名だけの幸せは何を得るか   作:磁石とオニスズメ

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 修行は泥臭い物が好きだったり


辻斬りは遺伝らしい

それからも基礎的な修行は行なったものの、霊力は然程変わらず…。

 

 修行を始めて早一ヶ月………

 

 博麗神社の裏側にて虹星は筋トレを行っていた。

霊夢に少しでも霊力を温存できるよう、身体を鍛えるように言われたのだ。

 

 虹星 「…こんな事を続けてたって霊力問題は何も変わらない…!僕も早くあんな風になりたいのに…!一体どうすれば………!」

 

 ??? 「ほう…童、随分と良い刀を持っているな。」

 

 地面に座り、強くなる為の方法を模索していた虹星の背後から何者かが虹星に語りかけた。

 

 虹星 「…!? (誰だ…!?全く気づかなかった…!こんな所に人が居る筈無い…恐らく妖怪…!!!)」

 

 虹星は隣に置いてあった刀を素早く手に取り、刀を鞘から抜き出しつつ相手から距離を取って振り返った。

 

 振り返った先にいたのは…和風の着物を見に纏った、銀髪の老齢の男だった。また、その周りには大きな霊魂が浮いており、彼を人間ではないと認識させていた。

 

 ??? 「随分と出鱈目な構えじゃな…。刀は良くとも、その持ち主がこれとは…宝の持ち腐れじゃな。」

 

 虹星 「…っ! な、何なんですか貴方は!いきなり現れて罵倒するなんて!」

 

 ??? 「童…儂が人を襲う妖怪であったら、今頃お主は死んでおったのだぞ。周囲の確認すら出来んとは刀を持つに相応しく無い。…一つ、儂と勝負をしてもらうぞ。貴様が負ければ…その刀、儂が頂こう。」

 

 虹星 「なっ…!?(………や、やれるのか…?今の僕に…!あの老人を…斬れるのか…!?で、でも………霖之助さんから受け取ったこの刀を奪われる訳には………)う、うおおおっっっ!!!」

 

 迷いを見せながらも真正面から縦に斬り伏せようとした虹星に対し…

 

 ??? 「その様な生半可な気持ちで刀を振るおうなどと…笑止千万っ!!!」

 

 老人は左手をすかさず伸ばし、刀の柄を素早く掴んだ。

 

 虹星 「…!?くっ…!」

 

 そのまま腰を捻りつつ虹星の懐に入り、手を下げさせ地面についた刀を踏み、虹星の動きを封じた。

 

 虹星 「(は、早いっ!?そ、それになんて力だ…!ま、まるで腕が鉛みたいに…!刀を持ち上げられない…!)」

 

 虹星が動こうとするよりも素早く肘打ちを入れ、横に吹き飛ばして刀を奪った。

 

 虹星 「ぐぅっ…!?か、返してっ!!!」

 

 老人に吹き飛ばされた虹星は尻餅をつき、刀を見つめる老人を見上げた。

 

 ??? 「断る。………じゃが、儂の要求を飲めば返してやらんこともない。」

 

 虹星 「わ、分かりました!

         僕は何を差し出せば───」

 

 ??? 「片腕じゃ。」

 

 虹星 「……………え?」

 

 立ちあがろうとしていた虹星は老人の言葉に動きを止めた。

 

 ??? 「何をしている? 刀が惜しいなら早くどちらかの腕を前に出せ。」

 

 虹星 「ま、待ってください! そんな…いきなり腕を切り落とすなんて………で、出来るはず無いです!」

 

 ??? 「………小童、貴様は何も分かっていない。貴様は今、勝負に負けたのだ。それ即ち、実戦では死を意味する。命に比べれば腕一本で済むというのなら安いものだろう。」

 

 虹星 「で、でも………!ぼ、僕はもっと強くならないといけないんです!だから…だからこんな所で腕を失う訳にはいかないんですっ!!!」

 

 ??? 「貴様の事情など知った事か。さぁ、刀を選ぶか、腕を選ぶか………早く決めろ。」

 

 虹星 「……………(この人、本気だ。腕を差し出したら本当に斬られる。……………よくよく考えてみるべきなんだ。ここで腕を失ったら、絶対に霊夢や魔理沙のようにはなる事は出来なくなる。だから、だから………)」

 

 「───この刀を…君に授けよう。」

 

 虹星 「………………………。」

 

 虹星は左腕を恐る恐る前に差し出す。しかし、その腕は愚か、身体全体が大きく震えていた。

 

 ??? 「………ほう、腕を失う事が、その痛みが恐ろしいのにも関わらずその腕を差し出すか。」

 

 虹星 「………やるんだったら…一思いに…やってください………。今も…ふぅっ………こ、恐くて堪らないんです…。だから…早く………!」

 

 ??? 「…分かった。だが、その前に一つ聞いておこう。腕を失えば、貴様は強くなる為により辛い道を歩まねばいけなくなる。童は強くなりたいのだろう?では何故、茨の道を進もうとする?」

 

 虹星 「………その刀、恩人から預けてもらった…とても、とても大切なものなんです…。その人との約束を簡単に破ってしまうんだったら…絶対この先も強くなんかなれないって………そう思ったからです…!」

 

 ??? 「……………ふむ。」

 

 虹星 「………何してるんですか…!早くしてくださいっ………!」

 

 ??? 「…気が変わった。貴様の腕は貰わないでおこう。その代わり、別の要求を出すとしよう。

 ………三ヶ月くれてやる。小童、儂が貴様を三ヶ月の間只管に鍛え抜く。その三ヶ月間を耐え抜き、この刀を持つに相応しいと儂を認めさせれば、この刀を返してやろう。それが出来なければ今度こそ腕を貰うがな。

 ………言っておくが拒否権はないぞ。さぁ、時間が惜しい!さっさと鍛錬を始めるぞ!」

 

 虹星 「…………!?え、えぇ!?そんな藪から棒に…まだ、まだ貴方が誰なのかすら聞いてませんよ!」

 

 ??? 「儂の名は妖忌。今尚、剣の道を行くさすらいの武士。これで自己紹介は終わりじゃ。ほれ!ボサボサしてないで早よせい!」

 

 虹星 「僕の名前は?聞かないんですか!?」

 

 妖忌 「小童の名前などどうでも良いわ!三ヶ月後、童が儂を認めさせれば訊いてやるわい!まずは霊力を使わずに麓までの階段を三百周!」

 

 虹星 「さ、さんびゃく!?む、無茶苦茶だ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからは地獄の日々だった。

 

 虹星 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 妖忌 「ほれ、早よ走れい!そうでなければこの刀の鯖になるぞよ!」

 

 五十キロもの重りを霊力の使用(無いに等しい)を許可しているからという理由だけでつけられ、更には後ろから刀を振り回し強制全力ダッシュ………

 

 

 

 

 虹星 「うわぁぁぁぁっっっ!!!めが、目がまわるぅぅぅぁぅぅっっっっ!!!」

 

 妖忌 「刀を離せば殺す!意識を失っても殺す!絶対に刀を振り落とすでないぞ!分かったな!」

 

 虹星の足を持って只管に振り回す老人は何処か楽しそうだった。

 

 

 

 

 虹星 「ぐぅぅぅぅぁぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 妖忌 「まだ五分しか経ってなかろうが!あと一時間はきばれぃ!!!」

 

 指先に霊力を回し、ほんの小さな針に指一本で腕立てをし続ける修行………虹星は一週間でもう嫌になりかけていた。

 

 

 虹星 「うぅ………今日もこれからあの地獄に向かわないと…。」

 

 まるで魂が抜けたような顔でとぼとぼと博麗神社を後にする。

 

 魔理沙 「………虹星のやつ、ここ最近ずっと何処かに行ってるけど…どんどん生気が無くなってるていうか…。霊夢、あいつを放置してて大丈夫なのか?」

 

 魔理沙は机に頬杖をつきながら虹星の後ろ姿を見送る。

 

 対する霊夢は壁にもたれかかり、欠伸をしつつ…虹星をチラリと見た。

 

 霊夢 「んー………まぁ、少なくとも…取り憑かれてるとか妖怪の影響とかでは無さそうだし大丈夫じゃない?それに…」

 

 魔理沙 「分かってる。確かに虹星、この短期間で肉体と霊力共に大きく成長してる。」

 

 ………まぁ、まだ妖精に毛が生えた程度だが。

 

 霊夢 「まるで才能のないあの子があんな急に…一体どんな修行してるのかしら。

 ………というかー、そもそも私、生まれてこの方修行なんて殆どしてないしー。あの子にあった修行方法なんて分からないしー。」

 

 魔理沙 「私にそれ言ったって仕方ないだろ。香霖に初めから言っておけば良かったじゃない。」

 

 霊夢 「言われた事は初めから何でもできたしー、はぁ…これが天才故の苦悩って奴ね…。」

 

 魔理沙 「けっ、この才能マンめ…。まぁ、それはさておき。」

 

 霊夢 「どしたの?急に立ち上がって。」

 

 魔理沙 「ちょーっと虹星の様子を見に行ってみようかなって。」

 

 霊夢 「えー…着いてこないでってあの子言ってたじゃない、止めときなさいよ。」

 

 魔理沙 「バレなきゃ良いんだよ。あいつがどんな事してるのか気になるしさー。」

 

 霊夢 「てゆーか………そもそもここに入り浸るのも止めなさいよ。」

 

 魔理沙 「仕方ないだろー、何となく放っておけないんだよ彼奴の事。………それじゃ、ちょっくら行ってくるぜ。」

 

 魔理沙も虹星を追って博麗神社を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔理沙 「………さて、虹星の後を追ってきたのは良いものの………。」

 

 虹星 「誰か助けてぇぇぇぇ!!!!」

 

 妖忌 「反射神経を鍛える修行じゃ〜。当たると死ぬ程痛いぞよ〜。」

 

 魔理沙 「思ってた倍は力押しだった!」

 

 魔理沙が目にしたのは四方八方から飛び出てくる小さな丸太の様な物を命からがら必死に躱している虹星とそれを見ながら笑っている老人の姿だった。

 

 魔理沙 「何だアレ…殆ど拷問じゃねーか…。

つーかあの老人、人間じゃないな…。虹星を助けるか…?……まぁ面白いしもう少し見ててもいいか…。」

 

 虹星 「(よ、良し………意外と段々見切れるようになって来てる…。)」

 

 修行を始めて早15分。一度も被弾していない事に虹星は内心驚いていた。

 

 虹星 「(地獄のような鍛錬だけど確実に効果はあるみたいだ…一週間前の自分なら一つも避けられなかっただろうし………そういえば…こんなに酷い修行ばかりなのに肉体的な疲労が全く無いな…一体何で………)ぐえっ!??」

 

 物思いに耽っていた虹星の後頭部に丸太がクリーンヒットし、虹星は力無く地面に倒れ込んだ。

 

 妖忌 「やれやれ…見切れる様になって油断するからこうなるのじゃぞ。さて………そこの木の後ろにいる小娘、盗み見は感心せんぞ。」

 

 魔理沙 「(げっ!?バ、バレてたのか!)」

 

 妖忌 「子童の友人か何かだろう?心配は要らないぞ、死なないギリギリの所で鍛えておるからな。」

 

 魔理沙は仕方なく木の後ろから姿を出した。

 

 魔理沙 「ほ、本当かよ…。いや、仮にそうだとしてももう少し手心ってやつをだな…。こいつ、一ヶ月前は普通の人間だったんだぜ?」

 

 妖忌 「儂とて時間は有限じゃ、小童にかけられる時間は三ヶ月しかない。故に無理にでも童を鍛えんといかん。」

 

 魔理沙 「………見たところ、あんた幽霊だろ?どうして虹星を鍛えてるんだ?」

 

 妖忌 「……偶にはひ弱で気弱な者を弟子にとって見るのも良いと思ってな…。それに此奴は儂の孫と年齢も近い、良き好敵手になるかもしれんしな。」

 

 魔理沙 「ふーん…。虹星の奴…中々起き上がってこないけど大丈夫なのか?さっき頭に丸太が思いっきり当たってたけど。」

 

 虹星の側に腰を下ろし、頬を一度二度と叩く。

 

 魔理沙 「な、なぁ…これって割とまずい状況なんじゃないか?」

 

 ぴくりとも反応しない虹星に魔理沙は不安を覚え始めた。

 

 妖忌 「問題ないわい。」

 

 そう言うと妖忌は懐から竹筒を取り出し、虹星にそれを飲ませ始めた。

 

 魔理沙 「お、おい…それってなんか危ない薬とかじゃないよな…?」

 

 妖忌 「これは儂が長旅の末編み出した秘薬、どんな深い眠りについているものでもこれを飲めばたちまち飛び起きるぞ。更には肉体疲労の回復に質の高い筋肉及び霊力作成の手助けまで…これにより小童は肉体の疲労を理由に鍛錬を止めることが出来なくなるのじゃ。

ククク………。」

 

 魔理沙 「お、おぉ…。(こんな危ない老人に目つけられて、なんか可哀想な奴だな。)」

 

 虹星 「………うわぁぁぁぁぁ!??」

 

 悪い夢でも見ていたのだろうか、虹星がいきなり飛び起きた。

 

 虹星 「………夢で良かったぁ…。って、魔理沙?どうして此処に…?そ、そうかこれは夢か…。まだ醒めてないんだなきっと…。」

 

 再び寝そべろうとした虹星の肩にぽんと腕が置かれる。

 

 妖忌 「お早う、良い目覚めじゃな。さて、修行の続きを始めるぞ。」

 

 虹星 「………あれ、夢じゃないのこれ。え…!!!ま、魔理沙頼む!今すぐ僕を連れてこの人から逃げてくれ!このままじゃ命が幾らあっても足りない!」

 

 妖忌 「命尽きる度に蘇生してやるから問題ないわい。」

 

 虹星 「問題しかないんですよ!!」

 

 魔理沙 「まぁ…あの…何だ………その人、悪い人って訳では無さそうだから…まぁ、頑張れ!因みにどんな夢見てたんだ?」

 

 虹星 「この妖忌さんに地獄みたいな修行をさせられる夢。」

 

 妖忌 「正夢じゃ。」

 

 虹星 「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 





 
 え、何?修行方法に既視感がある?
 気のせいじゃないよ!
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