殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 ゆるキャン△原作だと、多分十一月ごろの出来事だとは思いますが。
 なんか、こう、時間が捻じ曲がってます。



赤羽業と椎名ひよりとゆるキャン△

 冬キャンプ。

 まぁ、基本的に夏にやるキャンプの、シーズンオフ。

 なので、周りの人が少ない。

 ひよりさんの回復というか、メンタルトレースの負荷回復には、うってつけだ。

 

「うし、テント設営完了」

「その、ありがとうございます。カルマくん。私のテントまで」

「気にしなくて良いよ」

 

 富士山麓の、本栖湖。

 ここでキャンプする権利は、ざっと、二人合わせて百万ポイント。

 まぁ、ひよりさんはペーパーシャッフルのMVPだし、俺もまた、体育祭のMVPだし。

 俺たちの為にポイントを使うのを、反対するクラスメイトはいなかった。

 

「いやー、結局冬休みになっちゃったねぇ。ごめん」

「いいえ。構いませんよ」

 

 なんだかんだで生徒会活動もあって、平日にキャンプは難しかったんだよね。

 冬休み期間中は、ローテーションで休暇を回す予定で、今は俺と卜部先輩と准と浅野くんと朝比奈先輩と櫛田さんが休暇中だ。

 休暇期間中の綾小路と堀北さんのゲロ甘っぷりは凄まじかった。あれもう揶揄う気すら起きないわ。

 ま、最近は代わりのおもちゃが何人か増えて来たからね。

 朝比奈先輩とか一之瀬さんとか浅野くんとか森先輩とか。

 生徒会はおもちゃの倉庫だよ。本当に。

 

「ふー、何だか、楽ですね。自然が豊かなのも、悪くないです」

「なんだかんだでひよりさんインドア都会っ子なところあるし」

「ふふふ、まぁ、お父さんが小説家ですから」

「ふーん。ウチはデイトレーダーで、一年中旅行で家を留守にしてるんだよね。インド被れだし」

「なるほど。だから業と書いてカルマ呼びなんですね。サンスクリッド語ですか」

「そうそう。そんな感じ」

 

 メンタルトレースを俺も練習し始めたから、これをやってたひよりさんの負荷も、何となく分かる。

 凄く疲れるし、色々とおかしくなりそうで。

 …………………クラス間競争に積極的でなかったひよりさんがここまでしたのが、何だか、凄く意外だった。

 

「………くしゅん」

 

 モコモコのダウン着てニット帽被ってブランケットも羽織って、ガッツリ防寒対策したけど、それでも尚寒いらしい。

 確かここ、焚き火OKだったし。

 

「ひよりさんは本読んでて。俺は薪拾ってくるよ」

「いえ、私も───」

「まぁまぁ。今日はひよりさんの慰安だし。それに───」

 

 鉈をジャグリングよろしく回転させながら放り投げて、キャッチする。

 

「…………危ないですよ?」

「慣れてるし」

 

 ナイフでペン回しとか割とよくやってたな。

 ま、対先生ナイフではあったけどね。

 

「ま、山は俺らのホームグラウンドだしね」

 

 あの裏山とは違うけどね。

 

 

 森に入っていくカルマくんを見送って、キャンプ椅子に座って、本を読みます。

 …………何だか、悪くない気分ですね。

 自然の中で読書する。初めての体験です。

 微かに漂ってくる本の匂いに、森の豊かな自然な匂い、湖の冷たくも爽やかな匂いが混ざって、なんだか、凄く落ち着きます。

 …………メンタルトレースの負荷、それは、私の想像以上のものでこそありました。

 一度自身の精神を殺す。つまりは実質的な自殺ですが、これは、思ったよりも疲れると言いますか、精神的に傷を負うと言いますか。

 

「まぁ、慣れるとそんなに疲れないんですけどね」

 

 慣れって凄いですね。本当に。

 

 冬場のキャンプは、人が少ないのが実に素晴らしいですね。

 虫もいないですし。………おや、随分と小さいお団子ヘアーの女の子ですね。貸切だと思っていたんですが。

 中学生でしょうか?

 あぁ、いえ。中学生ぐらい背が小さい高校三年生いましたね。風間先輩凄く小さかったですし。

 

「…………くしゅん」

「どうした律?」

「…………誰か僕の噂してるな?」

 

 風間律は、剣城海に連れてこられたジムで、そんなことを話していた。

 

 女の子一人でソロキャンプですか。多分地元の学生さんですね。

 治安がいいと言いますか、慣れがあるんでしょうね。あと経験も。

 テント設営の手際がすごく慣れてますし。

 

(……………なんか、綺麗な人がめっちゃ見てくる)

 

 少女はとても気まずげだった。

 

 

「薪〜、薪〜」

 

 なんだかんだで、キャンプは初めてだな。

 まぁ、焚き火起こしたことは何度かあるから、良さそうな枝は分かりやすいんだけどね。

 ちょいとデカくて運びにくいやつは、鉈でバッパッと短くして、と。

 

「ま、こんぐらいあれば問題なしでしょ」

 

 ついでに着火剤の松ぼっくりも何個か拾って、と。

 

「うし、これで完璧」

 

 ま、こんだけあれば焚き火は問題なくいけるでしょっと。

 集め過ぎた気はするけど気にしない。

 

 

 うーん。やっぱり寒いですね。ブランケットでも足りません。

 カイロじゃ足りませんね。

 早く、カルマくん帰って来てください。

 焚き火、楽しみです。

 

 

 お団子ヘアーの少女は、椎名を見ながら。

 

(…………冬にキャンプして本を読む人なんて、私以外にもいるのか)

 

 なんて、考えていた。

 

 

 おや、来てくれましたね。カルマくん。

 大分、薪、拾って来ましたね。…………多すぎでは?

 

「お待たせー。早速焚き火起こそっか」

「待ちくたびれました」

 

 

 拾ってくるついでにささっとパトニング済ませたから、着火剤の松ぼっくりに火をつけて、小さめの枝を足してって、と。

 

「手際が良いですね。カルマくんは」

「ま、焚き火とかもやり方教わったからね」

 

 パタパタ仰ぎながら、と。

 柔らかい炎が立ち昇っていく。

 俺もひよりさんも、暫く無言で、仄かな赤色を眺めていた。

 

「……………炎って、なんだか安心するよね」

「一説によれば、遺伝子に刻まれた記憶らしいですよ」

 

 まぁ、そっか。

 俺らの祖先は、きっとこうして、仲間とか友達とか恋人とか家族と、焚き火を囲んでいたんだろうな。

 だから、こんなに。

 安心できるんだ。

 

「…………どう?癒されてる?」

「えぇ。それはもうたっぷりと」

 

 

 いつもだったら、心臓バクバク鳴ってしまうのでしょうけど。

 自然のおかげで、ひどく穏やかな気持ちになれます。

 …………奥田さんには、申し訳ないですが。

 ────今日は、独り占めですね。

 

「───ふふふ」

 

 

 良かった。

 ここ最近のひよりさん、何だか悩みを抱えているみたいだったからさ。

 メンタルトレースの負荷回復も、勿論理由の一つだったんだけど、ね。

 ひよりさんが、とても穏やかに笑えているの、何だか、とても嬉しいな。

 

「───はは」

 

 湖畔のキャンプ場で。

 赤羽業と椎名ひよりは、とても穏やかに、笑い合っていた。

 

 

 私もカルマくんも、あまり無駄話するたちではないですし。  

 私は本を読みながら、カルマくんは、湖をぽけーっと眺めながら。

 カルマくんのぽけーっとした顔、なんだか可愛いですね。

 

「────おや」

「ん?どうしたの?」

「あの少女、なんですが」

 

 お団子ヘアーのちっちゃい女の子は、私と同じように本を読みながら、しきりにカイロを取り出して振ってポケットにしまってを繰り返していますね。

 あぁ。焚き火は煙臭くなりますし、火の粉で服に穴が空いてしまいますし。

 ソロキャンプだと、出来ることならやりたくないでしょうし。

 ですが、冷たい風に耐えきれなくなったようですね。

 …………いつもだったら、特に気にしないんですが。

 

「…………薪、分けてくる?」

「あら、同じこと考えていましたね」

 

 万が一があったら怖いので、カルマくんに焚き火を見張っててもらいます。

 まぁ、女子の私がいったほうが良いですね。

 

「─────少し良いですか、お嬢さん」

「………うぉえ?は、はい?」

「薪、少し多く取りすぎてしまったので、使いませんか?」

「……………えっと、貰います」

  

 見様見真似ですが、割と簡単に出来ましたね。

 …………仰ぎ過ぎて一回火が消えてしまったことは、気にしません。

 焚き火だけ起こして、さっさと戻ります。

 まぁ、冬にソロキャンプするぐらいですし、一人の方が好きな人でしょうからね。

 

(…………焚き火だけ起こして戻ってった。

 なんか、申し訳ないな)

 

 少女は、そんなことを考えていた。

 

 

「おかえりひよりさん」

「ただいまです」

 

 また、日が暮れるまで、無言の時間です。

 ───きっと、私たちには、これがちょうど良いんです。

 本を読みながら、チラチラカルマくんの横顔を伺います。

 やっぱり、どこか力の抜けたカルマくんの顔、何だか可愛いですね。

 とか思ってたら、カルマくん寝ちゃいました。寝顔、可愛いです。

 一応シート敷いてますが、河原ですし硬いのに。才能でしょうか?

 頬を指先で突っつきます。えいえいです。

 ぷにぷにした指の感触が、なんだか、癖になりそうです。

 

 

 焚き火のお礼にカレー麺を渡そうとしていた少女は。

 

(こ、恋人と来てたのかっ⁉︎今割って入るの申し訳なくて無理っ‼︎)

 

 戦略的撤退を選択した。

 

 

 完全に日が暮れちゃいました。

 そろそろ、お腹が空いて来ましたね。

 ご飯、作っちゃいましょうか。カルマくんを起こすのもアレですし、私一人でやってみますか。

 カセットコンロを取り出して、火を付けます。

 土鍋をコンロに乗せて、辛めの味付けの味噌出汁を入れます。ジップロックは便利ですね。………ちょっとだけ、溢しちゃいました。まぁ、味見になりましたし。

 予め切って調理して用意しておいた、まぁ、食べ盛りの男子高校生さんですし、三人分の具材を入れていきます。…………量、ちょっとだけ多かったですね。これだと四人分です。

 お料理、堀北さんたちに教わっておいて良かったです。

 まぁ、調理してある具材を順番に入れるだけですか。

 キャベツにもやし、長葱、ニラに豚バラ肉。

 そうして、お豆腐。………これだけは、現地で切らないとダメですからね。

 えっと確か、こう、掌に乗っけて。

 恐る恐る、包丁を入れます。…………指切らなくて良かったですね。

 蓋を閉めて、煮込みます。

 

「………ありゃ、作ってもらっちゃった感じ?」

「ふふふ。どうですカルマくん。ドジっ子なところがある私でも、こうしてアウトドアお料理出来るんですよ」

「うん。凄いね。ひよりさん」

「えへへへへ」

 

 褒められちゃいました。嬉しいです。

 

 

 今度こそお礼のカレー麺を渡そうとしていた少女は。

 

(─────めっちゃちゃんとしたアウトドア料理してる‼︎カレー麺なんか渡せん‼︎)

 

 すごすごと、自分のキャンプに戻って行った。

 

 

 そろそろ、時間ですね。

 ミトンをつけて、蓋を外します。

 白い湯気がふわぁっと。わぁ。

 

「うふふふふ。上手に出来ました!」

「うんうん。よく頑張ったねひよりさん」

 

 さて、いただきましょうか。

 と、ちょうどその時です。

 

「─────待って〜〜〜!」

 

 な、泣き声、でしょうか。

 

「─────ちょっと見てくるね」

「はい。そうしましょう」

 

 一旦蓋を閉めて、少し待ちます。

 そうして、本を読んで待つこと、大体五分程。

 カルマくんが、ぐすぐす泣いている女の子と、困惑しているお団子ヘアーの女の子を連れて来ました。

 ………………何だかちょっと、モヤモヤしちゃいました。

 

「話を纏めると、引っ越したばかりで富士山見たくて、本栖湖まで自転車で来て、疲れてて寝てたら、夜遅くなって帰れなくなったと」

「ぞゔでず。ぐずっ」

「携帯電話は持っていますか?」

「あっ!スマホスマホ。最近買ったあたしのスマホスマホスマホスマホ───マホス!」

 

 取り出したのは、トランプでした。

 

「あっはははは。君面白いね」

「ふふふふ。えぇ。そうですね」

 

 何だか、愉快で可愛い人ですね。うちの学校にはあまりいない人種です。

 

「わ、私のスマホ貸すから、家に電話したら?」

「引っ越したばかりで分かりません!」

「でしたら自分のスマホの番号とか」

「覚えてません!」

「じゃあ親の番号とかも覚えてないね」

「おっしゃる通りです!」

「ははははは。君本当に面白いね」

「えぇ。とても愉快で可愛らしい人です」

(この人たちマジか)

「えへへへへ。可愛いなんてそんな」

(こいつマジか)

 

 そこで、大きなお腹の虫が鳴ってしまいましたね。

 本当に、可愛らしい人です。

 ちょうど良いですし。

 

「あなたたちも食べましょう?お鍋はみんなで食べると美味しいですし」

(………うっかり材料四人分持って来ちゃいましたし)

「良いんですかっ⁉︎」

「そ、そんな、焚き火起こして貰ったのに、お鍋まで………」

「気にしなくて良いよ。ほら」

 

 カルマくんがお椀によそったお鍋を、お団子ヘアーの女の子は、渋々ながらも受け取って。

 私も、可愛らしい女の子に、お椀を渡しました。

 

「いただきますっ‼︎」

「い、いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

 

 とても美味しそうに食べてくれますね。

 何だか嬉しいです。

 

「────ん〜〜〜!美味しい〜〜〜!」

「────美味しい」

 

 可愛らしい子は、全身で美味しいことを表現しています。

 お団子ヘアーの小さい子は、噛み締めるように、味わっていますね。

 何だか、正反対で面白いですね。

 

「あ、もう終わっちゃった」

「締めの雑炊食べますか?」

「食べますっ‼︎」

「お。俺も食べようっと。君は?」

「あ、お米は二杯分しかないです」

「あーら。じゃあ俺は良いや」

「えっ、二杯だけ、じゃ、じゃあ私も良いですっ‼︎」

「…………えっ、と。ちょっと待っててください」

 

 お団子ヘアーの小さい女の子は、二つのカレー麺を持って来ました。

 

「そ、その、わ、私たちは、これ、食べよっか」

「あ!うん!」

「遠慮しなくて良いんですよ?」

「そんな、こんなに美味しいお鍋もらっちゃいましたし」

「そうですよっ‼︎雑炊はお二人で食べて下さいっ‼︎」

 

 良い子たちですね。本当に。

 カルマくんに目配せします。

 肩をすくめながらも、カルマくんは、同意しました。

 

「そっか。じゃあ、雑炊は、俺たちで食べちゃおっか」

「えぇ。そうしましょう」

 

 二人はカレー麺を食べながら。

 私とカルマくんは雑炊を食べながら。

 予定よりも大分増えちゃいましたが、四人でのキャンプご飯は、とても美味しかったです。

 うっかり四人分の食材を持って来た私のドジに感謝ですね。

 

「───ぷはぁ。えっへへ、舌やけどしちゃった」

 

 こんなに美味しそうに食べているのを見ると、カレー麺食べたくなっちゃいます。

 一緒に食べてて、楽しい人ですね。

 

「ごちそうさまですっ‼︎」

「ごちそうさまです」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさん」

 

 さて、お鍋とお椀、洗わないとですね。

 スポンジと洗剤を取り出しました。ところ。

 

「あっ!お鍋洗います!お椀も!」

「えっ、でも、水冷たいですよ?」

「いえいえ!お礼ですのでっ‼︎」

「あ、私も洗います」

「あっ、ちょっ」

 

 半ば引ったくられるように、お鍋とお椀を持ってかれちゃいました。

 う、うぅん。何だか、申し訳ないです。

 

「ま、やってくれるなら、それで良いんじゃない?」

「そう、ですか?」

 

 ……………まぁ、そうですね。

 その、ありがたいですし。

 

 

 二人の少女は、鍋と器を洗いながら、話していた。

 正確には、片方が話しかけて、もう片方が答えている形だった。

 

「いやー、良い人だねっ!あのカップルさん‼︎」

「う、うん。焚き火、起こして貰っちゃったし」

「うんうん!なんか、こう、すっごくお似合いって感じ!」

(あー、なんか分かる)

 

 赤髪の優男と、深窓の文学少女。

 何だか、凄く、お似合いの二人だよね。美男美女だし。

 

「富士山曇ってて見えなかったけど、代わりにすっごく美味しいもの食べれたし、カレー麺美味しかったし、全部チャラだよ‼︎」

「………見えない?」

 

 あー、そっか、曇ってた時間に来ちゃったんだ。

 洗い終わった鍋とお椀を運びながら、湖畔に戻って。

 この子に、教えた。

 

「───ほら、ちゃんと、見えるでしょ?」

「───綺麗」

 

 この子は、洗い終わった鍋を持ちながら、ぼんやりと。

 カップルは、二人並んで穏やかに、富士山を眺めていた。

 

「───あ、あたしお姉ちゃんの番号覚えてた」

 

 

 松村の影響で、車の車種にはまぁまぁ詳しいんだよね。

 確かあの車、『日産ラシーン』だっけ。

 

「この度はうちのバカ妹がほんっとにお世話になりました。お鍋までご馳走になっちゃって、ほんっとうに。

 こちら、つまらないものですが」

 

 キウイ、たくさん貰っちゃった。

 うーん、二人だけで食べるには多すぎるし、クラスのみんなに配るか。

 

 ※なお、実際に配ったところ。

 

『…………毒とかねぇよな。大丈夫だよな』

『なぁカルマ。俺ら生徒会役員だからな?前みたいなことしたら洒落にならないからな?いや前でも洒落にならないんだけどさ』

 

 こんな反応された。

 本当に失礼。※当たり前の反応です。

 

 

「あんたねぇ!持ち歩かなくちゃ携帯電話とは言わないんだよ!」

 

 わ、わぁ。強いお姉さんですね。あんなにたんこぶが出来てるの初めてみました。

 足で後部座席に押し込んでいます。

 あ、あの、もう少し優しくしてあげても……。

 

「おら、このブタ野郎!」

「いででででっ。やめれー!カレー麺とお鍋出るー!」

 

 車を見送ります。

 何だか、楽しい人でしたね。

 とか思っていたら、車が止まって、あの子が降りて来ました。

 

「───ちょっとまってー!」

「………?」

 

 お団子ヘアーの子の手に、名前と電話番号が書かれた紙を押し付けて来ました。

 そのまま、私とカルマくんにも。

 

「────お姉ちゃんに聞いたんだ!あたしの電話番号!」

 

 こんどはちゃんと、キャンプやろーね‼︎

 

 …………外部の人の番号、貰っちゃって良いんでしょうか。

 

「ま、良いんじゃない。バレなきゃ問題ないっしょ」

「せ、生徒会役員がそれで良いんですか」

 

 キウイを抱えながら、私たち三人は、キャンプ場に戻ります。

 

「あ、あの!」

 

 お団子ヘアーの女の子が、私たちに声をかけて来ます。

 

「今日は、その、ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございました」

「うん。ありがとうね。お陰で楽しかったよ」

 

 少女は、丁寧にお辞儀して、自分のテントに戻りました。

 二人きりでこそ、ありませんでしたが。

 こういうのも、楽しいですね。

 

「明日チェックアウトは10時だっけ?」

「はい。坂上先生がお迎えに来てくださるはずです」

 

 なので、そろそろ。

 歯を磨いて、焚き火を消して、それから、化粧水です。

 焚き火をすると、顔が乾燥するらしいので。

 

「おやすみ。ひよりさん」

「おやすみなさい。カルマくん」

 

 ちゃんと別々のテントで別れて、寝袋に入って、眠ります。

 何だか、とても、楽しかったですね。

 良い夢が見れそうです。

 

 

 翌朝。

 テントを片付けて、チェックアウトを済ませようとしたところ。

 

「………お、おはようございます」

「おはよう。チェックアウトの時間、被ってたんだね」

「………は、はい。そうみたい、ですね」

 

 お団子を下ろして、ロングヘアー状態の女の子は、お礼を言いながら自転車で帰りました。

 

「───お待たせしました。良い休暇を過ごせたようですね」

「お迎えありがとう。坂上センセー」

「ありがとうございます。坂上先生」

「構いませんよ。これも教師の仕事ですから」

 

 大きめのワゴン車を運転して来た坂上先生にお礼を言いつつ、テント道具一式を乗せて。

 私とカルマくんは、後部座席に乗り込みました。

 車に揺られながら、そっと、手のひらに隠した紙を見ます。

 まぁ、東京と山梨ですし、中々予定が合わないでしょうが。

 

 『各務原なでしこ』さん、ですか。

 またどこかで、キャンプしたいですね。

 

 

 自転車を漕ぎながら、少女はカップルともう一人の少女を思い出していた。

 

(変なやつだったけど、まぁ、連絡先に追加はしといてやるか。

 ………………カップルの電話番号、聞けばよかったな)

 

 あぁ、そういえば。

 

(………………女の人の声、なんか、斎藤に似てる気がする)

 

 少女、『志摩リン』は、そんなことを考えていた。

 

 

「ねぇ、ひよりさん」

「何ですか?」

 

 楽しかった?

 

 全く、分かりきった質問ですね。

 

「勿論ですよ。カルマくん」

 

 ひよりの、その、嬉しそうな笑顔を見て。 

 カルマもまた、嬉しそうにに笑った。




 前回吐きそうなくらいゲロ甘なので、今回は出来る限り甘さ控えめにしました。
 後もうタグ入り切らないので、多重クロスで一纏めにしちゃいます。まぁ、殆ど小ネタ程度ですが。
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