「これ、なんでここにあるんですか」
産声と言うのは酷く饒舌だな、なんて思考を滑らせながらそれから先輩に視点もずらす。
「なんでって、必要だからだろう?」
先輩は石像の様に固まったカタチに命を生き渡らせて、そう演じるように先輩は言った
「でも、これって二次創作につけられるものですよね?じゃあ必要ないんじゃないですか」
「確かに、それもそうかもね。それでもこれはここにあるから、きっと意味があったんじゃなかな?例えば、」
ふむ、と顎に手を付けて熟考のポーズをとりながら先輩は続けてこう言った
「もしかしたら、これは私たちが気づいていないだけで二次創作なんじゃないかな。」
否定の言葉は私でも驚くほど饒舌に出てきた。
「そんなわけがない。だって私たちは明確に作られたキャラクターじゃないですか。わかるでしょう。先輩も理解しているはずです。しかも、二次創作ならば舞台設定は決まっているはずで、こんな空間に置かれることは、まずありえないはずです」
殺風景。そう呼ぶのに相応しい空間であった。一面が真っ白で私と、先輩と、これしか置かれていない。名前をつけるとすれば「空間」と名づけることが相応しいであろう。
だからこそ異質であった。私と先輩という存在はしっかりと形作られたものであるに関わらずそれ以外に関しては全くの手付かずであるからだった。
「それじゃ、作者が心配性なんだろう。」
肩をすくめ、先輩は腰を下ろして話し始めた。
「ありきたりなストーリーありきたりな設定ありきたりなキャラクター。そういったもので形作られた物語が何かのパクリで無いなんて証明はこの世の全ての作品を読んだ人にしかすることができないからね。初めから何かの二次創作である。と言うていにしていればクレームの一つや二つ簡単に流せるだろう?現に私たちの関係も探せばどこかに似たようなものがあるだろうからね。」
先輩はどこかこの状況を楽しんでいるように。実際楽しんでいるだろうが軽い口調で他人事のように述べた。
「どこからが二次創作なんて私が口を挟めたものでは無いからね。最近に限った話でないが、完全に原作から乖離した二次創作から原作のストーリーを文字で起こしただけのようなものまでもが二次創作の看板を主張している世の中だ。」
まるでテセウスの船だね、なんていう呟きのどこからどこまでがテセウスだったのかは開幕見当もつかないが、とりあえず返答として当たり障りもなく頷いておいた。
先輩はそんな私の反応を見て満足げな表情を浮かべた。
「君は、どう思う?」
「へ?」
突然の会話振りに予期せぬタイミングのアッパーパンチを受けた私は当惑の声を漏らした。
「わからなかったから初めに先輩に聞いたんですけども」
「わからなくても、わからないなりに意見を述べることは重要だよ。」
「そうですか、」
私は何一つ言うことが思いつかずぼーっとした思考で胡座をかく先輩の横に腰を下ろした。
「一つ、訂正が必要なことに気がついた。」
「なんですか」
「いや、たいしたことじゃ無いんだがな。」
「 」
2026/5/26/22/14