殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 まどマギネタバレあり!

 狩野英考、良いですよね。


坂柳有栖のオールナイトまどか☆マギカ

 失恋しました。ちょっと病みます。

 しかも相手は二股しました。もっと病みます。

 

「ほら有栖。ポッキー上げるわ。食べなさい」

 

 机に突っ伏して顔だけ上げていると、真澄さんがポッキーを口元に運んできました。

 ポリポリポリポリ、頂きます。

 

「なんか、兎みたいですね」

 

 白石さん曰く、無人島でお世話していた兎のようらしいです。私無人島行ってませんが。

 

「ほら坂柳さん。トッポあげる」

 

 西川さんの差し出して来たトッポをポリポリポリポリ。

 

「さ、坂柳さん、苺味のポッキーです、よ?」

 

 山村さんのいちごポッキーをポリポリポリポリ。

 

「有栖ちゃん、抹茶トッポあげる!」

 

 三七さんの抹茶トッポをポリポリポリポリ。

 

「アーモンドポッキーですよ。坂柳有栖」

 

 森下さんのアーモンドポッキーをポリポリポリポリ。

 

「坂柳さん。プリッツで味変しましょう」

 

 白石さんのプリッツをポリポリポリポリ。

 

「…………なんか、凄いことになってるな」

 

 戸塚くん。うるさいですね………。

 なんか、辛いです。

 いえ、まぁ、納得はしたんですけどね。してるんですけどね。あぁ。醜いですね。私。

 

「よし有栖。今日はしこたま遊ぶよ。準備はいい?」

「………………良いですよ」

「よし!映画行こ!映画!」

「な、何見ましょうか」

「最近話題の映画だと、まどかマギカとかどう?」

「どう考えても傷心中の女子に見せる映画じゃないです」

「え、魔法少女ですよね?」

「こう、プリキュアみたいなアレじゃないの?」

 

 白石さんと三七さんの言う通りですね。一周回って気になりますね。見てみましょうか?

 ただ、森下さんは、少し、気まずい様子ですね。

 

「いえ、その、多分面白いとは思うんですが。シリーズものの続編なので、ワンクールのアニメ見て、映画見てからじゃないと」

「2日後予約しました。それまでに見ましょうか」

「良いんですか坂柳有栖。まず間違いなく鬱になりますよ?」

「今これ以上ないくらい鬱なんですが」

 

 私の部屋で、真澄さん、森下さん、山村さん、白石さん、西川さん、三七さんで集まって、まどか☆マギカ鑑賞会です。

 取り敢えず、六話までですね。

 

 第一話からです。

 

「なんかこのほむらって子感じ悪いね。キュウべえ可哀想」

「いやでも、この感じなんか事情がある感じじゃない?」

「な、なんか、鹿目さん、すこし、親近感を抱きます」

「個人的にさやかちゃん好きだな。話しやすそうだし」

「巴さんは、かっこいい人ですね。頼りになります」

「……………キュウべえに願えば、私が、…………」

「それはやめておきましょう」

 

 第二話、ですね。

 

「このオープニング、可愛くてカッコよくて好きだな」

「魔法少女体験コースね。危ないでしょ絶対」

「ま、魔法少女って、辞められないんですかね」

「願いを叶えるっていう先払いなわけだしね。まぁ、真っ当な契約、かなぁ?」

「些かキュウべえが無機質過ぎるように思います。もっと感情を出しても良いのでは?」

「…………もし、魔法少女になったら、走れるのでしょうか」

「本当にやめておきましょう」

 

 第三話、わ、わぁ。

 

「えっ、ウソウソウソウソ!巴さん⁉︎巴マミさん⁉︎えっ!嘘でしょ嘘でしょ⁉︎」

「うっわぁ。やっば。魔法少女こっわ」

「え、え、え、え、魔法少女って、えぇ?」

「え、待ってこれキュウべえ変だよ。なんか怖いよこの子」

「ですよね。何でこの状況で契約を迫れるのでしょうか」

「…………この感じ、ほむらさん、この魔女のこと、分かっていたみたいですね」

「魔法少女になるのは、本当にやめておいた方がいいです」

 

 第四話。三話の衝撃が、まだ抜けきってませんね。

 

「うーん。恭介くん酷いよ。さやかちゃんは、こんなに心配してるのに」

「………まぁ、恭介にとっては、鬱陶しいだけだったのかもね」

「奇跡も魔法もあるんだよ、ですか。………でも、奇跡と魔法の果てが、アレなんですよね」

「…………まぁ、目の前であんなの見せつけられたし、さやかも、油断とか絶対にしないだろうし、多分、大丈夫、かな」

「そうですね。魔女との戦闘で、油断することはないでしょうが」

「問題は、魔法少女同士の戦闘ですね。ほむらさんは、積極的に戦おうとはしていませんでしたが」

「………やっぱり、頭いい人は、理解が早いですね」

 

 第五話。

 

「うっわ何この子感じ悪ーい!さやかちゃん!ぶっ飛ばしちゃえ!」

「でも、相当強いわねこの子。言ってることも、そんなに間違っていない、かな?」

「でも、一般人に被害が出るのは、見過ごせません」

「まぁ、その辺りは動機とかモチベの違いだね。巴マミは、人を助けるために戦ってたけど、自分の為に戦う奴もいるわけだし。暁美ほむらとか、もろそれよね」

「ですね。個人的には、この子、えっと、佐倉杏子さん、がどうして魔法少女になったのか、気になりますね」

「巴さんは、助かりたかったから。美樹さんは、恭介くんの腕のため。なら、杏子さんとほむらさんは、どうして何でしょう」

「願いはこの作品の中核にありますからね」

 

 第六話。三の倍数話でとんでもないことをするのが、この人の好みなんでしょうか。

 

「えっと、つまり魔法少女になると、本体があの、ソウルジェム?になるわけで、肉体はもう、死体同然ってわけ?これ予め説明しないの、キュウべえ大分アレじゃない?」

「そうよね。安全性を考えたら、予め言っておいた方が絶対にいいのに」

「な、何と言うか、魔法少女って、こんなに、残酷なものでしたっけ?」

「この作品が例外でしょ。流石に。………あぁでも、この作品が、残酷な魔法少女ものの、パイオニアの可能性もあるのか」

「この作品の後追いは、たくさん生まれたのでしょうね。………それはそれとして、暁美さんは、どうしてこのことを知っているんでしょう」

「ですね。キュウべえがわざわざ説明するとは思いませんし」

「一応、六話で切る予定でしたけど、どうします?」

 

 満場一致で、第七話。

 

「待って仁美ちゃん!今は本当に待って!お願い!」

「うっわ。これ誰も悪くないのに。地獄過ぎない?」

「強いて言うならキュウべえが悪いと思います」

「絶対コイツろくでもないよキュウべえ。早く殺しなって」

「殺しても次のキュウべえが出て来ちゃいますよ。本当に碌でもないですね」

「こんなのに願いを叶えてもらうのは絶対に嫌ですね」

「………次、見ます?」

 

 再びの満場一致で、第八話。

 

「……………え?え?え?」

「うっわ、うっっっわ。えぇ」

「ひ、酷過ぎます」

「さやかもまどかも仁美も恭介もみんな可哀想」

「キュウべえは何がしたいんですか?こんな醜悪なマッチポンプを仕掛けるなんて」

「罪悪感とか特に無いようなのが気持ち悪いですねこの邪悪」

「もうこれ最後まで行きましょうか」

 

 またまた満場一致で、第九話。

 

「杏子ちゃん‼︎きょうこちゃん‼︎うぇぇぇん」

「ほらほらティッシュ、泣かないの」

「ぐすっ、杏子ちゃん………なんて、なんていい子なんでしょう」

「…………さやかは、救われたかな」

「救われたはずです。きっと」

「そろそろ、ほむらさんの真実、ですかね」

「まーここからは怒涛の展開ですからね」

 

 そして、第十話。

 

「あっ!マミさん!マミさん生きてる!やったー‼︎─(例のシーン)─マミさんそれはダメー‼︎」

「合理的だけど!合理的だけど‼︎思い切りが良過ぎるわ‼︎」

「ほ、ほむらさんは、ずっと、頑張っていたんですね。最初のまどかちゃんの願いを、叶える為に」

「ほんっとキュウべえ碌でも無いわ」

「ですね。とっとと滅んでくださいこの害獣」

「どんな理由があったとしても許されないですね」

「まーそうなりますよねー」

 

 第十一話。

 

「うっわー、何この葬式地獄過ぎない?」

「仁美と恭介に文句言いたい気持ちと、この二人別に何も悪く無いって理性が、猛烈にせめぎ合ってるわね」

「じ、人類の発展に役立って来たとしても、もうキュウべえは不幸をもたらすだけの害悪ですし、駆除すべきだと思います」

「だねー。視点がデカ過ぎて理解できんわ。感情ないってのが、ほんっとう腹立つ。悪意を持った巨悪だったら、とっとと殺せってなるのに」

「こんなのに怒りをぶつけるのが馬鹿らしくなりますね。もう地球から出ていってください。どうぞ」

「昔は必要だったのかもしれませんが、もう絶対に必要ないですしね。数十億年先の未来のことなんて、正直どうでも良いですし」

「ですよねー」

 

 第十二話。

 

「ワルプルギスの夜強すぎ‼︎えっ、ていうかほむらちゃんのやって来たこと、全部無駄だったし、むしろ追い詰めてたってこと⁉︎」

「うっっっっっわ。ほんっとうに性格悪いわこの脚本」

「ほ、ほむらさんたちが、何をしたって言うんでしょう………?まどかさんも、こんな、こんな終わり方なんて………」

「スッキリしない‼︎一切スッキリしない‼︎」

「まー、あの害獣の鼻を明かしたのは実にスッキリしましたが」

「映画見ましょう!何か解決してくれるはずです!この作品そういうのじゃなさそうですが!」

「お、よく分かっていますね坂柳有栖。よし、オールナイトで行きましょう」

 

 映画。

 

「うっっっっっわ!うっっっっっっっわ!ほむらちゃん⁉︎ほむらちゃん⁉︎」

「まじかー。まじかー。ほむらまじかー」

「ほ、ほむらさん。幾ら何でもやり過ぎですよほむらさん」

「ま、でも、お陰で全部元通りで良かったね。ハッピーエンドハッピーエンド。ってなるかぁ‼︎」

「個人的に害獣完敗シーンは大変スカッとしました。はい。そこくらいですね。えぇ」

「分かってましたけど全然ハッピーエンドにならないですねこの作品。手っ取り早い悪役がいたら良かったのに」

「…………なんか、今の坂柳有栖の状況に、似ていますね」

 

 …………そう、ですね。

 綾小路くんが、もっとクズなら良かったのに。

 

「えー、いやまぁ、ある意味誠実だけどさ。二股は大分アレじゃない?」

 

 三七さんのいう通りですね。二股はかなりアレです。アレ、何ですが。

 

「…………でも、綾小路にとって、あの二人はそれだけ大切なんだと思うの。

 あの二人以外の誰に告白されたとしても、間違いなく断るわ」

「そこは、間違いないでしょうね」

 

 西川さんと、真澄さんの言う通りなんですよね。

 綾小路くんにとって、あの二人は、それだけの───。

 

「…………運が無かったって奴でしょうね。先に会えてさえいれば、坂柳さんが、そこにいたかもしれないのに」

 

 白石さんの、言う通り、何でしょうか。

 

「…………綾小路くんは、きっと、悪い人では、無いです」

「まぁ、本当に悪い奴だったら、ついでに坂柳有栖とも付き合うでしょうね」

 

 えぇ。そうですね。山村さんの言うように、悪い人では、無いんです。

 色欲に支配されたどうしようもない男なら、好意を寄せてくる女の子を、積極的に迎え入れるのでしょう。

 

「ま、それは分かってるんだけどね」

「えぇ。分かってはいます。私も神室真澄も、坂柳有栖も分かってはいます」

「理性と感情は別ですよね」

 

 白石さんの言う通り、理性と感情は、別です。

 理性では、ちゃんと分かっているんです。

 八年前に一目見ただけの私と、一年近くそばにいて、真っ直ぐに向き合ってくれた女子なら、客観的にも主観的にも、後者を選ぶでしょう。

 えぇ。分かっています。分かっているんです。

 本当は最初から、分かっていたんです。

 

 でも、だけど。だけど。

 

「…………一度告白して、振られたことが、あります」

 

 その時点で、サッパリ諦められたら、良かったのに。

 

「…………略奪、します?」

「ちょ、それはダメだよ森下さん!」

「え、えぇ。それは、流石にダメです」

「うん。それは、ダメだよ。絶対に」

 

 えぇ。ダメですよね。それは、ダメです。

 

「何言ってんのよ。アイツ、同じくらいダメなことしてんのよ?」

「そうですね。先に一線を越えたのは、向こうです」

 

 ………、そう、何ですよね。

 なら、私も。

 

 ─────いいえ、その果てに、どのような地獄が生まれたのか、私は、もう、知っています。

 あの夕暮れの廊下の叫びを、私は、忘れられません。

 

「…………頑張って、諦めます、ね」

 

 あーあ。泣いちゃいました。

 ま、しょうがないですね。まどか☆マギカが悪いです。えぇ。あの残酷な物語のせいで、悲しいから、泣いているんです。

 それだけです。それだけなんです。

 

「…………有栖」

「二股するような、最低で、どうしようもない男よりも」

 

 カッコ良くて、一途で、最高の男を、捕まえてやります。

 

「────そうだよ‼︎有栖ちゃんは可愛いんだから‼︎」

「は、はい!あ、有栖さんなら、綾小路くんよりも良い男、捕まえられるはずです‼︎」

「まー、うん。有栖なら、捕まえられるだろうけど、ねぇ?」

「正直、綾小路くんスペックだけ見たらすっごい優良物件何ですよね。イケメンで頭良くてスポーツ万能で副会長やれるぐらいには実務能力もあって。

 有栖さんもすごく優秀ですが、ねぇ?」

「ちょっと飛鳥ちゃん!亮子ちゃん!水刺すようなこと言わない!」

「そ、そうですよそうですよ!」

「全く、愚かですね。飛鳥、亮子」

 

 も、森下さんが、名前呼び………⁉︎

 

「綾小路清隆に並ぶ能力の持ち主が、有栖のそばに、一人いるでしょう?」

 

 ま、まさか………‼︎

 

 その場の全員が、息を呑んだ。ゴ、ゴクリ……。

 

「────浅野学秀、落としましょう」

「そ、それは……!」

「それは無いですね」

 

 動揺してましたね真澄さん。

 ですが安心してください。それは絶対にありません。

 

「あー、うん。分かる分かる。幼馴染って、あんまそう言う感じにならないよね」

「えぇ。幼馴染って、そういうものですし」

 

 そういえば、三七さんも幼馴染がいますね。でも、幼い頃から一緒だと、何と言うか、家族カテゴリに入れちゃうんですよね。

 なので、そう言う感じにはならないです。

 だから、安心してくださいね。

 

「────今、露骨に安心しましたね。真澄」

「────ッ‼︎」

 

 ふふふふふ。ターゲットロックオン、と言う奴ですね。見事な手腕です。藍さん。

 

「えぇ。えぇ。いったいいつ頃から、そんなことになっていたのか、根掘り葉掘り、聞きましょうか」

 

 飛鳥さんの、とても楽しそうな笑顔。

 

「へー、ほー、ふーん?一から十まで聞かせてね」

 

 亮子さんの、揶揄いたくてたまらない、と言う笑み。

 

「えっ!うっそマジで‼︎うわ!知りたい知りたい!あたしにも教えて!」

 

 三七さんの、コイバナに非常に興味津々で堪らない、と言う笑み。

 

「わ、私も、気になります………!」

 

 美樹さんの、控えめながら、強い意志を込めた笑み。

 

 真澄さんは、私に助けを求めて来ましたが。

 ふふふふ。ストレス発散も兼ねて。

 さぁ、おもちゃになってくださいね。

 

「さて、真澄さん。色々、教えてくださいね」

 

 翌日、神室真澄は、死にかけで登校して。

 他の女子たちは、すごくツヤツヤしていた。

 

 

 さて、私はまず、もっと強くなる必要があるので。

 

「メメ先輩。今より強くなるとしたら、どうしたら良いでしょうか」

「兎にも角にも、人を知りなさい。たくさんの人をね」

「人を、知る………」

 

 ………そうですね。

 私なら、これの方が、効率的でしょう。

 

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