ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。   作:名も無き住人

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十二話

 即座に相澤先生が的確に指示を出して13号が校舎への連絡をする。

 

 上鳴も耳に付けてる通信機のような物で連絡しようとする。それを言うと相澤先生が戦闘の構えを取り、首に巻いてるマフラーのような物が浮かび上がる。

 

「先生は1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛戦闘だ!!正面戦闘は…」

 

 緑谷が引き留めようとするが先生が振り向く。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号任せたぞ」

 

 そう言い残して相澤先生は単身一人で敵陣に乗り込んだ。

 

 見たところ個性"抹消"で個性を消して動揺した所を狙い撃破している。ゴーグルで目線を隠しているから誰が消されているのか分からず敵ヴィランも連携が取らせない状態だ。異形型の"抹消"でも消せない個性持ちの対処法も完全に出来ている。

 

(流石はプロだな)

 

 13号先生の指示の元、全員出口の方に向かって避難する。

 

「させませんよ」

 

目の前に黒いモヤが出現して足を止める。

 

(なんだこのヴィラン、気配を感じなかった…人間……いや生物なのか?)

 

「初めまして我々は敵連合僭越ながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴オールマイトに…息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

 黒いモヤのヴィランが放つ一言で空気が固まる。そのまま奴は話を続ける。

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃる筈…ですが、何か変更あったのでしょうか?まぁそれとは関係なく…私の役目はこれ」

 

 話が終わると奴の黒いモヤのヴィランの動きは更に流動的になる。すると爆豪、切島の2人が突撃して"硬化"での殴打と"爆破"を食らわせる。

 

「その前に俺達にやられることは考えてなかったか!?」

 

2人が攻撃するが黒いモヤはまだやられていない様子だ。

 

「危ない危ない…そう…生徒といえど優秀な金の卵」

 

「ダメだ!!どきなさい2人とも!」

 

すると奴の身体が大きく拡がってその黒いモヤに包まれた。何とか避けようとしたが避けきれず奴の個性をモロに受けてしまった。

 

(クソっ!透!)

 

本来なら即座に対処できていたがヴィランの目的を聞き出すために敢えて攻撃をしなかった事が裏目に出てしまった。

 

 気づいたとき、俺は荒野エリアにいた。

 

 周囲を見回した。

 

 砂と岩の地形。遮蔽物はあちこちにある。

 

 そして——俺の周囲に、十数人のヴィランが立っていた。

 

「ほう……一人か」

 

 先頭に立っていたのは、体格の良い男だった。腕に刃物を複数持っている。

 

「雄英の生徒とはいえ一人、こらだけいれば充分だ。殺してきてやる」

 後ろのヴィランたちが動き始めた。

 

(殺しに来てる)

 

 俺は冷静に認識した。

 

 これは訓練じゃない。本物だ。

 

 怖くはなかった。

 

 ただ——頭が静かになった。

 

(全員、止める。殺さない)

 

 俺は心の中で決めた。

 

 今日ここで、クラスメイトが死なないために。透が、緑谷が、麗日が——全員が無事でいるために。

 俺は戦う。

 

 ヴィランたちが一斉に動いた。

 

 俺は——動かなかった。

 

 ただ、背後に意識を向けた。

 

 顕現する。

 

 黄金の光が荒野に広がった。

 

 真数千手。

 

 千の腕が放射状に展開されて、俺の背後に後光のように広がった。それぞれの腕が独立して蠢き、荒野の岩や砂の上に影を落とした。

 

「——っ!! なんだあれ!!」

 

「腕が……無数に……!!」

 

 先頭のヴィランが足を止めた。動揺が顔に出ていた。

 

「怯むな!所詮奴は一人!数で押すぞ!!」

 

 ヴィランたちが再び動いた。棘の男が突進してきた。岩肌の男が脇から回り込んだ。腕の長い男が遠距離から腕を伸ばしてきた。

 

 ズドォン——!

 

 伸びた腕が首を狙った。

 

 俺は首を傾けて——背後の腕を一本伸ばした。

 

 腕と腕がぶつかった。その衝撃が砂地に波紋を描いた。

 

「っ——硬いなんてもんじゃない!なんなんだこの腕!!」

 

「押し返すっ……どころかこっちの腕がっ!砕けた……!!」

 

 棘の男が突進してきた速度のまま迫ってくる。

 

 同時に後方から複数のヴィランが動いた。

 

(複数同時か——ならば!)

 

 俺は逆に前に出た。

 

 壱乃掌——!

 

 ドォゴォーン——という地鳴りのような音が荒野に響いた。

 

 手加減をやめた一本の腕が一斉に向かってきたヴィランに向けて放たれた。

 

 棘の男の突進が——正面から叩き返された。

 

 たった一本の掌打が体ごと吹き飛ばした。

 

 ズドォォォン——!!

 

 棘の男の体が岩に叩きつけられた。岩が砕けた。男は岩の破片と共に地面に倒れた。

 

「……っ……」

 

「生きてるか」

 

「……生き……が……動……」

 

「そうか。大人しくしていてくれ」

 

「て、手加減してるのか……!? これで……!?」

 

「本気を出すと地形が変わる。訓練施設なので抑えた」

 

---

 

 残りのヴィランたちが止まった。

 

 別の先頭の男が——怒鳴った。

 

「怖気づくな!相手は一人! 囲め!!」

 

 十数人が一斉に動いた。後方から。側面から。上から——岩を登って飛び降りようとする者もいる。

 

 複数方向からの同時攻撃。

 

(来るか)

 

 真数千手——大玉日輪ノ環

 

 本体の胸部に巨大な螺旋が形成された。本体千手観音の中央で渦を巻く光が膨れ上がっていき——螺旋のエネルギーが宿り始めた。

 

 ドオオオオオン——!!!

 

 轟音が荒野を揺らした。地面が震えた。

 

 複数方向から迫っていたヴィランたちが——全員、吹き飛んだ。

 

 岩が砕け散った。砂柱が空高く舞い上がった。地面に一つのの大穴が穿たれた。荒野の地形そのものが変わり大きな穴ができていた。

 

「——っ!!!!」

 

 砂埃が収まっていく。

 

 荒野に——小さなうめき声だけが残った。

 

 

 た。

 

「……動けるか?」

 

「……う……が……」

 

 今ので殆どのヴィランが戦闘不能とできたようだ。

 

 

「まだ……やるか……」

 

「……む、理……」

 

 先頭の男だけが、まだ意識をほぼ保っていた。

 

 仲間が全員倒れた光景を見て——顔が青くなっていた。

 

「……化……物め」

 

「そういうことを言う必要はないが、そう感じるのなら仕方ない」

 

「何者だ……お前は……雄英の……生徒にこんなの……がいるのか……」

 

 酷く怯えている様子だ。

 

 

「一年生だ」

 

「嘘を……つくな!」

 

「本当だ」

 

 余程の事なのか先程までの弱々しい言葉とは思えない程の声を出す。

 

 ヴィランたちを全員その場に倒したまま、俺は中央広場への方角を確認した。

 

 荒野エリアからは南西方向だ。

 

(行く)

 

 俺は走り始めた。




大玉日輪ノ環は原作にはありません。ご注意下さい。
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