完結したのにも関わらず、ありがたい事に更にお気に入りの数が増え続け、500件になったので記念で投稿します。
フレデリカ視点
新緑も深まり、春から夏に移り変わる季節。間もなく梅雨の足音が聞こえてきそうな6月の良き日に、私とシリウス様は結婚式を挙げる。
シリウス王太子様はほんの二ヶ月前、学園の卒業と共に戴冠式を行い、正式に国王陛下となられた。
総主教猊下により聖霊様に一旦王冠を返還し、新たに王冠を授与されたシリウス様は、聖霊様と国民に対して法を守り、国を守り、国民を守る事を宣誓され、拍手喝采の元にこの国の頂点に立ったのだ。
光の聖女様たるキャシーに祝福された聖剣は眩く輝き、誰もが最高の国王陛下だと信じて疑わなかった。
そして僅かに月日が流れ、あと数日で私ウォルフ公爵令嬢フレデリカは、新国王シリウス様に嫁ぐ。
それは小さい頃から夢に見て、かつ恐れていた事でもあった。悪役令嬢として生まれた私は常に破滅の運命に怯え、立ち向かう事に奔走していたのだ。
今でも一部の人間は私ではなく、聖女様こそ王妃に相応しいと言っている。流石に表立って公言してないが、陰口は何処ともなく伝わってくるものだ。
私は公爵家の元に生まれはしたが、他に何か持っているわけではない。
光の聖女、キャサリンの様に癒しの力を持っていない。
炎の聖女、レイナさんの様に強力な武力も持っていない。
前世は只のOLだった。政治力も、科学知識も持ち合わせていない。パソコンで表計算が出来ても、パソコンそのものを作る事はできない。仕組みすら分からない。
身分以外、何もないのだ。
今日、数日後の式の段取りの打合せとの名目で、久し振りにキャシー、レイナさんと三人で、お茶会を開催する事になった。今は王太子…国王陛下の仕事を手伝っている関係上、場所は王宮の一室を借りた。前世を知る者同士、悩みを聞いて欲しかったのだ。
「そう言うわけで、自信が失くなってきて…。私ではなく、御二人の方が国王陛下の花嫁に相応しいのではないかと…」
「そ、そんな事はないよ?私、フレディが努力してきた事を知ってるもの!」
キャシー、光の聖女様で私の親友は、そう言って励ましてくれるわ。
元々、この世界のヒロインとして産まれた彼女は、本来なら王妃になる資格があったのだ。
私は破滅を恐れて、運命を変えようと努力してきた。でも、それはキャシーの運命を捻じ曲げた事につながっていたのだ…。それは、正しかった事だったのだろうか?
キャシーとの出会いは、私にとって良くない印象を与えた。とても仲良くなれない、敵対するしかない。高慢で冷酷な女だと思い込んでいた。
「いや、あの頃はその、私も若かったし…」
でも対話してみると、話の分かる人だった。ゲームの話で盛り上がり、気が付いたら親友になっていた…。
「えへっ!恥ずかしいな…って、独り言漏れてるの、気付いてない!?」
「かなり深刻なマリッジブルーですね…。王妃になるともなれば、責任重大ですし。ちょっと、そこのメイドさん、少しお願いが…」
レイナさんの取り計らいに寄って、キャシーが私を追い落としてシリウス様を狙う事もなくなり、色々な情報を聞いて…それをお父様や陛下に話したら、私こそが王妃に相応しいと言ってくれて。
でも、それこそが私の罪。人の手柄を奪って、自分のものにして…。
「レイナは気にしてないわよ?」
「お嬢様、こう言う時は、正論を言っても無駄なのです。暗い方に、嫌な方に考えが沈んでしまいます」
あれから、キャシーはどんどん聖女として成長していったわ。沢山の人を癒し、流行り病を防ぎ、水害に苦しむ人を救い!
レイナさんも王家の剣を手に入れる為、何度も命懸けで戦い、大きく貢献した。
翻って私はどう?何かした?
原作を知っていたから、助言は出来たけど、そんなのキャシーでも良かった!同じ知識があるのだから!
「そうよ!私なんかより、キャシーの方がずっとずっと王妃に相応しいんだわ!!」
「そんな事はないよ、フレデリカ」
えっと思ったら、後ろから抱き締めてくる、よく知っている声…。シリウス様!?
「レイナ嬢が呼んでくれたのだよ。フレデリカ、君がどれだけ僕の心の支えになってくれたか、どれだけ君に依存していたのか、まだ分からないのかい?」
そ、そんな、ななな、お声が、耳元で、息、息がかかって!?
「……フレディ、かなり動転しているわね…」
「端から見たら、蜘蛛の巣にかかった蝶ですね」
「大丈夫よレイナ、貴女の方がもっと酷かったから」
「………うがぁ!」
何か二人が言ってるけど、そんな、シリウス様が私にぴったりくっついて、近い、近過ぎます!!
「今まで散々焦らされてきたからね…。逆に、フレデリカには全く耐性が無いわけだ。これは、式の本番で緊張でガチガチにならない様に、少しほぐしてやる必要があるかな…?聖女様方は如何思う?」
「いや、如何って言われても…」
「フレデリカ様の話を聞いて上げて下さい。反論や正論は言わなくて良いです。ただ、ひたすら話を、愚痴を聞いて上げて大丈夫だ、任せてと言って安心させて上げると良いかと。それと…」
「…それと…?」
「式が終わるまで『最後の一線』は越えない様に!!」
ちょっと?!レイナさん!?何を言って、あ、シリウス様にお姫様抱っこされて、ど、どこへ連れて行かれるの!?
「変な考えが起きない様にしてあげるよ」
「「いってらっしゃーい」」
ま、待って待って、心の準備が、あーーーー♡!!
結婚式当日 第三者視点
「それで?あの後、何が起きたのかな〜?」
「な、何もなかったわよ!ただ、二人っきりであちこち抱き締められながら、私の話を聞いて貰って、それが終わればシリウス様がどれだけ感謝しているか、私が素晴らしいかをコンコンと説かれたわ…。思い出すだけで恥ずかしい…」
そう答えるのは、純白のウェディングドレスを着たフレデリカだった。プリンセスラインと言われる、腰から裾が大きく広がったスカートに、幾重もの刺繍が施されている。
対照的に上半身はビスチェとなりスッキリしたデザインで、胸元は大きなフリルでガードされつつも肩を露出させた大胆な姿となっていた。
ベールを冠ったフレデリカの腰まで伸びた金髪は、見事なまでの縦ロールを決めている。
付き添う二人の聖女、片方はキャサリンで黄色を基調とした修道服を、かなり豪華にしたようなドレスで聖女服と呼ばれている服装だ。
レイナも色が赤になっただけで、同じ服装をしている。違いは色だけでなく、キャサリンは錫杖を腰に、レイナは剣を腰にぶら下げている。
本人達曰く、
「アニメに出てくるキャラのコスプレみたい」
「この歳になってゴスロリを着るとは…」
との事だった。
「前世で経験なかったの?
「………うう…女子高、女子大出身の、も、喪女でした…」
「ありゃ。それじゃ、経験したのはレイナだけ?」
「男として結婚した経験はありますが。何の意味も無いですよね?」
やがて時間がきて、二人の聖女に連れられて花嫁がヴァージンロードを歩く。
彼女らの前世では父親が花嫁を連れて来た。しかし、この国の習慣では花嫁の成長を見守ってきた聖霊様が連れて来るものとして、一般的には修道女が、今回は聖女が聖霊様の代行として連れてくるのだ。
そして花嫁は花婿に引き継がれ…この日の為に再びやって来た総主教猊下の前で、結婚の宣誓を行い、誓いのキスをした。
「ここの所は前世と変わりませんねぇ」
「乙女ゲームとして、このシーンは外せないっしょ」
教会の大きな鐘が鳴り響く中、前世では画面の中で、今世に生まれ変わっても愛し続けた男と共に、壇上にて祝福してくれる家族や友人達を眺めながら、フレデリカは思った。
これで、本当の意味でのゲームは終わり、新たに第二の人生を、ストーリー等とは関係なく自分の足で歩くのだと。
未来はもう分からないけれど、これからはシリウス様と共に歩んで行こうと。
「ま、私達もいるから、頼りにしててよね!」
「微力を尽くしますよ」
「ありがとう、二人共。頼りにしますね」
一応、これが最後となります。転生娘三人のその後を出してみました。
作中にある様に、これ以降はゲームから離れてしまいますので…。最も、同じく作中で続編を示唆していますが。
それでは、他の作品でお会いしましょう。