機動戦士ガンダム 宇宙世紀0010 重力より重い住宅ローンに魂を引かれた男 連邦軍の社畜、有給申請を宇宙の塵にされる   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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デブリ課、最期の日、あるいは効率の祭壇(※なお、私物を詰めた段ボールの一番上には、前々回サハラに見つかったあの水着雑誌が載っている)

宇宙世紀0010年、秋。月軌道上にある、いつもエアコンの調子が悪いボロステーション「ISPV 7」。

 

そのデブリ課のオフィスに、お上のハンコが100個くらい押された衝撃の紙切れ(通達)が届く。

 

地球連邦政府・宇宙開発局の偉い人たちは、ピカピカの木星往還船「ジュピター・ワン」の莫大なガソリン代(予算)を確保するため、金にならない不採算部門の徹底的な「合理化(=要するにリストラ)」を決定。その栄えある(?)クビ確定リストのトップバッターに挙げられたのが、ハチローたちの所属する「デブリ課」だったのだ!

 

「はーい、みんな手を止めて聞いておくれ。お上のケチなエリート官僚ども曰く、うちみたいな下請けの零細部署を維持するコストは、木星大計画を進める上での『目障りな予算のノイズ』なんだってさ。これからは、宇宙のゴミ拾いは連邦軍の警備隊が『ついでに大砲の的にする軍事演習』として片付けるか、あるいはAIを積んだ全自動のお安いドローンに全部丸投げするっていう、素晴らしい方針らしいよ。アハハ、全員クビだってさ!」

 

チームの姉御肌であるフィーが、タバコを咥えたまま突きつけてきた書類には、冷淡なフォントで「解散勧告(明日から来なくていいよ)」の文字が並んでいた。

 

サハラは「そんなの絶対おかしいです! 私たちの仕事がなかったら宇宙はゴミだらけになります!」と机を叩いて大抗議の声を上げるが、ステーションの管理官(お上のエージェント)たちは、もはや彼女たちを「生身の人間」としてではなく、エクセルの帳簿上の「一刻も早く消したいマイナスの赤字(負債)」としてしか見ていなかったのである。大人のそろばん弾きは本当に容赦ない!

 

そう、デブリ課が直面しているこの非情な危機は、かつて大昔の西暦の時代に、イギリスのサッチャー首相やアメリカのレーガン大統領といった偉い人たちが、自国の死にかけた経済を「若返らせるぜ!」という名目で用いた、超ドライな市場原理主義(コストカット至上主義)の、スケールがデカい宇宙版だったのだ。

 

地球連邦政府は、この「効率の祭壇(=金にならない奴は全員ゴミ)」という冷酷なシステムを宇宙空間へそのまま持ち込んでいた。

 

連邦は木星開発という「国家のピカピカのメンツ(威信)」を最優先し、これまで地味ーーーに、そして命懸けで宇宙の安全を陰で支えてきたおじさんデブリ回収員たちを「給料が高くてコスパの悪い旧時代の遺物」としてバッサリ切り捨てる。

 

かつて大昔の英米の偉い人たちが、鉄道や水道といった大事な公共サービスを民間に叩き売って目先の財政を黒字に見せかけたように、連邦もまた、現場のガチな安全と労働者の有給休暇(尊厳)を人質にして、ジュピター・ワンという「見て見て! 凄いでしょ!」という壮大な虚飾(ハリボテのプライド)を買い支えているのである。現場の涙で洗うロケットなんて、燃費が悪いぞ!

 

解散が正式決定し、自分のデスクから「マイカップ」や「怪しいフィギュア」などの荷物をまとめて段ボールに詰め始めるデブリ課の面々。

 

しかし、そんな「お荷物まとめて撤収!」の最中に、間の悪すぎる緊急サイレンが「ウー! ウー!」とステーション内に鳴り響く!

 

なんと、お上の最新のレーダー監視網をすり抜けた、超巨大な古いエンジンパーツ(廃レギュレーター)が、一般市民が満載の商業シャトルの航路に「どけどけェェ!」と超スピードで急接近するという、大惨事一歩手前の緊急事態が発生したのだ!

 

しかし、お上が自慢していた最新の自動ドローンは「うーん、それを壊すとコスト対効果(電気代)が合わないからパス」とAIが勝手に判断して作動せず、連邦軍のピカピカの哨戒艇は「あ、それ俺たちの管轄外の任務(テロじゃない)なんで」と全員スマホを見たまま完全スルーを決め込んだのである。使えねえな、お上のシステム!

 

「……チッ、あいつら揃いも揃って責任の押し付け合いかい。……おいハチ、サハラ。あたしたちがこのボロ船で今すぐ拾いに行かなきゃ、あのシャトルの客は全員、今夜のおかずになる前に宇宙の藻屑だ。1円のボーナスにもならないし、お上の公式記録にも1文字も残らない。だがな……これが、あたしたちの『プロのゴミ拾い(仕事)』だろ?」

 

フィーのその男前すぎる言葉に、ハチローとサハラは無言でニヤリと笑い、使い古された宇宙服のヘルメットを「ガチッ」と被った。

 

連邦から「お前らはもう不要なゴミだ」とクビを宣告された底辺の負け組たちが、その連邦が本来守るべきはずの「呑気な一般市民」を救うために、会社非公認の「最後の手動ダイナミック回収」へとボロ船をイグニッションさせたのである!

 

だが、最後の作業は困難の極みを尽くした。

 

最新のレーザーカッターもない、予算を削られてガソリンもカツカツの「オンボロ作業艇」での、一歩間違えたら肉片になる命懸けのスペースダイブ。

 

ハチローは、自分がジュピター・ワンのエリートお受験試験で学んだ「教科書通りの洗練されたハイテク技術」なんてものは全部ドブに捨て、このデブリ課のブラックな現場で何度も死にかけながら身体で覚えた「泥臭い職人勘(ガチ経験)」だけを頼りに、回転する巨大デブリの隙間にワイヤーをブチ込み、その不規則な大暴走を力技で見事に止めてみせたのである! 職人技、ここに極まれり!

 

おかげで商業シャトルは無傷で救われ、何事もなかったかのように「いやー、今日の機内食美味いねー」と予定通りのナウい航路を進んでいった。

 

乗客のセレブたちは、自分たちが今さっき「今日で解雇される底辺のデブリ課」という名もなきヒーローたちによって命をギリギリ繋ぎ止められたことすら、一生知ることはないのである。それでいいんだよ、男の仕事はな!

 

しかし、ボロボロになってステーションに戻ってきた彼らを待っていたのは、お上の「ありがとう!」という感謝のメダルや金一封ではなく、「会社の備品を勝手に持ち出して無断出撃するとは何事だ!」という管理官からのネチネチした激しい大説教と、予定通りテーブルにパチッと置かれた冷たい「解雇通知書(ピンクスリップ)」の紙切れだけだった。

 

「ハチローさん……。私たち、やってきたこと間違っていたんでしょうか。こんなに毎日毎日、命懸けで必死に宇宙を綺麗にしてきたのに、結局、最後はお上の都合でゴミみたいにポイって捨てられて……」

 

オフィスで段ボールを抱えながらポロポロと悔し涙を流すサハラに対し、ハチローは窓の外の、相変わらず青くてのんびりした地球を見つめながら、優しく、でも力強く答えた。

 

「……間違ってなんかねえよ、サハラ。連邦のお偉いさんが叩いてる冷たい計算機(パソコン)の画面には、1ミリも映らない『本物の価値』が、この広い宇宙には確かにあるんだ。大昔の英米の効率主義のおじさんたちが、いくら『数字と利益』で世界中を綺麗に塗りつぶそうとしたって、そこに住んでる泥臭い人間の心(プライド)までは、絶対に消去できなかったのと同じだよ」

 

宇宙世紀0010年、秋。こうして、月軌道の平和を裏で支え続けた「ISPV 7デブリ課」は、歴史の表舞台から完全に消滅し、ハチローたちは明日からの家賃を心配しながら、それぞれのバラバラな道を歩むことになった。

 

連邦がドヤ顔で推進する「徹底的な効率化(コストカット)」は、宇宙空間から「無駄な人間味(人情)」を徹底的に排除し、より冷徹で、よりお上がボタン一つで管理・制御しやすい、ただの冷たいデジタル空間を作り上げたのだ。

 

一年戦争まで、あと69年。

 

「効率の祭壇のために、現場の職人の誇り」がゴミとして切り捨てられた瞬間、この美しい宇宙はただの「利権の資源ゴミ箱」と、いつか大爆発する「戦場」へと、一気に成り下がってしまった。

 

デブリ課の解散は、人類が宇宙での「みんなで仲良く暮らそうね(共生)」という優しい夢を正式に諦め、純粋な「暴力と力」の時代へと突入したことを告げる、静かな、でも確実な終わりの鐘(弔鐘)だったのである。

 

ハチロー・アマダは、自分の私物(と隠し持っていた水着雑誌)が詰まった重い段ボールの箱をギュッと抱え、自分自身が今日から職を失った新たな「宇宙のデブリ(漂流者)」として、冷たい社会の荒波へと放り出される、なんとも言えない世知辛い感覚を全身で味わっていたのである。ハチロー、とりあえず明日一緒にハローワーク行こうぜ!




この「公共の安全や福祉を度外視し、数字上の効率のみを追求して組織を解体・民営化する」手法は、20世紀後半に英米で吹き荒れた「サッチャリズム」や「レーガノミクス」にその原型がある。彼らは「小さな政府」を掲げ、鉄道や医療、清掃といった不可欠な公共サービスを次々と民営化・効率化し、その過程で多くの熟練労働者を路上へ放り出した。結果として得られたのは、一部の投資家への利益と、崩壊したインフラ、そして拡大した格差だった。
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