転生したらヘラクレスの双子の妹でDie   作:セロ弾きのゴーシュ

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兄妹揃って人生の墓場でDie

賢王の夫が夜は暴君すぎてDie

 

 結婚式、そして初夜から一晩明けて朝。

 色々とドエラい目に遭わされたオレは、ずいぶんと疲れているにも関わらず妙にハッキリと目が覚めた。

 こういうときは眠ろうとしても眠れないと、仕方なく起き上がる。

 

 改めて自分の身体を見下ろしてみれば、オレがどんな目に遭ったかが一目瞭然である。

 全身に内出血だらけ、髪はベッタベタ、それでも変わらず美少女なんだから神の血って偉大。

 いや嘘です、できればそんなもんない人生の方が万倍いいや。

 

(…誰だよ、古代ギリシャの夫婦の夜は現代と比べて淡白とか嘘吐いたホラ吹きは。かなり激しいじゃないの、死ぬかと思ったぞ)

 

 誰に届かせるつもりもない恨み言と共に、視線を横に向ける。

 そこには当然、友達であり夫であるエウリュステウスが、オレに腕枕をした体勢のまま静かに眠っている。

 …無駄に顔がよくて腹立つな、なーにスヤスヤ眠ってんだ。

 

 今は理知的な顔をしてやがるが、昨夜のエウリュステウスは間違いなく暴君だった。

 なんで初めてなのに、オレよりもオレのこと知ってんの…賢王って別にそういうことじゃないだろ。

 『お前が素直すぎる』じゃないんだよ、まるでこっちが弱点丸出しの雑魚みたいになるだろうが。

 

 途中で"反射のイヤ"と"マジのイヤ"を的確に判別され始めたときは、意識が半分吹っ飛んでたのに一瞬で正気に戻ったよね。

 判別した直後に、その間ギリギリの峠を攻めだしたときは戦慄したが。

 本当にコイツ神様すら認める賢王なのかよ、鬼畜外道が極厚の猫を被ってやがるぞ!

 

(しかも、そんな極悪テクニックを身につけた理由が理由だ。言うに事欠いて、あんなこと言いやがるとは)

 

 そんなもんを直接味わわせられれば、気になるのは"どうやって身につけたのか"という部分である。

 最初はミュケナイにエゲツないくらい夜の教えが上手い方がいるのかと思ったのだが、そうではなかった。

 オレがエウリュステウスからの攻勢に対して時間稼ぎで質問をしたとき、コイツは気まずそうに顔を逸らした。

 

『お前が私を、あ、愛してくれるなどとは予想していなかったからな。せめて妻の務めである初夜で、不快な思いはさせまいと思ったんだ』

 

『そのために、独学で?てっきり、他の女性に教わったのかと…』

 

『?どうしてだ?私が愛するのはお前だ。他の者は違うのかもしれんが、愛する者以外に手を出す趣味はないよ』

 

 そのときオレは、どうしてヘラがエウリュステウスをあそこまで気に入ったのかを知ったね。

 快楽に対して現代よりよっぽど寛容な古代ギリシャで、なんでこんな純情一途ダンディが生まれるんだよ。

 …いやオレが原因だ、手紙でのやり取りで現代の価値観に染まりやがったんだろうな。

 

 こんなことを言い出すから、後の記憶は曖昧だ。

 王様としては一流も一流なくせに、オレが絡むとあらぬ方向にぶっ飛ぶコイツが、どうしようもなく可愛いと思ってしまう。

 皮肉なもんだが、オレも神の血を半分引いた存在…こういう愚かさに弱いのだ。

 

「でーすーが、一つ気に入らないことがあります」

 

 そう、見逃せないところがある。

 それを分からせるため、オレはいそいそと熟睡するエウリュステウスの身体を跨ぐ。

 所謂、マウントポジションというやつだ。

 

 当然そんな重みが加われば、大体の奴は目が覚める。

 エウリュステウスも例に漏れず、目を擦りながらこちらを認識した…アラサーのくせにあざといぞコイツ。

 

「おはようございます、エウリュステウス。昨日は散々お楽しみでしたね?」

 

「んぅ…?…どうかしたのか?」

 

「いえ、少しばかり分からせようと思いまして」

 

 なんのこっちゃと言わんばかりに首を傾げる、そっちからすればそうだろう。

 まぁそれでいい、バッチリ狙い通りだ。

 

 何が気に入らないって、昨夜は終始向こうが優勢だったところだ。

 オレだって前世は男で、しかも今世は半神半人だ。

 古代ギリシャの作法的には正しいのかもしれないが、攻められっぱなしというのは性に合わない。

 

「何より、私たちは対等ですもの。貴方が押し倒したのなら、今度は私が押し倒す番です。そうは思いませんか?」

 

「??」

 

 何がなんだかという顔、それが昨夜のオレの気持ちである。

 不意打ちで、マウントポジション、条件は同じ。

 オレだってやればできるってところ、コイツに教えてやんねーとな!

 

 そんな意気込みで、オレは初手から深い口づけを寝ぼけ眼のエウリュステウスへとおみまいした。

 ことここに至ってようやく状況を理解し、顔を赤くさせる鈍いコイツが、オレには愛おしくて仕方なかった。

 

 因みに結果だが、こちらから攻めることが叶ったのは最初だけであった。

 なんでや、普通はこういう展開なら攻守交代で勝てるんとちゃうんかい!

 

 

 

 

 

 

兄嫁が可愛すぎてDie

 

「お、お会いできて光栄です!わたしは、テーバイ王クレオンの娘で、め、メガラと申します!この度、アルケイデス様の妻となる運びとなりました。よ、よろしくお願いしましゅっ!」

 

(噛んだ)

(噛んだな)

 

「あぅ、申し訳ございません…」

 

 目の前で大いに緊張し、最後には盛大に噛んでしまった可愛らしい狸顔の少女。

 …いや狸顔というより狸だな、確か前世のガン○ムにこんな子いたろ。

 メガラちゃんの肌は白いから、そこは少し違うけど。

 

 報告したいことがあると兄に言われ、到着した先にはホッコリする癒しの光景。

 エウリュステウスが結婚適齢期ということは、当然兄もそうなる。

 当たり前すぎて忘れていた事実だったが、目の前にすると実感せざるを得ない。

 

 兄が女性を慰めるために頭を撫でるなんて、オレ以外で見たことないもん。

 メガラちゃんも受け入れて嬉しそうだし、知らない間にかなり上手くやってるらしい。

 …というか、明らかに男と女の顔をしないでほしい。

 白昼堂々、妹の前でイチャついてんじゃないよ!

 

「そういうわけだ。お前がエウリュステウス王の妃となって、肩の荷が一つ下りたのでな」

 

「あぁ、なるほど。諸事情があったとはいえ、私は大分遅かったですからね…」

 

 女性の初婚年齢が平均十五歳の世界だもんね、古代ギリシャって。

 オレの三十歳というのは、ここでは異常も異常だ。

 ヘラによる加護がなければ、後ろ指を指されることは避けられなかったな。

 

 ヘラ云々はどうでもいいが、兄としてはやはり妹が気がかりだったらしい。

 そんなオレがついに結婚して、そこに転がり込んできた良縁だったのだろう。

 新しい家族として、オレも仲良くしていきたいぜ。

 

「よろしくお願いしますね、メガラさん。兄は少々顔は怖いですが、女性にはかなーり紳士的ですから。よい夫になれると思います」

 

「その忠告は必要なかろう」

 

 必要だろ、むしろ一番兄が誤解される原因でしょうが。

 目の前に大英雄の圧を発する仏頂面の大男がいたら、大抵の人間は逃げ出すもんだよ。

 

 ただメガラちゃんは兄を怖がることもなく、オレからの言葉に対しても「いえいえ!」と手を振っている。

 見た目の小動物感に反して、肝は据わっている方らしい。

 

「アルケイデス様のお姿は確かに厳しいですが、とてもお優しい方だと知っていますから。それに、可愛らしいところもあるお人だとも!」

 

 …ほう?

 この子は中々、見る目がありそうじゃないか。

 優しいことは少し話せば分かることだが、可愛らしいとまでいくと結構な関わりがないと難しい。

 

 兄自身は、メガラちゃんにそう思われているとは知らなかったらしい。

 普段はあまり変わらない岩石の如き表情筋が、鳩が豆鉄砲を食らったような様を晒している。

 そういうところが可愛いと思うんだけど、本人には自覚ないのかな。

 

「ふふふ、そうでしょうとも。中々他の方には分かっていただけないのですけど、メガラさんとは気が合いそうです。因みに、どのようなところが?」

 

「はい!一昨日にわたしがお出しした料理が、好みに合っていたようでして。召し上がっている最中、一目で分かるくらいお顔が穏やかだったんです!」

 

 成長しても飯で気が緩むのかい、変わってないなぁ!

 分かるよ、昔から飯が美味いと口数が減るタイプだったもん…分かりやすくて助かってたぜ。

 しかし結婚式もまだなのに既に胃袋を掴んでいるとは、やり手だねメガラちゃん。

 

 そのまま、ぶっ通しで兄を話の肴に盛り上がる二人。

 なんというか、共通の話題で女の子とたくさん喋るのなんて今世で初かもしれない。

 オレはもう三十歳だから女子会とはいかないが、こんなに楽しいものなんだな…。

 

「…お前とメガラが仲を深められたのであれば、それでよい」

 

「ごめんなさいね、兄さま。おかげで、家族として仲良くやっていけそうです」

 

 妻にしか見せない姿も、幼少期の黒歴史も暴露されきった兄は、正直気の毒ではあるが。

 許してほしい、純粋にメガラちゃんとのトークが楽しかったのだ。

 一番の友達はエウリュステウスだが、彼女は初めての女友達になるかもしれない。

 

 一通り話が終わると、メガラちゃんは兄の家に引っ込んでいった。

 「積もる話もあると思いますから!」というこちらを慮った言葉が、彼女の気性をよく表している。

 緊張しやすいのは他者のことをよく考える善性の証らしい、ホントにいい子だね。

 

「いい子ですね、メガラさん」

 

「ああ」

 

「幸せにしてくださいね?」

 

「無論だ」

 

「…私、今すごく幸せですから。兄さまにもメガラさんにも、同じくらい幸せになってほしいです」

 

「…随分と挑み甲斐のある試練を与えるものだ。お前の顔を見ればわかる」

 

 兄から見て、今のオレは相当幸せそうに見えるらしい。

 そして、オレも同じことが言える。

 今の兄は、とても幸せそうだ。

 

 古代ギリシャに転生して、三十年。

 色々と苦労も…苦労ばっかりで、兄妹で幸せを噛み締めるときが来るとは思わなかった。

 これからも大変なわけだし、こんな穏やかな日が一日くらいあってもいいさ。

 

 

 

 

 そう、オレにとって大変なのはここからだ。

 アルケイデスとメガラの結婚、これが起こったのなら。

 少なくとも十年以内に、悲劇は起こる。

 それを防ぐために、今まで牙を研いできた。

 だが、今回は相手が相手だ。

 

 今度こそ、死んだんじゃないか?




・アダマンティアの容姿等の設定
容姿:小麦色の髪をしたアルトリア顔の少女
   肌には主神の血に由来する雷が走っている
   また瞳は孔雀の羽色、体臭はザクロの果実
   これらはヘラの加護に由来するものである
身長:157cm
好き:家族(特にアルケイデスとエウリュステウス)
嫌い:命の奪い合い

メガラのお名前で、神話を知る方は察せられたでしょう
ゼウスではなく、やってくるのはヘラでした
妹は許してくれても、兄は許してくれなかったようです
というわけで、次話からは

狂乱アルケイデス vs 全力アダマンティア

というギリシャ最強兄妹喧嘩をお送りいたします


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