詐欺占い師と米花町   作:罠ビー

25 / 25

 瞳の中の暗殺者 前編。
 コレと天国へのカウントダウン。謎めいた乗客、バトルゲームの罠あたりで悩んでましたを今日出せなきゃしばらく書き溜め期間かと思ったのでギリギリ出せてよかったです。


詐欺占い師とNeed not to know

 

 

 美國島から戻ってしばらく。数日営業をしていなかったとて私の営業の集客は変わらない。占いに頻繁に来る常連客はそんなに多くないし、宣伝などを積極的に行っているわけでもない。言ってしまえばフリーターと大差のないような生活である。

 自分の人生を真剣に生きていない⋯⋯千速さんあたりはそうでも言いたいのだろうと感じるが、自分が振りまく呪いへの処世術という事で自分を納得させておくことにする。

 

 

「リンネ、ハアハア、ここに居たか」

 

「珍しいわね松田君。そんなに全力で私のところまで来るなんて。それにお連れさんも珍しい」

 

 

 そんな私のもとに血相を変えて飛び込んできたのは松田君であった。後ろからは萩原君ではなく珍しくワタルさん、伊達刑事と以前ホテルで出会った高木刑事が連れ立ってきていた。

 松田君だけならまだしも、沢山連れ立ってきた刑事たちに動揺をしなくもないが不遜な態度で押さえつけることにする。

 

 

「頼みがある」

 

「頼み事ならそれ相応の頼み方があるんじゃないかしら」

 

 

 いつものやり取りのように私が口にすれば松田君はそれもそうだなと一歩下がり地面に膝をつく。……マジな奴だ。3年前自分の命が助かった時にしなかった土下座を松田君は私に対してやってのける。

 念願の松田君の土下座姿であるがいたたまれなさが強い。そして何より私が松田君のプライドをへし折って引き出した土下座じゃない。

 

 

「松田!!それは捜査情報の漏洩じゃないか」

 

「うるせえ!!Need not to know なんか知った事かよ!!捜査が進展しねえし仲間が撃たれてんだぞ。何かしら手掛かりが掴めるなら何でもやるだろ」

 

 

 目の前で膝をついた松田君に対してお前考え直せと肩を揺さぶる伊達刑事。高木刑事は先輩二人の様子にオロオロとしている。

 これは私が勝ったから松田君にさせてる土下座ではない。しかしそうでない理由で松田君が私に頭を下げているという事が納得がいかない。私は腰に手を当て蔑む様に言い放つ

 

 

 

 

 

「ハァ⁉何そのやっすい土下座」

 

 

 私のその言葉に空気が固まる。まさかそんな事を言われるとは思ってもなかったようだ。松田君はキッと私を睨み伊達刑事は完全に顔に青筋が滲んでいた。

 

 

「てめ、松田がどんな思いで」

 

「そんな思いだからよ。そんな独りよがりな土下座じゃ負けてあげるわけないでしょ。頼みごとがあるなら出すもの出しなさいな」

 

 

 営業妨害よ、公衆の面前でと吐き捨てれば伊達刑事にはどの口がとでも言いたげだ。しかし松田君は姿勢を整えると即金で10万円を私の机に叩きつけた。

 

 

「これでいいだろリンネぇ。吹いたんだから何もわからねえとか言うんじゃねえぞ」

 

 

 ニヤリと青筋を浮かべながら私を睨み付ける。そう、この松田君を土下座させたいのだ。自分から投了するように下げる土下座では私が勝った気になれない。万策尽くし悔し気にやってくれないと困る。

 

 

「それで松田君を視ればいいわけ?」

 

「ちげーよ。占ってほしいのは毛利の嬢ちゃんだ」

 

 

 曰く蘭ちゃんは佐藤刑事の撃たれた現場に居合わせ、もしかしたら犯人の顔を見てるかもしれないという事なのだ。しかし当の蘭ちゃんは事件のショックにより記憶喪失。

 逆行性健忘⋯⋯いえどちらかというと解離性健忘に近いだろう。事件のストレスからその記憶を切り離してる。長期的な虐待で生じたりするいわゆる二重人格。それのごく一時的なものだと考えられる。まあ私は臨床経験が無いから適当な当てはめではあるが。

 

 

「だけれど、という事は今の蘭ちゃんは要警護対象でしょう。私みたいな不審者が会えるの?」

 

「だから俺と伊達で立ち会うし居るなら毛利のおっさんや妃先生にも立ち会ってもらう予定だ」

 

 

 げ、妃先生か。嫌だがここまで聞いた以上引けないのも事実である。代金分の仕事はしないといけない

 

 

 

 

 

 

 

 後日、毛利探偵事務所に向かって私は松田君と伊達刑事の後ろを歩いていた。流石に仕事着や松田君と並ぶと美人局のように見える怪しい恰好ではなく色合いも色素の薄いラフな格好だ。極力威圧的な要素は省いている。

 

 

「お前そんな格好出来るんだな」

 

「それくらいの分別はあるわよ」

 

 

 軽口を言う松田君の脛を蹴っ飛ばそうとするがひょいと躱される。そして探偵事務所の下で小太りな刑事さんに松田君は何やら言っている。ふむ、アシストするか。

 

 

「初めまして、小五郎さんの知人で蘭ちゃんとも一応知り合いなんですが。松田君同伴でいいのでお見舞いできませんか?」

 

「⋯⋯という訳だ千葉。俺と伊達も相席するから構わねえか」

 

 

 隣で松田君はギョッとした顔をしながら話を通すことに成功する。しかし障害はここだけではない。

 探偵事務所に入ればそこにいたのは毛利さんに妃先生、園子ちゃんにコナン君、そして表情に不安と申し訳なさを顔に滲ませる蘭ちゃんだった。

 

 

「⋯⋯リンネちゃん?」

 

「急な来訪ごめんなさいね毛利さん。蘭ちゃんのお見舞い。いいかしら?」

 

「⋯⋯ダメだ」

 

 

 まずは一番この場で発言力が強そうで、私への警戒のハードルが低そうな毛利さんに声をかける。しかし毛利さんは首を横に振った。⋯⋯困った。そうなると完全に打つ手はない。私がビジョンに潜るにはそれなりに凝視する必要がある。このまま行うと蘭ちゃんが怯えてさらに立場が悪くなる危険性がある。

 打つ手がない。出直して車内とかから盗み見るかとでも画策しているときに声がかかる。

 

 

「リンネさん。私を占ってください」

 

 

 強い口調が聞こえた。それはこの場で毛利さんより発言力のある蘭ちゃんの言葉であった。

 蘭ちゃんが私の事を覚えているわけがない。であるならばコナン君あたりにこっそり聞いたのだろう。蘭ちゃんの言葉に当のコナン君は驚いている様子だが。

 

 

「蘭、お前」

 

「私は記憶を取り戻したいんです。その手掛かりになるならリンネさん、お願いします」

 

 

 それはとても真っすぐな言葉で、芯のこもった眼で私を見つめていた。松田君の土下座よりいいものを見せてもらっている気がする。

 

 私は蘭ちゃんの正面に座り蘭ちゃんを凝視しながらカードを拡げ混ぜていく。そのまま彼女のビジョンに潜り込む。そしてすぐに違和感を襲う。浅い。とにかく潜れる先が浅くすぐに吸い寄せられるようにビジョンに繋げられる。

 

 それはコナン君と蘭ちゃんの二人が逃げ込んだ噴水。そして噴水から水が吹き上がるシーンとそこから蘭ちゃんを狙う拳銃。

 

 犯人を視ようとするが犯人の姿が視えない。いるはずなのに視えないのだ。そして困惑している間に私の立っている噴水の足元が無くなるような形で落とされる。そのままヴィジョンから追い出される。衝撃でガンと机に頭をぶつける。

 

 

 あまりに、あまりに情報が無い。

 

 浅いのは分岐と選択の幅、そして今の蘭ちゃんに背景情報が無いからだ。だからあの場面に到着する。そしてあの場面は今の蘭ちゃんにとって一番衝撃的な場面である。だからあの場面以外に辿れない。

 そして犯人が視えないのも簡単だ。私のヴィジョンは場所か人に依存している。であるならば今の、佐藤刑事が撃たれた衝撃で解離性健忘に陥っている蘭ちゃんの記憶から覗けるわけがない。そして最後のはきっと今の蘭ちゃんが消える⋯⋯というよりも解離性健忘からの復帰によるものだろう。多分その衝撃で私は無理やりはじき出された。

 

 結果頭がガンガンと痛むし目が霞む。おそらく今はもう一度潜るのは困難だろう。とりあえずこの場は繕わないといけない。無様をさらすのが嫌だし、蘭ちゃんに負担をかけるのは本意ではない。

 

 私はカードを2枚引く。そしてそれを表にする。

 

 

「『審判』と『星』ね。審判は変化とかの意味もあるけれど目覚めとして取った方がいいかしら。おめでとう蘭ちゃん、貴女の健忘は近いうちに治るわ」

「けれど解離が劇的に治るのよ。病理的に考えるならおそらく強いストレスに暴露されるのでしょうね。そして『星』は水に由来するカードよ。特に雨、いえ噴水かしらね。とにかく水が強くかかわっているわ」

 

 

 こんなもんでいいかしら。と私は立ち上がる。蘭ちゃんはありがとうございますリンネさんと律儀に礼まで行ってくれる。自分の不甲斐なさに吐き気がしてくる。

 

 

 ごめんなさい毛利さん。無理を言ったのにこのざまで。蘭ちゃんを心配させるのは本意ではないから帰るわ

 

 

 すれ違いざまに毛利さんに囁けば事務所を後にする。何とか階段を下りるまでは虚勢を張り続ける。くらくらするし血圧が下がっている感覚。環状線の時もそうだったなと思い出される。

 

 

「おいリンネ、大丈夫か」

 

「ダメ。救急は必要ないからとりあえずどっかに寝かしといて」

 

 

 

 

 

 目が覚めると公園のベンチの上だった。頭はぼんやりとはするが活動に支障は無い程度まで回復している。ゆっくりと身体を起こせば水のペットボトルが飛んでくる。

 反応が遅れてそれを身体でキャッチする。乱暴ねと思うがありがたいそれを口に含む。冷たい水が喉を通り抜けて行くのが心地よい。

 

 

「んで、あれで全部なのかよ」

 

「ええ、あれで全部よ。蘭ちゃんは記憶を取り戻すけど噴水の場面、蘭ちゃんは銃を突きつけられる。強いストレスに暴露される事が引き金ね」

「松田君のやっすい土下座に報いる事が出来なくて悪かったわね」

 

 そう言いながら私は10万円を返そうとする。しかし松田君はその10万円を受け取らない。

 

 

「やっすいプライドだなリンネ。いらねえよ。俺がてめえで払った金だしそれをどうするも俺の自由だろ。……吹いたんだから日和るなよ。悪あがきでもなんでもして最後まで付き合えよ」

 

 

 わかりやすいまでの挑発。そしてそれは誠実を盾にこの案件を上がろうとした私に対してグッサリと残酷な程突き刺さった。

 顔が紅潮する。屈辱という言葉はきっとこういう感情を表す言葉なのだろう。

 

 

「上等じゃない松田君」

「私をノせた責任は取りなさいよ」

 

 

 




 この人劇場版すると未来視の変な一面が増えてくな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

マーリンなオリ主と降谷零(作者:ラムセス_)(原作:名探偵コナン)

FGOのマーリンに成り代わった転生オリ主が降谷さんとアヴァロンでまったりするお話。▼※pixivにて投稿済み▼


総合評価:4555/評価:8.24/連載:14話/更新日時:2026年10月05日(月) 10:58 小説情報

胡散臭いTS美少女占い師は今日も路地裏で笑う(作者:高丸)(オリジナル:現代/日常)

転生したら怪異が存在する世界にいた主人公が趣味で占い師をする話▼【挿絵表示】▼


総合評価:5844/評価:8.1/連載:9話/更新日時:2026年07月01日(水) 22:07 小説情報

うす汚ねェクルタ族の血を増やしてやるし!(作者:黒岩)(原作:HUNTER×HUNTER)

なんか~あーしが旅出てたらなんか故郷滅んでてマジヤバイんだけど~……ウケない。とりま故郷再興っしょ!▼クルタ族のギャルでグルメハンターが適当に過ごします。


総合評価:7592/評価:8.32/連載:18話/更新日時:2026年06月13日(土) 18:00 小説情報

ハスターなオリ主とドラゴンボール(作者:ラムセス_)(原作:ドラゴンボール)

旧支配者ハスターになった転生者が、ドラゴンボール世界に紛れ込んで滅びがちな人類の守護を頑張る話。▼拙作「ハスターなオリ主と米花町」のスピンオフ。▼なるべく本編を読まなくても読めるようにするつもり。▼本編「ハスターなオリ主と米花町」▼https://syosetu.org/novel/384972/


総合評価:8233/評価:8.09/完結:52話/更新日時:2026年06月07日(日) 20:41 小説情報

とある付与師の帰還録(作者:さくさくの森)(原作:HUNTER×HUNTER)

剣と魔法のファンタジー世界の住人(超上澄み)がハンター世界でなんやかんや頑張りながら、元の世界への帰還を目指す話。


総合評価:6852/評価:8.3/完結:69話/更新日時:2026年10月04日(日) 07:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>