小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
魔界の暗闇の奥底で眠っていた魔王は、なんとなく太ももに痛みを感じて目を覚ましました。意識がはっきりしてくると、なんとなくそれは激痛であると魔王は気づきました。
「いったあああい! 太ももがいたいよぉ!」
創造神に封印され、魔界に眠っていたはずの魔王は、うっかりこむら返りしてしまい、めっちゃ痛くて目を覚ましてしまいました。
なんとなく痛む太ももをぴんと伸ばした魔王は、涙を流してゼェハァしながらなんとなく思い出しました。
「そういえば世界征服するの忘れてた」
魔王はその日、なんとなく魔物たちを集めてなんとなく人間界に魔王軍を派兵しました。
その頃、天上界では魔王の目覚めたという知らせを聞いた創造神は、ため息をついてなんとなく呟きました。
「⋯⋯めんどくせ」
創造神は毎日世界の秩序と調和の管理やら修復やら激務に追われ、中間管理職の神々や天使と揉めて、魔王を再び封印する暇も体力もありませんでした。そこで、神はなんとなく誰かに魔王退治を丸投げすることにしました。
創造神は偶然目についた農民の少年を、なんとなく勇者に選びました。
神に選ばれた勇者は村人たちに応援され、喜ばれて嬉しかったのでなんとなく村を出ました。
リュックにはなんとなく干した豆だけを入れて、勇者はなんとなく村から森へ続く道をなんとなく進み、分かれ道でなんとなく左を曲がりました。
迷子になりました。なんとなく思いつきで色んな道を進んでいると余計わけの分からない場所へたどりつき、勇者はなんとなくその場に膝を下ろしました。
「⋯⋯家帰りたい」
半泣きでなんとなくそう呟いた勇者の手に、冷たくて硬い金属物が触れました。
手に取ると、それは宝石や金やらが散りばめられたとても立派な大きな剣でした。多忙な創造神が勇者を聖剣の神殿へ導くのを面倒くさがり、なんとなくそこに置いておいた聖剣でした。
聖剣が輝き出し、ぐにゃりと刃が粘土のように曲がって分かれ道の右側を向きました。勇者は剣が森から出られる道を示してくれたのだろうと思い、なんとなくそっちへ向かいました。
森から出ると広大な草原でした。喜んだのも束の間、勇者は空腹を感じて嘆きました。
「飯どこー?」
すると聖剣が触手のようにびょーんと伸びて、たまたま近くにいた魔物を突き刺してくれました。それから聖剣は、なんとなく勇者の持ってた干した豆と魔物の焼き肉の炒め物を魔法で作ってくれました。
お腹いっぱいになった勇者は、夜も更けて危ないけど、疲れたのでちゃんとふわっふわの布団で寝たくて、なんとなく街を目指すことにしました。
びょんびょん伸びたり曲がったりする聖剣に導かれながら、なんとなく近くの城下町へ行くと、王様の家来に城まで勇者は連れて行かれました。
城へ連れて行かれた勇者は、椅子に座って頬杖を付いて半分寝てる王様と対面しました。
「勇者よ⋯⋯よくぞ来た。よければ我々が協力するぞ。なんとなく」
「王様、なんとなくありがたきお言葉」
王様となんとなく話し合った結果、王様は今ある予算や兵力をなんとなくざっと計算して、魔王軍を制圧すると言ってくれました。
王様は隣国の王様たちともなんとなく会議しました。やばい状況だということでなんとなくその日に同盟を結んで、連合軍っぽいものを結成しました。
さっさと動員したくて王様たちは国中の色んな人をなんとなく集め、農具や斧やナタなどを適当に持たせて出征させました。
勇者が魔王城を目指すルートからくっそ遠い場所に魔王軍を誘い、なんとなくそこで制圧することにしました。
結果、くっそ雑魚い連合軍は十五分ぐらいで魔王軍に殲滅されてしまいました。
魔物たちは退屈すぎてやる気を無くしました。
「世界征服まじだるい」
「え、世界中行かなきゃだめなの?」
「やだー」
魔王軍の士気が十五分ぐらいで完全消失し、彼らはなんとなく家へ帰ることにしました。
こうして魔王軍はあっさり解散し、戦力喪失してしまいました。
同じ頃、魔王軍が勝手に解散してしまったのを聞いた魔王は、まだこむら返りの治らない足をぴんと伸ばして寝転がりながら泣きました。
「勝手すぎでしょ。マジ最悪なんだけど」
魔王もやる気をなくしてしまいました。
一方で、雑魚い連合軍が時間を稼いでくれたおかげで魔王城へたどりついた勇者は、城の魔物たちが酒を飲んだり踊ったりのんべんだらりしてるのを見て凍りつきました。
「は? ねぇわ」
魔物たちは酒瓶を勇者に向けて掲げて、叫びました。
「いらっしゃああああい! 一緒に飲も?」
あまりにも陽キャが多すぎて、勇者は萎えました。
勇者はパリピどもを避けながら、魔王のいる部屋をなんとなく探しました。
「やい! 魔王!」
ドアを開けると、片足をロープで吊るしながらベッドで寝転んで焼酎を片手に飲んだくれる魔王がいました。
「うぃ〜⋯⋯何?」
勇者はその場に膝をつき、なんとなく聖剣をぶん投げて八つ当たりしました。壁に跳ね返った聖剣が魔王の片足を吊るしているロープになんとなく当たり、ブチッとちぎれてしまいました。
魔王は飛び跳ね、叫びました。
「おひょおおおおん! 痛いのおおおおおん!」
ベッドから転げ落ちた魔王の上に酒瓶が落下し、破片と焼酎が頭上にぶっかかりました。
勇者は、床でのたうち回る魔王を見下ろしながら、
なんとなく言いました。
「あのさ。世界征服とか、もうやめない?」
魔王は涙と焼酎まみれの顔を上げ、鼻をすすりました。
「やめたいよぉ⋯⋯ひっく、でも創造神に封印された手前、 なんとなく威厳とか保たなきゃいけないじゃん⋯⋯ひっく」
「いや、ぜんっぜん保ててないよ」
勇者は部屋の隅で勝手に踊ってる魔物たちを指差しました。
「ほら、あれ見て。あの飲んだくれパリピどもを」
魔王は横目で見て、さらに泣きました。
勇者はため息をつき、なんとなく床に座り込みました。
「じゃあさ。 世界征服とかじゃなくて、なんとなく平和にしない?」
魔王は涙を拭きながら、なんとなく頷きました。
「平和、いいね。なんとなく。その前にこむら返り直してくれる?」
聖剣が輝き出し、魔王のこむら返りを治してくれました。
その瞬間、聖剣がまた光り、 平和条約と書かれた紙をびょーんと吐き出しました。
平和条約
「こむら返り治ったしもう何もしねぇって。ちゃんちゃん」
勇者と魔王は顔を見合わせました。
「なんとなく、これでよくね?」
「よくね?」
こうして、世界はなんとなく平和になりました。