B級ヒーロー くたびれハットマン   作:テムテムLvMAX

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VII話 進化VS成長

「ほう、モスキート娘を一撃か……なぜ全裸なんだ?」

 

「分かりません」

 

 

 時は少し戻り、天才科学者ジーナスが率いる『進化の家』。

 

 とある場所にある地下深くの研究所ではサイタマが蚊の怪人モスキート娘をビンタ一撃で壁のシミに変えたシーンを観て、モニターを見るジーナス博士は不気味な笑みを浮かべた。

 

 

「いいサンプルが手に入る……彼に使者を送りこの『進化の家』に招待しろ……」

 

 

 影に隠れた助手、自身のクローン体に命令を下し、自身の研究である『人類の進化』がさらなる発展を遂げるだろうと、期待の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は戻る。

 

 

 

「ケーッケッケッケ! 俺様は」

 

「天井弁償しろ」

 

 

 ベランダ爆発の犯人である改造カマキリ怪人だが、自身が名乗りを上げるまでにサイタマさんの右ストレートが軽く炸裂し、耐えることなく水風船の割れるように散った。

 

 ……突然だがZ市の廃墟街といえば住民が大移動し水道や電気は生きたまま放置されている、当然家賃や敷金などない、このマンションにはいわばタダで住んでいる。

 

 

「せこい」

 

「誰だ今の」

 

「外にまだ2体反応あり! 俺が行ますサイタマ先生!」

 

 

 サイボーグのジェノスは探知機能を活かし素早く敵を察知すると破壊されたベランダから外へ華麗に飛び降り敵を見つける、がしかし……。

 

 

「ったく……弁償しろよ」

 

「なんだもう終わってるじゃないか」

 

 

 俺もジェノスに続いてベランダから外に出るとナメクジ怪人ならびにカエル怪人は仲良く道路脇の歩道に頭から生き埋めにされていた。

 珍しく殺さず攻撃している……手加減と無縁の男にそんな器用さがあったのか。

 

 

「あ、ジェノスなんか言った?」

 

「いえ何でもありません!」

 

 

 ジェノスとサイタマさんはなんだかんだいい師弟になる、俺はその一助になればいい、どの道俺ではジェノスに勝てないだろうし、ましてやサイタマさんにはな……。

 

 さてと、久々にくたびれた帽子をきっちり被り直すとしよう、これ転生前の誕生日に貰った思い出の品でな、死ぬ前にこれだけは離さなかった、姉に貰ったんだが……どうもセンスがアメリカンで幅の広いカウボーイハットなんだ。

 んで、今は髪が伸びて目つきが鋭くなって……ますます西部劇の悪役顔になってきている、そこに刀持ってるからコーデがちんぷんかんぷん、ってな訳だ。

 

 ……いきなりなんでこんな話をしたかと言うと、ちょっと覚悟がいる戦いを挑むからだ。

 

 

「よくやったグランドドラゴン」

 

「暴れられても面倒だからな……」

 

「よく聞け人間……我は獣王! 進化の家最強の戦士だ!」

 

「ふわぁ……なんか、暑くも寒くもない……意外と快適だな……」

 

「なっ……聞いているのか!」

 

 

 身体に土龍の文字を刻んだ自己主張激しめのモグラ怪人とこれまた自我強めの巨体ライオン怪人……特に後者のライオン怪人こと獣王……ハッキリ言うと今の俺よりは強い、今のジェノスだと苦戦して敗北もあり得るレベル。

 

 

「焼却!」

 

「ソノ テイド ノ コウゲキデ ハ ソウコウ ニ ダメージ ハ アタエラレナイ」

 

 

 そのジェノスは雰囲気重視系サイボーグゴリラと一騎打ちの最中だ、あのゴリラも結構強い方なんだよな……。

 

 話は戻るけど、三メートルはあろうかという巨体と鋭利な爪、ライオンの威風が漂う姿は見た目にもう強いが、実際空を引っ掻く攻撃で民家は等分に切り飛ばされた。それを連続で繰り出すこともできる、ヒーロー協会の定める災害レベルで言えば……鬼くらいはあると見ている。災害レベルは後々説明できるだろうから今は流して構わない、今は単体で都市破壊が可能なレベルだと認識してもらえればいい。

 

 

「ま、そんだけ強さに期待できるってことだ、サイタマさん以外は苦戦するだろうなぁ……」

 

「なんだお前は、さっきからブツブツと……?」

 

「俺はくたびれ、そこのサイタマさんの……知り合い? かな」

 

「ほう、お前もコイツの仲間か」

 

「サイタマさん、コイツのこと俺に任せてくれません?」

 

 

 ちょいと腕試しだ、S級ヒーローゾンビマン、その生みの親である天才科学者ジーナスが作り上げた戦闘員の上澄み……試すよい機会だ、俺の力がどこまで通じる物なのか知っておきたい。

 

 サイタマさんが少し不安げに見つめてくる、恐らく病み上がりだと心配されているのだろう、しかし、俺と繋がっている刀、仙刀斎が一言も発していない……刀身が折れたせいだろう、半身と言ってもいい刀を元に戻すためにも怪人の血を吸わせてやらないといけない。

 

 

「大丈夫ですよ、むしろこの刀に血を吸わせてやらないと俺も本領が出ませんからね」

 

「おいおい……我抜きで話が進んでいるようだが、面白い! 受けてやろう……獣はネズミ一匹狩るにも本気を尽くすのだ……来い!」

 

「がんばれー、オレはもうしばらくつくしでいるよ……はぁ〜……」

 

 

 獣王が吠えるが、サイタマさんがゆるく応援してくれる、つくしの気分を堪能しつつ。

 

 俺は鞘から半分に折れた刀を抜き、両手で握り、頭の上に来るように上段に構えた。

 対して獣王は身体に力を漲らせ爪を伸ばし臨戦態勢を整える、獣の殺意がヒシヒシと伝わってくるようだ。

 

 

 この戦いが俺を占うだろう、ヒーローとして大成できる器かどうかを。

 

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