聖魔吟戦/異世界転生した俺はカード知識で無双したかった…   作:レオニス

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信徒たちよ、伝説に挑め


第4話:【速徹】。戦闘時、スピードをパワーの代わりに扱ってもよい

「着地後に伝説の三淫魔・アスタロトの【鼓舞・全2】の効果が適応されるわ!このカードが場に存在する限り、自陣にいるすべてのクリーチャーに+2/+2/+2の修正を与える!」

 

アストの宣言に呼応するかのように伝説の三淫魔・アスタロトから放たれた光に当たった他のクリーチャーが淡い光を放ち始める。

 

 伝説の三淫魔・アスタロト:9/14/16

 レッサーサキュバス:4/5/6

 サン・イリアの兵士:4/5/3 魅了状態

 サン・イリアの守護騎士:6/8/4 魅了状態

イリアス教会の修正もあいまって、すべてのカードがレガシー並みのステータスを誇っている。

思わず目を背けたくなる程の絶望的な盤面。

 

「こりゃ終わったな、姉貴の勝ちだ。風呂入ってくる」

 

モリーンが立ち上がり、帰る支度をし始めた。

というか、その常套句ってこの世界でも有効なのか。

 

「なぜ終わったと判断できる?行動可能なのは前のターンに出していたレッサーサキュバスだけなのだろう?」

「伝説の淫魔・アスタロトは【速攻】を持ってる。だから、出したターンでも効果を使えるし、攻撃できるんだよ」

「しかし、それでもパワーの合計は13、サクラを堕とすのにはカウンターが1足りんぞ」

「いえ、そうはならないのよ……なぜなら、【速徹】を持つこのカードがバトルする時、スピードの値をパワーの代わりとして扱うから」

 

ギャラリーの声に応えつつ、アストの右腕がゆらりと持ち上がる。

突きつけられた人差し指が俺の胸を刺し貫くかのようにピンと伸ばされた。

 

「というわけで……バトル!攻撃可能なクリーチャーが複数体存在する時、スピードの高い順から攻撃を行う!よって……私は伝説の三淫魔・アスタロトでサクラに直接攻」

「対応する」

 

勝ち誇るアストのセリフを切り捨て、胸の前にマジックカードをかざす。

 

「対応する。MP3+5を払い、手札から【全体化】を適応したサポートカード:スロウを発動する。通りますか?」

「時魔法!?!?」

「効果を説明する。敵全体にスロウカウンターを3つ乗せ、そのスピードを半減させる。そして【魅惑】と【速徹】が適応されている伝説の淫魔・アスタロトの攻撃によって、俺に載せられる魅了カウンターの数は16から8に減少する」

 

俺を堕落させんと疾駆する伝説の淫魔に時の網が絡みつき、その動きを鈍らせる。

それに呼応するかのようにアストの指がぴくりと震え、第二関節が折れ曲がった。

 

「くっ、通るわ!でも、半分は受けてもらう!!」

「もちろんだ、【魅惑】の効果により、魅了カウンターを8個追加し、現在13。」

 

慣れた手つきで20面ダイスの13の面を上にする。

 

「今度はスピードが3になったレッサーサキュバスで直接攻撃!魅了カウンターをさらに3個おいてもらうわ!」

「これでカウンターは16」

 

再び20面ダイスを手に取り、16の面を上にする。

 

「惜しかったな、俺の心を奪うには一歩足りなかったようだ」

「くっ……エンドよ。魅了カウンターを兵士と守護騎士から1つずつ取り除く・・・・・・魅了状態がとけた兵士をそちらの場に返すわ」

「了解した。【鼓舞・全2】の効果適応外となったため、ステータスは2/3/1に戻る。……よく帰ってきたな、色んな意味で」

 

魅了が解けた兵士が俺の場に帰還した。

さあて、これからお前にはキリキリと働いてもらおうか。

と内心で独りごちたところで、アストの声が俺の耳に入ってきた。

 

「でも……私の場は万全よ。決着まで1ターン伸びただけにすぎないわ!」

 

努めて冷静に言い放ったその声音に、俺はにやりと笑ってみせる。

その裏にある一抹の不安を肯定するかのように─────

 

 

 

 

 

「俺のターン、レディ、TP6、ドロー、スタンバイ、メイン」

 

ドローカードを見た瞬間、自分自身の口角が上がるのを感じる。

────いい引きだ。ここできてくれたか。

 

「俺は1コストを支払い、種族:淫魔を宣言し、手札のサン・イリアの牧師の効果を起動する。手札のこのカードを追放し、場の宣言した種族のクリーチャー及び人間のクリーチャーに信仰カウンターを1つずつ載せる」

 

牧師の命懸けの布教が淫魔の館に集ったものたちの心を揺さぶる。

これにより、アストの場のすべてのクリーチャーにイリアス教の信仰カウンターが乗った。

その一部始終を見届けた赤髪の淫魔の眉間に皺が刻まれる。

 

「さらに0コストでイベント:白の洗礼をプレイ。通りますか?」

「……知らないカードね。効果を確認させて」

 

そりゃそうだろう。だって、1か月前にサン・イリアで先行販売され始めたカードだからなコレ。

 

「承知した。これは【コストX】を支払い発動できる。場の信仰カウンターが乗ったコストXのクリーチャーを墓地に送り、コストX以下で同じ種族と特性:イリアス教を持つクリーチャー1体を手札・デッキから召喚する。このコストはTPの他に場の信仰カウンターを取り除くこともできる。だ」

「銀弾運用のカード……?いえ、まさか!?!?」

「そのまさかさ!!俺はTP1と信仰カウンター7を取り除き(コストに)、効果を起動する!墓地に送るのは、伝説の淫魔・アスタロトだ!!」

 

赤髪の伝説が光の中に消える。彼女の加護もまた場から消滅する。

 

「そして、デッキから同じ種族を持つ特性:イリアス教のクリーチャー、シスター・サキュバス(・・・・・・・・・)を召喚する!!」

 

伝説と入れ替わりに場に現れたのは、紫色の法衣をまとい胸の前で手を合わせたサキュバスの姿。

その手のひらには銀のロザリオが収められており、紫の角と尻尾が生えていること以外は敬虔なシスターそのものに見える。

その姿に淫魔(サキュバス)姉妹(シスター)から非難が殺到する。

 

「イリアスを信仰する淫魔ですって!?」

「おいおい、まじかよ……とんだ恥知らずもいたもんだな…!!」

 

まあ無理もない。彼女の存在が公になった時、同じような反応が人間からも妖魔からも出たのだから。

だがそれは人が、妖魔が、彼女達の存在を認知していなかっただけのこと。

彼女()はもう数百年も前から歴史の影に存在していた。

 

大異変により信仰基盤が揺らいだイリアス教は自身の生き残りをかけ、歴史の闇に葬られていた彼女達を向かい入れる決心をしたのだ。そうして、彼女たちは歴史の表舞台に姿を現すこととなった。

 

「気持ちはわかるが、彼女達にも相応の歴史と覚悟がある。頭ごなしに否定するのはよしてくれ」

 

追い詰められた者はなんでもする。何にでも縋る。

それは人でも妖魔でも変わらない。

その生き汚なさが今、彼女達を顧みもしなかった高貴なる者達に牙を向く。

 

「さて、このカードは他の淫魔同様【速攻】を持つ。よってこのターンに効果を起動できる。俺はシスターサキュバスをタップし、効果を起動!」

 

レディフェイズまでの行動不能を意味するタップを行い、彼女に課せられた使命を吟ずる。

人魔共存社会におけるイリアス教が否応なしに必要とする崇高な使命を。

 

「彼女が司る御技は慰問!魔の快楽に心奪われしものに人の心を呼び覚ます矯正者!場のクリーチャー1体から快楽状態異常系のカウンターをすべて取り除く!俺はサン・イリアの守護騎士の魅了カウンターをすべて取り除き、その心を取り戻す!」

「くっ……魅了が解けた守護騎士をそちらの場に戻すわ」

 

淫魔の聖職者に導かれ、信仰を取り戻した守護騎士が俺の場に帰還する。

これで淫魔の館に誘われた男達はすべて、俺の元に舞い戻った。

 

そして、畳み掛けるようにこのデッキの切り札を起動する。

 

「さらに4コスト。俺は正規コストで『魔王法典』を発動する!」

「なんですって!?」

 

俺の場に現れたのは黒で染められた禍々しき写本。

長らくの間、忌むべき書物としてイリアス教徒達に誤解されてきた立法書だ。

 

「いいだろ?俺の愛読書だ」

 

魔王法典とは『妖魔吟戦』の創始者にして『文王』と謳われた四代目魔王が制定した妖魔を統べるための法典。多種多様に渡る妖魔達を武力ではなく、規律と法の名のもとに統べるために編み出された珠玉の織物。

イリアス法典と双璧を成す、この世界を回す制度そのもの。

 

「我が敬愛する魔王陛下と創世の女神の名の元に宣言する。この吟戦において、お前の切り札はもう光らない(・・・・・・・・・・・)……バトルに入る」

 

さて、反撃開始だ。

まずは|手札に握っているであろうMP回復のアイテムを潰しに行くか《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。

 

「プレイ、アイテムカード:ブーストドリンク。このカードはこのターンの魔法優先権を放棄することで、バトルフェイズ中に速攻タイミングかつ0コストで発動できる」

「……っ!」

「SP5を回復する。さあ、お前のターンだ」




かの『文王』は糸だけでなく法をも編む。
気づいた時には、誰も彼も契約の糸で雁字搦め……
勿論、我もその一人よ。全く、窮屈なことこの上ない────

──────多腕の戦神・シヴァ
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