書いてるなかで原作を読み返したりしていないのでおかしいところばっかも
作者は人見知りなので感想は返信できないけど感想は見る
学校への道を歩きながら思う。思えば、最近は誰かと話ながら登校するのが多かったなと。八九寺然り、戦場ヶ原然り、前なら一人で登校していた筈だったのに誰かと話すことが当たり前になっていた。そう考えたら、なんだか無性に誰かと話したくなってくるものである。忍に声でも掛けようかと思ったけど、今の時間帯は寝ているだろうし、やめておこう。だとすれば、後は八九寺くらいしかいないだろう。これまでの登下校でも八九寺とは結構な確率で遭遇するし、このまま歩いてたら会えるだろう。そう考えながら、曲がり角を曲がると遥か先の方に見覚えのあるリュックを背負った少女の後ろ姿が見えた。丁度いいところに、すぐに話しにいこう。そう思う前に既に足は動いていて、体は全力疾走の状態に移っていた。刻一刻と迫る八九寺の背中。足音に気付いたのか振り向こうとする八九寺に僕は全力で抱きついた。
「はぁちぃくぅじぃーー!!!」
「ぎゃーっ!?」
悲鳴を上げる八九寺に抱きつきながら、八九寺とであった際の恒例の日課となっている頬擦りをしたり、体を撫でまわしたりする。
「会いたかったぞ!八九寺ー!あぁこのすべすべの肌!ぷにぷにの頬!最高の抱きつき具合!やっぱり八九寺は最高にかわいいなぁー!」
「ぎゃーっ!ぎゃーっ!ぎゃーっ!」
ようやく抱きつかれていたのに気付いたのか暴れてくる八九寺を押さえて体中を撫で回す。
「このこのー!お前ってやつは!本当にかわいいなぁ!もっと抱きつかせろ!もっと頬擦りさせろ!もっと触らせろ!もっと撫でさせろ!」
「ぎゃーっ!ぎゃーっ!ぎゃーっ!ぎゃーっ!ぎゃーっ!がうっ!」
「いってぇぇぇぇ!?何すんだこいつ!」
抜け出せないことに気付いた八九寺が手を思いっきり噛んでくる。本気で噛んでいるのか、歯が骨まで食い込んだらでいるのを感じる。
「痛い痛い痛い!離せって!このっ!」
噛まれている腕どと八九寺を地面に叩きつけて押さえようとすると、それを察した八九寺が手から口を離し、もう片方の手に噛みついた。
「がうっ!がうっ!がうっ!」
「痛てっ!こいつ、学習してやがるな!」
八九寺は僕の手を噛んだまま、まるで小動物のようにぶんぶんと首を振ってくる。
「がうっ!がうっ!がうっ!」
「いててててて!犬かお前は!離れろってば!」
必死に振りほどこうとする僕の腕に、八九寺はさらに噛みつきの圧を強める。
───数分後。激闘の末息が絶え絶えになった僕たちがいた。互いに睨み合いながら息を整えている。数分に渡って噛みつかれた僕の手はボロ雑巾のようだが、既に再生が始まり、手の原型を取り戻してきている。お互いに手から出た血で濡れ猟奇的な光景で、傍目から見たら女児を狙う殺人鬼に見え通報されることだろう。いや、八九寺は人から見えないから、その場合はどうなるのだろう?怪我人として救急車を呼ばれるか、その頃には手も治っているから、何らかの事件の関与を疑われるかか。運良く人に見つからなかったからいいものの、これ以上続けて、人に見つかるのも面倒だし、一時休戦といくか。
「はあ、はあ。は、八九寺。ここは一時休戦といかないか?」
休戦の申し出を聞いた八九寺は警戒していたが、僕が本気でいっていたことが伝わったのか少し警戒を解いた。
「………分かりました。これ以上続けても不毛ですしね。───それで、何の用ですか、あむらら木さん」
「ああ、それはだな───」
「ふむふむ、要するに人の温もりに飢えた人畜さんが、町へ降りてきたと」
「誰が人畜だ誰が。僕はれっきとした人間だ。……いや、まあ、吸血鬼の眷属だけども」
「自覚があるならなおさら危険生物ですね。
町へ降りてくる前に保健所へ届け出てください」
「僕は野生の犬でも熊でもないんだぞ」
「ですが先ほどの行動は完全に野良犬でしたよ。走ってきて、飛びついて、噛んで、転がって。───あれはもう、保健所案件です」
八九寺の反論に、僕は思わず肩をすくめた。
「いやいや、噛んできたのはお前の方だろ。八九寺が先に攻撃してきたんだぞ」
「攻撃ではありません。正当防衛です。───むしろ、あれだけのことをされて反撃しない方がおかしいんですよ。」
「何でだ?あれぐらい軽めのスキンシップだろ。」
「ひぃっ!むらら木さんのおぞましい発言に恐怖を感じます。」
八九寺がドン引きして両手で体を抱き震えている。おかしいな?服に手を入れたり、舐め回していないのだから、まだまだ軽めだろう。今回のは軽めのスキンシップなのになぜこうも八九寺は震えているのだろうか。
僕が心底不思議そうにしていると、なにか決意したような表情の八九寺が口を開いた。
「むらら木さん、自首しましょう。今ならまだ間に合うかもしれません。これ以上罪を重ねる前に警察署に行きましょう」
「僕がなにか犯罪を犯した様に言うな八九寺。それに、さっきから人の名前を欲求不満な人のように呼ぶな!僕の名前は阿良々木だ!」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃない!?」
「神はいた」
「どんな奇跡体験をっ!?」
「私が神だ」
「お前が神かっ!?ってお前みたいな神がいるかっ!ただの迷子じゃねえか」
「失礼ですね。迷子は職業です。神は肩書きです。両立します」
「そんな二足のわらじあるかっ!」
「むしろ阿良々木さんこそ、吸血鬼で高校生で変態という三足のわらじでは?」
「三足目が余計なんだよ!」
「では四足目を追加しましょう。野良犬です」
「増やすな!僕は犬じゃないぞ!」
八九寺はふん、と鼻を鳴らし、僕の手元を指さした。
「ではその噛まれた跡は何ですか。犬に噛まれたみたいになっていますよ」
「噛んだのお前だろうが!」
「記憶にございません」
「政治家かお前は!」
「まったく……朝からとんでもない目に遭いました。───さて、阿良々木さん。そろそろ行ってもいいですか?私は忙しいのです。迷子として」
「迷子として忙しいってどういうことだよ。てか今も迷ってんのか。……いや、忙しい迷子ってなんだよ。迷子にスケジュールがあるのか?」
「もちろんです。迷子にも迷子なりの一日というものがあるのです。むしろ阿良々木さんこそ、迷子業界の厳しさを知らなさすぎます」
「業界って言うなよ。迷子に業界があったら日本終わりだろ」
「失礼ですね。迷子業界を侮辱しないでください。迷子は迷子で忙しいのです。迷う予定がありますので」
「予定して迷うなよ!それもう迷子じゃなくて散歩だろ!」
「散歩は帰れる人がするものです。私は帰れません」
「悲しいこと言うなよ!てか迷ってるんだったらさっさと言えよ。一緒に探してやるからさ」
「結構です。では」
そう言っててくてく歩いていく八九寺の隣を並んで歩く。
「阿良々木さん、ついてこないでください。迷子の尊厳があります」
「迷子の尊厳ってなんだよ。……ほら、行くぞ。目的地まで送ってやる」
「送らないでください。迷子としてのアイデンティティが崩壊します」
「崩壊していいだろ、そんなアイデンティティ。ていうか迷子のアイデンティティってなんだよ」
「迷うことです」
「誇るなよ!全然誇れないぞ、それ」
そんなやり取りをしながら、僕たちは並んで歩き出す。朝の光が差し込み、道路に長い影が伸びる。八九寺はふいに立ち止まり、こちらを見上げた。
「……でも、まあ。阿良々木さんが一緒なら、迷っていても退屈はしませんね」
「おい、素直か。どうした八九寺、熱でもあるのか?」
そう言って、頭に手を伸ばすと八九寺は心底嫌そうな顔をして、僕の手を弾く。
「ありません。むしろ阿良々木さんの方が熱があるのでは? 頭の」
「ないね、僕ほど健康な人間はそういない」
「いいえ絶対に頭に熱があります。まったく……朝から騒がしい
人ですね。───ですがまあ、こうして騒がしいのも、阿良々
木さんらしいと言えばらしいのですが」
「褒めてるのか貶してるのかどっちだよ」
「貶してるのかよ!」
そうじゃれ合いながら僕たちは歩き出した。
───後日談というか、今回のオチ。
あの後、八九寺と目的地に向かった僕だったが、迷いに迷って学校に登校するのは5限目の後半になった頃だった。勿論家族や友人にも話がいくことになり、戦場ヶ原に罵倒されたり、妹立ちに叱られたりと散々だった。だけど、八九寺との道中を思い出してこれはこれで良いなと思った。