名だけの幸せは何を得るか   作:磁石とオニスズメ

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 実際これくらい飄々としてると良いなぁ的な


油断してばっかり

 虹星 「はえー…これまた豪勢な建物だなぁ。」

 

 三人は湖を更に進み、麓にある紅い館を見つけた。

 

 霊夢 「………あのねぇ、観光に来たんじゃないのよ。」

 

 魔理沙 「態々濃霧で隠してたんだ。金銀財宝がざっくざく…かもしれないな。早速入ってみようぜ!」

 

 三人は門を潜り、目の前の大きな戸を開け館の中へと進んでいった………筈なのだが。

 

 

 

 虹星 「………ん?あ、あれ!?」

 

 館の中に侵入したのにも関わらず、何故か虹星は門の前へと戻ってきてしまっていた。

 

 虹星 「い、一体何が…?」

 

 寝ぼけていた訳じゃない。霊夢と魔理沙がいないのでそれは確定事項。

 

 では一体何故…?

 

 虹星は何度も門を潜り、大きな戸を開け、館の中に入る。その度に、また門の前へと戻されてしまっていた。

 

 魔理沙 「虹星ー!何やってんだ?先に進んじまうぞー!」

 

 霊夢と魔理沙が扉を開け、虹星に呼びかける。

 

 虹星 「………何故か分からないけど、僕はこの館に入れないみたーい!先に進んでくれー!」

 

 霊夢 「………確かに私たちは並んで館の扉を通った筈……恐らく誰かの能力によるものね。待ってなさい虹星!この事象を起こした奴をとっちめればあんたも入れる筈よ!」

 

 魔理沙 「良し!じゃあまずはその犯人を見つける所からだな!行くぜ霊夢!」

 

 霊夢 「………ええ。足、引っ張らないでね。」

 

 二人はそのまま、館の奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虹星 「う〜ん、やっぱり通れないな…。」

 

 二人が進んだ後も館に入らないか、窓から侵入する事もしてみたが………入る事はやはり出来なかった。

 

 ??? 「君も懲りないねぇ。」

 

 突如として背後から声を掛けられた。

 

 虹星 「わっ!?び、びっくりした…!

 ………(音もなく背後に現れるなんて…この人只者じゃないな…。)貴方はどちら様ですか?」

 

 美鈴 「私は紅美鈴。この館…紅魔館の門番を仰せ仕っている者よ。」

 

 虹星 「門番………でも、赤い子と黄色い子がこの館に入っていきましたけど。」

 

 美鈴 「………それ本当?う〜ん…メイド長からは侵入者はまだ門にいるって聞いたんだけど…信用されてないのかなぁ。」

 

 虹星 「だけれど、自分は何でかこの館に入れないんですよね…。それは貴女の仕業だったり?」

 

 美鈴 「それは…それこそ、今言ったこの館のメイド長の仕業だよ。時と空間を支配できるの。」

 

 虹星 「と、時と空間?…そんな馬鹿げた話、信じませんよ。………きっと本当なんでしょうけど。」

 

 美鈴 「……………まぁ、君が館に入れないのは事実だしね…。………既に侵入者が館の中に居るとするのなら…私は君の相手をすれば良いって事なのかな。」

 

 虹星 「自分に言われても………。」

 

 美鈴 「うーん、まぁ良いや!館の中の侵入者はメイド長たちが何とかするだろうし。私は君の相手をする事に決めた!ほら!君、剣士なんでしょ?さっさと刀構えて!………それと、闘うとなった以上情け無用で行くからね〜。」

 

 虹星 「は、はぁ…。」

 

 随分とほわほわした人だ、本当に闘う気があるのかよく分からない。

 

 一応、言われた通りに刀を構えた。

 

 虹星 「がはっ!?」

 

 美鈴 「………ごめんねぇ。」

 

 瞬間───虹星は首を鷲掴みにされ地面に叩き付けられていた。

 

 美鈴 「侵入者は生死を問わない…まぁ、生かしたとしても動けないくらいには痛めつけろって上からの命令なの。私が仕えているお嬢様は弱さを嫌う性格でね。

………本当は君みたいな小さい子にこんな手荒な真似したくないのよ?でも、仕事をクビにされる訳にも行かないの。それに、此処に来たって事は少なからず命を落とす覚悟はしてるだろうしねぇ。」

 

 美鈴は首を絞める力を強める。

 

 虹星 「あっ、が…ぐ……(ま、っずい…!意識持ってかれ………!やら、なきゃやられる………!)」

 

 虹星は刀を何とか鞘から抜き美鈴の腕に突き刺した。

 

 美鈴 「………!」

 

 美鈴が一瞬腕を離した隙に、地面を横に転がりながら虹星は退避した。

 

 美鈴 「………頑張るねぇ。」

 

 美鈴は虹星を見てニヤリと笑みを浮かべ、腕の傷を指でなぞる。なぞられた傷は瞬く間に消えていった。

 

 美鈴 「殺すつもりはないのだから、今ので気絶しておくのが身の為だったよ。」

 

 虹星 「ゴホッ‥ゴホッ…!ハァ…す、スペルカードのルールはどうしたんですか…!近接も…相手を痛めつけるのも…!禁止されてるでしょ‥!」

 

 美鈴 「………さぁ、どうしたんだろうね。」

 

 虹星 「(一気に距離を詰めてきた…!来るっ!)」

 

 美鈴が真っ直ぐに拳を突き出して来たのに対し、虹星は刀を鞘に納め、拳を交差させた。

 

 拳が直撃した瞬間、虹星は風に飛ばされた葉のように大きく吹き飛んだ。

 

 その勢いは止まることを知らず、木々を何本もへし折って漸く止まる程だった。

 

 虹星 「がっは…はっ…はぁっ…はぁっ…!」

 

 木に叩きつけられた虹星は両手を一目見る。腕はちゃんとあったし骨も折れてはいなかった。

 

 只………腕が大きく痺れ、まともに言う事を聞かない事、背中が焼けているような痛みに恐怖を覚えていた。

 

 虹星 「(僕は何を考えていたんだ…!人の形をしているだけで……話が通じるだけで……!

          妖怪は妖怪じゃないか…!)」

 

 美鈴 「これでもかなり手加減している方なんだよ?君を殺したいって訳じゃないからねぇ。…とはいえ、脳を揺らした筈なのに気絶していない辺り、三半規管もそこそこ鍛えてるみたいだから…やっぱり痛めつけるしかないか。…それとねぇ、スペルカードルールって物はまぁ建前みたいなものさ、実際には近接は禁止されていないのだから。 ま、仕方ないから弾幕も使ってあげるけどさ。 虹符「彩虹の風鈴」!」

 

 大量の弾幕が時計回りに展開される。

 

 虹星 「立て…!今は痛みなんて気にしてられない………動け身体ぁっ!!!」

 

 虹星は震える両手を無理矢理律し、弾幕を躱し捌き…必死に堪えていた。

 

 虹星 「………良し…!弾幕は意外と大した事は………は───」

 

 美鈴 「………スペルカードを使っているからと言って……私が直接攻めてこない訳ではないよね。」

 

 虹星は唖然とした声を上げた。弾幕を展開していた筈の美鈴が目前まで迫っていた事に漸く気づいたからだ。

 

 虹星 「(…来る………!打撃がくる……!)」

 

 虹星は咄嗟に腕を前に構え、防御の体制をとった。

 

 美鈴 「……咄嗟にしてはいい判断だと思うよ。」

 

 美鈴は虹星に打撃を与える……のではなく、虹星を両手で大きく突き飛ばした。

 

 虹星 「(……違うっ!!!狙いは打撃じゃない!まさか………あ。)」

 

 虹星は突き飛ばされた最中、後ろを振り向き………躱した筈の弾幕が自分を待ち構えているのを一目見た。

 

 美鈴 「………死棋だね。」

 

 大量の弾幕の中に虹星が飛び込み…直撃したと同時に大きな爆発が発生した。

 

 虹星 「………!………?」

 

 虹星は大きく吐血した後、白目を剥きながら地面に倒れ込んだ。

 

 美鈴は倒れた虹星の傍に座り込み、脈がある事を確認する。

 

 美鈴 「………少しやり過ぎてしまったな。まぁ、これでもう紅魔館には近づこうなんて考えないでしょう。傷をある程度治したら………!?」

 

 美鈴が立ちあがろうとした瞬間………その首元に向かって刃が振るわれた。

 

 美鈴は最初こそ驚いたものの、容易く刀を左手で受け止め、倒れ込んだ虹星を大きく投げ飛ばした。

 

 虹星の身体はろくに受け身も取れず、地面を転がっていく………その勢いが弱まった時、虹星の身体が持ち上がった。

 

 虹星 「ゴホッ…ゴホ…っく…う…うう…!」

 

 美鈴 「気を失ったフリ…ね。そこまで必死になる必要があるのかしら。というか、思った以上にタフね。」

 

 虹星 「………どうしてそこまで…はぁ…!この館に入るのを許して…くれないんですか…?」

 

 美鈴 「だって門番だもの、お嬢様の命令とあらばそれに従うだけ。………貴方こそ、どうしてこの館に入りたいの?」

 

 虹星 「………大切な恩人が…友達が入って行ったんです…!貴女みたいな妖怪がまだ館に居るのなら…二人が心配だから………助けに行きたいんです…!」

 

 美鈴 「………残念だけど、君じゃ足手纏いにしかならないよ。」

 

 虹星 「………囮くらいにはなれますよ…!」

 

 美鈴 「…どんな教育を受けたのかしら…馬鹿ね。」

 

 両者は再び構え、闘いを継続した。

 

 美鈴 「幻符「華想夢葛」!」

 

 大量の丸弾が辺り一面にばら撒かれる。

 

 虹星 「(これに精一杯になっていたらさっきの二の舞にしかならない…!…自分も一か八かに賭けるしかない…何となくで作った技を使ってみるしかないっ!)」

 

 霖之助さんから一枚もらった無地のスペルカード、自分も一枚適当に作った。技と言えるような代物では無いかもしれないが…使わないよりはマシ。

 

 虹星 「(技を使う時はスペルの宣言を…!)

            激符 「須佐之男」! 」

 

 辺り一面を只管に斬り刻む技。芸がない自分にはこれくらいしか出来ないが…この状況では寧ろこれが良い。

 

 丸弾を全て斬り刻み爆発し…辺りに土煙が舞った。

 

 美鈴 「………煙で視界が遮られた今…さぁ、どうやって仕掛けてくるのかしら。」

 

 虹星 「………っ!!!」

 

 虹星は煙の中から美鈴の前に飛び出し、首を狙って素早く一閃した。

 

 美鈴 「………がっかりね。」

 

 美鈴は飛び出してくるのを分かっていたかの様に再び軽々しく一閃を左腕で受け止め刀は背後に放り投げた。

 

 酷く鈍い音が響く、次の瞬間には虹星は腹部を押さえて地面に蹲っていた。

 

 美鈴は関係ないと虹星の首を掴み、持ち上げた。

 

 美鈴 「息ももう絶え絶えね…抵抗する余力もないみたい。…まぁ、人間にしてはそこそこ頑張った方ね。これに懲りたらもう二度と───。」

 

 美鈴に背後からドスッと衝撃が来る…何故か吐血もしていた。

 

 虹星 「ぼ…くの…刀は…僕の元に向かって…一直線に…飛んでくる…。刃を前に…して…。」

 

 美鈴 「…へぇ。」

 

 美鈴が自身の身体を見てみると…心臓が刀に貫かれていた。

 

 美鈴 「そういう真似も出来るんだ………やる……ねぇ……。」

 

 美鈴は力無く地面に倒れ込んだ。

 

 虹星も同時に首締めから解放され、大きくむせた。

 

 虹星 「…ハァ…ハァ…。………っ…!!」

 

 やってしまった。

 

 妖怪とはいえ、やらなきゃやられていたとはいえ…

 

 人の形をした者を殺めてしまった。

 

 虹星 「……………。行こう…二人が心配だ…。」

 

 罪悪感に苛まれながらも…妖怪から刀を抜き取った。

 

 虹星 「ごめん…なさいっ…!…僕は二人を助けに行きます…!」

 

 虹星は振り返らず、館へと向かおう………とした。

 

 美鈴 「………ふぅ。」

 

 虹星 「………え」

 

 気付いた時にはもう遅かった。

 目で追えない程の速度で自分は地面に叩きつけられていた。

 

 虹星 「あ…がああっ…!ぐぅ……ぅ…。」

 

 美鈴 「駄目じゃないか…ちゃんと首を潰すなり何なりしないと。妖怪は心臓が潰れたくらいじゃ死なないよ。」

 

 もう…駄目だ。もう抵抗する力もない。

 

 死ぬ…殺される…。

 

 美鈴 「さて…それじゃあ。」

 

 美鈴は力を緩め、虹星のお腹の上に座り込んだ。

 

 虹星 「ぐぇっ!?」

 

 突如としてお腹に乗っかられた為に、虹星は情けない声を上げた。

 

 美鈴 「なにー?私が重いって言いたいのー?」

 

 虹星 「い、いや…お腹に急に乗っかられたら…重かれ軽かれこう反応しますって…。」

 

 美鈴 「………痛かったよね。ごめんね…気を流して…傷、治してあげるからね。」

 

 虹星 「(…ポカポカして暖かい…傷の痛みもちょっと和らいでるかも……。)僕の事…殺さないんですか…。」

 

 美鈴 「…敗けは敗けよ。スペルカードルールにおいて、敗者は勝者に逆らっては行けない。………それはまぁ建前で本当の理由としては……君をこれ以上甚振るとこっちも辛くなるから。」

 

 虹星 「………それだったら…僕をあの館に入れさせてください…!二人に何かあったら…!」

 

 美鈴 「………ごめん、それは許可できない。………この先、私みたいに容赦してくれる人や妖怪はいない。………館に入れば君は、間違いなく殺されるよ。」

 

 虹星 「だったら‥尚更…!」

 

 美鈴 「君の友達なら…きっと大丈夫だと思うよ。

メイド長から報告が来てないし、多分…。………だからまぁ…君のお友達が戻って来るまで、お姉さんとお話しときましょ。」

 

 虹星 「……………嫌いです。護られてばっかりなのに…この期に及んで何もできない自分が…。弱い自分が…。」

 

 美鈴 「…君、何歳?歳いくつ?」

 

 虹星 「多分………十三歳。」

 

 美鈴 「………本っ当に若いね…。良いのよ、まだ子供なんだから。また少しずつ強くなっていけばいいの。一朝一夕で強さは身につく物じゃ無いんだから。」

 

 虹星 「……その優しさも、今の僕には辛いです。」

 

 美鈴 「………というか、君小柄すぎ!ちゃんとご飯食べてる?身長いくつよ?」

 

 虹星 「…百五十です。」

 

 美鈴 「…いや、百五十もないね。」

 

 虹星 「百五十…!」

 

 美鈴 「百四十九…いや、百四十八ってところか。」

 

 虹星 「ひゃくごじゅう…!」

 

 美鈴 「見栄張らなくて良いのよ。………その漢服可愛いね。何処で買ったの?」

 

 虹星 「貴女のせいでボロボロですけどね…。居候させてもらってるお店の店主さんのお下がりです。」

 

 そんな話を続けていたら…あっという間に夜になって、そして…元から無かったとでも言うように、霧が綺麗さっぱり消えてしまった。

 

 霊夢と魔理沙が異変の首謀者を倒したのだろう。

 

 美鈴さんはそれを見るなり、館に戻らないと、とわたわたしていた。

 

 傷はある程度治っていたのでもう大丈夫ですと伝えると、自分に深く頭を下げた後、また会いに来ますと言われたので神社の場所を伝えておいた。

 

 その後は霊夢、魔理沙と合流して神社へと帰った。

 

 結局館の中には入れずじまい。

 

 後から聞いた話だが、異変を起こした?吸血鬼は日光が煩わしく、日中も動きたいから霧をばら撒いたらしい、なんて傍迷惑な。

 

 今回の件を通して、命が惜しいのであの館にはもう近づかない様に心に誓ったのだが…

 

 結局、関わる事になってしまうのはまた次のお話で。

 






 ボコられるのはまぁ仕方がない
 今の主人公君には3面が限界みたいですね
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