どこでも危険定期
あれから数日…
虹星は香霖堂に居候の身となり、修行時のみ霊夢によって博麗神社へと連れて行かれるようになった。
そうなった場合当然…
虹星 「うわあっっ!!! た、高いですって!」
霊夢 「仕方ないでしょ。これが一番手っ取り早いんだもの。」
虹星は霊夢に両手を掴んでもらいながら、博麗神社へと空を飛んで向かっていた。
霊夢 「男の子なんだからこれくらい我慢しなさい。………ほら、ついたわよ。」
虹星 「は、はぁ…これはまだまだ慣れれる気がしないよ…。」
霊夢 「そもそも、慣れてもらわないと困るのよ。
貴方は近いうちに空を飛べるようになってもらうのだから。」
虹星 「えっ!?む、無理です!」
霊夢 「拒否権なし。空も飛べないんじゃ陰陽師なんか夢のまた夢だわ。 とりあえず、稽古始めるわよ。」
虹星 「え、えーと…お手柔らかに…。」
霊夢 「それじゃ取り敢えず…今から虹星くんに陰陽師の基礎的な力である霊力について教えてあげる。」
虹星 「呼び捨てで大丈夫ですよ霊夢さん。よろしくお願いします!」
霊夢 「じゃあ私も呼び捨てでいいわ。…そうねぇ、思えば私、霊力を扱えるようになる修行なんてした事なかったから…一旦座禅組んで瞑想でもしてみてくれない?」
虹星 「は、はぁ。(あ、曖昧だなぁ…)」
霊夢 「集中しなさいよー。無心でいなさい。」
虹星 「わ、わかった。(無心…無心…!)」
目を瞑り、感覚を研ぎ澄ます。
すると、誰かがやってきたのか話し声が聞こえた。
虹星 「(無心…無心…!)」
─────でさ───が例の────。
今────邪魔─────。
虹星 「(話し声が止んだ…?………誰かに見つめられている気がする………。)しゅ、集中できるかぁー!」
??? 「お、見つめてんのバレたか。」
目を開けると、そこには魔女が立っていた。
虹星 「だ、誰?どちら様?」
霊夢 「魔理沙!修行の邪魔よ。用が無いなら帰りなさい。」
魔理沙 「いーじゃん別に!貴方が香霖の言ってた例の男の子でしょー?私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いよ。」
霊夢 「…その喋り方、なんか気持ち悪いからやめてくれない?」
魔理沙 「ま、確かに私もいつも通りの方がしっくりくるな。」
虹星 「ど、どうも魔理沙さん。僕はえーと、虹星って言います。」
魔理沙 「魔理沙でいいよ。よろしくな、虹星。」
霊夢 「互いに自己紹介も済んだし、瞑想再開しなさい。」
虹星 「あ、うん。(無心…集中…!)」
虹星が再び目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませる。
霊夢 「さて、こっちも始めるとしましょうか。」
霊夢は虹星の両手に手を当て、何かをし始めた。
霊夢 「う〜ん………はっ!」
魔理沙 「ど、どうした霊夢?」
虹星 「(どうしたんだろ…?)」
霊夢 「魔理沙!この子………」
全く才能ないわ!!!!!
虹星&魔理沙 「………えっ?」
魔理沙 「(小声)お、おい馬鹿!虹星の前で言ってやるなよ!」
虹星 「あ、あはははー…この刀を授けてもらった意味ー…」
魔理沙 「ほれ見ろ!早速落ち込んでぶつぶつ言ってるぞ!」
霊夢 「だ、だって仕方ないでしょう!ここまで霊力量の少ない子なんか初めてよ!外の世界の人間だとこれくらいが普通なのかも知れないけど!」
魔理沙 「ぐ、具体的にはどのくらいの霊力量なんだ?」
霊夢 「私が彼の霊力を引き出せないくらいには微弱だわ。どうしましょう、霊力がないとお話にならないのに………。」
魔理沙 「……霊夢ですら引き出せないなら、まず他じゃ無理だな。………仕方ない、私たちでどうこうできないなら、虹星自身に無理矢理引き出させるまで。
ちと危険は伴うが………無縁塚に行くぞ!」
虹星 「………無縁塚?」
霊夢 「………!それなら確かに何とかなりそうだわ!」
魔理沙 「よし決まり!虹星、私の箒に跨がれ!」
虹星 「ど、どっかに向かうんだね?分かった!」
三人はそのまま、無縁塚へと向かう事に。
霊夢 「それじゃ、もう一回座禅組んで瞑想しなさい。」
虹星 「う、うん。」
無縁塚に到着後、再び瞑想を始める。
霊夢 「虹星、今から私が言うことをよーく聞きなさい。まず、霊力ってものは誰の肉体にも流れているものよ。殆どの人間はそれを扱えていないだけ。本来なら私はその霊力を引き出して上げれるんだけど…まぁ、あのー…ちょっと出来ないから…あんたの場合は外気からの霊力を取り込んで霊力を覚醒してもらうわ。」
虹星 「うーん………。」
霊夢 「まぁ、できっこないわね。大丈夫よ、私が手伝ってあげるから。」
霊夢は大気に漂う霊気を虹星に向けて送り出す。
虹星 「………?」
霊夢 「ほら、周りが冷たい空気になったのと一緒に、体の中がじんわり暖かくなってきたでしょう?
その暖かいのを全身に張り巡らせるの。血液と一緒よ。最初は右手、左手、両足、頭と徐々にね。」
虹星 「(………本当だ。身体が少しずつ暑くなってきた。腕に足に頭に………全身に行き渡ったかも。)」
霊夢 「良し、そろそろいいと思うわ。虹星、目を開けてみなさいな。」
虹星は目を開けようと試みる。光の眩しさが目に染みたものの、少しずつ目が慣れていく。
虹星 「…えっ。何これ!体から変なもわもわが!
うわ!二人からも出てる。これが霊力?」
魔理沙 「ご名答!まぁ、私のは霊力じゃないけどな。さて、一先ず第一段階は突破だ。」
霊夢 「それじゃ、漸く次に進めるわ。虹星、そこら辺に落ちている石に意識を集中して、手をつけずに持ち上げようとしてみなさい。」
虹星 「石? こ、こう?」
虹星が石に対し、手を向けると…小さな石が空中に浮いた。
虹星 「おっうっ、浮いた!浮いたよ!?」
霊夢 「うん。それじゃあ、その標的を自分に変えてみて。あと、手を向ける必要ないわ。」
虹星 「お?おっおっ!か、身体が浮いた!俺、空飛んでる!」
霊夢 「空を飛んだ…?」
魔理沙 「いや、確かに飛んでるぜ。2cmくらい。」
霊夢 「飛んでるって言わないでしょこれ。」
虹星 「すげぇ〜!……………え、え?」
突如として虹星が地面に力無く倒れ込んだ。
霊夢 「あー、霊力が切れたっぽいわ。」
魔理沙 「ちょっと浮いただけでまじか。こりゃ洒落にならないぞ。」
倒れ込んだ虹星を担いで、二人は博麗神社へと帰るのだった…。
それから三日後…
霊夢 「………困ったわ。」
霊夢は虹星をどうしようかと悩んでいた。
霊夢 「如何せん、彼の霊力が少な過ぎてまともな修行もできやしないわ。一応、霊力を体に留める、放出する事は出来るようになったけど…。」
魔理沙 「空も飛べない、弾幕も出せない。ありゃー本当に才能がないっぽいな。」
霊夢 「正直言って彼にかける時間が多すぎるわ。私だって暇じゃないのに。」
魔理沙 「いや、暇じゃねえか。こんな閑古鳥が常に鳴いてそうな神社。」
霊夢 「うっさい!………兎に角よ、彼の霊力が増えなければどうしようもないから…。しょうがないから一旦あの修行をさせるしかないわね。」
魔理沙 「うん?あの修行って?」
霊夢は魔理沙に耳打ちで修行について伝えた。
魔理沙 「はぁ!?無理に決まってるだろ!あいつ死ぬ事になるぜ!?」
霊夢 「そもそも論よ!そんな事すら出来ないようじゃこの先、妖怪になんか歯が立たないわ!」
虹星 「うーん…?二人ともどうしたの?」
霊夢 「虹星!今から修行に行くわよ!空飛ぶから手を握って!」
虹星 「きゅ、急だね…わかった。」
三人が空を飛んで辿り着いた先は…薄暗い森だった。
虹星 「ふ、二人とも。此処は?」
魔理沙 「此処は魔法の森。私はここに住んでるんだ。」
霊夢 「今からあんたには…そうね、今はざっと午前十一時くらいだから…夕方の一七時まで此処に滞在してもらうわ。大丈夫、妖怪は滅多にいないから。」
虹星 「滞在って?何をすれば良いの?」
霊夢 「言葉の通りよ。ただ居るだけで何もしなくていいわ。私たちは一七時になったら迎えに来るから。
それじゃ、森の奥に進んで行きなさい。
それと、これは約束しなさい。何がなんでも常に!
体に霊力を張り巡らせている事!分かったわね?」
虹星 「わ、分かったよ?」
虹星は頭に疑問詞を浮かべながらも、森の奥へと歩いて行った。
魔理沙 「本当に大丈夫なのかよ…。今のあいつの霊力量じゃ、六時間なんか絶対持たないと思うけど。」
霊夢 「大丈夫。虹星の服の内ポケットにお札仕込んでいるから、倒れても居場所の特定は出来るわ。」
魔理沙 「やっぱり倒れる前提なのな…。」
虹星が魔法の森に足を踏み入れてから数分…
虹星 「ここ、本当に暗いな…ジメジメしてるし、空気は悪いし、霊力を張り巡らせておけって多分、この空気から身を守る為になんだろうな…。…とは言え、流石に疲れて来たかも…もう一時間くらい経ったかな…?」
それから更に時間は流れ…
虹星 「はぁ…はぁ…!まず…い…!やばいな…。
霊力が…切れかけ…て…。」
霊力が少なくなってきたのか、虹星が苦しそうな表情を浮かべながら木に背中を預けて座り込んでいた。
虹星 「ど、どうするか…?霊力温存の為に…少しだけ出力を弱めて………は?」
虹星の目の前には…口を大きくかっぴろげ、目の前の生物を捕食しようとする人喰い植物が…
虹星 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
虹星は我を忘れて全力で逃げ出す。
幸い、人喰い植物は地面から生えていたようでそれ以上は追ってこなかった。
虹星 「はぁ…はぁ…霊力もさっきのごだごたで…殆ど無くなっちまったな………。うっ?」
突如として虹星の身体に不調が現れ始めた。
虹星 「ごっほげほっ!げほっげぼっ!(や、やっぱりそうだった…!ここの空気は普通に吸っちゃ駄目なんだ…!)はぁ…はぁ…!げほっ、げふっ!?」
虹星の口から何かが吐き出てきた。咄嗟に抑えた手のひらには赤い液体がべっとりと…。
虹星 「あ、れ…?」
身体が小刻みに震え、視界は虚に、思考が固まり、ろれつが回らず上手く言葉を発せない。
虹星 「や、ば…い………。」
虹星は仰向けに倒れ込み、動かなくなった。
一方その頃、香霖堂では…
霊夢と魔理沙の二人は香霖堂にて椅子に座りながら煎餅を食べていた。霖之助が台所から、茶を持ってくる。
霖之助 「…君たち二人が此処に来て、虹星くんが居ないという事は…あの修行をさせているんだね?」
魔理沙 「私的には流石に酷だと思ったけどなー。」
霖之助 「僕も魔理沙に同感だね。今の虹星君には流石にまだ………」
霖之助が喋っている最中、霊夢が突然として椅子から立ち上がった。
霊夢 「虹星が倒れたわ、行くわよ魔理沙。霖之助さん、煎餅ご馳走様。」
魔理沙 「まぁ、そうなるかー。そんじゃ、またな香霖。」
霖之助 「いや、待ちなさい二人とも。虹星くんはちゃんとこっちに連れてきなさい。ちゃんと戻ってくるんだよ。」
目が覚めると見知った天井。
虹星 「………!僕、気絶したのか…。」
霊夢 「…おはよう。調子はどう?」
声の聞こえる方に振り向くと、寝室の入口には壁にもたれかかった霊夢がいた。
虹星 「大丈夫………だけど…正直、あの修行は………あの修行、他で代用できないの?」
霊夢 「………無理ね。あれは霊力量を試す為の修行、あれが完了できて漸く最低ラインだから。…あれが怖くてやりたくないってんなら、陰陽師になる事は諦めるべきよ。死にたくないなら死ぬ気で鍛える、それしかないわ。」
虹星は俯いた。あの森への恐怖心と、何より自身の情けなさに。
分かっている、闇雲に鍛えるしかないのだ。でも、どう鍛えれば?
答えを見つけられないまま、時間だけが過ぎていった。
三十分も持ってなさそう