「未来は変え得る」と信じる実力派エリートと、「未来は変えられない」という絶望にも負けず戦い抜いた英雄。

死の淵にいたサー・ナイトアイが目を覚ますと、そこはどこかのラーメン屋だった。
対面に座るのは、飄々とした態度でぼんち揚げを差し出す青年、迅悠一。

未来が見えるなら、過去も見える。さらには分かれ道も見える。
数多の分岐を横へ移動した先、限りなく遠い可能性の世界で交錯した二人の予知能力者。
変則将棋の盤を挟み、二人は「予知」の正体と、その先にある「最高のヒーロー」の姿について語り合う。

これは、二つの世界がほんのひと時だけ重なった、魂の休息の物語。

【補足説明】
『ワールドトリガー』×『僕のヒーローアカデミア』のクロスオーバー。
迅悠一とサー・ナイトアイの対話中心の短編です。
原作で明言されていない「未来視」のメカニズムについて、多分に独自の捏造・考察を含みます。あらかじめご了承ください。

三雲修、緑谷出久について:
二人の生き様や在り方について深く言及するシーンがあるためタグを設定していますが、実際に作中に登場(描写)されるのは迅とナイトアイの二人のみとなります。

2021年11月にpixivに投稿した作品の再掲です。
まだ見ぬ誰かとの出会いがありますように。

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第1話

サー・ナイトアイは死んだ。

愛弟子の未来を祝福し、ベッドの上で幸福な最期を迎えた。

……はずだったのだが、気付いたら食卓についていた。四人掛けのテーブル席。

 

「…………」

 

注意深く周囲を窺う。賑わいに満ちた庶民的な飲食店……どうもラーメン屋のようだ。

 

「や、ども」

 

気付けばいつのまにか対面の席に人が座っていた。風変わりな首飾りをした、ゆるい雰囲気の青年だ。ナイトアイの鋭い眼光にも動じず、どこからか取り出したスナック菓子の袋を差し出してくる。

 

「ぼんち揚げ、食う?」

 

 

* * * * *

 

 

数分後、二人はラーメンをすすっていた。

 

飲食物持ち込みの可否を問うたら、青年は周囲を見回し驚いていた。彼にとってもイレギュラーな事態だったようだ。

するとスナック菓子は消え失せ、直後に頼んだ覚えもない醤油ラーメンが運ばれてきた。

青年は迷わずありついた。「早く食わなきゃ麺が伸びる」と。

そこから遅れること数十秒、鼻孔をくすぐる魚介出汁の香りに耐えかねて、ナイトアイも箸を取った。

ラーメンは歯ごたえこそしっかりしていたが、味は朧気だった。アンバランスで奇妙な感覚。

 

「まるで夢の中でする食事のようだ」

「わかる」

 

ナイトアイが眼鏡の曇りを拭いつつこぼした感想に、青年は同意を示したものの、そのまま何食わぬ顔で完食した。

 

「んじゃ、つまりはこういうことかな」

 

食事の合間に交換した情報を、青年ーー迅悠一が簡潔にまとめる。

 

「未来が見えるなら過去も見える。

 それなら当然分かれ道も見える。

 数多の分岐を横へ横へと移動した、限りなく遠い可能性の世界……

 そこでおれたちが出会った、と」

「…………」

 

ナイトアイはスープを最後の一滴まで飲み干して丼を置き、紙ナプキンで口元を拭いてから答えた。

 

「……そう考えるのが妥当だろう。にわかには信じがたいことだが」

「いやー、不思議なこともあるもんだ」

 

確かに、今までにはなかった経験だ。

おそらくは「未来は変え得る」と認識を改めたのが契機。そう、ナイトアイは考えていた。

広がる可能性を、無限の分岐を、死を目前にした悟りが自らの内に拓いたのだ。

 

「ふむ。ちょっと確認」

 

迅はおもむろに醤油差しを手に取り、互いの中間に置いた。

 

「コレ、あんたにはどう見えてる?」

「醤油だ。もっとも、見た目は不安定だが」

 

何の変哲もない醤油差しの像が時折ブレては、別の像がダブって見える。

プラスチックの赤い蓋がついたありふれたガラスの醤油差しと思いきや、次の瞬間には大手メーカー製の卓上用ボトルに。数秒も経てば手製のラベルが貼られた安っぽいボトルにと、その姿を目まぐるしく変える。

 

「見た目はともかく、本質は共有できてるってわけか。なるほどなるほど」

 

話が早い。きっと迅の目にも同様の映像が映っているのだ。

ナイトアイは改めて店内に視線を巡らす。醤油差しだけではない、千変万化は店ごとだ。

壁掛けのお品書きが特徴的なデザインの有名チェーン。幼い頃、買い物帰りに家族と寄ったショッピングセンター内の店舗。ミリオをたびたび連れて行った事務所近くの個人店。チェーン店のまた別店舗……と、瞬きするごとに風景が切り替わっていく。

ラーメン屋の内装など何処も似たり寄ったりではあるが、それでも明確に異なる風景が、現れては消えていく。

まるで舞台の書き割りが入れ替わるように。

 

つまり、この場にはシチュエーションの演出という以上の意味はない。

意味があるのはひとつだけ。

揺れもブレもしない眼前の男ーー未来視の力を持つ、生まれて初めて出会った同胞。

 

目を合わせると、迅悠一は不敵に笑む。

 

「おれさ、分かったよ。自分がどんな駒なのか」

「駒……?」

「似通った性質のあんたと比較して、ようやくね。つきましては、その確認もかねて……お、あったあった」

 

ナイトアイが怪訝な顔で見守る中、迅はテーブルの下を手で探り、卓上用の簡素な将棋セットを取り出した。

 

「一局どうだい?サー・ナイトアイ」

 

迅が何をどう確認するつもりなのか……そこまでは分からぬものの、ナイトアイの側にも確信があった。

対局を経て、自分たちは次のステージに進むと。

 

「……いいだろう」

 

箱をひっくり返して盤上に駒を広げると、見慣れぬ駒が目に付いた。

『冬島』……?

 

「あ、それ、おれの」

 

迅はその駒を拾い、自陣最後列に配置した。

妙な駒はそれだけではない。

『荒船』『来馬』『緑川』『木虎』『諏訪』『隠岐』……人名か?それらを迅は次々と手に取り、小考を挟みつつも自軍の布陣を整えていく。

正式な将棋の駒は王将と玉将の二つだけだ。迅が先に玉将を取ったので、ナイトアイはとりあえず王将を自陣の中央に置いた。

 

視線を落としたまま、迅は言う。

 

「みんな、駒なんだよね。

 進むのが速かったり遅かったり、動ける方向が決まってたり、妙な跳ね方したり……ちょっとずつ行動パターンの違う駒」

 

ふむ、とナイトアイ。言わんとするところは、分からないでもない。

 

「てなわけで紹介します。おれの頼もしい仲間たち、ボーダー隊員諸君でーす」

 

完成した布陣は見たこともない陣形で、同じ駒は一つとしてない。

ナイトアイは、中盤に控える「迅」の駒に目を留めた。

 

「その駒はお前か?」

 

迅は返事の代わりに、手つかずの山からひとつの駒をナイトアイへ差し出した。刻まれた文字は「予知」。

 

「これは……私か」

 

口角を上げ、迅悠一は不敵に笑う。

 

「見せてくれよ。あんたがどんな仲間と、どう戦うのか」

「…………」

 

ナイトアイはしばし考えて、自身を意味する駒を前線に置いた。

次いで拾った駒にはこう記されていた。

全能(オールマイト)

 

 

* * * * *

 

 

「ありません」

 

投了を宣言した迅は、背もたれにもたれかかるようにして天を仰ぐと、大きく息を吐いて弛緩した。

それを受けて、ナイトアイもまた小さく息を吐いた。

 

「……なかなかいい勝負だった」

「あ~~、三度目の正直のはずが……」「二度あることは三度ある、だったな」

「途中まではいい線いってたのに……」

「いい勝負だったのは事実だ、そう気落ちするな」

 

三戦全敗を喫した迅は、見るも無残にぐったりしている。

 

「いや、よーく分かったよ。全能(そのひと)が盤上にいる限り勝ち目ないって」

 

無理もない、『全能』の駒は往年のオールマイトを彷彿とさせる八面六臂の大活躍。指し手のナイトアイも、ゲームの話とは思えぬほどに誇らしげだ。

 

「当然だ。彼は最高のヒーローなのだから」

「飛車角どころの騒ぎじゃない。他の駒なんにもいらないじゃん、そのひとさえいりゃ」

「将棋盤の上ならな……」

 

そう語るナイトアイの目に、一抹の陰り。

 

「実際は、負傷もすれば休息も要る。……彼も人間なのだから」

「ああ……ちょいちょい温存してたのはそれでか」

 

迅も不可解に思っていたのだろう、『全能』で片の付く局面で、ナイトアイがたびたび見せた躊躇いを。

もっとも本物のオールマイトは、そう簡単にナイトアイの配慮を受け入れようとはしなかったがーー。

『全能』の駒へ複雑な眼差しを向けるナイトアイを、迅は微笑ましげに眺めていた。

 

「大事なんだな、その人が」

「……まあな」

「大変でしょ、この人。こうも強いと」

 

迅が何気なくこぼした言葉に、ナイトアイは息を飲んだ。

 

「……サー?どうかした」

「ああ……いや」

 

ナイトアイは喉を震わせ、出かけた言葉を飲み込んだ。そして何事もなかったかのように会話を続けんとする。

 

「そうなんだ……行く先々で事件を解決しては、その何十倍もの苦労を背負い込んでくるような人でな……」

 

誰もがオールマイトを無敵の超人だと信じていた。彼自身も、そうあらんと自らに強いてきた。

彼の歩んできた、傍目には華やかでこの上なく過酷な道程を、かつての伴走者たるナイトアイはよく知っている。

 

「だっていうのに、こっちの心配なんて聞きやしないで……あの人は本当に……本当に……」

 

ナイトアイは眼鏡を外して目頭を押さえた。抑えきれずに声が震える。

 

誰もがオールマイトを無敵の超人だと信じていた。彼自身も、そうあらんと自らに強いてきた。

彼を案じたナイトアイの叫びはどこにも届かなかった。袂を分かった後も、ずっと一人で抱えてきた。

だから、こんな言葉をかけられることもなかった。

 

(……? 私は、何を……)

 

戸惑うナイトアイ。

次に迅が何と言うか、ナイトアイは既に知っていた。「個性」で見たわけでもないのに何故か分かる数秒後の未来。それが現在とオーバーラップして、情緒をぐちゃぐちゃにしている。

先と同じように、迅は口にするーーなんでもないことのように、何気ない口調で、当たり前に。

 

「苦労するね、あんたも」

 

ナイトアイは、頷く以外にできなかった。

やっと、報われた気がした。

 

 

* * * * *

 

 

迅がずっと黙っていたので、ナイトアイは十分に落ち着いて眼鏡をかけ直した後で、自ら話を戻した。

 

「……対局の件だが、そちらもなかなかやる。往年のオールマイトにこうまで食い下がった敵はいなかった」

「あざっす」

 

イラッとさせられる軽さだが、若者はかくあるべし。中年がいちいち目くじらを立てるようでは元気とユーモアのある社会は遠ざかる、と飲み込むナイトアイであった。

 

「聞けば年若い少年少女の集まりだというのに、驚かされる。特に『烏丸』と『空閑』を犠牲にした乾坤一擲の策、あれには肝が冷えた」

 

言及したのは三局目の中盤について。

『全能』を単騎で引きつけていた『烏丸』が、あと一息のところで時間切れの緊急離脱(ベイルアウト)。そのフォローを小回りのきく『空閑』が急遽務めた……という展開だった。

その後、大駒を一気に二つも失った迅の陣営がさらなる苦戦を強いられたのは言うまでもない。

 

「遊真まで捨て駒にするつもりなかったんだけどなあ……とりまる一人でいけると思ったんだけど、考えが甘かった」

「縛りのある駒にはどうしても不確定要素が増える、仕方あるまい」

「まあね。遊真ならこのシチュエーションも楽しんでそうだし、別にいっか。何事も経験」

「それは知らんが……それよりもその駒」

 

ナイトアイが示したのは「メガネ」と印字された駒。

 

「温存していた……というより、護っていた。時には大駒を犠牲にしてまで、ともすれば、王将よりも重要な駒のように」

「さっすが、お目が高い」

「何故だ?」

 

追求にも、迅は思わせぶりな含み笑いをするのみ。

 

「実はおれも、気になってたことがあってさ」

 

迅が示したのは『デク』の駒。

 

「こちら、使い方次第じゃオールマイト並の爆発力が出せる駒だとお見受けしました。あんたは使いたがらなかったけど、よんどころのない事情でも?」

「…………」

 

ナイトアイの沈黙を、迅はどう受け取ったのかーーすぐに「まあいいさ」と、ひらひらと手を振って話題を流した。

 

「対局で、改めて確信したよ。たぶん、おれらは根っから将棋指しなんだろうね」

「根っから……?」

 

怪訝に思ったナイトアイ、眉間の皺が深まる。

 

「さっきの対局、あんたはこういうのも想定に入れてたんじゃない?その場の匂いに、空気感……」

 

将棋指しとは全く関係のない話に転がったが、しかし皆まで聞くまでもない。

それらは当然のようにナイトアイも想定し、駒の動きに反映させていた。

 

地を抉る爆撃、天候を変える拳圧、ほか戦闘の影響による環境変動に、それらに応じた駒各々の耐性。

隣り合った駒同士の相性、能力のみならず性格面も。

激しい交錯を経た直後の残心。

呼吸の深浅、拍動のタイミング、張りつめた緊張の狭間を縫って生まれる隙。

 

それらは迅にも見えていた、ナイトアイ一人の自己満足ではなかった。

二人は本物の戦場さながらの情報量を共有し、高度なシミュレーション上で矛を交わしていたのだ。

 

「な。同じモノ見えてんだよ、おれたち。未来に限らずさ」

 

それから迅は目線を示すように、自らの顔近くから将棋盤を指さす。

 

「で、そんなことまで考えながら今おれらはこうして戦局全体を上から俯瞰して眺めてるけど……」

「ゲームのプレイヤーだからな、当たり前だ……が、なるほど」

 

皆まで言う前に察しはついたナイトアイだが、それでも最後まで聞こうと手のひらを向けて促した。

迅は両手を使って『迅』と『予知』との駒の、鋭角な頂点をそれぞれ指さす。

 

「仮におれらの目がここについてたとしても、同じことできるっしょ」

「駒でありながら、将棋盤を俯瞰して把握できる……ということだな」

「そう。俺らにとっちゃあ当たり前なんだけど……」

「できない人間も少なくはないだろうな、現実においては」

「そう。視座が違うっつーのか……でも、できるでしょ?現実でも」

「自分がいない場所の状況把握か」

「そそ」

「ざっくりとなら」

「かなり解像度の高いざっくりだよねー」

「軍師タイプ。というなら、否定はしない」

「でも、ただの軍師には未来予知まではできない」

 

迅はてん、てん、と『東』の駒を指先で叩く。

その駒にも少なからず煮え湯を飲まされたーー本物はきっと輪をかけて有能な人物なのだろうと、ナイトアイは感じていた。

 

「軍師タイプもなかなかに話が早いし深くなるけど、ちょーっと違う気がするんだよね」

「ふむ……」

 

記憶を探るナイトアイだったが、参照できる場面はあまりに乏しかった。

私生活では個人主義を貫いているし、仕事上の人間関係では頭脳労働者は現場担当者ほどは数が要らない。そういう意味での同類には、さほど縁がない。

 

「まあいい。続けてくれ」

「あの人らができるのは『推測』『予測』であって『予知』じゃない」

「その心は?」

「説明が理路整然としてる。おれらより遙かにずっと」

 

身も蓋もない、と渋い顔のナイトアイだったがーー

 

「たぶん、言語化能力と情報処理能力がバランスよく高いとああなる」

 

続く言葉には、ぴくりと眉を動かした。

 

「……おまえが言いたいのは、まさか……」

「あ、皆まで説明しなくてOK?」

「念のため最後まで聞こう」

「その慎重さ、キライじゃない」

 

サムズアップの迅、ナイトアイは鋭い視線で続きを急かす。

 

「要は未来視ってのは、高度な情報処理能力なんでしょ。

 それも言語化が追いつかないくらいに、回答だけを割り出すのに特化した技能」

「……やはりそうか……」

 

ナイトアイはゆっくりと息を吐き、論が腑に落ちるのを待つ。

それからおもむろに口を開く。

 

「……確かに、未来は見えても、理由までは説明しがたい」

「だよね」

「数学の天才も途中式を書けないと聞くな。そんな馬鹿な話があるかと思っていたが……」

「それも同じメカニズムじゃん?誰しも自明すぎることは、噛み砕いて説明なんてできない」

「順を追って答えにたどり着くなら道順も説明できようが、最初に答えの位置にワープしていては道順など分かるまい」

「でもワープに見えるそれは実は加速装置でしたっていう」

「本人にすら通った道が見えぬほど高速で駆け抜けている、と」

「まさしく」

 

テンポよく会話が進む中、奇妙な感覚がナイトアイを支配していた。

彼はずっと、会話の主目的は情報交換にあると考えていた。

だが今は、互いにとって自明の理をわざわざ口に出しあっている。

まだるっこしくも思えそうなはずのそれが、何故だかとても心地いい。

 

(そうか、じゃれあいなんだな……

 これも、心和ませるコミュニケーションの在り方か……)

 

ナイトアイが薄く笑うと、迅も同じように笑った。

 

「で、軍師タイプは自分がどこで得たか覚えてる範囲の情報を主に活用して未来を割り出すけど、おれらはたぶん無意識に収集した情報をさらに多く活用してんだろうね」

「そこで言語化能力の差が生じると」

「んで、誰にでもたどれる道筋を紹介できるから、他人を説き伏せる能力はあっちの方が上」

「その代わり我々は、誰も信じられないような突拍子もない未来まで予知できる」

「そのへんサーはどう?苦労してる?」

「私の世界は『個性』という異能の概念が浸透しているのでな。かくいうおまえはどうだ」

「信じざるを得ないくらい実績積んだから、さほど」

 

やはりか、とナイトアイが薄く笑うと、迅もまた笑った。

 

「話が早くて助かるよ」

「他の相手ではこうはいくまい」

「まぁね」

「しかし今回の経験を踏まえて見識が深まったなら、言語化できる範囲も増えそうだが」

「どうだろ、しても余計に手間がかかるだけじゃないかな……今まで通り『おれのサイドエフェクトがそう言ってる』で押し通した方がよさげ」

「確かに、普通の人間には簡単に飲み込めない説明だろう」

「何の根拠が?とか言われても困るし。おれたちが一目で得る情報量、普通の人に話して分かってもらえるようなもんじゃあないんだろうから」

「人相学やら何やらで説明つくレベルでもないからな」

「こればっかりは、分かる奴にしか分からない、と」

「私のようにか」

「あるいは、おれみたいに」

 

もう何度目になるか。

二人はまた、顔を見合わせて笑った。

 

「しかし私の個性についてはまだ謎が残るな……瞳を覗く行為の何がそこまでの情報をもたらすのか」

「例の個性因子とやらを眼細胞から読みとってるとか?あるいは、動作はただの儀式説」

「ありうるな、その瞬間までに必要な情報は全て集め終えていて……」

「んで、個性発動のタイミングで予知を形に組み上げる、と」

「なかなか面白い仮説だ」

「ホントかどうか、自分の世界に帰ったら検証してみなよ」

「……そうだな、できたらな……」

 

押し黙ったナイトアイから何を察したか、迅は肩をすくめるとまた話題を変えた。

 

「ところでさ、この『とりまる』なんだけど」

 

『からすま』ではないのか、という突っ込みは野暮と判断し捨て置くナイトアイであった。

 

「さっきも話した大規模侵攻で、おれはこんな風に予知したんだよねーー」

 

『今度の戦い、どこかでメガネくんと千佳ちゃんがピンチになる』

『でもその時におまえはいない。

 おまえは二人のピンチを変えるポジションにいないんだ』

『おまえはたぶん誰かに負ける』

 

「そして実際に、その通りになった。

 ……サー、あんたなら分かるか?この予知の理由」

 

ナイトアイは眼鏡を押し上げ、重々しく息をつく。

 

「……まず、千佳とは」

「これはこれは、ご紹介が遅れまして」

 

迅はジャケットの袖口から『千佳』の駒を取り出し、『メガネ』の隣に並べた。

どちらも歩兵サイズの小さな駒だ。

 

「メガネくんの性能はまあ、さっきも見た通り歩兵レベルね。千佳はちょっとヤバい、一撃でこの辺ーー」

 

迅は手を伸ばすと、ナイトアイ陣営の奥地、かなりの広範囲を指を動かして区切り示す。

 

「丸々吹っ飛ばせる遠隔攻撃持ち」

「そんな性能の歩兵がいるか!」

 

思わず大声を出してしまったナイトアイ、慌てて周囲を窺うものの、めまぐるしく移り変わる店内は相変わらずで何の影響も見られない。

 

「おっしゃる通り、でも一芸は発揮できなければないも同然。なので千佳も今んとこ普通の歩兵ということで……」

 

迅は「ズンズンズンズン……」と口頭で効果音を演出しながら、二つの駒をつまみ上げて器用に立たせてみせた。

 

「何を隠そう先の対局、この二枚を最後まで守り抜くことがおれの隠し目標でした」

 

ナイトアイは頭痛を堪えてこめかみを押さえた。

 

「……一枚は盤上に出ていなかった」

「そりゃ隠せるものは隠すでしょ。大規模侵攻ん時はそうもいかなかったけど」

 

全くもって妥当な判断、ぐうの音も出ない。

 

「……何故歩兵を?王将ではなく」

「できるなら王も守り抜いて勝ちたかったけど、現実は厳しいね。……でも、あるだろ。直接の勝利条件とは別に、どうしても失うわけにいかないものも」

 

現実は必ずしも勝利=成功とは限らない。損耗は次の敗北に繋がるし、一戦毎に仕切り直せるゲームとはそもそも理が異なる。

 

「つまり、その二枚は後々の鍵となる……」

「ん。いわば、未来の勝利条件」

 

なるほど、とナイトアイ。

前提は分かった。改めて、先の問いーー『とりまる』に関する予知に考えを巡らす。

 

「そうだな……駒としての『とりまる』は全体に優秀だが、中でも最大の特徴は『ガイスト』にある。

 『ガイスト』を使用すると能力が跳ね上がる代わりに、その時点で『とりまる』の撤退は決定する。違いないな?」

「たしかに」

「しかし、件の大規模侵攻においては『ガイスト』を温存しても生き残れなかった。

 奥の手なしでも十分な戦力となりうる強力な駒となればーー敵も当然、相応の強者をぶつけてくる。敵将はそういった的確な采配ができる人物。戦前の布石から既にその人物像が窺い知れたーーだからこそ、激戦が予想された訳だが」

 

徐々に速度が上がりゆく、オタク特有の早口を、迅は頷きもせずに聞いている。

 

「ある程度よりも厳しい戦況であれば、遅かれ早かれ退場する、そう宿命付けられている……『とりまる』は、そういった性質の駒だ。おまえは普段の交流から、その性質を熟知していた。だが……」

 

次いで、ナイトアイは視線を移す。

 

「『メガネくん』と『千佳』は、盤上にある限り絶えずピンチに晒され続ける。

 『千佳』はーー」

「希少性ゆえに狙われる」

 

迅の補足を受けて、ナイトアイが続ける。

 

「そして話から察するに、『メガネくん』は自ら窮地に飛び込んでいく。

 ……この二者を最後まで護りきるには、途中退場が濃厚な『とりまる』一人では役者不足だ。最終局面まで確実に残せる、別の駒が不可欠。……おまえはそれも、そつなく手配しただろうな」

 

そんなところか……とでも言いたげに視線を向けるナイトアイに、迅はゆるい拍手で応えた。

 

「おれですらなんとなくだった考えを、よくまあそこまで……さすが、何もかもお見通しだ」

 

賞賛にも関わらず、ナイトアイは苦い顔。

 

「……何もかもお見通しだと思っていたのが、私の限界だったのだろうな。だから、未来を変えられなかった」

「ふむ。過去形?」

「過去形だ。目の前で見せつけられて認めぬわけにいくまい」

 

八斎會本拠地での戦いは、宗旨替えには十分すぎる衝撃をもたらした。

限界を超えた力を重ねてようやく掴み取った奇跡。それを可能にするだけのエネルギー。

一人で最強のオールマイトとは違う在り方、群の力で掴んだ勝利。

 

「なんていうの、ちょっとずつの積み重ねが全体の展開を大きく変えんだよね。バタフライエフェクトっていうの?」

 

迅はくるんくるんと、人差し指で空中に渦を描く。

それを眺めつつ小考し、ナイトアイは切り出した。

 

「せっかくの機会だ、おまえにも問おう」

「おれに分かる範囲でよければ」

 

韜晦を、と笑みを噛み殺しながらナイトアイは『全能』の駒を指さす。

 

「彼の名はオールマイト……私の予知では、彼には凄惨な死の未来が待っているはずだった」

 

迅は驚きもせず、ああ、と納得の声を上げた。

 

「そりゃ悲惨な最期にもなるだろ。自分の身を顧みず危険に飛び込む勇気のある人間、大抵はそのせいで死ぬ羽目に……っと、申し訳ない」

 

ナイトアイが唇を引き結んだのを見て、迅は慌てて口を噤んだ。

 

「いや……残念ながら、その通りだ」

「サーの大事な人相手に配慮が足りなかった、重ね重ね申し訳ない」

「構わん、続けろ」

「……話を戻すと、生き物って大抵は長所が原因で滅びるもんだよな」

「ほう。面白い見解だ」

「なんだっけ、サーベルタイガーは牙を発達させすぎたせいで絶滅したとかしないとか?」

「それは俗説だが、主旨には賛同する。確かに生き物の多くは長所が行き過ぎて滅びる。人間も例外ではなく」

「知り合いの親父さんはレスキュー隊員で、見知らぬ子供をかばって死んだんだと」

「勇気なき者にはできぬ死に方だ」

「ホント、敬意を表します」

 

神妙に手を合わせる迅につられて、ナイトアイも内心で祈りを捧げた。

 

(故人の眠りが安らかならんことを…… 死者の私が祈るのも、おかしな話だが……)

 

どちらともなく黙祷を終え、お冷やで口を潤してから、ナイトアイが切り出した。

 

「話を戻そう。死の運命は、その人がその人である限り、いつ起きてもおかしくない……遅かれ早かれ」

「でも、過去形……オールマイトの未来は変わったんだ?なんで変わったの?」

「それを聞いてみたかった」

「それかあ」

 

迅は首筋を撫でながら、なんとはなしに天井の照明に目をやった。が、忙しなく変貌し続けるモノを見ながらの思考は落ち着かないようで、すぐに元の高さに視線を戻した。

 

「んー……一番有効なのはやっぱ、本人の自覚かな。まわりがいくら防いでも、一人の時までは手ぇ出しようがないし」

「……まあ、そうなんだろうな」

「おれに言えるのはそれくらいか……何がその人を変えたんだろうね」

「…………」

 

ナイトアイは無言で『デク』の駒に視線を落とした。

コンビ解散の時点にはおらず、再会までに得ていた、人の縁。

果たしてナイトアイが認めまいとした後継者は、オールマイトの身をも宿命から救ったというのか?

思えばデクは、八斎會の事件でも予知を覆すキーマンとなった。

行く先々で運命を変えて回る、それではまるでーー

いや。ナイトアイは首を振り、考えを打ち切る。

 

「……馬鹿げた発想だ」

「なに?聞こえなかった」

「いい、独り言だ」

「そっか」

 

あっさりと引き下がった迅を、ナイトアイはしげしげと見る。

 

「迅悠一。おまえは手の届く範囲の、多くの運命を変えてきたのだろうな」

「んー?どうかねえ」

 

含み笑いの迅は、同じ予知者の目から見ても底知れないものを秘めている。

末恐ろしい、とナイトアイは心中でひとりごちた。

その迅が、次に口火を切った。

 

「話は変わるけど、最近まであんたは予知は覆せないと思ってたんだよな」

「恥ずかしながらな」

「あんたの考えを改めさせたのは、こんな奴じゃあなかったか?」

 

迅が指折り挙げる特徴に、ナイトアイは背筋が凍る思いをさせられた。

 

「誰かのために頑張れる」

「やると決めたら躊躇わない」

「見返りを求めない」

 

どれもオールマイトにも……ひいてはデクにも当てはまる要素だ。

ナイトアイは、動揺を顔に出さないようにするのでやっとだった。

 

「我々はヒーローだからな……誰にでも当てはまる、バーナム効果だ」

「ーー加えて」

 

否定の言葉にかぶせて、迅はさらに畳みかける。

 

「現実が見えてないとすら思える、向こう見ずな行動力……いや、そんな言葉じゃ生ぬるいな。言うなれば……」

「狂気」

 

ナイトアイが差し挟んだ言葉に、迅が笑みを深める。

 

「やっぱり、似たような奴がいるんだな」

 

迅は、迷わず『デク』の駒に目を向けた。

 

「ごくごく稀にいるんだ。

 何故かいつも騒ぎの渦中にいて、そいつの行動次第で事態が大きく動く……そんな、漫画の主人公みたいな人間が」

 

馬鹿げた発想と、ナイトアイがついさっき内心で打ち消した言葉を、迅は躊躇いもなく口に出す。

 

「おれたちのように未来を視る力なんてない。それどころか目の前すら見えているかどうかも怪しい……」

 

迅の言いたいことは分かり切っている、だからナイトアイが言葉を継ぐ。

 

「彼らはその代わりに、誰にも見えないものを見ている」

 

そして、二人の声が揃う。

 

「「一遍の曇りもない、理想の未来を」」

 

今度は笑いあいはしなかった。

迅は『メガネ』の駒をつまみあげ、目の高さに掲げる。

 

「一万人に一人いるかいないかの逸材だ、この駒だけはどうしても替えがきかない。……下手すりゃ、世界が終わる」

 

迅が手を離すと、『メガネ』の駒はやけにゆっくりと盤面へと落ちていって……

 

衝撃。盤面が、ガラスのようにひび割れた。

 

「なんだと……?」

 

ナイトアイは目を疑い、慌てて『メガネ』の駒を拾う。

件の駒はどこからどう見ても他の駒と違いはない。重量も、素材も。

その存在感で、想像だにしなかった変化を盤上にもたらした……そうとしか思えない。

事態を引き起こした当の迅はさもありなんと、驚きもしない。

 

「そういう人間をおれはこう呼ぶ。

 世界を動かす引き金ーーワールドトリガー」

「なんと……」

 

ショックを緩和すべく、ナイトアイはゆるゆると頭を振る。

突拍子もない話だ。しかし、毛頭信じられないというわけでもない。

迅の言うように、いるところにはいるのだ。ナイトアイの世界に、オールマイトが……ひいてはOFAを継いだ、デクがいるように。

 

「……ふ」

 

肩の力が抜けて、ナイトアイは思わず息を漏らした。オールマイトとデクにまつわる葛藤に、本当の意味で決着を付けられた気がする。

ナイトアイは『メガネ』の駒を手放すと、『デク』の駒をひび割れた盤の中央に置いた。

 

小気味良い音が響き、瞬間、ぶわっと風が吹く。

 

前髪がなびく風圧に、迅が「おお」と感嘆の声を上げた。

ナイトアイは胸を張り、誇らしげに告げる。

 

「そういう人物を、私ならこう呼ぶ。

 『最高のヒーロー』と」

 

ひび割れた盤面は『デク』の位置を中心に修復されていく。風がやむ頃には、すっかり元通り。

それを見届けて、迅は「いいね」と小さく笑った。

そこには先ほどまで散り散りだった駒が、盤外にあったものもすべて、盤上に集結していた。

 

『デク』を先頭に後に続く位置取りのヒーローたち。

『千佳』『メガネ』も含めてより堅固に布陣を組み直した、ボーダー隊員たち。

 

「……てーことは、もう一局?」

「やるか」

 

いつのまにか、周囲はすっかり静かになっていた。

静寂の中に、一層小気味良くなった駒音が、響いた。

 

 

* * * * *

 

 

二人は内容の定かでない財布でそれぞれ会計を済ませ、店を出た。

店の前からは道が二つ、それぞれ別の方向へと伸びていた。交差した道もそろそろお別れ、という意味だろう。

 

「さっきからだんまりで、どうかした?」

 

サングラス(風変わりな首飾りではなかったらしい)を装着しながら、迅が問うてくる。

 

「ミリオについて考えていた」

「例の教え子?」

 

上を向くと、暗くもない空に北極星がほんのりと光って見えた。

その頼りない明かりに縋るように、ナイトアイはもう二度と会えぬ愛弟子に思いを馳せる。

 

「私が思っていた以上に未来は変わるというのなら、私が見た未来も……」

 

言葉に詰まったナイトアイの二の腕を叩き、迅は言う。

 

「最後は信じるしかない。

 未来はきっと、良くなるって」

 

その言葉を、ナイトアイは苦い思いで噛みしめた。死者故の無力感に包まれ、体の力が奪われる。

 

「……そうか……そうだな、もう、私には祈るしか……」

 

諦めたように、ナイトアイが瞼を落とすとーー

 

『見てるかい?サー』

 

不意に、ミリオの声が聞こえた。

瞼の裏に映ったミリオは、涙を浮かべて笑っていた。別人のようにはしゃいで笑う、エリをその腕に抱きながら。

 

(……ああ、見ているよ、ミリオ……)

 

その一瞬で、ミリオの未来、可能性の分岐まで、ありとあらゆる場面をナイトアイは見た。

幸福な瞬間だけでない、苦難、超克、到達、転落、挫折、再起、静穏、日常ーーありとあらゆる瞬間に、亡き師へ語りかけるミリオを見た。

その、笑顔を絶やさぬ姿を見た。

 

(……そうだ、ミリオは大丈夫だ。

 誰にも運命は変えられない。この笑顔がある限り……)

 

目を開けると、まだそこに迅はいた。

 

「いいもん見れたのかな」

「お陰様でな」

 

風景すら既になくなった、霞の中。

ただひとつ、迅の背後に見えるまばゆい光……そこが彼の帰る先なのだろうと、ナイトアイは直感した。

そして二人はどちらともなく、固い握手を交わした。

 

「迅悠一……礼を言う」

「んにゃ、こちらこそ」

「おまえの未来は大丈夫そうだ」

「はは、サーのお墨付きなら安心だ」

「明るい未来には元気とユーモアがあってこそだ」

「おれにはそれがあるって?」

「ああ」

 

そこで迅の雰囲気がふっと変わった。サングラスを外し、いつになく真剣な表情を覗かせる。

 

「礼を言いたいのはこっちの方だ。本当に、会えてよかった」

「……仲間の前では、おちおちそんな顔もできないか」

「よくお分かりで」

 

途端に相好を崩す迅。

 

「いやさ、おれがシリアスでいるとみんな不安がっちゃうから」

「苦労は察する。それでもあえて言おう……」

 

そこでナイトアイは言葉を途切れさせた。

 

「何?」

「いや……」

 

ナイトアイが何を言うか、迅は察しがついているようだったが、ニヤニヤと笑って待っている。

 

「言ってくれよ、サー・ナイトアイ。あんたの口から聞きたいんだ」

「そうか……」

 

分かり切った内容は今更だが、これが説教となると途端に照れ臭くなったというのも、迅にはお見通しなのだろう。

咳払いで気を取り直して、改めて。

 

「笑え。笑いあって、望む未来を勝ち取れ。仲間と共に」

「…………」

 

その言葉を、迅はしばらく噛みしめて、一際長い息を吐くと、歯を見せて笑った。

 

「ありがとな、サー」

 

迅は踵を返すと、後ろ手に手を振って歩き出す。

せいぜい、楽しくやるとするよーーそう、言い残して。

その背中が見えなくなるまで、ナイトアイは見送っていた。

 

「おまえたちの前途が、その光のように輝かしくあらんことを……」

 

最後の餞は、彼の耳に届いただろうか。

確かめる術はない。

そうしてナイトアイは光に背を向けた。

行く先は、朧に白く霞んでいる。

 

(生者のように、輝かしい行く末とはいかないか……)

 

一歩踏み出すたびに視界は狭まり、それと比例して徐々に身体が軽くなる。

なんの温熱効果か、身体がぽかぽかして心地いい。決して、悪くない気分だ。

 

(足取りが軽い……体が温かい……まるで春の陽気を浴びて散歩しているよう……こんな感覚はいつ以来か……)

 

自然と肩の力が抜けて、ぬくい大気に身を委ねる。気苦労ばかりの人生の、休み損ねてきた分を取り返すように。

遠くでナイトアイを呼ぶ声がした。

意識がまどろみに飲まれて、返事はできそうにもない。

 

(そう騒ぐな、私はここにいるから……

 おまえのことを、いつだって見ているから……)

 

ぬくもりにとろけるように、あるいは霞に紛れるように……ナイトアイの姿は、いつしか見えなくなった。

 

 

* * * * *

 

 

これが二人にとって、生涯たった一度の交錯。

迅の戻った三門市とナイトアイの案ずる超常社会、二つの未来がどうなるのかーーそれはまだ、誰も知らない。


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