ボニャテッリ家とやらに生まれ変わったらしい 作:義眼の人
今回オリキャラが出ますがほぼモブなので気にしなくていいです。
色々あって親指に就職した私は、
「カポ、ヴァレンチーナ様、発言してよろしいでしょうか」
「うん?うん、いいよ。どうかした?」
「次の任務についてなのですが……」
一言でいえば成りあがっていた。再びのラノベ展開である。俺ツエーである。まああれだけお父様に鍛えられて弱かったらそっちのほうが問題である。
トントン拍子に成果を挙げ、かなり早いペースで出世し、現在はカポⅡ。もうそろそろカポⅢに上がれるんじゃないか、と思っている。カポⅡになってからそれなりに成果上げたし。
そして、カポになってからソルダートの部下を3人持つことになった。他のカポと比べると少ないのは、お前の下手に足手まといを多くつけると弱くなりかねないから。とアンダーボスに説明された。
ただ、それだけではないかもなとは思ってる。私のソルダートⅢ、IIIIの頃の態度もありそうである。元いた世界の常識により、目の前で味方が死ぬのを極力見たくない私は戦闘中にソルダートのⅠとⅡの助けに入ることが割とあったのである。だって、気分良くないし……。
ともかくそれにより、階級を蔑ろにする傾向あり。とでも思われたのだろう。妙なことを出来ないように人数は少なめになったのだろうと思う。ただの予想だが。
そんなことを考えながら、私に声をかけてきた部下のロウの話を聞く。3人の中で唯一のソルダートⅡであるため、色々と大変そうである。
話の内容は次の仕事について。要約するとそれなりにデカい研究所が親指の縄張りで好き勝手やってるから制裁してこいとのこと。その程度なら傘下組織で事足りるが、規模がデカい所なため、それなりに地位の高いフィクサーを雇っているのだとか。
「ほかの二人は?今それぞれ仕事中だっけ?」
「はい、ですが任務の頃には戻ってきているかと思います」
「オッケー。なら四人で行こうか。みんなのことも鍛えなきゃいけないしね」
そうしてグラスに残った酒を飲み干した。ロウがもう一杯注ぐかと訪ねてくるが、そこまでしなくて良いよ、と苦笑した。私は親指に入ってから煙草と酒を楽しむようになった。
前世では煙草は吸わなかったが、酒は飲んでいたため、前世にもあった銘柄を見つけたときは驚いたものだ。そして前世にもあった高い酒を飲んでみたこともあったが、あまり好きでははなかったため、もっぱら安酒ばかりである。
ちなみに始めた理由はどちらも伝実逃避のようなものだ。酒は常にスキットルに入れて持ち歩いているし、戦闘の前なんかは必ず酒を入れているし、煙草は戦闘中は必ず吸っている。
正直今更殺しに忌避感はない。何人殺したかも分からない。でも、なんとなく、戦闘前には酒を飲んでしまう。そのうちアンダーボス辺りに止められたらどうしようかなーとか考えたりもする。
「や、みんないるね?」
そうして任務の日、すでに集まっていた部下に挨拶する。皆無言で頭を下げる。
「そういう堅苦しいのは良いよ」
「や〜楽でいいね〜」
「……本当に良いんだろうな」
「別に良いよ。私は寧ろそっちのほうが良い」
先程の会話のとおり、私は他のカポ、アンダーボスがいない場なら礼儀は気にしなくていいと言ってある。本来なら粛清ものだがバレなければ良いのだ。
残り2人の部下はそれぞれエルとアイク。階級は確かどっちもソルダートⅠ。
この世界殺伐としてるからあんまし情を持たないようにしたいけど、既に持ってる気がする。エルとはよく一緒に酒飲んで雑談したりする。この世界で初めて対等に話せた相手だ。アイクには戦い方教えたりしている。この世界で初めての、いや別に前世でもいなかったが、私の弟子である。ロウに関してはそのうち貴方のようなちゃらんぽらんな酒浸り女なんか超えてみせます、と言われた。ある種のライバルである。
「それじゃ、行こうか」
そう言って任務に向かう。
相手はツヴァイの傘下事務所。確か2級相当。油断してると足元をすくわれかねないから気をつけなければ。
眼の前に6人ほどフィクサーが立ち塞がる。おそらくは例の雇われだろう。タバコを取り出し、火を付けながら言う。
「こんにちは、できれば穏便にここを通してほしいんだけど」
「断る」
「だよねぇ。じゃあ皆、やろうか」
そうして戦闘を始める。取り敢えず私が強そうな奴三人ぐらい相手にしてその間に残りを倒してもらおう。そう思って突っ込み、お父様から貰った2本の剣を振るう。が、流石はツヴァイの傘下。この程度は簡単に止めてくる。素早く動いて一対一を何度も繰り返すように、そしてなるべく部下たちを視界に入れながら戦う。
「ハハッ、ちょっと遅いな!」
「チッ、援護早く!」
「はい!……なっ」
「油断したな?そこはアタシの狩場なんだよ」
アタシの背後から攻撃しに来た奴に向かって体を切り返し、すれ違いざまに肩口に深い傷をつける。多少目が熱いがまだ問題ない。そのまま追撃しようとして、中断する。推進弾から通常弾へ切り替え、斬られる未来が見えた部下に援護射撃をする。
「お前も油断したな!」
そう言って横から斬り掛かってくる。が、視界内だから未来が見えている。それに、
「ちょっと遅いな」
「ぐっ……」
加速したパレルモ剣術で難なく対応できる速度だ。即座に受け流し、片腕を飛ばす。そしてまた部下へ援護射撃をし、弾を込める。
気付けばはじめに見定めた強そうな奴で立っているのは所長(と思われる奴)だけになった。
「バケモンが……」
「ハッ、最高の褒め言葉だよ」
そう言いながら互いに剣を構える。が、私は周囲に目線をチラチラと向ける。
「……お前、親指なんだよな?」
「見ても分かんない?」
「そこまで部下に気を使う親指は見たことが、ねえよっ!」
そう言って斬り掛かってくる。まだ他が残ってる。予知眼は節約しなければ。そう思ってなるべく目線に入れずに対処する。
「チッ、余所見とは余裕だな!まともに相手する価値もないってか!?あぁ!?」
「寧ろお前の部下がそこそこやれるからこうなってるんだよ」
そう言って推進弾を消費し、剣を弾き飛ばす。即座にまたもう一発消費し、肩から袈裟斬りにする。
男が倒れ、気絶したことを確認してから部下の援護に向かおうとする。しかし、どうやら必要ないようだ。皆終わったようでこちらへ歩いてくる。
「すまん、援護助かった」
「私も〜。ありがとね」
「気にしなくていいよ。なるべく死なせたくないからねぇ」
「とどめはよろしいのですか?」
「……まあ、ほっとけば死ぬでしょ。あと別にターゲットではないし」
「了解しました」
「さ、一応こっからが任務の本番だから、気を抜かないように」
そう話しながら研究所に入り、全員で分担して皆殺しにする。
「……はぁ」
思わずため息が漏れる。既に研究員を何人も殺した。これも仕事だ、仕方ない。そう思いながらアタシはスキットルの酒を酒を呷る。ふぅ、と息を吐き、煙草を吸いながらまた殺して回った。少し憂鬱な気分になりながらも任務を終わらせた。
そうした日々を過ごして数年が過ぎた。元々いた3人の部下は昇格し、皆今ではカポだ。ロウなんかはカポIIIIである。
「まあ私はアンダーボスに昇格決まったけど」
「クソがっ……」
「ロウが敬語じゃないの珍し〜」
「よっぽど悔しいんだろ」
「そこ2人!私は目上ですよ!」
「もっと目上の私がいいって言ったから問題ないんだよカポIIIIロウくん」
「クソがぁ!」
えらい荒れようである。よほど悔しいらしい。ケタケタと笑いながら酒を飲む。今は私の昇格祝いということで集まって酒を飲んでいる。
「ま〜た主賓が安酒飲んでるよ」
「おら、こっち飲め」
「いやぁ、高い酒は合わなくてね……」
「……」
ロウが無言で一気してるの怖い。それ割と度数高くないっけ?
「にしてもアンダーボスか、偉くなったな」
「ね〜。ま、この人がどんだけ新しく部下ができても私らがはじめの部下であることに変わりはないけどね〜」
「うおわ、くっつかないでよ」
「ウェ〜い」
顔を赤くしたエルがくっついてくる。クソっ、この女顔がいい!ダル絡みされても許したくなるっ!
「……貴方、アンダーボスとしての初仕事はいつなんですか?」
「昇格して2日後。早くない?こんなもんなの?」
「さあ?俺は親指に入ってからアンダーボス変わったとことか見たことねえし」
そう、昇格は明日なのだが、その2日後にすぐ任務があるのだ。もうちょっと、こう、ないの?引き継ぎとか、事務仕事教えるとか、ないの?
そう思っていると、そう言えばここ最近部下たちに奢ってないことに気付いた。昔は結構奢ったのだが、最近はそもそもあまり集まれていないのだ。今回も皆で払ってくれるとの話だ。
ここは親指なのでそんなことはないのだが、前世の記憶が先輩なら奢れよと囁いてくる。うーん、どうしようか。
「よし、余興だ。賭けをしようよ」
そう私は皆に声をかける。
「賭けぇ〜?珍しいねぇ〜」
「確かに。内容は?」
うーん、と考える。これは賭けという名の私が今度奢るよ宣言だ。私が負けるようにしないといけない。普通に奢れって?この人達遠慮するからさ。
「私が初仕事でやらかして降格になるかどうか。私はなる方に賭けるね」
「いや流石にねえだろ」
「ね〜」
「もしそうなったらたら親指やめてやりますよ」
「ロウ重くない?」
驚いて思わずそう言う。コイツは冗談とか言わないタイプだからマジでやめそうで怖いんだけど。
「あっ、なら私も〜」
「エル!?」
「そうだな、俺もやめるか」
「アイクも!?さ、流石に冗談だよね……?」
「貴方が何もやらかさなきゃいいんですよ」
そりゃそうか、と4人で笑い合った。そして私が勝ったら三人が親指をやめる。あの三人が勝ったら私がいくらでも酒を奢る、という賭けすることになった。冷静に考えたらあまりにも公平じゃないが、まあ私が負けるだろうし問題ないか。
そうして初任務の日、任務はつつがなく終わった。が、その後が問題だった。戦闘中咥えていた煙草を一服しながら周囲を見渡すと、予知眼が未来を映す。防ぐのは間に合わない。咄嗟に一人のソルダートの女性のところへ駆け、突き飛ばす。
「えっ……」
そんなソルダートの彼女の声が聞こえた瞬間に、肩に鋭い痛みが走る。熱い。あつい。が、気にせず走り、親指の装備で味方を撃ったやつを斬りつける。
チッ、と舌打ちしてそいつが倒れたことを確認してから傷を押さえ、指示を出す。
「こいつの身元の特定頼むよ」
そう言って拠点に向かう。さっさと帰って治療しよう。後ろがざわついていたが、まあ裏切り者が出たからだろう。そう結論づけ、タバコの煙を吐きながらさっさと立ち去った。
その後報告を聞いたが、どうやら人差し指だったらしい。更に付け加えようとしていたが、止めさせた。人差し指の行動原理なんて指令以外ないだろうし、指令が何をしたかったのかなんて考えるだけ無駄である。大きくため息をついて、酒を飲んだ。案外指令も制服の変更とか考えるんだろうか、などとくだらないことを考えた。
ゴッドファーザーに呼び出されたのはその翌日だった。
ごめんみんな、賭けに勝ってしまったかもしれんわ。
アンダーボス編十数行で完結。
他人の未来まで見えるか不明ですが、視界に入るものすべてを演算するそうなので見えてたけど本家ヴァレンチーナは気にしてなっかったってことにしといてください。
余談ですが部下三人が名前有りなのは元々掘り下げる予定だったからです。
あと助けられたソルダートちゃんは不敬とみなされ処分されました。多少は長く生きられたので良かったとかと思います。