私達はこの愛から逃げられないもん」
え?なに?なんか2人とも雰囲気変わったね?途中からやけに目が合うたびにソワソワしてたけどもしかしなくても関係ある?
「クーヘン様、私達では力不足なのは十分承知しております。その上で、お願い申し上げます。どうか、私達2人を貴方様の旅路に連れて行ってください。私達の体も心も、命も貴方様に捧げます」
「私なんてお姉ちゃんにも遠く及ばないほど不出来ですが、それでも必ず役に立って見せます。ですので、どうか私達の命を受け取っていただけませんか!」
重い重い!!え?俺らってただテーブルを囲んで話をしただけだよね?急に2人分の人生背負うことになったんだが!?これ絶対拒否できないじゃん!拒否したら100%病むじゃん!
クソッ!たぶん500年ぶりの会話だったからどこかでミスったんだ。こんなことなら話し相手くらい作るべきだった…。
ふー。落ち着け。俺はアマ・クーヘン。悪の親玉になる男であり、夜の帝王である吸血鬼だ。将来的には魔族共を支配するのだから、こんなところで怖気付くわけにはいかねぇ。ここでカッコよく決めなきゃ、男が廃るぜ!
「勘違いをするなよ、小娘ども。俺をそこらの凡百の支配者と一緒にするな。俺に支配されるのなら、俺に心を預けるのなら、捧ぐだけではダメだ。俺がお前らに心を預けたくなるほどに愛させてみろ。一方的な愛などつまらん。双方向の無条件の愛こそが強者へ至る道だ。俺たちは強くなるのだ。だから、ララ。リリ。俺の家族になれ」
決まった…。最高のキメ顔とイケボで決まった…。最後の方はもう自分でも意味がわからなかったが、ようは俺が特別であることが重要なのだ。支配者と被支配者が家族になるだなんて聞いたことないしな。あとまぁ、家族ってのは良いもんだ。
さて、ララとリリの様子は…?
泣いてるーー!?!?嘘!?そんな嫌だった!?俺、神様が母さんになってくれて嬉しかったからそれを真似たんだけど…。幸せを感じたから行けると思ったけど、やっぱりあの神様だけがおかしかったのか!?(失礼)
「あーー。ララ、リリ。嫌なら忘れてくれて構わな…」
「お父様!」「お父さん!」
「グハッッ!!」
びっっっくりした!2人が突っ込んできた。てかララさん?角が刺さってます。具体的には右胸に刺さってそのまま貫通してます。吸血鬼じゃなかったら死んでるよ?あとリリさん?抱きしめる力が強すぎます。嫌な音鳴ってるよ?人体から鳴っちゃいけない音鳴ってる。あとそんなに匂い嗅がないで恥ずかしい。
まぁ、でも。こいつらは幼いくせに理不尽な目に遭ってきたんだろう。年頃なんだし、甘えたい盛りだったはずだ。なんか幸せそうな顔してるし、暫くこのままでいるか。やっぱり家族ってのは良いもんだよな。うん。
結局それから1時間くらい抱き付かれてた。途中で頭撫でたらさらに抱きしめる力が強くなった。死ぬわ。
どうしよう、母さん。無事に2人支配できたけど、その2人に殺されそうです。