殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

105 / 149

 箸休め


新生徒会とハロウィンパーティー

 十月二十四日。

 新生徒会発足から、おおよそ一週間。

 この一週間は、本当に忙しかった。

 

「さて、まずは、退学制度に食い込む生徒会の基準を、きちんと決めていきましょう」

 

 まず制定したのは、新制度。

 生徒会による退学審査制度だ。

 制度は、会長と副会長と、生徒会監査で作ることになった。

 まぁつまり、オレと鈴音と卜部先輩と朝比奈先輩だ。

 

「赤点ラインは、過去のテスト平均なども加味して、一度赤点ラインを下回ったとしても。

 そうね、これまでのテストで、その赤点教科で平均点を超えているなら、その分を加算できるっていうのはどうかしら」

「悪く無い案ですね。でもそれだと、一年生の一学期中間はどうしますか?

 それに、もし過去問での解答丸暗記に辿り着いたとして、そうなると、一学期期末は、殆ど勉強しなくなるのでは?」

 

 これはあくまで、病気やら何やらで勉強時間が確保できず、赤点ラインを下回りそうな生徒への救済措置だ。

 なので、赤点を取っても絶対に退学にならない、というような制度は、流石にダメだ。

 

「一年生の中間は、入試の点数で代用しましょう。

 それから、この制度には回数制限を設けるのはどうかしら。三年で三回まで。単純計算で、一年で一回までしか使えないわ。

 これなら、無駄遣いしたく無いから勉強するしかないし、何より、平均点を超えない教科が二回連続で続けば、赤点ラインを下回れば退学になる」

「………なるほど。理には適っていますね」

「まだ何かあるようね。いくらでも言ってちょうだい」

「そうですね。点数の購入に関しては、どう対応しますか?

 今のところは、十万で一点な訳ですが」

「レートはこのままで良いと思うわ。一年に一回の救済策をここで使うか、それとも、十万ポイントを吐き出して、何とかラインを越えるか。

 この選択肢を提示するのも、悪く無い制度だと思うの」

 

 ふむ。確かに。

 赤点への食い込み方は、これ以上無いとは思う。

 

「赤点に関しては、卜部先輩の案で行きましょう。

 次は、試験等に関する退学に関してですが」

「基本的に、退学を賭けた試験は実施しない。これが大前提だね」

「ですね。その上で、もし、試験の結果或いは過程次第で、退学者が出るような事態になったなら。

 生徒会のうち、該当者と同じクラスの生徒を除く会員たちで審査を行い、その結果、退学させるかさせないかを決める。

 私の案はこんなところです」

「特に異論はないわ。それで良いでしょう」

「オレも異論はない」

「私も。で、次は、自主退学を申し入れて来た生徒についてだね」

「審査会を行うのは大前提ね。

 言ってきたのか言わされているのか、見極めないと」

「言わされていると判断した場合、該当クラスの代表者には、厳罰、ですかね。

 ポイントの全没収は最低ラインでしょう」

「でもさ、これだと気に入らない生徒のポイントを全没収させたいから、嘘の申告をする生徒も現れるよ。多分」

「物的証拠も必須ね」

 

 会議は、順調に進んでいった。

 

「自主退学を賭けた生徒個人の契約が交わされたらどうしよっか」

「そうですね。退学を賭ける時は、必ず生徒会が間に入るようにしましょう。

 双方の確かな意思を確認できない場合、契約を結ぶことを禁ずる、と」

「もし、生徒会の承認が無ければ、それは無効ね」

 

 と、そこで、大きな拍手の音が二回響く。

 桔梗が、呆れ果てた顔で、オレたちを見ていた。

 

「良いですか皆さん。既に二時間経っています」

 

 …………もうそんなに経っているのか。

 

「そう言われると、急に喉乾いてきたわね」

「だねー」

「そんなことを言うと思って、既にご用意してあります。感謝してください」

「ありがとう櫛田さん」

「ありがとう、櫛田ちゃん」

「桔梗さん。いつもありがとう」

「ありがとう。桔梗」

 

 少し頬を赤らめて、心なしか胸を張った。

 卜部先輩はちょっとダメージを受けていた。

 

 休憩というか、ティータイムを終えて、退学審査制度について、もっと詰めていこうとしたところで。

 

「あ、ごめん。ちょっと良いですか!」

 

 広報一之瀬より、提案があるようだ。

 

「なるほど。体育館を使っての全学年全クラスでのコスプレパーティーね。

 やっても良いと思うわ」

「オレも同意見だ。卜部先輩は?」

「賛成ね。クラス間の交流の場は、大いに越したことはないもの」

 

 ハロウィンだしな。色々ちょうど良いだろう。

 

「あー、少し良いか」

 

 森先輩が手を挙げた。 

 …………あぁ、そういえばそうだよな。

 

「うちのクラス、コスプレ衣装とか用意出来ないぞ?」

「あぁ。私のとこもちょっと厳しいかも」

 

 二年CクラスとDクラスは厳しいよな。

 いや、うん。普通はそうなんだよ普通は。

 なんかDクラスの癖に五億獲得したカルマのとことか、なんかDクラスの癖にクラスポイント千三百はある風間先輩のとこがおかしいだけで。

 何だったらCクラスも普通におかしいからな。

 渚のとことか千超えてるし、白銀先輩のとことか千七百だ。

 例年で考えれば平均的な二年生なのに、上と下が常識はずれ過ぎるせいで、相対的に大分アレに見えるんだよな。

 

「会計二人、予算出せるか?」

「各クラスに補助ポイント三十万なら」

「………いや、予備ポイントも使えば、五十万はいけるだろう。今回は、使うべきタイミングだと思う」

「一人当たり大体一万七千程度か。うちのクラスは問題ないな」

「私らのとこだと、大体一人当たり一万三千いかないくらい?まぁ、ちょうど良いかな」

 

 計算早いなこの二人。

 やっぱり、優秀なんだな。

 

「いっそのことさ、どのクラスも同じポイントでやってみるのはどう?」

 

 茅野の案は、確かに面白いかもしれない。

 

「そうすると、各学年各クラスで、コスプレ大会やるのはどう?」

 

 朝比奈先輩の案は、茅野の案と組み合わせると、実に楽しそうだ。

 

「てなると、各クラスはテーマ決めた方が良くない?」

 

 カルマの言う通りだな。各クラステーマを一つ決めて、それに沿ったコスプレ大会、か。

 ありだな。

 

「投票だと手間が掛かるし、先生方に審査してもらいましょう」

「卜部先輩の改革の予行演習も兼ねて、他学年の先生にやってもらおうよ」

「二年生担任は三年生。

 一年生担任は二年生。

 三年生担任は一年生。

 ひとまずは、こんなところかしら」

 

 会長、会長秘書、副会長のまとめに寄り、ハロウィンコスプレ大会の開催が、決定した。

 

「多分テーマ被りあると思うけどどうする?」

「ま、同じ学年じゃなかったら、気にしなくて良いんじゃない」

「となると、学年毎に軽い話し合いをやってもらった方がいいな」

「学年予選を終えてから、他学年対決にするか?」

「となると、優勝したクラスには、何らかの褒賞があった方がいいんじゃないか?」

 

 一年生男子達の手により、詳細を詰めていく。

 ううむ。だが、葛城の言う褒賞は、どうするか。

 

「普通にポイント配布とか?」

「これ試験じゃないよあかりちゃん」

「えー、でもポイントぐらいしかなくない?」

「ハロウィンだし、お菓子詰め合わせとか?」

「うーん。ちょっとしょっぱいかなぁ?」

「───いえ、それなら、良いところを知ってるわ」

 

 卜部先輩は、楽しそうに笑った。

 

「私たちテーブルゲーム部の行き着け、あそこなら、みんな欲しがるんじゃないかしら」

 

 ハッピーパレットは、全国有数のお菓子専門店なのだから。

 

 

 期限は一週間。

 全学年全クラス対抗、コスプレ大会開幕である。

 

 

 一年生の場合。

 

「とりあえず、今日の六時までに、各クラスのテーマ案を集めるわ。話し合って頂戴」

「オッケー。うし、行くぞ榎中」

「分かった。さて、サッサと決めるぞ。葛城」

「こう言うのは、私らの得意分野だね!」

 

 一年生は、各クラスで話し合いを始めた。

 

 一年Aクラスでは。

 

「有栖を全体的に目立たせる感じで行こうと思うんだが」

「何でですか学秀くん」

 

 なぜ自分なのだ。坂柳有栖は反発した。

 

「いや、テーマは『不思議の国のアリス』だからな」

「トランプ兵なら安上がりで済む。その分主役のアリスのクオリティを高められる。

 そして、このクラスで一番、アリスにピッタリなのは有栖しかいない」

「お二人は馬鹿なんですか?」

 

 葛城と浅野の案に、全力で否を突きつける。

 普通に恥ずかしい。普通に嫌だ。

 

「私、ハートの女王やりたいのです」

「なら私は白の女王やりたいわね」

 

 なぜ『アリス』で確定しているのでしょう?

 森下さんも真澄さんも完全にその前提を踏まえて話していますね。あれ?私、拒否してますよね?

 

「案内役のウサギは、私やりますね」

「白石さんの、ウサギ……‼︎」

「予め言っておくがバニーガールとかではないぞ?」

 

 まぁ、はい。それは公序良俗に反しているので。

 

「あー、なら私チャシャ猫やりたい」

 

 西川さんも完全に乗り気のようです。

 おっと?どうやら完全に『アリス』で行くようですね。

 あれれ?おかしいですね。私、主役の筈なのに、完全に蚊帳の外ですね?

 

「ねぇ学秀くん?私に拒否権とか無いんですか?」

「いや、有栖がアリスをやれば勝てると思ったから提案したんだが。似合ってるし可愛いだろう?」

「…………そうですか」

 

 くぅ、あっさりとそんなこと言うんですからこの幼馴染は。

 言いづらい、表立って拒否しづらい。それに、それに………!

 

(か、可愛い格好を見せれば、少しは、動揺、してくれるでしょうか………?)

 

 一人の男の子の顔を思い浮かべて、深く、深ーくため息を吐きました。

 

「…………分かりました。それで行きましょう」

 

 まぁ、ハッピーパレットが用意してくれるご褒美の為です。

 別に、それ以外の意図はありません。無いったら無いのです。

 

「よし、早速買い出し行くぞ」

 

 兵は拙作を尊ぶからな。

 速攻で片をつけよう。

 

 

 一年Bクラスの場合。

 

「妖怪とかどう?これなら、範囲広いし、自由度も高いし」

「でも、東洋と西洋の区別なかったら、ごちゃ混ぜ感ですぎて、テーマがどっかにいっちゃいそうだね」

「あー、うん。テーマに沿ってないとダメだもんね」

 

 桔梗の意見に、平田と軽井沢の否が突き刺さる。

 そうだよな。テーマが広すぎても、それはそれで、減点要素な気がする。

 いや、審査するのは先生なんだが。

 

「何かの作品で限定するのも、悪く無い選択肢だと思います」

「うんうん。みーちゃんの言う通り!それなら被りも気にしなくて良いし!」

「で、でも波瑠加ちゃん。作品は、どう決めるの?」

「それに、作品でやるなら、主役もいないとダメじゃないか?」

 

 啓誠の言う通りだな。

 作品をテーマにするなら、主役がいないと。

 

「ふっ、この私が、主役を務める時が来たようだね」

「イロモノすぎて減点くらいそう」

「審査員から引かれそう」

「勝負を捨てるなら高円寺主役で良いんじゃね?」

 

 寛治と春樹と健の、あまりにも鋭いマジレスが突き刺さってなお、高円寺は怯まなかった。

 

「───ふっ、何を言う。この私の輝きを持ってすれば、審査員は全員、私たちを選ぶだろうさ‼︎」

 

 高円寺が主役の作品かぁ。

 うーん。想像つかんな。

 

「主役なら、洋介くんと綾小路くんのイケメン二人の方が良くない?」

 

 軽井沢の意見に、多くの生徒は賛同した。

 オレと平田としても、特に異論はない。

 すまんな。高円寺。オレらの方が人気みたいだわ。

 

「ならさ、堀北と櫛田二人主役でも良いんじゃね?」

 

 まぁ、南の言う通りだな。

 オレと平田がありなら、鈴音と桔梗もありだろう。

 うん。あり、だよな。

 

「いやー、ダメでしょ。この二人、コスプレしたら絶対可愛いし、そうなると、綾小路くんが攫っちゃうよ」

「うんうん。綾小路くんも、可愛い可愛い二人を、他のクラスの人たちに見られたくないもんね?」

 

 オレは何だと思われてるんだ。

 流石に、流石にそんなことはしないぞ、しないからな。本当だぞ?

 

「取り敢えず、生徒会長の権限で、佐藤さんと松下さんの発言権は剥奪するとして」

「あ、酷い!おーぼーだ!」

「生徒会長の職権濫用を許すなー!」

「だまらっしゃい」

「あはははは。真面目な話、多分Cクラスが、一之瀬さんとあかりちゃんメインでくるし、そこと被っちゃうからさ」

「Aクラスは坂柳さんメインで来るでしょうね」

 

 Dはどうくるのか謎だな。

 ……………ヤクザとか?

 

「あー、確かにCクラスとの被りの可能性も考えると、綾小路と平田メインの方がいいか」

 

 男二人かぁ。

 多分、バディものになるよなぁ。

 

「あー、それだったら、二人で一人の仮面ライダーとか?」

「他の奴らどうするんだよ」

 

 仮面ライダーかぁ。見たことないな。寛治の言う二人で一人のやつって、確か、アレだっけ。片方菅田将暉だよな。

 だが、オレたちがそれやると、他のクラスメイトが難しいよな。

 

「アレ探偵だし、ホームズとかどう?綾小路がホームズで、平田がワトソン」

「お、結構良くね?高円寺モリアーティとかどうよ?」

「『犯罪界のナポレオン』か、うむ。実に良い」

 

 確かに、ホームズありだな。

 片眼鏡で杖をつく高円寺か。面白。

 

「他のクラスメイトは、ベイカー街遊撃部隊かしら?予算も浮くはずよ」

「あー、なんかコナンくんでやってたやつだ」

 

 そういえば、桔梗と一緒に見た映画で、そんなやつあったな。

 『ベイカー街の亡霊』か。

 この作品ジャンプクロスなのに。

 

「そういえば、ホームズが想いを寄せる女優いたよね?」

「あー、アイリーンアドラーだっけ」

「それは堀北さんと櫛田さんで良いでしょ」

「アイリーンが増えてるのおもろ」

 

 てゆうかホームズとか知ってるんだな軽井沢たち。

 椎名とも楽しく話せるんじゃないか?

 

「まぁ、その辺りも詰めていくとして、テーマは『シャーロックホームズ』。

 メインは、清隆くんと平田くんね」

 

 

 一年Cクラスの場合。

 

「メインは、一之瀬と雪村で確定として」

 

 神崎くんの提案というより確定事項は、あっさりと共有された。

 

「あー、うん。まぁ、良いよ」

「あっははははは。まぁ、頑張るね!」

 

 そこはあっさり決まって、そこからが、難航した。

 

「女性二人って、結構難しいね」

 

 思ったよりも、作品で決めるのは難しい。

 いや、別に作品で決めなくても良いんだけどね。

 

「アナ雪とかどう?」

「アリだけど、他の人結構むずくない?」

「ハンスやらせるとか割と罰ゲームだし」

「はい!『ふたりはプリキュア』‼︎」

「うん!却下で‼︎」

 

 良い笑顔だったな一之瀬さん。

 そんなにプリキュア嫌なんだ。

 

「ディズニー結構ありじゃない?」

「でもドレス絶対高いよ?」

「あーそっか、予算の問題あったなぁ」

 

 五十万って、四十人で分けると、一人当たり一万二千五百ポイントなんだよね。

 あー、これ、思ったよりも、二年Dクラス有利かもなぁ。

 個々人の衣装に手を加えられるし。

 …………あ、でも待って、三年Aクラス金織先輩いるじゃん。絶対強いって。

 

「あ、かぐや姫とかどう?」

「いやいやいや。かぐや姫一人じゃん」

「最近のかぐや姫は二人いるよ?」

「……………はい?」

 

 一之瀬さんはキョトンとしていた。

 確かに、かぐや姫二人、ありだね。

 

「となると、翁はどうする?多分かぐや姫の次ぐらいに大事だぞ?」

「帝とかもいるし」

「翁は潮田で良いんじゃね?」

「え、僕?」

「あー、万のことに使ひけりだったもんな。無人島試験」

 

 ………なる、ほど。

 確かに、優れた殺し屋は、万に通じる、か。

 ───うん。悪くないかも。

 

「よし!じゃあ、うちのクラスのテーマは、『かぐや姫』で!」

「………かぐや姫が、二人?どゆこと?」

 

 一之瀬さんの困惑をおいて、テーマは決まった。

 

 

 

 一年Dクラスの場合。

 

「ヤクザとか良くね?イカついスーツ着ればそれだけでキマるっしょ」

「んな単純なやつじゃ芸がねぇだろ」

「今回は龍園に賛成だわ。とりま、主役決めとこうぜ」

 

 榎中くんは、まとめ役として本当に優秀ですね。

 アイデアマンとしては、金田くんの方が上ですが。

 うーん。主役ですか。誰にしましょう。

 

「椎名で良いんじゃない?」

 

 なぜですか伊吹さん。

 

「わ、わたしですか?」

「なんだかんだ、学年美女ランキング三位よ。貴女」

「………知りませんでした」

 

 え、そんなランキングあったんですか。

 

「椎名様が主役………!大変素晴らしいです‼︎」

「………あぁ、美野里がどんどん遠くに行く………」

 

 矢作さん。可哀想に。

 むぐぐ、いえ、嫌です。あまり目立ちたくありません。

 

「あー、でも確かに、ひよりさんなら、一位取れるかもね」

「わたしも、カルマくんの意見に賛成です!椎名さんなら一位も夢じゃないと思います‼︎」

 

 い、嫌、です。

 

「だってさ。どうする椎名?」

「む、むぐぐぐぐ」

 

 ……………よし、決めました。

 

「分かりました。やります」

「お、よし。んじゃ、次はテーマを──「ただし条件があります」決め……?」

 

 一人だけだと、その、恥ずかしいので。

 何人か、道連れにしましょう。

 

「奥田さんと、後は、伊吹さんもメインで」

「…………えっ?」

「…………まじ?」

 

 まぁ、奥田さんは、メガネを外すと本当に可愛いですし。

 伊吹さんも、綺麗でカッコいいですし。

 えぇ。勝利の為ですよ?本当です。嘘ではありませんよ?含みはありますが。

 

「オッケ。確かに、人数で勝負仕掛けるのもアリだな」

「と言っても、三人は多くありませんか、赤羽氏。一人一人の印象も薄れるのでは?」

「Aクラスは多分坂柳さんメインで来る。

 Bは、多分綾小路と平田じゃない?堀北さんと櫛田さんで行くと、Cクラスと被るし。

 Cクラスは、一之瀬さんと茅野でしょ?

 敢えてウチは三人で行って、第一印象で殴りに行くのも、悪くないんじゃない?」

「………なるほど。他が一人か二人だから、敢えて三人の我々が、印象に残りやすい、ということですか」

「そゆこと。ひよりさんも、そう考えたから、他の二人を推薦したんだよね?」

「────勿論です」

 

((((絶対嘘だ))))。

 

 流石はカルマくん。わたしの言いたいこと、ちゃんと察してくれましたね。

 

「三人かぁ。作品縛りだとキツくね?」

「アイドルぐらいしか出てこねぇぞ?」

「やっば、龍園の口からアイドルって単語が聞こえるだけでオモロい」

「話を逸らすな」

 

 ………、うーん、三人は、確かに、ちょっと難しいですね。

 どうしましょう。

 

「『三匹の子豚』、は変だね」

「『三国志』とか?女子にやらせるのは変だけど」

「三人組かぁ」

「ねぇ、私らやるなんて言ってないんだけど?」

「は、はい。言ってませんよ?」

 

 二人の意見は、一旦置いておきましょう。

 

「『三銃士』!」

「他の人どうするのさ」

「………あー、その、良いですか?」

「やっちゃいなさい奥田。ドカンと言ってやって」

「やるなら、私魔女やりたいです」

「………嘘でしょ………」

 

 ふっふっふっ。

 腹を決めたら、積極的なんですよ?奥田さんは。

 

「おっけ、愛美さんは魔女ね」

「魔女が出てくる系の作品だと、『白雪姫』とか?」

「あー、あり。てなると、『白雪姫』は椎名さんだね。肌も白いし、似合うと思う」

「敢えて王子を伊吹氏にしましょう。男装女子のインパクトで殴り殺すのです」

 

 まぁ、男装ですし。

 大分マシじゃないですか?伊吹さんにとっては。

 

「異議あり!王子は赤羽が良いと思います‼︎」

「あー、悪くないんだよな。顔だけは良いし」

「だけは余計だわ。でも、インパクトで殴るなら、伊吹さんが王子やった方が威力あるんじゃない?」

「だな。赤羽がやるよりも、インパクトあんだろ」

「逃しませんよ?」

 

 わたしを推薦してくれたんですから。

 一緒に頑張りましょうね?

 

「……………はい」

 

 観念したのか、伊吹さんは、静かに項垂れました。

 ふふふふふふ、楽しみですね。

 

 そうして、十月三十一日。

 コスプレ大会、開幕。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。