機動戦士ガンダム 宇宙世紀0010 重力より重い住宅ローンに魂を引かれた男 連邦軍の社畜、有給申請を宇宙の塵にされる   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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暴露、あるいは構築された真実(※なお、ハチローがオープン回線にデータを不法投棄した時、間違えて昔フィーさんが隠してた『給与明細の裏のポエム』も一緒に流しそうになっていた)

宇宙世紀0010年、春。往還船「ジュピター・ワン」の歴史的な出港まで、残りたったの72時間。

 

月軌道上の空気は、緊張感で胃がキリキリ痛むほどパンパンに張り詰めていた。

 

ハチローは船内のコクピットで最終調整(=要するに内装のボタンがちゃんと光るかの点検)を行っていた最中、お上の超厳重なはずの極秘回線からピピッとお漏らしした、奇妙な暗号通信を偶然傍受してしまう。

 

それは、地球連邦軍の偉いおじさん(高官)と、かつて自分たちを襲ってきた超過激派テロ組織「宇宙防衛戦線」の黒幕(幹部)が、ジュピター・ワンの「ちょこっとした破壊工作」を巡って、まるで居酒屋の割り勘のようにネチネチと交渉している、とんでもない悪事の記録だったのだ!

 

「……おい、予定通りロケットの『第3ブースター付近』で、派手で見栄えのいい小規模な爆発を起こせ。死ぬのは市民権を持ってない下請けの作業員(代わりはいくらでもいる)だけでいい。これさえテレビで大々的に流せば、世間は『テロ怖ーーい!』ってなって、俺たちが宇宙での軍備をめちゃくちゃ増強するための数兆ドルの予算案は、お上の議会で確実に100%一発で通るからな。頼んだぞ」

 

通信を聞いたハチローの背筋に、氷水を一気に流し込まれたような冷たい戦慄が走る。

 

テロリストたちは、連邦の独裁をぶっ倒そうと本気で戦っていたわけではなかったのだ。彼らの上層部は、連邦政府が「自分たちの警察権力と軍事予算をさらにガッポリ増やすため」に、裏でエサをやって飼いならしていた、都合のいい「プロのやらせ敵(サクラ)」として機能していたのである! 大人のマッチポンプは汚すぎる!

 

そう、連邦政府がこの「自分で火をつけて、自分で消してヒーローになる」という危機のマッチポンプを平然と行う手法は、かつて大昔の西暦の時代に、イギリスやアメリカといった大国が、世界中の主権(覇権)を自分のものにする過程で、幾度となく裏で繰り返してきた「お上の暗黒のビジネス技術」の完全なコピペだったのだ。

 

地球連邦政府は、この「やらせの恐怖政治」を宇宙スケールで完璧に完成させていた。

 

連邦は木星開発に文句を言う反対勢力を「話し合いの通じない残虐なテロリストどもだ!」とテレビのニュースで徹底的に悪者に仕立て上げ、その脅威を「危ないですよ!」と大げさに強調することで、宇宙空間における恒久的な軍事警察権(=要するにお上がいつでも誰でも逮捕できる権利)を合法的に確立しようとしているのだ。

かつて大昔の英米が「正義の民主主義を守るためだ!」と大義名分を掲げて、他国の石油や主権を合法的に侵食していったのと同じように、連邦もまた「宇宙の平和と安全!」という綺麗でナウい看板の裏側で、自らが裏で育てた「お抱えの敵」を上手に利用して、宇宙(ソラ)の全域を鉄の規律(お上のワガママ)でガチガチに縛り上げようとしているのである。お上のやるプロレスは本当に質が悪い!

 

さらにハチローは、かつて自分たちを「お前らはコスパの悪いゴミだ」と見下していたエリートのハキムが、この胸糞悪い工作の書類の裏にガッツリ関わっているという、これまた最悪の事実に気づいてしまう。

 

ハキムにとって、自分の引き裂かれた母国の復讐を果たすための道は、連邦を外側から正攻法で破壊することではなかったのだ。連邦という巨大な「暴力のシステム」を、自分の手でより強固に、そしてより残酷に100%完成させてあげることで、その歪んだシステムの重圧によって、内側からすべてをドロドロに焼き尽くして自滅させるという、ガチでストイックすぎる「暗黒の二重スパイ」としての覚悟だったのである。ハキム、お前どこまで闇が深いんだよ!

 

「……アマダ。今更そんな国家の真実を個人のパソコンで知ったところで、一体何が変わるというんだ? この広い宇宙は、最初から何百年も前に英米の偉い奴らが書いた筋書き(シナリオ)通りに綺麗に動いているんだよ。正義も、悪も、テレビのニュースも、すべてはお上の予算と権力を都合よく動かすための『ただの演出(お芝居)』に過ぎないのさ」

 

カチリと、ハキムの冷たい銃口がハチローのデコに向けられる。

 

だが、その絶体絶命の瞬間、ハチローの脳裏に真っ先に浮かんだのは、連邦のカッコいい嘘のニュースでもなければ、ハキムの背負う重苦しい憎しみの歴史でもない。あのデブリ課の、カップラーメンの空き缶が転がり、エアコンがいつも壊れていて、でもみんながゲラゲラ笑っていた、あの雑然とした「最高に温かい日常」の景色だったのだ!

 

「へっ……だったら、俺は俺のやり方で、その綺麗なシナリオに『ゴミ』をブチまけてやるよ!」

 

ハチローは、ハキムが一瞬目を見開いた隙に、手元の通信ドローンのスイッチを強引にイグニッション!

 

傍受した連邦の黒い裏取引の音声記録を、月面都市の一般市民が見ているオープン・チャンネル(掲示板)へ、文字通り「追跡不可能な宇宙のデータゴミ」として一気に不法投棄するように全世界発信したのである!

 

それは、かつてデブリ課のブラックな現場でフィーさんから叩き込まれた「お上のレーダーに引っかからない、汚いデータの流し方(裏ワザ)」を120%応用した、底辺のゴミ拾い員としての執念のカウンターアタックだったのだ! ざまぁみろ、お上ども!

 

しかし、暴露された衝撃の情報は、連邦政府の「そんなのウソでーす!」という徹底した報道管制とネットの削除祭りによって、「テロリストがAIで作った悪質なディープフェイク(デマ情報)ですね」として、秒速で処理されてしまった。

 

月面の呑気な民衆の多くも、「えー、そんな陰謀論より、明日のジュピター・ワンの金ピカの出港式(お祭り)の方が大事だしー」と、連邦の綺麗な物語をあえて信じることを選んだのだ。悲しいかな、人間は重苦しい真実を知るよりも、木星への輝かしい夢(ファンタジー)を見続けている方が、はるかにお気楽で心地よいからである。大衆の心理はいつの時代もドライだ!

 

しかし、ハチローが放ったその小さな「データゴミ(ノイズ)」は、確実に連邦のピカピカの土台の裏側を、みしみしと蝕み始めていた。

 

ステーションを去る直前、荷物を持って私服に着替えた姉御肌のフィーは、お上の手によって次々とネットから消されゆくその暴露情報の残骸を、画面の隅で偶然見つけ、フッと不敵に笑って静かにタバコの煙をふかした。

 

「……ふん、やるじゃないの、ハチロー。あんたがやったゴミ拾いの逆襲なんて、このクソ広い宇宙全体から見れば、一瞬で消える線香花火みたいなちっぽけな抵抗さ。だがね……その一瞬の熱い火花こそが、あいつらが作った『完璧で美しい嘘の歴史』の装甲板に開いた、記念すべき最初の風穴なんだよ」

 

宇宙世紀0010年。ジュピター・ワンの出港まで、あと本当に残り1日。

 

地球連邦政府は、テレビの前で「テロの卑劣な脅威を、みんなの団結で乗り越えたぞ! 人類の勝利だ!」とドヤ顔で素晴らしい祝賀ムードを演出し、世界中でパレードの紙吹雪を煽り立てていた。

 

大昔の英米からしぶとく引き継がれた「欺瞞(ウソの平和)」という名の強固な鎖は、今や地球から木星までの数億キロの航路を、逃げ場のない鉄の規律でガチガチに繋ぎ止めようとしている。

 

一年戦争まで、あと69年。

 

「現場の男によって暴露された不都合な真実」を、連邦政府は自慢の権力と物量で力ずくで踏み潰したが、その理不尽な圧力は、宇宙市民たちの心の奥底に「連邦の言うことって、本当は全部ウソなんじゃねえの……?」という、消えない拭い難い不信感のドロドロした澱(おり)を、静かに、でも確実に沈殿させていった。

 

この澱こそが、後々の時代にサイド3(ジオン公国)のギレン・ザビたちが叫ぶことになる「宇宙移民者の解放! 連邦を打倒せよ!」という過激なプロパガンダに、全宇宙が「そうだ! あいつらは信用できねえ!」と大賛成してしまう、暴力的なまでの説得力を与える最大の引き金(原因)になっていくのである。歴史の導火線には、すでにハチローが火をつけていたのだ!

 

ハチロー・アマダは、銃口を収めて後ろで見つめているハキムの、その複雑で冷たい視線を背中にガツンと感じながら、自らが乗るべきジュピター・ワンの、一番重要なメインパイロットのコクピットへと真っ直ぐに向かった。

 

宇宙服を着た彼の手は、もはや恐怖でも孤独でも、1ミリも震えてはいなかった。彼の胸には、デブリ課のボロレンチの重みが、確かに残っていたからである。ハチロー、その最新のコックピットのシート、デブリ課の座布団敷いて運転しな!




この「自国の資産や国民を犠牲にしてでも、戦争や介入の正当性を捏造する」手法は、20世紀の英米にまつわる数々の疑惑――「ルシタニア号事件」から、冷戦期の「トンキン湾事件」、そして中東介入の口実となった「大量破壊兵器の虚偽情報」――にその原型がある。彼らは国民の「恐怖」を煽ることで、本来なら反発を招く軍事費の膨張や、市民の自由を制限する法案を次々と通過させてきた。
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