微糖くらいのイメージで。続けばいいな。
「……マスター、編集は間に合いそうですかねぇ?」
「う、うん……! これでなんとか、明日の投稿祭開始には間に合いそう……!」
深夜、というか未明も過ぎて明け方の頃合い、結月ゆかりは自身のマスターである冴内音羽の部屋で、夜通しの作業の疲れがもたらす眠気を我慢しながらベッドに腰掛けて本日二本目のエナジードリンクに口を付けていた。マスターの音羽は作業机のPCとにらめっこしておりゆかりに視線を向ける余裕も無いようだった。それでもしっかり三本目のエナジードリンクには手を付けてるのにゆかりは少しだけ不満を抱いていたが、生憎作業に没頭している音羽がそれに気付くことはなかった。
「まったく……。こういうのはあらかじめ計画立てて進めておかないと、っていつも言ってるじゃないですか……。わざわざ次の日仕事の日に無理に徹夜強行しなくても……」
「ぐ……。そ、そうだけど、毎年参加してる投稿祭だから、これは絶対にやっておきたくってさ……! それに今日は半ドンだからちょっとくらいなら無理してもいいかなって……!」
「身体壊しても知りませんよ……? それに、毎年恒例の投稿祭ならスケジュール管理くらいしっかりしてください……。私じゃなかったら愛想尽かされてるかもしれませんよー?」
「い、いや……、それは本当にありがとうございます……。いつも無茶に付き合ってくれて……」
「えぇ、本当に。この前のTRPGの感想戦だけ簡単にするだけなので大丈夫ですけど、私だって今日は午前中収録あるんですからね? あ、エナドリもう一本もらいますね。今日はもうこのまま起きちゃいますか」
「あ、じゃあ私の分もお願い。もうちょっと作業したいからさ」
「はいはい、了解です」
先程まで飲んでいたエナジードリンクを空にしながら言う音羽に苦笑しながらゆかりは冷蔵庫へと向かう。そして少し重い冷蔵庫の扉を開けて、その先を見て眉根を寄せた。
「げ。マスター、エナドリなんですけど残り一本ですよ?」
「え、そんなに飲んでたっけっか? この前箱買いしたばっかじゃなかった?」
「……あー。私、ここ最近ゲームで徹夜ばっかしてたので、多分それですね……。ごめんなさい……」
「ありゃま……、それなら仕方ないね……。でも、どうするかな……。作業のお供は欲しいし……。コーヒーあったかな?」
「いつぞやの貰い物なら、あるにはありますけど……。マスターってエナドリは平気ですけどコーヒー飲むとすぐ体調崩すじゃないですか……。私がコーヒー飲みますから、エナドリはマスターが飲んでくださいよ?」
「いや、ゆかりさんもコーヒー苦手じゃん……。牛乳もシチューに使って無いからカフェオレも作れないし、それはゆかりさんが飲みなよ。これでも、コーヒーも最近は少しマシになったんだから」
「……それ、信用できないんですけど……。また無理してますよね……」
「……そんなことないよー」
ほら、グイッと。ついでにお湯もお願い。
そうあからさまに急かす音羽の様子にやきもきしたゆかりは、
「……分かりましたよ。飲めばいいんですよね?」
そう口を開いてカシュリと軽快な音を立ててプルタブを開けた。その音に安心したように息を零して、音羽は再びヘッドホンを装着して画面に視線を向けた。あと少し微修正かければ終わるな、と気合いを入れた音羽の鼻腔をエナジードリンク特有のケミカルな甘い匂いが擽ったのを感じて、ゆかりが戻ってきたのか、とぼんやりと思う。そんな音羽の視界の隅で何かが作業机に置かれた。ふと視線を落とせば、そこにはエナジードリンクが入ったグラスが置かれていて、少し驚いて振り向くとゆかりが相変わらず疲れた顔に少し意地悪な笑みを浮かべながらエナジードリンクの缶に口を付けていた。
「半分こしましょう、これならおあいこです。……これで、今日の収録中に眠くなっちゃったら、無理なスケジュール組んだマスターのせいですからね?」
半分はエナドリ飲み過ぎた私のせいですけど。
そう笑いながら定位置とばかりにベッドに腰掛けて自身に視線を向けてくるゆかりに、
「……ありがと」
そう、少しだけぶっきらぼうに答えながら音羽はグラスに口をつけた。これは、お礼に何か買っていかないと。再びPCに向かって作業に向かいながら、音羽の頭の中は今日の仕事帰りに寄るお土産選びで忙しかった。