明るい未来を、君の隣で。(仮)   作:かぎゅ~

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今回から原作に入ります。
読んでいただけたら嬉しいです。


入学初日

 

 私は今日、北宇治高校への入学式を迎えていた。久美子とは一緒のマンションに住んでいるので、入学式も一緒に登校することになっていた。

 

 新しい制服を着ていると、いよいよ新生活が始まるという新鮮な気持ちで、どうしても気分が浮ついてしまう。今も久美子を待っている間にも、落ち着かずに自分の髪の毛を触ってしまう。

 

「お待たせ。」

 

 久美子が少し慌てた様子で待ち合わせ場所の住んでいるマンションの前に来た。

 

「全然待ってないよ。それより久美子、制服似合ってるじゃん。やっぱりセーラー服って可愛くて良い。」

 

 新しい制服に身を包んでいる久美子は、少しサイズの大きい制服に着られている感じもあるが、それでも似合っていて凄く可愛らしいと思った。

 

「千速に言われても嫌味にしかならないでしょ…。本当に新入生かってくらい様になってるけど。」

 

「まあね。スタイルだけは良いと自負している。」

 

 自分でも容姿については肯定できるところなので素直に肯定する。中学生の頃から身長が175センチあるので、昔から周りよりも頭が一つ二つ抜けていて、割と目立つ見た目をしていると思う。目元も切れ長で目つきが悪くて怖いイメージがあるのか、普通にしていてもその印象からか、こちらから話しかけないと周りから距離を置かれてしまう事が多い。

 

「流石、いっそ清々しいね。入学式だと駅とかも混みそうだし、そろそろ行かない?」

 

「そうだね。」

 

 私も同意すると、二人揃って三年間お世話になる通学路を並んで歩き始めた。

 

 ――――――

 

 割と余裕を持って出発したおかげか、無事に何事も無く北宇治高校前に着く事が出来た。

 

 すると、校門前におそらく吹奏楽部と思われる団体が、新入生を迎えるためなのか楽器を持って準備していた。

 

「新入生の皆さん!北宇治高校へようこそ!」

 

 おそらく指揮者の人がこちらに向かって言ってから、楽器を持った人がいる方に向き直る。しばらくすると、演奏の準備が終わったのか指揮者の腕が上がり、いよいよ演奏が始まろうとしていた。

 

 指揮者の腕が上がって演奏が始まると、私でも聞いたことのある曲が耳に入ってきた。隣にいる久美子の反応も伺おうとして、顔を覗き込むとなんだか苦虫を噛み潰したような苦い顔をしたかと思えば、呆れたような顔をしたり顔が騒がしくなっていた。

 

 すると久美子がポロっと呟くように何かを言おうとしてしていたので慌てて口を手で塞ぐ。彼女は思ったことをそのまま言ってしまう悪癖があるので咄嗟の判断だった。

 

「これは…ブッ」

 

 慌てて久美子の口を塞いだので、久美子の口の中から空気が漏れて変な音が出る。突然、近くにいる新入生の口から変な音が鳴ったので、一斉に周りの新入生が振り向く。周りからの嫌な目線が刺さった。

 

「急に何を言おうとしてんの…絶対ろくな事じゃないでしょ…」

 

 久美子と目を合わせると本人も反省しているのか、頷きながらアイコンタクトをしてくるので、もう大丈夫かと思って口から手を離す。

 

 「いやーこの演奏がさ、ちょっと残念とだけ。」

 

 失言をしそうだから慌てて止めたのに、周りに聞かれたら不味い発言を普通に言い直した。もうこういう時に止めるのは徒労に終わりそうなので辞めようと心の中で誓った。

 

「折角、失言しそうだったから口塞いだのに…もうほぼ言ってない?」

 

「あはは…」

 

 自分でも呆れたように笑いながら、頭をポリポリかく久美子を呆れたように見ていると、本当にこの娘は良い性格をしているなと思う。私は久美子のこういう裏表が無い隠さない所が好きなのだ。これからも好き勝手に言ってもらおうと思う。

 

 「この演奏って何か変なの?」

 

 素人目に見ていると、誰でも知っている定番の曲を演奏しているという事しか分からない。強いて言うとすれば、中学時代の久美子達の方が音が綺麗だったかも知れないという事くらいか。

 

「リズムも不揃いだし、テンポも合ってない。端的にいうと演奏が上手じゃないと思う。」

 

「経験者目線だとそういう意見になるんだ。」

 

 吹奏楽部の演奏を見ながら久美子の解説を聞いていると突然、後ろから声をかけられた。

 

「黄前と三橋ももう来てたのか。」

 

「あ、塚本じゃん。おはよう。」

「…おはよう」

 

 私がいつも通りに、これから同じ学校に通う同級生になる塚本の声に応えていると、隣の久美子は塚本の事を睨みながら、少し棘のある声で返答した。

 

 それを見た塚本は自分を睨む久美子の姿に例の事件を思い出して焦ったのか、慌てて弁明を始めた。

 

「あの時は本当に悪かった。明らかに俺が言い過ぎた。」

 

「反省してるのなら良いけどさ…」

 

 塚本が頭を下げながら久美子に謝った。頭を下げる塚本を見て、久美子も塚本が心から反省しているのが伝わってきたのか、例の事件を水に流そうとしいるのがわかった。久美子自身もこの遺恨を長引かせようとは思っていないようだった。

 

「じゃあ塚本、私からも謝らせて。あの時は蹴っちゃってごめんね。」

 

 良い機会だと思い、二人が話している隣で手を挙げて宣誓をするように謝った。ちなみに何故この二人が高校の入学式まで揉めているかと言うと、中学時代(およそ一年前)に遡る。久美子が塚本を昔からの習慣で夕食に誘った際に言い放った言葉が発端である。

 

「うるせーよブス!」

 

 そう言った塚本は、次の瞬間には後ろに吹っ飛んでいた。たまたまその場にいた私が、その言葉を聞いた瞬間に頭にきてしまい、思い切り蹴り飛ばしてしまったからである。ちなみに隣にいた久美子はその瞬間をただ呆然と見ていた。その後から私も久美子も塚本から距離を置かれていた。そして、そのまま現在に至る。

 

「俺はもう許してるよ…ただ突然殴りかかって来るのは止めてくれ。めちゃくちゃ怖かったから。」

 

「ごめんね。本当に反省してる。」

 

 「あの時、急に千速が蹴り飛ばすからさ、私もビックリしちゃって、秀一に怒るタイミングも無かったし…ただ気まずくなっちゃったし、それ以降はあまり話さなくなっちゃったけど。」

 

 久美子も私の方を見ながら、あの時の心情を吐露した。多分、久美子と塚本の仲を拗らせてしまった原因は私にあると思うので、素直に反省する。直情的に体が動いてしまうのは私の悪い癖だと思う。高校生になったからには、直していかないといけない。

 

「まぁ…今までの事は水に流して、高校からはまた仲良くやろう。」

 

 そう塚本が言うと、私も久美子も塚本も改めて謝り合った。これで完全にわだかまりは無くなったと思う。以前のように仲良く付き合っていけると信じたい。

 

――――――――

 

 その流れで張り出されていたクラス発表を見に行き、発表されていたクラスに入った。教室の前に張り出されていた席順表で指定されていた座席に座る。運が良かったのか、中学生の頃から続いて久美子とは同じクラスになった。

 

「今年もよろしくね久美子。」

 

「また騒がしくなりそう。勉強に集中したいからあんまり話しかけないでね。」

 

「えー、ひっどい。」

 

 私が前の席に座っている久美子に笑いながら声をかけると、久美子が呆れ笑いを浮かべながら毒を吐く。暫く二人で喋っていると、近くにいた快活そうな女の子が話しかけてきた。

 

「三橋さんと黄前さんは同じ中学校だったりするの?」

 

「うん、同じ大吉山北中出身だよ。えっと…加藤さんだっけ?」

 

 私はクラスの前に貼られていた席順が指定されている表に載っていた名前をを思い出して、話しかけてくれた女の子の名前を何とか絞り出した。

 

「そうだよ。加藤葉月、葉月でいいよー」

 

 ショートカットで可愛らしいピンをしていて、健康的な雰囲気の凄くフレンドリーな女の子だった。すると、久美子が急に会話に割り込んできて自己紹介を始めた。説明をする顔がこちらを見ながらニヤけていて、明らかに悪意を感じる。

 

「こちらこそよろしく。私は黄前久美子、こっちの目つきが悪くて友達がいなさそうなのが三橋千速っていう名前で、昔からの腐れ縁の幼馴染だよ。」

 

久美子から私に対して悪意のある他己紹介をされたので、こちらからも久美子の印象を流れるように付け加えながらやり返した。こういったチクチクとしたやりとりは昔からの二人の定番の流れだった。

 

 「うん、よろしくね葉月さん。私は三橋千速で、こっちのトイプードルみたいな髪形してるのは黄前久美子。小学生からの幼馴染なんだ。」

 

 

「二人とも仲良いんだねー」

 

 葉月さんは概ねポジティブに受け取ってくれたようで、ニコニコしながら私達のやり取りを聞いてくれていた。私からの葉月さんの第一印象は愛嬌のある優しい子だった。出来ればこれからも仲良くしたいと思った。

 

 三人で自己紹介をしながらワイワイ話していると、急に意識の外から話しかけられた。

 

「私とも仲良くして下さいー」

 

 声のする方を振り向くと、可愛らしい雰囲気の頭に付けたリボンが似合う小柄な女の子が立っていた。

 

「川島さんだっけ?」

 

 私は改めてクラスの席順表から名前を思い出していた。川島という苗字は直ぐに出てきたが、下の名前の読み方が分からなかったので、苗字だけで返事をした。

 

「はい。川島緑輝(みどり)です。仲良くしてくれると嬉しいです!」

 

「もちろん。一年間よろしくね。」

 

 その場にいた四人で各々挨拶を済ませる。

 

 ニコニコと人の良さそうな表情をしている川島さんは、第一印象から優しそうな女の子だった。川島さん加藤さんと連続で優しそうな印象の女の子と知り合えたので、これからの一年も孤立せずには過ごせそうと心の中で少し安心していた。

 

 ――――――

 

 放課後になり、朝に挨拶をした四人で改めて集まる。そのままダラダラと話していると、話題が自然の流れで部活動の話になった。

 

「もう部活動とかは決めてる?」

 

 最初にその話題を言い出したのは加藤さんだった。周りの新入生もどの部活に入るのかが話題の中心なのか、聞こえてくる声からはその話題で盛り上がっているのが伝わってきた。

 

「緑輝は吹奏楽部です!」

 

 元気に川島さんがそう返事をした。迷う素振りもなかったので、経験者なのだろうかと考えていると、その話題を持ち出した加藤さんが会話を進めた。

 

「即決だね!もしかして吹奏楽経験者?」

 

「中学校でも吹奏楽部でコントラバスという楽器をやっていたので、高校でも吹奏楽部でやろうと思っているんです!」

 

 ニコニコしながらも固い決意に満ちた川島さんの宣言を見ていると、ふと久美子の反応が気になって隣にいる久美子の様子を伺った。

 

「へぇー…すごいね。」

 

 明らかに引きつった笑みで、鈍い反応をしていた。自分の頭の中で勝手に面倒臭いことでも考えているのか、良い反応はしていなかった。

 

「川島さんはもう決まってるんだ。加藤さんと久美子はもう決まってる?私はまだ何も決めてないんだよね。」

 

 私がそう言って加藤さんと久美子にアイコンタクトして様子を伺ってみると、二人とも首を横に振った。その確認作業をしていると川島さんが良い機会と見たのか、こんな提案をした。

 

「もし三人が良かったら、吹奏楽部の見学に行ってみませんか?」

 

 キラキラとした瞳で、三人を覗き込んでくる川島さん。一方、私たちの反応は三者三様だった。加藤さんは凄く乗り気で今にも走り出しそうだし、私も少し気になっていた部活なので見に行ってみたいと思っている。

 

 真逆の反応を見せたのは久美子だった。明らかに行きたくなさそうな反応をしたいたが、残り三人が吹奏楽部の見学にノリノリなのを見て、自分の意思を通すのは諦めたようだった。それでも感情が顔に出まくっているので私が声をかける。

 

「久美子、嫌なのが顔に出すぎてるよ。」

 

 加藤さんと川島さんに聞こえないように、久美子に耳打ちすると、死んだ目をした久美子がこちらを向いて言った。

 

「私の気持ちを知っていて、何で千速は乗り気なのか訳わかんないんだけど…」

 

 死んだ目をしながら、こちらを咎めてくる久美子の意見を無視して強引に久美子と腕を組むと、久美子の感情は無視して引きずるように私達は音楽室へ向かった。

 

 私と久美子が仲良く腕を組んでいるのと勘違いしたのか、空いていた片方の腕を加藤さんが組んだ。私達、四人組は楽しそうに音楽室への廊下を進み出した。ただ一人、顔が死んでいる一人を除いて。 

 

 

 

 




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