弱みに漬け込むんだよぉぉぉ!!!
フランが部屋から出て行って数十分後…。
誰かが扉をノックする音が聞こえた。
レミリア 「……入るわよ、虹星。」
レミリアさん…にしてはやけに弱々しい声で少し驚いてしまった。
虹星 「レミリアさん…?はい、どうぞ!」
部屋の扉が開き、レミリアさんが部屋の中へと入ってきた。
………少し目が腫れている様に見えたし、あまり元気も無さそうで少し心配になった。
レミリア 「調子は…どうかしら?」
虹星 「さっき来てくれた時と変わってないです!………正直な事を言うと、こうやって話に来てくれると痛みも紛れるので凄い嬉しいです!」
レミリア 「ふふっ…そう…。それなら…良かったわ。」
レミリアさんは斜め下を見ながら苦笑いをしていた。
虹星 「………大丈夫なんですかレミリアさん?やっぱり体調が優れないんじゃ…?」
レミリア 「………別に、私も普通よ。」
虹星 「(………どう見ても普通じゃないよ…。)」
そんな事を思っていると…。
レミリア 「………ねぇ、虹星…何か欲しいものはない?お金とか宝石とか美術品とか…。」
虹星 「………うーん…自分、そういうのには疎くって…霖之助さんもあまり興味なさそうだと思いますし………そうだ!褒美とかって言うのなら、僕には必要ないですよ!自ら関わっただけですし!」
レミリア 「………それじゃ駄目なの…駄目なのよっ!!!」
僕の言葉にレミリアさんは俯きながら怒鳴った。
僕には…レミリアさんの顔がよく見えなかったけれど………。
頬に水滴が伝っているのだけが見えた。
虹星 「………レミリアさん?それは、どういう───」
レミリア 「………貴方がそう言うならば………それなら、これはどうかしら…?」
……………私の事、貴方の気が済むまで好きなだけ殴っていいよ。
……………な、何だったら貴方と同じように腕と目を………。
虹星 「………貴女は本当に、そういう事されたいんですか?」
レミリア 「………だ、だって…私、貴方に酷い事しかしてない……だから……。」
虹星 「……それが褒美だって言うなら、僕は必要ありません。」
レミリア 「………な、何で…?何でなのっ!!!?私…わたし………!貴方に酷いことしかしてないっ!いっぱい暴言吐いて傷つけて…なのに、なのに貴方は………命懸けでフランを止めて………私達を救ってくれた…。私は、私はどうすればいいの…?お金も宝石とかもいらないって言うならコレくらいしか、貴方に返せるものがないのよっ!!!」
高々十三年しか生きてない人間の子供を、執拗に痛めつけた挙句、妹を救ってもらったのにも関わらず、お礼すら素直に言えない………。
そんな、そんな私が赦されるにはそうするしかないじゃない………!
レミリア 「………そ、それならこっちにだって考えがあるわっ!も、もし私を殴らないって言うなら、私がまたあんたを痛めつけるからっ!残った右目も潰されたいの!?それとも左腕!?カカシにでもなってみる!?ほら、それが嫌なら殴りなさいよっ!!!」
虹星 「………。」
虹星は何も言わなかった。ただ黙ってレミリアを見つめていた。
レミリア 「………!うぅ…ひっ………ぅ……。」
レミリアは我慢できずに虹星の前で顔を手に埋め泣き出してしまった。
レミリア 「……………え…?」
虹星 「…………。」
虹星は居ても立っても居られず………レミリアの頭を左手で胸に引き寄せ、抱きしめた。
「……………あ、ああ……あああああっ………!」
抱き寄せられた少年の傷だらけの身体が妙に温かくて優しくて………レミリアは首元に齧り付いてわんわん泣き出した。
「馬鹿っ………あんた本当馬鹿なんじゃないの…!パチェから聞いたでしょ…!?治んないのよっ!?その腕も…目も耳もっ!!その傷跡もっ!!!」
レミリアは泣きじゃくりながら虹星に問いかけた。
「………無くなった物を悔やんだってもう戻って来ないんですよ。だったら………仕方ないって引き摺らずとっとと飲み込んだ方がすぐ立て直せて良いじゃないですか。 それに、本当は命で引き換えようって思ってたんですからこの程度で済んでラッキーです!」
「………何よそれ…あんたっ、本当何なのよっ!!
馬鹿…馬鹿………ばかぁぁぁぁぁっっっ!!!」
レミリアは虹星にしがみつき赤子のようにギャンギャン泣いた、それこそ、虹星の着ているガウンが再びびしょびしょになってしまうまで。
虹星も何も言わなかった………ただ黙ってレミリアを抱きしめ続けていた。
どれだけの時間が過ぎたのだろうか………。
不意にレミリアが口を開いた。
レミリア 「………もう離してもいいよ…?」
虹星 「………!ごめんなさい、離しますね…?」
虹星はレミリアの頭に添えていた腕を離し、レミリアと向き合った。
レミリア 「………ふふっ、貴方本当馬鹿なのね。………つくづく馬鹿よ。貴方みたいな馬鹿は初めて見たわ。」
虹星 「………馬鹿馬鹿馬鹿って…連呼されるとちょっと傷つきます…。」
レミリア 「………でも、そんな馬鹿さ加減がきっと、貴方の良い所なのね。………ねぇ、虹星。」
ごめんなさい。
そして…ありがとうね。
虹星 「………!はい、どういたしまして!」
レミリアがくすくすと笑い出したのを見て、虹星も嬉しそうに破顔した。
レミリア 「………それじゃ、私は部屋に戻るわね。………また、会いに来るからね…虹星。」
虹星 「………はい!いつでも来てください!」
レミリアは少し名残惜しそうに部屋を後にした…瞳を真っ赤に腫らし、ほんの少しだけ頬を赤らめて。
その時、部屋の隅で何かが弾ける音がした。
虹星 「………?」
虹星は音のなった方向に目を向けたが、そこにはただ空間が広がっているだけだった。
フラン 「………ふぅ。」
パチュリー 「………どうやら、思惑は杞憂で終わったようね。」
フランが指を鳴らすと、水晶を通して映していた部屋の映像の一切が消えた………そう、虹星が聴いた弾けた音、それはフランが水晶にかけた魔術…その部屋の状況を精密に映すお呪いを解いた音だった。
フラン 「………お姉様の様子が少し可笑しかったから急遽お呪いをかけたけれど…まぁ、正直そんな事はもうどうでも良くなったわ……………」
見た!?今のお姉様の顔!?
フラン 「わっかりやすく可愛らしく顔を赤らめちゃって!あんなの絶対落ちたわ!あのお姉様が!しかも相手は虹星!物凄い滾って来たわー!!!」
パチュリー 「全く貴女という子は………」
どうやって外堀を埋めようかしらね!?
パチュリー 「あの二人から確かなラブの波動を感じ取れたわ!!!こりゃぁ面白くなって来るわよー!」
フラン 「話が分かるじゃないパチェ!」
肩を組み合いはしゃぎ合う二人…その時、不意にパチュリーが口を開いた。
パチュリー 「………まぁ、とは言え…正直前途多難ではあるけれど…ね。………彼に残った、まだ伝えていない後遺症の事についても…。」
フラン 「………後遺症?腕や目、耳の他にもあるの?」
パチュリー 「………えぇ。私の力では治せない、厄介な傷よ。」
パチュリーは思い耽る…彼にその傷が乗り越えられるのかどうか。
それが無理と言うならばあの少年は…
パチュリー 「…どちらにしても彼に判断を委ねるしかないわね。」
フラン 「………大丈夫よ。例えどんな傷であろうと虹星なら問題ないわ。」
パチュリー 「………さぁ、どうなるかしらね。」
主人公君にも問題は大アリなのであった。