自己加速しすぎてスタープラチナ・ザ・ワールド   作:常谷 優大

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みなさん大変お待たせ致しました。W杯見てました。

魔法科の熱が冷めた訳じゃあなくて早くこの入学編終わらせてぇなって感じてます。ハードル上げますが九校戦は超面白くなる予定です。期待してて待っててください。

では、本編どうぞ


第4話

 

次の日。

学校へ向かう途中の並木道でほのかと雫を見かけたので後ろから声をかける。

 

 

「よっ」

 

「…あ、八幡くん、おはよ」

 

「おはよう」

 

俺の声に気がついて振り返る2人。自然に俺と歩くペースを合わしてくれながら雑談に花を咲かせる。今日のことやら、学校行事のことやら、それこそ昨日の俺の魔法についてなど。

すると「そういえば」と言った雫が俺に言う。

 

 

「…5秒間って実際どれくらい動けるの?」

 

「たしかに。短いような長いような…あまり実感わかないや」

 

「…ちょっと想像し辛いか。なんて言えばいいのか…」

 

うーーんなるほど。たしかにあまり考えたことがなかったことだ。いわゆるファンタジー系のラノベで時を止めるやつだと、数十秒なんでもやり放題だが、ここは現実の世界。んな時間停止モノみてえなことは絶対に起きない。

 

「全力で動いて50mいくかいかないか…くらいだな」

 

「…50m…結構動けるんだね」

 

「ただ馬鹿みてえに疲れる」

 

全力疾走しながら自分の周囲に広がるエイドスを認識し、その都度魔法式に変数をノータイムで代入し続ける。口にするのは易し。本気の50m走の最中に難解な数学の問題を頭の中で解き続けるのと大して変わりない。

だから普段そんな動くことはない。あ、この前の沖縄の残党で思い出したけど3年前は確か全力で魔法を行使した記憶がある。

あん時は文字通り骨が折れた。

 

 

「毎回時を止めてるの?」

 

「正直そこはケースバイケースだな。お前らには言うが、この魔法はある程度インターバルがないと連発出来ねえんだよ」

 

俺がこの魔法を1度使うとその度脳がヒートしちまう。1度クールダウンが必要になるため、連発はできない。無理矢理にでもやろうとすれば魔法演算領域が焼き切れて一生魔法が使えない体になるか、廃人になるかの2択だ。

それを防ぐための指輪型CADだ。俺の脳の負担を軽くしてくれるため少ないクールタイムで加速魔法が使える。

 

「ほえ〜…他の魔法は使えるの?ほら、得意魔法以外に」

 

「やろうと思えばなんでも出来るぞ?流石に戦略級魔法は専門外だが」

 

「…やっぱ八幡すごいね」

 

「お前ら2人も相当な腕前だと思うけどな」

 

パッと見ただけでその人の強さとかはおおよそ分かる。達也とか深雪とかは絶対に戦いたくないレベルで強い。

あの2人は流石に規格外だけどほのかも雫も潜在能力含めれば相当な魔法師になるはずだ。そう考えると一高の魔法師レベル高すぎないか?

 

「八幡にそう言われると嬉しいね」

 

「うん!」

 

「俺はぼっちだが人を見る目はある方なんでな」

 

「…やっぱ自分を下げるんだ…」

 

ほのかと雫は俺のジョークに苦笑いしながら学校の正門へと足を踏み入れた。

 

 

教室へ着くと、俺たち3人に気がついた深雪がこちらへと歩いてくる。

 

「おはよう深雪!」

 

「おはよ」

 

「ええ、おはよう。八幡さんも」

 

「うっす、おはようさん」

 

昨日の今日で俺らはちょっとした有名人となっているため、周囲の視線が自然とこちらに集まる。元々深雪は視線を寄せやすい容姿をしているためあまり違和感が無いが、俺にとってはこの環境は正直言ってむず痒いものがある。

 

「八幡さん。今日のお昼私と共に生徒会室へお越しいただくよう、朝に七草先輩からお聞きしております。ですのでお昼のご予定は空けておいてくださいね」

 

「真由美姉…いや、七草先輩が…?分かった…ありがとな」

 

大方生徒会への勧誘だろうなぁ…個人的には遠慮させて頂きたいが、あの人なら無理やりにでも入らせてきそうで怖い。

 

 

「…昨日は聞きそびれたけど、結局生徒会長とはどういう関係なの?」

 

「んぁ?そーいえば言ってなかったか…。俺がガキの頃にあの人とトラブルに巻き込まれたことがあってな。そっからの付き合いなんだよ」

 

「だからあんなに仲良さそうだったんだね…!」

 

「私達も負けないくらい仲良くならないと」

 

「どこに対抗心燃やしてるの…?」

 

その後も談笑しながらHRまでの和むひとときを過ごした。

 

 

時は進んで約束の昼休み。達也も共に向かうそうなので、予め持参していた弁当箱を手に持ちながら達也を待つ。

すっぽかそうと逃走を試みたが「八幡さん?どこに行かれるんですか?」と絶対零度の瞳で見つめられながら詰められて素直に従った。僕もっと強くなりたい。

 

深雪の絶対零度の包囲網から逃れられず、俺は大人しくついていき、後に合流した達也と並んで廊下を歩いていた。

一歩後ろには、お兄様の後ろを完璧な所作で随行する深雪の姿がある。

 

「……なぁ、達也」

 

「なんだ、八幡」

 

「なんでお前までついてきてんの? 呼ばれたの俺と深雪じゃねぇの?」

 

「…元々そのはずだったんだがな。数年ぶりに再会したのにも関わらず先輩を放ってほのかや雫と登校していたどっかの誰かを見た生徒会長が連れてくるように言ったんだ」

 

「へぇ、最低だなそいつ」

 

「鏡見ろ」

 

「あの時の会長の圧は凄まじかったですよ…」

 

心底疲れたといった風に深雪が肩をすくめる。隣でうんうんと頷く達也を見て少しだけ謝った後に呟く。

 

「この先が思いやられるぜ…」

 

「そこは仕方がないことさ。昨日の騒動の当事者として、事情聴取も含めてということだろう」

 

達也は至って冷静に、事務的な口調で返してくる。相変わらず隙のない男だ。だがその瞳の奥には、昨日よりもさらに深い「観察」の光が宿っているのを見て肩をすくめる。

 

 

「八幡さん、そんなに嫌そうな顔をしないでください。七草先輩はとても素晴らしい方ですよ。少々……お茶目が過ぎる一面もありますが」

 

後ろから深雪が鈴を転がすような声でフォローを入れてくるが、その「お茶目」の被害者がここにいるんだよ。

あの人の笑顔の裏にある狡猾さを、俺は身をもって知っている。

 

 

 

そんなこんなで話していたら気がついたら目の前に生徒会室。

生徒会室の重厚な扉の前に立ち、達也が軽くノックをしてから扉を開ける。

 

「1年E組、司波達也です。司波深雪と共に比企谷八幡を連れて参りました」

 

「失礼します」

 

中に入ると、そこは高校の部屋とは思えないほど洗練された空間だった。そして応接用のソファに座っていた真由美姉さんが、俺の姿を認めた瞬間にぱぁっと表情を輝かせた。

 

「はちくん! 待ってたよー!」

 

「ちょ、真由美! 昨日の今日でまた抱きつこうとするな!」

 

立ち上がって突進してこようとした真由美姉さんの額を、横から渡辺先輩が手帳でペシッと叩いて静止する。

ナイスディフェンス、渡辺先輩。俺のライフが守られた。

 

「もう、摩利ってば手厳しいんだから……。とにかく、3人とも座って? お昼がまだでしょ?」

 

真由美姉さんは不満げに頬を膨らませながらも、俺たちをソファーへと促した。

部屋には他にも、副会長の市原先輩や、書記の中条先輩(なんか俺の目を見て怯えてる気がする。)の姿もあった。

ちなみに名前を知っているのは昨日小町に一高のパンフレットを朗読させられたから。生徒会の役員の名前は一通り覚えさせられた。あれは辛かった…。

 

俺たちが持参した弁当(俺は小町特製弁当、達也は深雪のクオリティが高すぎる手作り弁当)を広げると、真由美姉さんは物欲しそうに俺の弁当箱を覗き込んできた。

 

 

「あ、それ小町ちゃんのお弁当? 相変わらず美味しそう……一口ちょうだい?」

 

「会長、流石にそれははしたないです……」

 

市原先輩が少し呆れたように窘めるが、真由美姉さんはどこ吹く風だ。

 

「いいじゃない、深雪ちゃん。はちくんと私は『あんなこと』や『こんなこと』を乗り越えてきた仲なんだから」

 

「誤解を招く言い方すんのやめてもらえますかね、生徒会長さんよ」

 

俺がMAXコーヒーを一口飲んで溜息を吐くと、対面に座る達也が静かに食事をしている。

俺がhelpの意味を込めて視線を送っても諦めろと言わんばかりに視線を落とした。薄情者め。

 

 

 

食事も一段落したところで真由美姉さんがティーカップを置き、その瞳に「生徒会長」としての狡猾な光を宿らせた。

 

「さて…改めて呼び出した理由なんだけど。当校は生徒の自治を重視していて、生徒会は学内で大きな権限を与えられてるの…

そこで司波深雪さん、貴女が当校の生徒会に入ってくださることを私たちは希望します。引き受けていただけますか?」

 

「私が…でしょうか」

 

少しだけ沈黙の時間が続き、深雪は達也と目配せして通じ合ったかのように頷いた。

 

「…会長は兄の成績はご存じでしょうか?」

 

「……深雪っ!?」

 

通じ合ってねぇじゃねぇか。どうした仲良し兄妹。

 

「ええ、知っていますよ。すごいわよねぇ…。先生に答案を見せてもらった時は、自信を無くしました…」

 

「・・・・・・成績優秀者、有能な人材を生徒会に迎え入れるのなら私よりも兄の方がふさわしいと思います」

 

会長、深雪共に達也をベタ褒めする。当の本人は困ったように眉を下げ、どうすればこの流れを断ち切ることができるかを必死に考えている。

しかし意外にもこの達也生徒会入りムーブを壊したのは市原先輩であった。

 

 

「残念ながら、それはできません」

 

その言葉に、一同は市原先輩のほうへと視線を向ける。

 

「生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれる。これは不文律ではなく、厳然たる学校規則です。

これを覆すためには、生徒総会で制度の改定が決議される必要があります」

 

市原先輩の淡々とした口調は、どうしようもないほどに正論だった。これは感情論ではなく、この第一高校を縛る絶対的なルール。

深雪の言っていることは、どれだけ兄を想うが故の行動だとしても、システムを無視した子供の我儘と同じ枠に分類されてしまう。

 

「……申し訳ありません。分を弁えぬ差し出口、お許しください」

 

深雪も自身の失言を自覚したのだろう、素直に非を認めて深々と頭を下げた。

 

「いえ、デスクワークの事務処理能力なら、成績優秀者はむしろ適材なので本来なら喉から手が出るほど欲しいところなのですが……生徒会が率先して規則を破る訳にも参りませんので」

 

鈴音先輩のフォローを受け、深雪はもう一度小さく一礼する。

 

「ええと、それでは……深雪さんには書記として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」

 

「はい。精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願い致します」

 

再び頭を下げた深雪に、真由美姉さんはいつもの満面の笑顔で満足そうに頷いた。

 

「具体的な仕事内容はあーちゃんに聞いてくださいね」

 

事務手続きを丸投げされた中条先輩が「ふぇっ!?」と小さく狼狽するのを横目に、真由美姉さんの視線が、今度は獲物を見つけた肉食獣さながらの滑らかさで俺の方へと向いてくる。

 

 

「……帰っていいすか」

 

「いいわけがないでしょ」

 

「俺の危機察知が反応したんで」

 

「OFAの4thじゃないんだから」

 

あんたヒロアカ通じんのかよ。

 

 

「はちくんには風紀委員会に入ってもらいたいの」

 

風紀委員会……ジャッジメントですのっ!とかいうやつ?

俺が頭の中で「?」を浮かべていると、それを見かねた渡辺先輩が補足説明をしてくれる。

 

「君は『教職選任枠』で風紀委員に推薦されたんだよ。まあ正確には、やらかした奴の後釜だな。

ほら、昨日同じ1-Aの森崎と一悶着あっただろう? 一応不問にこそしたが、校内の治安維持を務めるべき風紀委員が、差別発言をして騒動を起こすようでは本末転倒ということでな。

本来は森崎がその教職選任枠に収まるはずだったんだが、急遽取り下げられて代わりに比企谷、お前が推薦の運びとなったわけだ」

 

なんで森崎の差別発言を知っているのかは疑問だが、そういうことであれば俺に白羽の矢が向けられるのは納得ではある。

 

ただそれはそれとしてやるのは正直めんどくさくはある。

 

 

「…だめかしら?」

 

険しい顔をした俺を見かねてか、真由美姉さんが不安そうな表情で聞いてくる。

 

「……メリットはあるんすか」

 

「内申点…は、はちくんの興味をそそらないわね。」

 

クスッと悪戯っぽく微笑みながら、真由美姉さんは人差し指を顎に当てた。

 

「じゃあ、これでどうかしら?

風紀委員の腕章。これさえあれば、理不尽なイチャモンを『職務妨害』として合法的に一蹴できる権限が手に入るわ。」

 

そーゆーの好きでしょ?と言わんばかりに人差し指を俺に向けてそう言う真由美姉さん。いや、そもそもイチャモンすらつけられないように過ごしてたいのよ…。

未だ納得していない俺はそっちのけで話は続く。

 

 

「それに、活動中の単独行動や一般生徒が入れない場所への立ち入りも一部認められているの。

あなたの好きな『静かな場所』をサボり場に開拓したって、風紀委員の巡回と言い張れば誰も文句は言えないわよ?」

 

……なるほど?

 

「……ほう」

 

提示された条件に、俺の脳細胞が即座に損得勘定を弾き出す。

なるほどな。学内の治安維持ってこたぁ裏を返せば『公権力という名の免罪符』だ。

一科生と二科生のクソみてぇな格差が蔓延るこの一高において、平穏に生き残るための手段としてはこれ以上ないほど都合が良い。

 

 

「…私の前で堂々とサボり場開拓とはいい度胸をしているな…と言いたいところだが、実際今の風紀委員は力不足でな。

真由美の太鼓判を押されている君は喉から手が出るほど欲しい人材なのさ」

 

「俺なんて大したことないですよ」

 

「実技1位が何を言っているんだ」

 

「…っ!!??」

 

 

その言葉が落ちた瞬間、室内の空気が完全に凍りついた。特に驚愕に目を見開いたのは司波兄妹だった。

深雪の脳裏に、凄まじい衝撃が駆け巡る。ある特殊な事情により、司波深雪という魔法師の才能は世界レベルで見ても並外れて高い。

先日判明した驚愕すべき加速魔法から比企谷八幡は只者ではないと感じてはいたが、まさか自分を上回るほどの評価を得ているとは思ってもいなかったのだ。

 

 

「…知らないと思った?筆記が残念なのに1科生になってるのはそれが理由よ?」

 

「いやぁ、偶然って怖いっすね」

 

「偶然で満点なんて取れるはずがないだろう」

 

 

渡辺先輩のその言葉に、さらに司波兄妹は声を失う。

 

実技満点――すなわち魔法式を構築する処理速度、構築し得る魔法式の規模(キャパシティ)、魔法式が対象の情報体(エイドス)を書き換える速度である干渉力、起動した魔法式の維持・制御能力の4項目が、一高が定める評価基準において全て最高評価(パーフェクト)であったということだ。

指輪型の特殊CADを用いて自己領域を固定・加速させる出鱈目な魔法式。それが測定器の限界を叩き出していた。

 

 

一同はそれを理解していたからか、さらに言葉を失う。

達也もまた、表情に出ていないがその裏で思考を加速させていた。

 

「(…深雪を超える魔法師は贔屓目抜きにしても同年代じゃあ数少ない。なんならいないと思っていたが、世界は広い、ということか…)」

 

 

信じられないといった目で生徒会の面々や司波兄妹が俺を見てくるが、ちょっとチート使っただけでずるしたようなもんだからあんまうれしくはねぇんだよな。多分俺より魔法適性高いであろう深雪とかが使えば測定機器ぶっ壊しちゃうくらいだろうしな。

 

んでまぁ、結局今の俺は、真由美姉さんが提示してきた実技満点という脅し文句に抵抗できずに風紀委員会に所属するしか道はないのだ。

 

 

 

「………はぁ…よろしくお願いしやす」

 

「うん、よろしくね」

 

諦めて降参の合図を真由美姉さんに向ける。満足そうに微笑んだまゆみ姉さんはティーカップを置いた。

 

「これではちくんの風紀委員就任は決定ね。それじゃあお開きにしましょうか?」

 

「ちょっと待ってくれ」

 

これでようやくこの面倒な話し合いから解放される――そう安堵したのも束の間、今度はソファーの背もたれにどっかりと寄りかかっていた渡辺先輩が、片手を挙げて真由美姉さんの提案を止める。

 

 

「風紀委員の生徒会選任枠がまだ一枠空いているはずだ。……前年度の卒業生が抜けた、あの枠がな」

 

「摩利……そこは今、適切な人選を進めているところだって言っているじゃない」

 

真由美姉さんが眉をひそめるが、渡辺先輩はどこ吹く風で言葉を続ける。

 

「風紀委員の生徒会選任枠には、一科生でなければならないという規定はない。二科生から選出してもルール上は問題ないはずだ」

 

鈴音先輩がその意図を察して、眼鏡のブリッジを静かに押し上げた。俺もこの意図を察して達也に目を向ける。どんどん巻き込んでけ。

 

「確かに規則上は問題ありません。ですが……二科生を推薦するとなれば、一科生側の反発は避けられませんよ」

 

「特に、今ここにはいない服部が黙っていないだろうな」

 

渡辺先輩が少し面倒くさそうに吐き捨てる。

その言葉に、中条先輩が「服部副会長ですね……」と小さく怯えたように呟いた。

 

 

生徒会にはどうやら面倒くさそうな先輩がいるようだ。俺が内心で生徒会の役員まで差別主義者がいるようなら本当にこの学校終わってんなとか毒づいていると、ついにそれまで黙っていた当事者の達也が声を上げた。

 

「……ちょっと待ってください」

 

それまで置物のように沈黙していた達也がはっきりとした口調で異議を唱える。

 

「俺の意思は無視ですか。それに、俺は風紀委員が具体的にどういう組織なのかすら説明を受けていません」

 

「あら、妹さんにもはちくんにも具体的な業務説明はまだしていませんよ? 」

 

真由美姉さんが小さな子供を宥めるような優しい言い方で反論する。助け舟を出すような形で渡辺先輩が口を挟む。

 

「達也くん、要するに風紀委員というのは学内の風紀を乱す生徒を取り締まるのが仕事だ」

 

「…それだけですか?」

 

「ああ。基本的にはな」

 

雑とも言える渡辺先輩の説明に達也は眉を顰めて納得いかないという様子を見せる。そのまま視線を巡らせていくが、真由美姉さんは楽しそうに頬を緩ませ、市原先輩は黙ったままそっぽを向いている。

唯一の救いである中条先輩まで視線を送ると、達也の静かな眼力に耐えかねたように、おずおずと手を挙げた。

 

 

「あ、あの……! 主な仕事は、魔法使用に関する校則違反の取り締まりや、生徒同士のトラブル、特に魔法を用いた実力行使の制圧などです……!」

 

中条先輩、よく言った。あんたがこの部屋で一番まともだ。

それを聞いた達也は、再び渡辺先輩に向き直る。

 

「……つまり、トラブルが発生した場合は、力ずくで魔法師を制圧しなければならない、ということですか」

 

「まあ、荒事になることも多いからな、そうなる」

 

待ってこの話俺も関わってるよな?そんな物騒だったん?

俺が密かに絶望していると渡辺先輩はさらに言葉を続ける。

 

 

「できれば実際に魔法が使用される前に、物理的に取り押さえるのが望ましいがな」

 

渡辺先輩が当然のように言うと、達也はさらに声を上げた。

 

「あのですね!俺は実技が苦手だったから2科生なんですが!」

 

「わっ、びっくりした」

 

突然声を張り上げた達也に驚いて声を上げる。達也に目線で謝罪の意を伝えられるが、特に気にしないといった意味を込めて手を上げる。

 

「構わんさ。力比べなら私がいる」

 

「いえ、そういうことでは…「まぁいんじゃねえの?」……八幡?」

 

突然口を挟んだ俺に達也は怪訝そうな目を向ける。

 

 

「実技は俺、分析は達也…みてぇに分ければ多少実技は苦手だろうが俺がカバーできるしな。それに、普通に運動できそうじゃん」

 

「……本音は?」

 

 

「俺がせこせこ働いてる横で楽しそうに学校生活送られんの嫌だから誰か巻き込みたかった」

 

「殺すぞ」

 

 

ノータイムで暴言飛んできた。仕方ねえじゃねえか、だって苦労してる横で楽しそうに遊んでるヤツいたらシバきたくなるだろ?

 

俺が達也に追いかけられていると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

「ふふ、じゃあ続きは放課後ね。二人とも、遅れないように来て頂戴?」

 

真由美姉さんの楽しげな笑顔に見送られながら、俺は生徒会室を後にしようとする。

 

 

「…あとチャイムが2秒遅ければな」

 

「ヒェッ…」

 

割とガチな声色で呟いた達也に俺はマジでビビりながらいつの間にか蚊帳の外にいた深雪と共に教室へと戻った。





僕の応援してた日本とイングランドが負けちゃったんで改めて書き直します。
ほぼ全試合見ましたが、やっぱサッカーっておもろいなぁって改めて思いましたね。僕の今大会の推し選手は佐野海舟選手とベリンガム選手ですね。
サッカー知らない方もこの2人は覚えて損無しですよ。

サッカーはともかく…本編の話すると、いよいよ次から魔法科!って感じの話になってきますね。僕の好きなキャラもそろそろ出そうかなって思ってます。色々間違ってる設定とかあったら遠慮なく言ってください。

では、また次回。
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