痛いものは痛い、怖いものは怖い。
この世界の決まりです。
虹星 「……………あれ…。」
僕は………どうなったんだっけ………。
確か………
虹星 「───っ………。」
思い出したくない、考えたくない。
それでも全身の痛みが、苦しみが鮮烈に覚えていた。
………怖い。
パチュリー 「───っ!!!」
寝たきりのまま視線を動かすと…パチュリーさんと目が合った。
すると目頭を抑えながら深い溜息をついた。…酷く疲れているように見えた。
虹星 「………此処は…?」
パチュリー 「医務室。………二人とも、虹星が目覚めたわ。」
寝ていたままの視線では見る事が出来なかったけど…部屋には美鈴さんと魔理沙が居たみたいだった。
美鈴 「───!!!」
美鈴さんはその言葉を聞くなり…直ぐに自分の横に座り、手を強く握ってきた。
美鈴 「………良かった…。本当に………!ごめん。ごめんねっ…!」
美鈴さんの顔を一目見る。………泣いていた。
魔理沙 「………!虹星っ!!!」
疲れていたのか………少し間を開けてから魔理沙も自分の前に立ち、頰に触れてきた。
魔理沙 「ごめん虹星っ……!私が…私がちゃんと見ていれば…!痛かったよな…本当にごめんな………。」
魔理沙も顔を酷く歪めて泣いていた。
自分を心配してくれて嬉しい反面……自分のせいで二人を悲しませたと考えると…自分が嫌になった。
魔理沙は泣きながらも自分をベットから立ち上がれるように手伝いをしてくれた。
上半身だけ起き上がり、パチュリーさんから渡された手鏡を見て、自分の身体を見て………現状を理解した。
顔は痣と傷だらけで…至る所に血で滲んだ絆創膏やガーゼが貼られ、額には紅くなった包帯が巻かれていた。自分の顔とはとても思えなかった。………こりゃ誰だって泣いてしまうな。
身体は全身に包帯が巻かれていた。同じように血が滲み、至る所が薄暗い赤だった。
何より酷いのはベットのシーツ。トマトジュースを溢してしまったって位に真っ赤に染まっていた。
パチュリー 「………ごめんなさい。骨と内臓を集中して治癒したから、表面の傷や痣は殆ど治せていないの。……酷く痛むと思うけれど…暫くは我慢できる?」
虹星 「大丈夫です…。骨と内臓、治してくれて有難うございます。…自分、最初はどうなってました…?」
パチュリー 「………今の貴方の現状に加えて……全身の骨が砕けていて…右腕の指が全てひしゃげて…肺に大きな穴が空いていたわ………。………私からも謝らせて欲しいわ…。まさか………まさかレミィが此処まで貴方を追い詰めるなんて……本当に思ってなかったの。」
咲夜 「………虹星様…!」
今度は咲夜さんが音もなく………。
咲夜 「………申し訳ありません。私はお嬢様を………止める事が出来なかった。」
虹星 「………良いんです。咲夜さんはメイドなんですから…主人の命令には逆らえないのは………。
それに………悪いのは全て自分です。あの人の忠告を聞いていたのに…それを破って、内緒でフランに会いに行っていたから、だから…………………。」
喋っている途中で嗚咽を漏らしそうになり、言葉が喉に詰まって何も発せなくなる。
代わりとでも言うかのように大粒の涙が自分の目から溢れ落ちていた。それを誤魔化そうと頑張って笑った。でも涙は止まらなかった。
痛かった、辛かった、苦しかった───
死ぬ程…怖かった………。
その言葉と自分の顔を見て…咲夜さんとパチュリーさんは目を伏せ黙りこくり…美鈴さんと魔理沙は顔を伏せて更に大きく泣き出してしまった。
………自分がクズになった気分だった。
パチュリー 「………こんな事は言いたくないけれど…。もう理解できたでしょう…?貴方はもうあの姉妹に、私たちに、紅魔館に関わるべきじゃない。………これ以上関わっても…貴方が苦しくなるだけだわ。」
虹星 「………でも、それでも……やっぱり僕は………嫌です。」
魔理沙 「………何でだよ…。もう良いよ虹星…。
もう私見たくないよ…。友達が死にかけて…痛みに苦しんでる所、もう見たくないよ…。」
虹星 「………ごめん魔理沙。でも………あの人泣いてたんだ。」
咲夜 「………あの人って…。」
虹星 「………そうです。僕を殴ってる時…ずっと泣いていたんです。あの人だって………きっとあの人だってこんな事、したくなかったんです。………だから、自分はあの人を…フランと面と向かって話せるように、自分で自分の事を許せるようになれる為に、助けてあげたいんです…。フランが、あの人が…あの姉妹がこれ以上苦しまない為にも。」
美鈴 「………気持ちは分かるよ。………でも…!
虹星君はそれのせいで苦しむ事になるんだよ…?私は………君が無理する必要なんて無いと思う。」
虹星 「………良いんです。結局の所、頭を突っ込んだのは自分です。……手を出したんだから最後までやります………此処で逃げたら、きっと誰も幸せじゃない。
……だから僕はまた、あの人に会いに行きます。あの人を…赦してあげられるのは自分だけですから。」
魔理沙 「………だったら、私も着いていくよ。………もし、もしレミリアがまた、お前に手を出そうとしたら、その時は………私がレミリアを止める。……例え殺してでも………。」
虹星 「………魔理沙、気持ちは嬉しいけれど…僕なんかの為に傷つけあって欲しくない。心配いらないよ………今度は、今度こそはちゃんと話し合ってみせるから。」
魔理沙 「………そんな引き攣った顔と震えてる身体で…?………大丈夫、お前の邪魔は絶対にしない。………それとも、虹星にはこう言った方が良い?
………頼むよ虹星…このままだと罪悪感で押し潰されそうになるの…。」
美鈴 「………魔理沙さん…。」
真っ赤に腫れた目が真っ直ぐこちらを射抜いてくる。
違う、違うよ。魔理沙は何も悪くない。
魔理沙 「此処に虹星を連れ込んだのは私。………虹星が大怪我したのも………全部私の責任。………例え虹星が私を赦してくれても…私自身が私を赦せない。…だからお願い、私を連れてって…罪滅ぼしを…させてくれ…。」
パチュリー 「………(随分と…狡い言い方ね。虹星が優しい事を分かってて、だからこそ…虹星が絶対に断れない言い回し方を…。)」
虹星 「………分かったよ。でも、勘違いしないで欲しい。………僕は、魔理沙が紅魔館に連れてきてくれた事、フランと会わせてくれた事を………僕は恨んでなんかいないよ。………ありがとう、魔理沙。」
魔理沙に笑顔を向ける。
良かった、今度はちゃんと笑えた。
虹星 「……先ずはベットから立ち上がる所から…。………魔理沙、手伝ってくれる?」
魔理沙 「………あぁ…!私に任せてくれ!」
魔理沙はまた涙を流しながらも…笑顔で応えてくれた。
ここできっぱり諦めていればこれ以上痛い目見ずに済んだんですけどね()