転生したらヘラクレスの双子の妹でDie 作:セロ弾きのゴーシュ
執筆の励みになっております
今回、型月・Fateの設定が多分に出てきます
分からない方は、そういうものとしてお読みください
また、FGO第2部第5章で開示される設定を含みます
ある素人魔術師の考察
オレが生まれて以来、知識にある神話とは異なる事象が多く起こった。
エウリュステウスは、神すら認める賢王に。
女神ヘラが、主神ゼウスの血を引く者に加護を。
他にも大小様々な差異が、この世界では生じている。
それだけの変化があっても、アルケイデスはメガラと結婚した。
メガラという個人自体は、そう大層な逸話があるわけでは無い。
だがヘラクレスを語る上で、彼女を避けて通ることはできない。
…恐らく世界には、
これが、独学で探求を続けた、オレなりの世界に対する認識。
オレが知る神話を樹木の幹とするなら、ここは枝葉だ。
枝葉は、大元である幹を前提として存在している。
幹から切り離されてしまえば、枯れ果てるのみ。
ならば、アルケイデス最大の悲劇は、必ず起こる。
正確に言えば、起きない世界は幹から切り離される。
アルケイデスがヘラクレスとなり、英雄となるために必要な悲劇であるが故に。
だが、オレは、そんなことは認めない。
アルケイデスも、エウリュステウスも、メガラも、みんないい子だ。
本音では、彼らが傷つくような出来事は一つだって起こさせたくない。
だが、ただ起こさせないだけでは、この世界という枝葉自体が枯れ果てる。
英雄ヘラクレスの有無は、幹から切り離されるに足る影響を与えるだろうから。
ならばどうするか、方策は定まった。
幸運にも、オレはそのために必要な要素を持っている。
様々な可能性を見据え、魔術の鍛錬を続けてきた。
チャンスは一度、外せば機会は永遠に消える。
故に、何があろうと成さねばならない。
…最初は、死なないためにだけにやってきたというのに、不思議なものだ。
今は、命よりも大事な人たちのこと、それだけを想い続けている。
☆
オレたち兄妹がそれぞれ結婚してから、猶予である七年間は瞬きのように過ぎ去った。
運命の日に向けた最後の準備というのもあるが、単純に国王の妻としての仕事もある。
結婚は人生の墓場と言うが、変化が激しすぎて墓とはとても思えなかったぞ。
まず、オレとエウリュステウスの間に子どもたちが生まれた。
一回目の出産で一人、二回目で三人、三回目で二人の計六人、男五人の女一人だ。
現代だと中々稀なハイペースで、流石半神半人ボディである。
…言い訳させていただくと、これはオレがスケベだとかそんな話ではない。
国王とその妻にとって、子を生み育てるのは立派な職務の一つ。
特に古代では、子の命は軽い。
死なせる気は毛頭ないが、ある程度はいるべきなのだ。
子どもがいすぎても争いの元?アーアーキコエナーイ。
だって子どもは可愛いし、アイツも喜ぶしさぁ。
「仕方のないことです。子の可愛さに勝てる人間など、そうそういません。」
またアルケイデスとメガラの夫婦にも、三人の子どもが生まれていた。
夫と共に見に行ったが、全員可愛いんだわコレが。
うちの子と赤ちゃん語で話し合ってるところなんて、時代が許せば写真で永遠に残してたわ。
『この子たちが、よい未来を迎えられるように。私たちも一層ミュケナイを豊かにしないとな、アダマンティア』
『えぇ。そのためなら、私はどんな苦労も惜しむつもりはありません』
あのときに交わした誓いに、嘘などない。
文字通り、どんな苦労でも、だ。
本来の神話では、あの子たちは殺される。
女神ヘラに狂気を吹き込まれた、実の父親の手で。
神話によっては妻であるメガラも、この事件で殺されている。
凶行の償いとして下された神託は、『エウリュステウス王に仕え、試練を踏破せよ』。
余りにも有名なヘラクレスの逸話、"十二の試練"の始まりだ。
ふざけたマッチポンプだ、狂っている。
だが、これがなければ英雄ヘラクレスは生まれない。
…ならば、悲劇の内容を書き換える、それしかない。
「"妻子殺しの罪"ではなく、"エウリュステウス王の妻であり双子の妹、アダマンティアを襲った罪"に。これならば、私が死ななければ被害者はいません」
兄は大いに嘆くだろうが、妻子殺しより万倍マシだ。
加えて万が一があってもオレは大体の神から疎まれているために、誰かに神罰が落ちることもない。
特に女神ヘラからすれば、殺したいほどに憎たらしい夫の不貞の証たちが、派手に潰しあったぐらいの感覚だろう。
結界が、バキリという破滅的な予兆を知らせる音で現実に戻る。
…大型魔獣の群れが相手でも小揺るぎもしないんだけどな、コレ。
ただの筋力で破壊するなよ、自信なくすわ。
「実際に相手にすると、こんなにも恐ろしいものなのですね。…兄さま」
「■■■■■■■■■■■____!!」
眼前で吼えるは、吹き込まれた狂気によって肉体をさらに膨張させた巨英雄。
狂気に呑まれた眼は、オレを純粋な敵対者として睨め付けてくる。
…こんな目の兄は、できれば見たくなかったな。
兄が更に足を踏み込めば、それだけで衝撃波と共に致命的なヒビが刻まれる。
要救助者と共に後方へと飛びしされば、結界はプレパラートのように容易く砕かれ。
数瞬までオレたちがいた場所に、巨大な
ただそれだけで、世界は悲鳴をあげた。
衝撃は轟音となり、地割れとなり、暴風となる。
後に残るものは、もはや森の跡地としか言いようのない不毛の大地のみ。
大自然の脅威を人の身で、余波のみで再現して見せる偉業は、まさしく英雄のソレだった。
「な、にが。だんなさま、どうして」
「メガラ、聞きなさい」
「ねぇ、さま」
妻であるメガラは、夫の凶行を未だ現実とは認められていない様子で。
無理もない、普段は紳士的で家族を気遣う最愛の男が、凶悪な殺意を実際に振るってきたのだ。
心根の弱い者は、それだけで狂死するだろう。
「子どもたちと家へ逃げなさい、防御を用意しています。解かれるまで、決して外に出ないように」
「____ッは、はい!」
それでも、数年前は挨拶ひとつで緊張していた少女は、今は母としての強さで最善を成す。
もしくは極度の混乱も抑えるほどに、彼女がオレを信頼してくれているのか。
場違いにもほどがあるが、それが少し嬉しい。
それほどまでに、信じてくれる者がいる。
これ以上に心強い激励が、どこにあるというのか。
「では、始めましょうか」
守るべき者の安全を確保し、改めて兄と向かい合う。
狂気のなかにありながら安易に襲いかかってこなかったのは、敵の潜在的脅威を測りかねているからか。
神によって理性を奪われながらも、獣としての本能は健在なのだろう。
ならば、やることは決まっている。
英雄たる兄に、オレのような殺し合いの何たるかを知らない凡夫が何をするべきか。
決まりきった質問だ、考えるまでもない。
即ち、先手必勝。
切り札は、最初から出す。
眩いほどの雷鳴が、オレを中心に溢れ出す。
〈
ゼウス・クリロノミア・レプリカ〉
瞬間、兄とオレの間にあった数十メートルの空間は、神の怒りたる稲光により喰らい尽くされていた。
前世の知識では大気中の積乱雲において発生する放電現象であり、古代ギリシャでは主神ゼウスの権威を示す象徴が、ただの人間から放たれるという不意打ち。
どんな超人も、光より速くは動けない。
それは、大英雄だって例外ではない。
「■■、■■■■■ッ!?」
兄の苦悶の絶叫が、大地を震わせる。
自分が家族を傷つけているという強烈な自己嫌悪を呑み下して目を見開けば、刃一つ通さない強靭な肌に夥しい数の熱傷が刻まれるのが見えた。
どうやらオレの研究成果は、足止めという使命を果たすことができるようだ。
また、今の兄には理性が完全に存在しないことも確かめられた。
もし僅かにでも理性があったのならば、詠唱などさせることなくオレの喉を潰していただろう。
初手から読み違えれば終わりの賭けだったが、勝ちは勝ちだ。
半神半人の大英雄を相手に、戦闘の素人が勝るためには。
ずっと考えていたことだ、オレは余りにも弱いから。
兄と比較して悲しいほどに直接戦闘の才がないことは、幼少期には既に分かっていた事実。
リノスさんを殺そうとした幼い兄を止められたのは、本当に運が良かっただけだ。
唯一見込みがある魔術を極めることでしか、対抗はできないと悟った。
だから、神罰を承知でゼウスの血が混じった己の血を、最初にして生涯の研究対象に決めた。
偶然ヘラの加護を受け取ってからは、並行してそちらも調べることができるようになった。
『魔術探究のために神の権能を解析する』という発想が出る時点で、オレが当時どれだけ追い詰められていたかという話である。
(解析した結果として、テオス・クリロノミアとかいうナノマシンじみた金属の存在に辿り着くとは思わなかったけど…)
オリュンポス十二神の力の根源は、実はナノマシンだった。
前世であれば月間○ーあたりで一つ執筆できそうな珍事実だったが、オレには好都合だった。
「だって。ナノマシンであれば、こうやって体に埋め込むのも容易いですからね」
今のオレの身体は、簡単に言えば銀色の彫像だ。
再現したテオス・クリロノミアが過剰に活性化すると、体内から体表へと吹き出るように人体が侵食され、結果として外皮の色が変わる。
これがオリジナルの特性なのかレプリカ故の特徴なのかは不明だが、無様な姿としか言いようがない。
自分の肉体が、人でも半神半人でもないナニカに変貌していくようで、寂しさも感じそうになる。
僅かに浮かんだ戦場に見合わない感情を消し去り、次の行程へ移行する。
今も絶え間なく放たれる雷撃により地に縫いとめられた兄に、自身の手をポインターのように合わせた。
(問題はここからだ。これが上手くいかなきゃ、意味がない)
そのままオレは、大英雄の理性すら腐り落とした女神の狂気を、自身の肉体へとそっくりそのまま写し取る。
双子の魔術的な同一性を利用した、一見すると自爆行為の愚行。
もしオレ以外の誰かが実行しようとすれば、泣き落としでも何でも使って止めるだろう。
だが今回は、こんな無謀すら入り口でしかない。
これだけのリスクを負ってようやく、オレは罰当たり極まりない真の目的_ヘラの狂気に対する防御礼装の作成_に向かって足掻くことができる。
今回だけヘラの狂気を凌いでも、そんなのは対症療法だ。
女神の気まぐれ一つで、いつでも兄が殺戮人形になる事実は変わらない。
ふざけた薄氷の上の平和を、どうして家族に過ごさせなければいけない?
そんなのものは、絶対に嫌だ。
次に身体から溢れ出るのは、甘ったるいほどのザクロの臭気。
〈
ヘラ・クリロノミア・レプリカ〉
宿主の決意に呼応するように、事前に体内に埋め込んだ第二のテオス・クリロノミアが起動。
同時に、オレの肉体を舞台にした、起源を同じくする二つの力による鍔迫り合いが始まった。
理屈は、そう珍しいことではない。
毒を以て毒を制するように、神の力を防ぐ力を神から得る。
問題なのは、ワクチン作製のように弱毒化されたものは用意できないことで。
「ガ、ァァ___________」
激痛。
そう呼ぶことすら生ぬるい、衝撃と誤認するほどの痛覚の奔流が、身体を強かに打ち据え続ける。
当然のことだ、半神半人如きの肉の体が、神の力で踏み荒らされて無事でいられるわけがない。
即死していないのは、女神ヘラからの不老の加護が、肉体を強制的に生かしているからだ。
ヒトの意識などという矮小なもの、この痛みの前では吹けば飛ぶ塵。
神に抗おうとした罰は、これほどまでに苦しい。
覚悟も、友愛も、親愛も何もかも削ぎ落とされ、何のためにこんな苦しみを味わっているのかすら、何も分からなくなっていく。
「に、ぃ、さ、…ま、えう、ゅす、、て う、…、す」
それでも、まだ立っている。
どうしてそこまでやるのか分からないが、倒れてはいけない、と思う。
もはや意味も曖昧になってしまった誰かを呼び、オレは眼前の光景を見据えた。
「■■■■■………!」
…オレも呆れるくらい生き汚いが、アッチも相当だ。
レプリカではあるものの、神の血から再現した神雷を不意打ちで喰らって、どうして動けるのだろうか。
その動きは、恐らく本来の能力から考えれば笑えてしまうくらいに鈍い。
身体強化を施した普段のオレであれば、容易く組み伏せてしまえるくらいには。
それを、今の痛覚の濁流のなかでやれるかは、分からないが。
「まだ、しね…、な い、で、、す」
そうだ、まだ終わっていない。
死ぬ気はない、死にたくはない。
死んだら、■■が悲しんでしまう。
それでも死ぬとしたら、今じゃない。
目的を果たすまでは、終われない。
…こんなときに、思うようなことではないけれど。
せっかく■雄の妹として生まれたのに、味わえなかったことがあることを思い出した。
(そういえば。いちども、けんかなんて、したことなかった)
その思考の後に、オレはボロボロの■を迎え撃った。
Fate&古代ギリシャフィルターをつけた瞬間これだよ
・アダマンティア
他はからっきしだが、魔術の才だけはガチ
独力で編纂・剪定事象を導き、真体の構成要素を再現した
子どもたちも才能を受け継いでおり、ミュケナイは安泰
・補足:Fateにおけるオリュンポス十二神
外宇宙からの来訪者、真体を本体とする星間航行船団
"文明の再興"を命令され、こちらの宇宙に送り出された
その後地球に飛来し、地球人類との共生を選択する
現在は真体を失っており、神霊として存在している
その真体の構成要素が、テオス・クリロノミアである
モチベーションになりますので、感想等お待ちしています