今回から話が一気に動きます。
ついに、主人公がオールマイトとエンカウントします。
どうも、志良木瑠奈です。今日も弧太朗がイケメン。
今は、医学部に通う大学2年生です。
去年の夏、とうとうお酒が飲める年齢になりました。
ちなみに、去年はちょっとしたニュースがありました。
3年前に助けた男の子が、なんと雄英体育祭1年の部で優勝してました。
確か、名前は源銘慈っていってたかな。
いやぁ、最近の子ってすごい血気盛んだね。
“個性”第四世代の私達でさえこれなんだから、第五世代のデクくん達って実はハチャメチャにやべー奴らなのでは?
そら“個性”終末論とかいう学説を唱える学者も現れますわ。
さて、と。
私も若い世代に負けないように頑張らねば。
私は今、ヒーロー免許の本試験会場にいる。
筆記は問題なく合格。
面接では、医学部に通っているというのが好印象を与えたようで、合格をもらえた。
あとは、今日の実技試験に合格できれば、晴れてヒーロー免許を取得できる。
3年になってから大学も忙しくなるから、できれば今日資格を取ってしまいたい。
私がジャージとスパッツに着替えて準備運動をしていると、他の受験生達が変なものを見るような目を向けてくる。
なんか勘違いしてる人多いけど、別にヒーロー科の学校を出てなくても、ヒーロー試験自体は受けられるんだよね。
独学だとサポートアイテムやらコスチュームやらを自分で用意しなきゃいけないのと、ヒーロー科を出てないと資格を取ってから苦労するから、ヒーロー科に行く人が多いってだけで。
ヒーロー科卒業生の合格率は例年4〜5割だけど、独学での合格率は1%を切るらしいし。
「これより体力テストを行います。受験番号を呼ばれた方は、A会場に移動してください」
「よーし、頑張るぞー…!」
ヒーロー免許本試験の実技試験の内容は、体力テスト、戦闘テスト、救助テストの三つがある。
順番や内容は毎年違うけど、今年は体力テストからだ。
体力テストは、基本的な8種目プラス、簡単な“個性”測定がある。
それから戦闘テスト。
今回は、免許持ちの武闘派ヒーローとタイマンで戦闘をして、3ラウンド以内に一度でもダウンを取れば合格、という内容だった。
そして最後は救助テスト。
制限時間内にHUCの人達をできるだけ多く救助して、試験後の採点で90点以上取れれば合格、という内容だった。
全ての試験が終わって、合格の通知を受けてヒーロー免許を受け取った私は、ルンルン歩きで家に帰る。
家に帰ると、珍しく弧太朗が夕飯を作って待っててくれていた。
「弧〜太朗〜♪」
「おかえり姉さん」
「あら、夕飯作ってくれてたの?」
「今日講義4限までだったから」
「そっか」
わぁ、なんか体に良さそうなご飯が並んでる。
美味しそう。
なんて考えていると、弧太朗が話しかけてきた。
「その様子だと、無事取れたみたいだな」
その質問に、私は待ってましたと言わんばかりにドヤ顔しながら、新品の免許証を取り出す。
「じゃじゃ〜ん♪」
私は、弧太朗にヒーロー免許を見せた。
ふふふ、驚いてる驚いてる。
「いやぁ〜、取れて良かったわ。ヒーロー免許持ってると色々便利だからねぇ。あ、ねえ、知ってる? ヒーロー免許取ってると、病院の就職で有利になるんだって」
私が浮かれていると、弧太朗がどこか浮かない顔をして口を開く。
「姉さん。ヒーロー免許を取ったのはいいけど、俺は……」
「わかってる。私はお母さんみたいにいなくなったりしないよ。私が弧太朗を悲しませるようなこと、するわけないでしょ」
お母さんの事は、女手一つで私達を育ててくれた事には感謝してる。
だけど、同時に許せないとも思ってる。
私達を守る為とはいえ、一方的に突き放して、幼かった弧太朗の心に消えない傷を与えた。
この世界線での弧太朗がいい子に育ってくれたのは結果論であって、原作と同じ未来を辿っても全然おかしくはなかった。
お母さんの一番の過ちは、誰かを頼らなかった事。
『ワン・フォー・オール』継承者だから周りを巻き込んじゃいけないと思い込んで、私達をヒーローの世界から一方的に遠ざけた。
だから原作で失敗した。
私は違う。
自分と弧太朗の幸せの為だったら何でもするし、利用できるものは何だって利用する。
精神科医になれば色んな人と接触できるし、ヒーロー免許を持っていればHNを使って色んな情報が手に入る。
「ところで、今日の夕飯どう? 味、変じゃないかな」
「メッチャ美味しいよ!」
「そっか、良かった」
私がご飯を頬張ると、弧太朗が安堵の表情を浮かべる。
おやおや、これはもしや…?
「ははぁ〜ん?」
「何だよ、その顔」
私がニヤニヤしていると、弧太朗が怪訝そうな表情を浮かべる。
これは義妹ができる日も近そうですなぁ。
◇◇◇
後日、私はオールマイトの事務所がある六本木に向かった。
私は、弧太朗を守る為なら何でも利用する。
それこそ、No.1ヒーローだって利用してみせる。
そう意気込んで一歩前に出ようとした、その時だった。
「っ!?」
いきなり、後ろから何かが襲いかかってきた。
直前で気配に気づいた私は、咄嗟に回避行動を取った。
何これ、スライム…?
「げへへへっ、カワイコちゃんみっけ♪」
急に足元に現れた緑色のスライムのようなものは、だんだん人の形になっていって、私に襲いかかってきた。
何この
「大丈〜夫、苦しいのは最初だけだからさぁ。すぐ気持ち良くなるよ」
スライム
日没まで、あと1時間と少し。
それまで私は、“個性”を使えない。
仕方ない、護身用の武器で応戦するしかないか…
もちろん、負けるつもりはないけどね。
私がスタンガンで反撃しようとした、その時だった。
「もう大丈夫だ、お嬢さん!!」
「!?」
「何故って!? 私が来た!!」
突然、巨大な影が空から降ってきて、そして…
「TEXAS…SMASH!!!」
拳の一撃で、
そこには、HAHAHA!と白い歯を見せて笑うオールマイトがいた。
「オールマイト…!?」
「……!? 君は…!!」
私とオールマイトは、互いに目が合った。
オールマイトは、信じられないものを見る目で私を見た。
これが、私とオールマイトの初めての出会いだった。
◇◇◇
その後、程なくして警察が駆けつけてきた。
オールマイトは、吹っ飛ばした
「それじゃあお嬢さん、私はこれで!」
「待ってください!!」
私は、去っていくオールマイトを引き留めて話しかけた。
「志村菜奈って人、知ってますよね? 私の母と知り合いなんですよね? 私、あなたを頼りにきたんです!」
「……生憎、そんな名前の女性は知らないな。悪いが私は、先を急いでいるんだ」
一か八かお母さんの名前を出すと、オールマイトはシラを切って立ち去ろうとした。
そうだよね、お母さんに『何があっても子供達に関わるな』って言われてるもんね…
でも、だからって、ここで引き下がったら原作と何も変わらない。
「助けてください!! このままだと、弟が殺されるんです!!」
私は、オールマイトに縋りついて訴えた。
私の弟が殺されると聞いてか、オールマイトは態度を変えて、「詳しく話を聞きたい」と言って事務所に招き入れてくれた。
「まさか、お師匠の娘さんが私のもとへ訪ねてくるとはね…」
「すみません……」
「それで、このままだと弟さんが殺される、というのはどういう意味だい? 何か事件にでも巻き込まれているのかい?」
オールマイトが、単刀直入に疑問を投げかけてくる。
私は思い切って、オールマイトに真実を打ち明ける事にした。
「正直、あまりにも荒唐無稽な話で、信じてもらえるかわかりませんけど……私、前世の記憶があるんです」
私は言葉を選びながら、ゆっくりと真実を口にした。
「こういうの、パラレルワールドっていうんですかね……私はこの世界に生まれる前、この世界と
私は、弧太朗に話した時と同様、ここが漫画やアニメの世界である事は伏せて、私に前世の記憶がある事をオールマイトに話した。
一般人が知っているはずのない情報を知っている事に関しては、前世では他人の過去を映画のワンシーンように覗き見る事ができる“個性”を持っていた、という事で辻褄を合わせた。
「そして弧太朗を殺したその子は、オール・フォー・ワンに取り込まれて、今から28年後に、オール・フォー・ワンの後継者として日本中をメチャクチャにしてしまうんです」
「な……!?」
私が話すと、オールマイトが目を見開いて驚く。
信じられないと思っているだろう。
だけど同時に、こうも思っているはずだ。
『奴ならやりかねない』と。
「オール・フォー・ワンのしつこさと悪辣さは、いやというほど知っています。もし弟が殺されるのを回避したとしても、それであいつが諦めるとは思えません。あいつは別の手を使って、私や弟の家族を壊して、自分の後継者にしようとするはずです。でも、そうなる前にオール・フォー・ワンを倒すことができれば、最悪の未来を回避できるかもしれない。だから私は、あなたを頼ることにしたんです。バカなことを言っていると思うかもしれません。それでも私は、弟を守りたいんです。お願いします。私達を助けてください。そのためだったら、私は何でもします」
私は、オールマイトに頭を下げて必死に頼み込んだ。
するとオールマイトが、徐に口を開く。
「そうか……そんな未来は、何としてでも変えなきゃいけないな」
「信じていただけるんですか?」
「君の話を全て信じたわけじゃない。だが、君が嘘をついているようには見えない。何より君は、誰も教えていないはずの私とお師匠との関係や、オール・フォー・ワンの悪行を知っていた」
「でしたら、出来る限りサポートさせてください。ヒーロー免許も持ってます」
「それはできない。君の言っていることが本当なら尚更、君を危険な戦いに巻き込むわけにはいかない。それが、君のお母さんとの約束なんだ。気持ちだけありがたく受け取っておくよ」
……うん、想定通りの返しだな。
やっぱり、これを持ってきておいて正解だった。
私は、肩下げ鞄の中から、ノートパソコンと資料を取り出した。
「それなんですけど、これを見てください」
そしてノートパソコンを開いて、データが表示されているページをオールマイトに見せた。
「これは…?」
「HNにアクセスして、過去の犯罪データやヒーロー達のデータ、人口統計、地形、気象等の情報を分析して、今から1週間以内に起こりうる事件の発生リスクを予測してみました。前世で見聞きした事件はもちろん、前世で把握しきれなかった事件も、できる限り事前に予測してみます。前線で戦えない代わりに、私があなたのブレーンになります。私をあなたのサイドキックにしていただけませんか?」
「しかし……もし君が私の協力者だということがバレたら、君にも危害が…」
「そうやって人を巻き込むことを避けたから、前世では最悪の事態が起こってしまったんです。私達はもう既に、オール・フォー・ワンに狙われてるかもしれないんです。私の身を案じるなら尚のこと、私を手の届くところに置いてください」
私は、必死に食い下がってオールマイトに訴えかけた。
するとオールマイトは、ため息をついて首を横に振る。
「すまないが、私はサイドキックを雇わない主義なんだ」
やっぱり、そう簡単に考えは変わらないか……
「どうしてサイドキックを雇わないかというとね、サイドキックのおかげで事件を解決できたとしても、それを手柄にすることができないからなんだ。もしサイドキックの存在が公になれば、本人やその家族まで狙われる危険があるからね。もちろん、私のサイドキックだということを誰かに話すことも許されない。それはつまり、本来手にしていたはずの名誉や名声を得られず、誰にも感謝されずに、日陰で活動しなければいけなくなるということなんだ。見返りもなく、命を狙われる危険だけが付き纏う。本当にそれでも、私のサイドキックになりたいのかい?」
「言ったはずです。未来を変えるためだったら、何でもすると」
「……わかった。ただし、条件がある。どうしてもサイドキックになりたいなら、前線には出ず、事務処理に専念してほしい。それから、君が私のサイドキックであるということは決して口外するな。この条件が飲めるなら、力を貸してほしい」
「……! ありがとうございます!」
私は、とうとうオールマイトを根負けさせて、サイドキックになる事ができた。
「あ、でも、休日と空きコマがある日だけでいいですか? 私、大学があるので…」
「え、君大学生なの?」
「はい。医学部に通ってます」
「ああ、そっか…もちろん、暇な時だけで構わないよ」
オールマイトがそう言ってくれたので、思わず安堵のため息が漏れる。
「あの、もうひとついいですか?」
「ああ」
「母は、どんな人でしたか?」
私は、お母さんの事について、オールマイトに尋ねた。
オールマイトにとって、あの人はどんな人だったのか。
最期は何を思って死んでいったのか。
私が真剣な眼差しを向けて尋ねると、オールマイトが語り始めた。
「君に似て、聡明で正義感の強い人だった。君の顔を見た時、あまりにも似ていたから、お師匠が生き返ったんじゃないかとさえ思ったよ。お師匠は、別れ際に私にこう言ったんだ。『後、頼んだ』と」
「……そうでしたか。それを聞けて良かったです」
◇◇◇
こうして晴れてオールマイトのサイドキックとして活動する事になった私は、自分へのご褒美にケーキとお酒を買ってから家に帰った。
ふふっ、奮発してフルーツタルトとシャンパン買っちゃった。
帰ったら弧太朗と一緒に食べるんだー♪
「ただいまー」
「おかえり姉さん」
家に帰ると、いつものように弧太朗が返事をしてくれた。
でも、今日はいつもと違う事がある。
玄関に置かれた弧太朗の靴の隣に、女物の靴がある。
見慣れない光景に戸惑いつつも顔を上げると…
「あ、弧太朗さんのお姉さん、初めまして」
目の前に、綺麗な女の人が立っていた。
ウェーブのかかった焦げ茶のミディアムヘアーに、タレ目の優しそうな顔立ちが特徴的で、歳は私と同じくらい。
私は、この人の事を知っていた。
「私、弧太朗さんの婚約者の間木直です」
「俺達、大学卒業したら結婚するんだ。姉さんには、一番に報告しようと思って」
間木直さん。
原作で、弧太朗の奥さんで、死柄木弔の実の母親だった人だ。
はぇー、こうして間近で見ると美人で優しそうな人やなぁ。
弧太朗が惚れるのもわかるわぁ。
「あの、お義姉さん大丈夫ですか? 涎出てますけど…」
「あ、いや、これは違うの。花粉症で…」
「花粉症ってそういうもんだっけ?」
直さんに指摘されて、私は慌てて涎を拭いた。
弧太朗がなんかツッコんできたけど、しょうがないじゃん春なんだから。
それにしても、婚約者かぁ。
弧太朗ももう大人だもんね。
華ちゃんが産まれた年を考えれば、原作でも結婚したのは遅くても23〜24歳くらいだろうから、もうこの頃から直さんと付き合ってても全然おかしくないんだよなぁ。
原作で奥さんだった人なら、安心して応援できる。
「直さん、初めまして。私は弧太朗の姉の瑠奈です。弧太朗のことを選んでくれてありがとう。これからも弧太朗のこと、よろしくね。私、応援してるから」
「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
「弧太朗も、直さんのこと、絶対幸せにするんだぞ」
「ああ、もちろん」
私が言うと、二人は初々しく頷く。
なんだこの空間、尊すぎかよ。
「あ、そうだ、ちょうど帰りにケーキ買ったんだけど、一緒に食べる?」
「いいんですか?」
「うん、二人の婚約祝いってことで! 食べて食べて!」
そう言って私は、買ってきたタルトをその場で開けた。
その後は、どっちから告白したとか、デートはどこに行ったのかとか、結婚式はどこで挙げるかとか、恋バナに花を咲かせた。
私が質問する度に、二人の顔が赤くなるのが面白くて、ついつい質問攻めしてしまった。
だけど、私は知ってる。
原作では12年後に、二人が殺されてしまうという事を。
そして、私にはなんとなくわかる。
たとえ原作の悲劇を回避できたとしても、オール・フォー・ワンは絶対に諦めない。
私が行動を起こさなければ、遅かれ早かれこの二人は悲惨な末路を辿ってしまう。
そんな事にはさせない。
二人の未来は、絶対に私が守ってみせる。
オリ主「アカン……ワイ、どこに逃げても絶対梅干しに狙われる……どないしたらええんや……せや! 殺られる前に殺ったらええんや! オールマイトのサイドキックになって転生知識つこて梅干し討伐RTAしたろ!」
お母さんとの約束を破って、ヒーローの世界に助走つけて飛び込むオリ主ェ……
ちなみにオリ主は、「絶対幸せにするんだぞ(キリッ」とか言ってますが、前世では中高共に女子校で恋愛とは無縁の人生だったので、前世も合わせれば彼氏いない歴38年です。
志良木瑠奈(20)
本作の主人公。
都内の某国立大学の医学部2年。
ブラコンを拗らせた女子大生。
ヒーロー免許取得直後、オールマイトに転生者である事を打ち明けた上で持ち前の頭脳を買われてサイドキックの座をもぎ取り、大学に通いつつサイドキックとして彼をサポートしている。
大学卒業後は、精神科医を目指す予定。
小学校入学前に里子に出されており、旧姓は志村。
志良木弧太朗(20)
主人公の双子の弟。
都内の某国立大学の法学部2年。
本作では、原作ほどヒーローに対して強い憎しみは抱いていない。
現在、原作で妻だった間木直と交際している。
小学校入学前に里子に出されており、旧姓は志村。
オールマイト/八木俊典(⁇)
不動のNo.1ヒーロー。
『ワン・フォー・オール』8代目継承者。
瑠奈の母親の菜奈の弟子であり、瑠奈のヒーローとしてのパートナー。
瑠奈が転生者である事を知る数少ない人物。
当初は菜奈の言葉通り、瑠奈と弧太朗には関わらないつもりだったが、瑠奈に転生者である事を打ち明けられた上で食い下がられ、根負けした末に彼女をサイドキックに採用した。
間木直(⁇)
弧太朗の婚約者。
原作では弧太朗の妻であり、華と転弧の母親。