仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
空から照らす太陽が人々に温かさを与える春。
冬木の大災害が過ぎて、復興もそれなりに進んだこの時期に子供たちが楽しそうに遊んでいた。
「ま、待てぇ!シロウ!」
「はぁ、はぁ、はぁ...」
「イリヤから逃げるのよ、士郎!」
そして、それを遠くで見ている大人...というより保護者達はその光景に微笑みを浮かべている。
「イリヤちゃん、助け出せて良かったですね。」
「...これもアルトリアのおかげだ。」
「そんなことありませんよ、切嗣。」
雁夜の呟きに切嗣とセイバーが口を開いた。
「アルトリア。実際、あなたがいなければアインツベルンの門さえこじ開けることができ
なかったのよ。」
「それはそうですが...二人のご息女を取り返そうという意思が一番ではないでしょうか?」
「それもそうだな...」
アイリとセイバー、切嗣が聖杯戦争後のイリヤ救出について語る一方で雁夜と遠坂葵は...
「こうして桜も揃って遊ぶのも久しぶりだわ。」
「そうですね...葵さん。」
「お姉ちゃん、早いよぉ...」
「桜が遅いのよ!」
凛と桜がイリヤと士郎に混じって鬼ごっこで遊ぶ様子は桜が間桐に行く前のあの頃を思い出す二人。
「この光景がいつまでも続いてほしいものだな。」
「そうね...そういえば、もうお昼に近いわ。」
アイリの視線の先には11時を指し示す時計。
「アイリさん、私たちが家に先に帰ってお昼の準備でも進めておきませんか?」
「それもそうね...アルトリアはどうするの?」
立ち上がったアイリと葵はセイバーに問いかける。
「私は士郎たちを連れて帰ります。」
「なら、俺もここに残って連れて帰るよ...切嗣さんは?」
「そうだね...僕も子供たちと一緒に帰るとするよ。」
そして、一時間後...
「「「ただいま!」」」
「あら、帰ってきたわね。」
衛宮邸に帰ってきた子供たちと保護者が玄関にやってくる。
「お母さま!」
「お帰りなさい、イリヤ!」
アイリに飛び掛かるイリヤ。
「凛に桜、お帰りなさい。手を洗った後に配膳を手伝ってもらえるかしら?」
「「うん!」」
「洗面台は浴室の傍よ!」
颯爽と手を洗いに行ってしまう桜と凛になんとか声を上げて伝える葵。
「...士郎、どうしたんですか?」
「いや...特になんでもないよ。」
士郎はセイバーの傍で遠い目をしながら彼女らの光景を見る。
「ア,アルトリアさん!?」
「私たちも手を洗いに行きましょう!」
突如、セイバーに引かれた士郎も洗面台の方へと向かう。
「ほらほら、イリヤもみんなと一緒に手を洗いに行ってちょうだい!」
「私、別にいいもん!」
「困ったわね...」
「イリヤ、手を洗わないと母さん特製の昼飯は抜きだよ。」
駄々をこねるイリヤに脅し混じりの冗談を言い放つ切嗣。
「そ、それは嫌!イリヤ、手を洗うもん!」
「なら父さんと行こうか。」
「ま、待つのだ切嗣!」
イリヤと切嗣のやり取りに笑みを見せるアイリと葵であった。
「みんな、お待たせ。」
「お、来たみたいだな、イリヤ。」
「やっとお昼ご飯が食べられるのだ!」
お盆に載せて運んでくる4人を心待ちにしている一同。
「はい、雁夜お父さん。」
「ありがとう、桜。何個か俺が回しておくよ。」
茶碗を運ぶ桜から数個受け取った雁夜は近くの席に置いていく。
「桜...雁夜おじさんじゃなくて雁夜お父さんって呼んでるの?」
雁夜と桜のやりとりに首を傾げた凛は桜が台所に向かった時に話しかける。
「うん。雁夜お父さんはお父さんだから...」
「...」
「お姉ちゃん?」
不満な表情を浮かべる凛。
「なんでもないわ。」
「凛...」
(時臣さんはこうなることを想定していたのかしら...これも時間でしか解決できないの
ね。)
暗い影を落とす凛を心配しながらも、主菜と副菜の皿を運ぶ。
「お母さまの手料理!」
「イリヤ、これがお母さん特製のメインディッシュよ!」
同じく料理を運ぶアイリはイリヤの前にコトっと皿を置く。
「こ、これって...」
「ピーマンの肉詰めよ!」
そこには焼けたお肉が詰められた緑のピーマンが副菜を脇役にイリヤの前に現れる。
「そろそろ皆もそろったようですね...」
「では、そろそろ」
「「「いただきます!」」」
食卓に全員揃ったことで手を合わせた後、食べ始める。
「士郎、何か苦手なものとかはありますか?」
「特にないよ。」
「うむ、好き嫌いせず食べるとはさすが士郎です!」
「は、恥ずかしいこというなよ...」
褒めてくるセイバーにペースが狂いつつも明るさを取り戻す士郎。
「久しぶりのお母さんの料理、どうかしら?」
「うん、おいしい...」
「桜...」
葵と共に美味しそうに食べる桜に微笑みを浮かべる雁夜。
そんな温かいやり取りをみせる彼らだが、一人まだ口にしようとも思わない少女が料理と
にらめっこをする。
「...どうしたんだ、イリヤ?」
「イリヤ、何かあったの?」
そんな様子に不安がる切嗣とアイリは声を掛ける。
「...ピ、ピーマン。」
「ピーマンがどうしたの?」
...
......
「ピーマンが嫌いなのぉ!!」
「ごちそうさまでした。」
「...ごちそうさま。」
「なぁ、イリヤ。お前もう8才だろ?ピーマンぐらい」
「嫌なものは嫌なの!」
食べ終わったセイバーと士郎が食べ終わった食器を運び、イリヤ以外のメンバーも片付け
に励む中で切嗣とアイリは困っていた。
「ねぇ、イリヤ。お母さんが作ったんだから一口ぐらい食べてほしいかな。」
「嫌!いくらお母さまの頼みでもそれはできないのだ!」
「...いったんピーマン以外を食べてくれ、イリヤ。」
とりあえず、主食や副菜を食べ始めるように勧める切嗣。
お箸の使い方をレクチャーしてもらいイリヤは食べ進める。
「俺よりも年上のイリヤがいまだに好き嫌いするとは...」
「あっはは...うちのイリヤが騒がしくして申し訳ないわ。」
「いや、俺もイリヤのこと色々と言いすぎました。」
片づけを終わらせた士郎が台拭き片手にアイリの隣に来る。
「娘の好き嫌いなんて新鮮で嬉しい気もするけど...これまたどうすればいいのかし
ら。」
「私に任せてください、アイリスフィール。」
士郎と同様にセイバーもふきんを片手に現れる。
「アルトリア...うちの娘は結構手強いわよ?」
「これでも騎士としての誇りとしてご息女に何としてもピーマンを食べさせます!」
(ピーマンを食べさせる騎士ってどういうことだよ...)
心の中でセイバーにツッコミをいれる士郎とアイリはイリヤの方へ近寄るアルトリアを見守る。
「ほら、最後のピーマンを食べようイリヤ?」
「嫌だもん!切嗣が食べてくれるなら考えてもいいけど?」
皿の上に唯一残った肉詰めのピーマンを掛けて言い合う切嗣とイリヤ。
「いや...父さんは自分の分を食べたからお腹いっぱいで」
「本当は切嗣も食べたくないんでしょ?」
「イリヤスフィール!」
突如、自分の名を呼ばれたイリヤはセイバーの方へと視線を向ける。
「...な、なによ!?」
(何か策があるのだな...アルトリア。)
切嗣とは反対側でイリヤの隣に座るセイバー。
「このピーマンはあなたのお母さまが作ってくれたもの...それは理解していますね。」
「そ、それは分かっているわ!」
見続けてくるセイバーに圧を感じたイリヤは表情が強張る。
「では、あなたはピーマンのどこを嫌っているのですか?」
「...苦いからよ。」
「ほう...では、私がお嬢様の騎士として毒味をしてみせましょう。」
「「「ん?」」」
すると突然、肉詰めのピーマンを一つ掴んでそれをセイバーは口に放り込んでしまった。
「...ん~!やはりアイリのピーマンはおいししです!ぜひおかわりをください!」
「「「!?」」」
イリヤの皿を手に取って掲げるセイバーにずっこける一同。
「はぁ...」
「ア、アルトリアさん...イリヤに食べさすんじゃなかったのかよ?」
「そうでした士郎!?さぁ、これで苦さを心配する必要はありません!さぁ、一口これ
を!」
セイバーはイリヤの持っていた箸で肉詰めを掴み、彼女の前に差し出す。
「さぁ、早く!」
「...食べたいなら、アルトリアが食べたらいいんだよ?」
「な、何を言うんですか、イリヤスフィール!?」
潤んだ目でイリヤはセイバーを見る。
「だって一番食べたい人が食べたらいいと思うの。」
「...」
息を呑み、ピーマンを掴む箸が震えるセイバー。
「ピーマン、食べてほしいなぁ〜...」
「っ!?...それもそうですね。では、私が」
「ねぇ、アルトリア?」
口に持っていくセイバーの箸はアイリの鋭い視線で止まる。
「あなた、イリヤに食べさせてくれるんじゃなかったかしら?」
「ア、アイリスフィール...これはですね」
「アルトリア、あなたは葵さんの手伝いをよろしくね。」
「はい...」
セイバーは肩を落として台所の方へ去っていった。
「今のうち」
「イリヤちゃーん?」
「ギクッ!?」
イリヤは静かに立ち去ろうとしたものの、アイリに声をかけられて足を止める。
「あなたには少しお仕置きがあるけどいいわよね?」
「お、お仕置き...」
イリヤを座らせた後、フライパン片手にイリヤを見つめるアイリ。
「...私特製のピーマンを追加するわね!」
「ギ、ギャァァァ!?」
皿の上にボトッと落とされるピーマンの肉詰め。
「ちなみに量は増えているから、しっかり食べて育ってちょうだい!」
「うぇーん!お母様の鬼!」
「イリヤ、僕みたいなズルは母さんには通らないよ。」
泣くフリをするも何も変わらない。
最初に出された時より1個多く増えているピーマンはそんな彼女に追い打ちをかけてい
る。
...イリヤが絶望しかけたその時だった。
CASE.1 イケメン過ぎた不幸の騎士
「私が助太刀しよう!」
「あなたは...ランサー!?」
突如、扉が開かれて現れたのはランサー...ディルムッド・オディナだった。
「あら?ケイネスさんたちはどうしてらっしゃるの?」
「私のマスターは現在、ソラウ様とデート中...俺が付き従うにもムードを壊しかねない
のでこちらにやってきたわけだ。」
「そういうことなのですね...」
ランサーはセイバーとアイリに説明した後、イリヤの傍に近寄る。
「...」
「な、なに!?」
「お嬢様は今、このピーマンに苦しめられているのは間違いないか?」
切嗣の死んだ目を向けられても動じずにイリヤと話すランサー。
「うん...イリヤは嫌いなピーマンを自分で食べないといけないらしいの。」
「そうなのか...なら私が騎士としてお嬢様がピーマンを克服できるように全力を尽くさ
せてもらうが、構わないか?」
「あ...うん。ランサーならイリヤも心強いかも。」
ランサーに感化され、箸を手に取るイリヤ。
「とはいえ、いきなりまるまる一つ食べるのは酷だろう...少しだけかじってみるのはど
うだろうか?」
「...やってみる!」
「いい子だ。」
背中を押されたイリヤは肉詰めのピーマンを掴む。
そして恐る恐る口に近づける。
「ん、うぅ...」
「大丈夫か?」
ピーマンの表面を少しかじりつき、少し俯くイリヤ。
「に、苦い...」
「無理して食べる必要はない...少し食べれたことはお嬢様にとってこれ以上ない進歩で
はないだろうか?」
「ラ、ランサー...」
苦しみながらも、ランサーの励みによりイリヤは少し嬉しそうに微笑む。
「イリヤ、頑張る!」
「その域だ!」
イリヤはもう一口、ピーマンの肉詰めにかじりつき再び苦しみだす。
だが、最初の一口とは変わってすぐに食らいつく。
「さすがランサー...アイリスフィールのご息女にこれだけ火をつけさせるとは...」
「そうね。イリヤもなかなか頑張っているみたいだけど...」
その様子を遠目から見ていた二人の視線は娘の隣に座っている父親に向く。
何も語らず、ただイリヤとランサーの様子を黙って見ている。
「あらあら...父親らしいところが見えたような気がするわ?」
「「?」」
アイリに対して首を傾げるセイバーと士郎。
「イリヤの箸が急に止まった?」
「...アイリスフィールもそろそろ許してはどうでしょうか?」
「それはできないわ、アルトリア...ここは母として見守ることしかできないのよ!」
残り二口ほどというところで掴んでいたピーマンをポロリとこぼすイリヤ。
「も、もう駄目かも...」
「お嬢様...あと二口ほど。もう少しの辛抱だ。」
ガクリとうなだれるイリヤはランサーの方へ向く。
「ランサー...あなたの真名ディルムッドだよね。」
「そうだが...どうしたのだ?」
箸を一旦置いたイリヤはランサーの手を取る。
「ねぇ、ディルムッド...私はあなたにゲッシュを課すよ。」
「...お嬢様、ゲッシュはそう易々と結ぶものでは」
「お願い!」
ランサーの雲行きが怪しくなるのに対して、イリヤは顔を真っ赤に染める。
「ピーマンを食べきったら、ディルムッドは私を連れて」
「タイムアルター、トリプルアクセル!!」
「ごほぉ!?」
突如、切嗣はランサーにドロップキックをかまし、障子ごとランサーを外へ蹴り飛ばす。
「き、切嗣!?」
「な、何やってるんだよ!?じいさん!」
その光景に目を見開くセイバーと士郎。
「ディルムッド・オディナ...君は悪気はないのかもしれないが、君の愛の逃避行は有名
だからね。」
「セイバーのマスターよ、何か勘違いが」
「うちの娘をお前にやるつもりはない!!」
キャリコM950を懐から取り出して、ランサーにぶっ放す。
「え!?」
「お、おじさん!?」
「これはどういうことですか!?」
先に食べ終わって家事をしていた葵に凛、桜が騒ぎを聞いてやってくる。
「切嗣が娘のイリヤを想っての行動よ...こんなことになるなんてさすがイケメンで声が
グリーンリバァだわ!」
「それにしてはいささかやりすぎではないですか!?」
「「「じゅ、銃...」」」
ランサーが自身の宝具の槍で切嗣の弾幕を弾く様子を見て唖然とする葵や凛、士郎に対し
てセイバーは止めようと動く。
「なぜ止めるのです、アイリスフィール!?」
「...これはイリヤの恋を渡る戦いなのよ!」
「な、何言ってんだよ、アイリさん!?」
傍観者は止められる者もいたが、結局止まらない。
「...わ、私のピーマンはどうなるのよぉ!!」
もうピーマン克服などという規模ではなくなってしまった。
CASE.2 狂気と復讐に堕ちた出目金元帥
「我が麗しき聖処女よ!」
「キャスター!?」
「魔術結界は張ったはずだが!?」
扉が急に開かれて出てきたのはキャスター...ジル・ド・レェだった。
彼の登場でセイバーや切嗣、雁夜達に殺伐とした空気が流れる。
「そう警戒しないでください、ジャンヌに他の皆様方。」
「...あなたがそういっても私たちは警戒を解くにはいかないわ。」
「それに私はそのジャンヌではない...いい加減、覚えてほしいものだ。」
鋭い視線を向け、戦闘の準備をする彼らに対し、キャスターは頭を下げる。
「今回、私がこちらに来た目的はそちらのお嬢さんを助ける事なのです。」
「...イリヤを?」
「どういうことだ?」
切嗣はイリヤを自分の後ろに立たせて守る
「私は夢でジャンヌから天啓を受けたのです。」
(『ジル...あなたが犯した罪を償うための第一歩として迷惑をかけてしまったセイバーの
マスターの娘を助けなさい。』)
「これ、どう見てもアルトリアさんじゃねーけど...」
キャスターの回想に出てくる少女の姿にツッコむ士郎。
「私は生前、今回の聖杯戦争を含め、罪なき子供たちを多く殺してしまいました...それ
をジャンヌのおかげで気づけた私は何としてでも償いたいのです!」
一同はどう答えるべきか迷っていた。
精神的には今までの行いを考えるとキャスターを信用できない。
だが、もしここでNoを突き出してそれに逆上される危険性もある。
「...はて?」
故に沈黙にならざるを得ない。
「おじさんはイリヤの手伝いをしてくれるの?」
「イリヤ!?」
気まずい空気を破ったのはイリヤだった。
「その通りでございます、お嬢さん...ぜひ、お話を聞かせてもらえないでしょうか?」
「いや、特にうちの娘に困りごとなんて...」
「聞いてくれるの!?」
切嗣を払いのけて前に出るイリヤ。
「ちょっと、イリ」
「お母さまがピーマン食べ終わらないとダメって言っててね...おじさんはどうすればい
いと思うの?」
「なるほど...苦手なピーマンを克服する必要があるというわけですね?」
「そうなの!だから、イリヤを助けてほしいの!」
救いの手を求めるような表情をキャスターに向けるイリヤ。
「うちの娘に何もする必要は」
「分かりました、イリヤ嬢...この私ジルがあなたの手助けとなるよう努めてまいりま
す。」
「ありがとう!ジル!」
「おい、話を聞け、フランスの軍師!」
切嗣がまるでいないかのようにキャスターはイリヤと話し始める。
「こうなったら、ここがどうなろうと今すぐ」
「切嗣!」
キャリコを懐から抜こうとしたが、アイリがそれを制止する。
「なぜ止めるんだい、アイリ!?」
「...ここはひとつ、キャスターに任せてみてもいいんじゃないかしら?」
「正気ですか、アイリスフィール!?」
隣にいたセイバーがアイリに見開いた目を向ける。
「確かに、児童虐殺に挙句の果てにはウルトラ〇ンの怪獣みたいな被害を出してしまった
ヤバいサーヴァントだけど、狂う前は温厚で紳士的な軍師だったと聞くわ...危ない橋だ
けど意外にイリヤのピーマン嫌いを解決してくれるかもしれない。」
「...アイリ、正気か?」
「もうピーマン克服とかの次元じゃないよ、それ...」
アイリをどこか引いた目で見る士郎と切嗣。
「アイリスフィール...一旦、あなたの言うことを信じてみましょう。」
「アルトリア!?」
「アイリスフィールの言う通り、もしかすればキャスターが上手く克服させてくれるかも
しれません。」
彼女の宝具、エクスカリバーが手元に出現する。
「それに...何かあれば私が騎士としてご息女をお守りします、切嗣。」
「...わかった。」
「ありがとう、切嗣にアルトリア。」
なんとか折り合いをつけた3人は再びイリヤとキャスターの方へ視線を移す。
「それでね、キャスター。イリヤがピーマンをなんとか食べれるようにするにはどうすれ
ばいいと思う?」
「そうですね...苦手なものを克服するという考えから少し外して考えてはどうでしょ
う?」
「え?克服しないの?」
キャスターに首を傾げるイリヤ。
「はい...子供の味覚では大人より敏感であるため、早々に克服することはできません。
ですが、そんな苦手なピーマンでも食べたくなるような状況を作ればいいのです。」
「...キャスター?」
彼は懐から自身の宝具である
り出す。
「おいキャスター、お前は何をするつもりだ!」
「ジャンヌよ、安心してください...決してお嬢さんに危害を加えるものではありませ
ん。」
「だから私はジャンヌではない!」
取り出した
しい丸い物体が飛び出て、ピーマンの肉詰めの隣に置かれる。
「キャ、キャスター...これは?」
「たこ焼きでございます。」
「タコ...あの丸いものがウネウネ動いているのは何なの?」
たこ焼きと呼ばれたその何かから触手のようなものが飛び出ている。
「私の召喚した海魔でございます。早くピーマンを食べなければ、お嬢さんはそれを食べ
ることになりますよ。」
「え、え~!?」
「ほらほら...たこ焼きを突き破った海魔の触手がピーマンに手を出す寸前ですよ。」
「あれを食べるのは嫌!ピーマン食べるもん!」
なんとか奪われそうになったピーマンを急いで取り、口に詰め込んでいく。
「!?」
「貴様、危害を加えないというのは空言か!」
「違いますよ、ジャンヌ。」
突如、セイバーがキャスターに斬りかかるもののなんとか回避したキャスターは続ける。
「お嬢さんはピーマンを恐れている...つまり、それ以上に苦手なものを出して選ばせて
あげれば自然とピーマンを選ばざるを得ないのです。」
「...貴様は外道か!!」
「な、何をするのです、ジャンヌ!?」
もう話を聞く気もなくなったのか、すぐに攻撃に移ってキャスターを庭に追い出すセイ
バーは刃先を上に向ける。
「それに私がジャンヌなどではないと何度言ったら分かるんだキャスター!」
「その黄金の輝きは正真正銘の聖処女であるジャンヌ...現に私の夢に出たではありませ
んか!?」
「いやアルトリアさんとは全然違ったじゃないか...」
二人の言い争いを呆れた様子で見る士郎とアイリたち。
「もう私の名を覚える必要もない...
「おぉ!やはりあなたは」
見惚れたキャスターはそのままセイバーに一刀両断された。
「...あら、イリヤ!」
「全部食べれたようだな。」
無事、キャスターがいなくなったことでアイリと切嗣はイリヤへと視線を戻す。
「うぅ...」
皿の上はキャスターの残したゲテモノしか残っておらず、ピーマンはなくなっていた。
「く、苦しんでまで食べたくないんだよ...」
イリヤはただただ口に残る嫌悪感と吐き気に苛まれるのであった。
CASE.3 家事をこなせる??の英霊
「まだ諦めるのは早いぞ、イリヤ。」
「「「...?」」」
襖から赤い外套を纏った、白髪で浅黒い肌の男が現れる。
「...動くな。」
「銃!?」
士郎は日常に似つかわしくない銃に驚く。
「お前はいったい何者だ?」
切嗣が銃口を向けたことで大人しく両手を挙げる男。
「...私はアーチャーだ。」
「あなたがあの横柄な態度をとるものと同一人物には見えないのですが...」
「な...セイバー?」
話に入ってきたセイバーに目を見開くアーチャー。
「あなた、アルトリアと面識があるのかしら?」
「私の知る限り初対面だと思うのですが...」
「私が言えることはただ一つ、一部を除いてこの場にいるものはいずれ私と会うことにな
ると...」
アーチャーはアルトリアの傍にいる士郎に目を向ける。
「俺になんかあんのかよ?」
「いや、お前に興味はない...だが、一つ聞こうか。」
目線の高さには合わせず、見下ろしたまま士郎に近づくアーチャー。
「衛宮士郎...お前は正義の味方を目指す気でいるのか?」
「正義の味方....」
鋭く睨みつけるアーチャーに思わず、顔を強張らせる士郎と彼の言葉に反応する切嗣。
「アーチャー...子供の士郎にそんな高圧的な態度をとっては嫌われますよ。」
「...すまない。私は子供はそんなに好きでないのでね...で、どうなんだ。衛宮士郎?」
物腰は少し柔らかくなったものの、冷ややかな視線は変わらない。
「...分かんない。」
「ほう...」
「でも、正義の味方とはちょっと違うけど...俺は救ってくれたアルトリアさんに恩を返
したいのはあるかな。」
「士郎...」
少し顔を赤らめるセイバーと堂々とアーチャーに伝える士郎。
「はぁ...これは無理だな。」
踵を返したアーチャーは顔を士郎に向ける。
「お前に一つアドバイスだ...正義の味方などという理想より今のお前の気持ちを大切に
するんだな。」
「...君も僕と同じみたいだな。」
切嗣がアーチャーに口を開く。
「いや、今のあんたは違うな爺さん。」
「爺さん?」
「すまない...言い間違えたみたいだ。」
アーチャーは去っていく...
「お嬢さん方、ここのキッチンを借りさせてもらおうか。」
「「え?」」
「私の目的はイリヤの手伝いをすることだからな...ちょっと皿を借りるぞ。」
「うん...?」
頷いた直後にピーマンの載った皿はアーチャーの手元に移る。
「子供にとってピーマンまるまる1個とも言える肉詰めは悪手...本当に食べさせたいのな
ら細かく切って他の食材と合わせるのが一番いい。」
冷蔵庫を開いて少し観察したアーチャーはすぐさま中にあるごま油、キャベツ、長ネギ、
豆板醤、ニンニクと次々と取り出していく。
「何をするつもりですか、アーチャー?」
「安心しろ...ただ料理を作るだけだ。」
「「「!?」」」
アーチャーの手元から突然、包丁が出現してピーマンや中に詰まった肉、それに取り出し
た具材を手早く切っていく。
「今から作っちゃうの!?」
「...時間帯的にもう一時半だが?」
「安心したまえ...私にかかればそうそう八つ時のお菓子とバッティングはさせはしま
い。」
全て切り終えたアーチャーフライパンを手元から出して具材を焼いていく。
「は、早い...」
「サーヴァントってより、料理人だな。」
調味料も計測する素振りを見せず、迷いなく混ぜ合わせる。
「あ、なんかいい匂い!」
「...完成だ。」
新しく出された皿に作った料理を盛る。
「これは...」
「「回鍋肉!!」」
匂いに釣られてやってくる凛と桜。
「まぁ、あくまで回鍋肉風だがな...見ているだけではつまらんだろう?イリヤ以外はこ
ちらから食べたまえ。」
「え?私やお姉ちゃんの分もあるの!?」
「勿論だ。何ならセイバーや爺さんも食べていいぞ?」
「わ、私は別に...」
「僕は一口もらうとしよう。」
イリヤや子供たちの他に切嗣も回鍋肉に引き寄せられる。
「さぁ、召し上がってくれ。」
「「「いただきます!」」」
箸を手に取って食べ始める士郎たち。
「お、おいしい...」
「上手いわね...」
口にした彼らからの評判はいいものだった。
「...そんなにおいしいのですか、切嗣。」
「あぁ、冬木の中華にあまりいい思い出が無かったが...これはいけるな。」
「なら、私も」
「アルトリアは手伝いがまだだったんじゃないかしら?」
アイリに釘を刺されたセイバーは泣く泣く手伝いに専念する。
「それじゃあイリヤも...」
一口分の量を小皿に移したイリヤはそれをフォークで刺す。
「うう...」
だが、そこに混じるピーマンの一切れに躊躇する。
「安心しろイリヤ...それは私が作り出した料理...それがまずいわけがない。」
「アーチャー...イリヤ、信じるからね!」
アーチャーに背中を押されたイリヤは決心して口に放り込む。
「イリヤちゃん、いけそう?」
「味は合うか?イリヤ。」
咀嚼して飲み込む彼女を心配する桜と切嗣。
「おっと...その様子ならもう問題なさそうだな。」
だが、一口食べきったイリヤはすぐさま追加で回鍋肉を小皿に補充して食べ進めていく。
「はむ...ピーマンがこんなに美味しいなんて...」
「料理は食材の調和だ...子供にとって苦みの強いピーマンは料理の一部になればアクセ
ントになる。それに味の濃い中華料理なら苦みも抑え込みやすいといったわけだな。」
調理に使用したまな板やフライパンなどの皿洗いを済ませたアーチャーがイリヤの方を見
る。
「...これで問題は解決したようだし私は」
「あら、アーチャーさん。」
「どうしたのかね、お嬢さん?」
どこかへ去ろうとするアーチャーの前にアイリが立ちふさがる。
「イリヤにピーマンを克服させようとしてくれたのはありがたいわ...でもね」
「ん?」
ニコニコした表情のままアーチャーを見るアイリ。
「あなたは自分の料理を勝手に作り変えられるとどう思うかしら?」
「......」
「私はイリヤのために用意してピーマンの肉詰めを作ったのにそれをこうして...ね?」
笑顔を崩さないその様子にアーチャーは銃を突き付けられた時以上の危機感を覚えたよう
で一瞬目を閉じてなんとか落ち着かせる。
「...すまない、どうやら私は遠慮を欠いていた。」
「理解してくれたようね...フフフ。」
(...私は地雷を踏んでしまったようだな。)
美味しそうに食べるイリヤたちを横目に肩を落とすアーチャー。
「うぅ...目の前の絶品を口にすることができないとは...」
一方で恨めしそうに回鍋肉を遠目から見るセイバーであった。
CASE.4 魔法少女?マヨー使い
「お困りかしら?」
『L、I、O、N ライオォン!』
謎の音声とともに扉から金色の獣の戦士が現れる。
「誰!?」
「私は魔法少女、ビーストよ!」
なんとか裏声で話し、可愛く見せようとするビーストに一同は困惑を浮かべ、一部は頭を
抱える。
「魔法少女?白い悪魔に騙されたり、魔術礼装を使っている様子は見られないけど...」
「え?魔術礼装?」
イリヤから知らない用語が飛んできたことで、地声に戻ってしまう。
「仁藤...なぜ魔法少女ごっこをするんだ?」
「あぁ?そりゃあ、少女はみんな魔法少女に憧れてんだろ?」
「せめて...声や仕草の前にせめて姿ぐらい取り繕ってほしいわね。」
「いやぁ...俺の魔法にそういうのねぇからな。」
アイリのツッコミに頭を掻く仁藤。
「それで...魔法少女のビーストさんはどうして来たんだ?」
「そうね...私はそこの女の子を助けるために来たのよ!」
(冷やかしで言ったつもりだが、逆効果だな...)
「仁藤君...変身したままなのもそういうことなのかい?」
ふと、疑問を仁藤に投げかけた雁夜。
「いや、別に変身することに意味はないんだが...」
「なら別に」
「あぁ、皆まで言うな!これは東〇の都合なんだよ!」
「「「東〇?」」」
首を傾げる一同。
「とりあえず、切嗣の嬢ちゃんの悩みを解決しようぜ!」
「それは心強いが...イリヤ、このおじさんに助けてもらうかい?」
「...うん。」
不安そうに仁藤を見るイリヤだが、頼れる相手も彼しかいないため仕方なく頷く。
「イリヤね、ここにあるピーマンを食べきらないといけないの...」
「ピーマンなぁ...俺も嫌いだったからばあちゃんに躾けられたもんだ。」
仁藤はイリヤの目線に合わせてしゃがみ込み、話し合う。
「...どんなふうに克服したの?」
「俺か?...まぁ、ばあちゃんに無理矢理食わされて慣れたけど...それは絶対嫌だろ?俺
にいい考えがあるぜ!」
「え?いい考え?」
冷蔵庫の側にいる桜のほうを見る。
「桜ちゃん、あれを頼むぜ!」
「はい、マヨのおじさん!」
「桜!?」
突如、桜は仁藤の方へ投げつける。
そして、受け取った仁藤は回しながらもピーマンの真上でそれを逆さまにし、蓋を開け
る。
「まさか...」
「お、おじさん...変なもの掛けないでよ!」
「あぁ?変なものじゃない!」
ピーマンの上にとぐろを巻いた白いものに怪訝な表情を浮かべたイリヤは仁藤を睨む。
「マヨネーズだ!」
「...そういや君はマヨラーだったな。」
マヨネーズのチューブを堂々と見せつける仁藤に切嗣は苦笑する。
「切嗣、マヨネーズって?」
「あぁ、イリヤはあまり調味料とか知らなかったね...マヨネーズは卵、お酢、油を主に
混ぜたソースみたいなものだよ。」
「へぇ...そうなんだ。」
ピーマンの上に掛けられたマヨネーズを再度見るイリヤ。
「そんなに気になるなら食ってみろよ!」
「ううん!別にイリヤは気になってないもん!」
「イリヤ...ピーマンはともかくマヨネーズは初めてだろ?食べてみたらどうだ。」
仁藤をそっぽ向くイリヤだが、切嗣の一声で再度ピーマンの方を見る。
「そうね...切嗣の言う通り最初から毛嫌いするのも違うわね。」
「お!食え食え!」
箸を手に取ったイリヤはマヨネーズの掛かったピーマンを恐る恐る掴む。
「じゃあ食べるね...はむ!」
目を閉じてマヨのかかった部分をかじるイリヤ。
「...どうだい?イリヤ。」
「うん...これなら十分食べれるかも。」
「やっぱりマヨネーズは世界で偉大な食い物だな!」
ピーマンをさらに一口つけるイリヤの様子に嬉しそうにマヨネーズを掲げる仁藤。
「...食い物ってより調味料だろ。」
「まぁ、それはともかくご息女がピーマンを食べられるようになったのは良かったです
ね。」
「イリヤが食べられているのなら良かったわ。」
それを皿洗いなどの家事をしながら遠くから見ている士郎はツッコミ、アイリとセイバー
は微笑んでいた。
「う...ちょっと苦くなってきちゃったかも。」
「だったらマヨネーズをもっと掛けてみろ!」
「うん!」
味に慣れてきたのかピーマンの味に再び苦しくなったイリヤは仁藤の提案でマヨネーズを
手に取る。
「...イリヤ、ちょっとかけすぎていないかい?」
「え?でも、もっと掛けないとピーマンの苦さが消えないよ?」
「イ、イリヤ!?」
絞り出した量はいつの間にか残りのピーマンの体積に迫る。
「駄目じゃない!」
「え?なんで取り上げるの?お母さま?」
取り上げられたイリヤは物惜しそうにアイリを見る。
「こんだけかけているとぶくぶく太っててしまうわよ。」
「それは嫌!イリヤ、太りたくないもん!」
頼みの綱だった山盛りのマヨネーズも今や地獄のクリームにしか見えなくなるイリヤ。
「でも、かけちゃったものは自分で食べようなイリヤ?」
「うぅ...おじさんどうすれば...」
助けてくれた仁藤はいつの間にか隣で桜に出してもらった白米の茶碗と対面していた。
「飯出してもらって悪いな!」
「おじさんにも助けてもらったからいいんだよ。」
「じゃあ、さっそく...いっただっきやーす!」
「え、えぇ!?」
彼女の時とは比べる必要もないほどマヨネーズをお米にぶっかける仁藤。
土〇スペシャルを作る仁藤にイリヤは肩を落とすことしかできなかった。
元ネタはネット版オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー ~ガチで探せ!君だけのライダー48~ のピーマン!シリーズです。