B級ヒーロー くたびれハットマン   作:テムテムLvMAX

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9話 激戦の土曜日

 進化の家の命令可能な戦闘員としてはナンバーワンの戦闘力を持った獣王を討ち、左腕の犠牲がでたものの、俺はさらなる強さを得たような気がする。

 

 そしてサイボーグ対決であるジェノスとアーマードゴリラの戦いも佳境に入っていた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ゴリラをサイボーグ化し戦闘用に調整したアーマードゴリラは圧倒的な耐久と怪力を併せ持ち、なおかつ人間的な判断も柔軟に行う、獣王のような暴力的な攻撃こそないものの堅実に敵を倒す戦闘マシン。

 

 対してジェノスは同じサイボーグではあるものの人間の部分を残しつつ機動力と火力に優れたチューニングになっている、アーマードゴリラの攻撃を避けて打つような戦いを強いられていた。

 

 序盤の立ち合いはアーマードゴリラ有利で進み、行動パターンを見抜いたジェノスの巻き返しがあったものの性能差を覆すほどではなく、もう一押しがないままジェノスは追い込まれていた。

 

 ジェノスの攻撃は堅牢な装甲に弾かれ、逆にサイボーグ化したゴリラの腕力で繰り出される投げや殴りでダメージが増すばかり、ほぼ半壊にまで追い込まれても勝利を諦めた目をしなかったが、苦戦の中でもがいているようだった。

 

 

「マシンガン……ブローォォッ!」

 

「カルイ パンチ ダ ソノテイド カ?」

 

「(硬い……しかしっ!)」

 

 

 超高速の鉄拳を無数に撃ち込むジェノスの必殺の攻撃はアーマードゴリラを捉えるも効果は薄い、だがジェノスにはアーマードゴリラを前にしても怯まない心と勢いをものにする精神があった。

 

 拳の連打は止めずに、サイボーグらしく正確な動きでピンポイントに部位を狙う、アーマードゴリラも動きが変わったことに気がついたが耐久に自信があるのか、ガードを固めるも対処するような動きは見せなかった。

 

 好機とみたジェノスは体内にあるコアのエネルギーを注ぎ込み、勢いのまま押し切っていく。

 

 

「ムダダ」

 

「うぉぉぉっ!」

 

「ムダダトイッテイル」

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

「ムダ……ム?!」

 

 

 秒間何十発もぶち込む鉄拳はついにアーマードゴリラの装甲にヒビを入れたすかさずその隙間に掌を当て自身の持てる最大火力をねじ込む! 

 

 

「焼却ッ!」

 

「ナニ!?」

 

 

 ──バァァァァァン! 

 

 

 ジェノスの掌から溢れ出る爆炎がアーマードゴリラの装甲に侵入し中から回路や関節を焼き溶かし遂にアーマードゴリラを破壊した。

 だがゴリラも現時点のジェノス以上に高度なサイボーグ化が施されているため、戦闘不能と言うだけでまだ動けるような状態だ。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 ジェノス、アーマードゴリラを打ち破る……。

 

 正直、アーマードゴリラって俺と相性悪い、あの装甲に斬撃効かないだろうしサイボーグだから血も吸えない……ジェノス、グッジョブ! 

 

 心のなかでジェノスを褒め称えている俺とは対照に事務的にアーマードゴリラへ対処するジェノス、その後ろ姿は真面目な好青年だが掌から見えるエネルギー光が見えているので、どっちかと言うとインテリヤクザの仕草かもしれない。

 

 

「お前たちの所属と目的は?」

 

「……オマエデイド ノ ジツリョク デハ ジュウオウ ハ__」

 

「それならもう倒したぞ、くたびれ先生がな」

 

 

 あ、真顔になっちゃった。ゴリラの真顔って何だよ。

 

 

 

「…………………………………………」

 

 

 長い沈黙の時間が過ぎる、アーマードゴリラは一体何を考えているのだろうね、ちょっと状況が状況だけに可哀想だけど殺しにかかってんだから慈悲は別にない。

 

 

「あの、マジすんませんでした……!」

 

「オマエ普通に喋れるのかよ」

 

「雰囲気出したくてつい……」

 

 

 ゴリラの砕けた言葉にサイタマさんがすかさずツッコミを入れる、さっきのカタコトは役作りだったって? 

 ゴリラの癖に雰囲気重視なのは正直好印象だけど、お前の待遇はジェノスに任せてるから鬼サイボーグっぷりに震えろ。

 

 ジェノスの表情は相変わらず冷たいまま、改めてゴリラに所属する組織とサイタマさんを襲う理由を問いただした。

 

 

「改めて問う、お前たちの所属と目的は?」

 

「……それはだな「簡潔に、要点だけでいいぞ、どうせ後から分かるからな」えぇ……じゃ、じゃあえーと……我々は『進化の家』という組織で、そこの男の捕獲を命じられた」

 

「サイタマ先生を狙った行動だったと……リーダーの名前は?」

 

「……ジーナス博士だ」

 

「聞いたことのない名前だな〜……そんな知り合いいねーぞ、くたびれさんは?」

 

「たしか、何かの雑誌で天才科学者として紹介されていたかと、凄い天才だったけど周りとのギャップがあったとか」

 

 

 正確には人類は愚かだから進化させようとしてる人間に絶望した人間かな、進化ってどっちかと言うと成長より適応が正解だから知能も力も増した所で人の根っこ変えないと世界は変わんないよな……。

 

 とかなんとか思うけどぐっと堪えて、原作知識を誤魔化しつつ伝えると、ジェノスとサイタマさんの2人は意思疎通をしたように顔を合わせた。

 

 ジェノスが決意を決めて口を開いた。

 

 

「進化の家、とやらは潰しておいたほうがいいでしょう……今後また現れないとも限りません、むしろもっと刺客を送り込んでくるでしょう」

 

「ああ、そうだな、じゃあ行こうぜ」

 

「……今から、ですか?」

 

「そうだ、だって今日はくたびれさんが飯を作ってくれる予定だったのに……見てみろジェノス、あの怪我で飯を作らせるわけには行かない、ちょっとムカつくからさっさと潰そうぜ」

 

「は……はい! おいゴリラ! 基地の場所を吐け」

 

「は、はひ、ひぃぃぃ!」

 

 

 サイタマさんはどこで気合い入れてんだよ、ジェノスの釣られて気合入ってるし……2人とも顔怖っ。どっちが悪役だ。

 ジェノスの方は多分、彼の故郷を滅ぼした狂サイボーグの事もあってかサイボーグであるアーマードゴリラに敵意マシマシなんだろうな、案の定その質問をしたし、ゴリラは否定する形で真面目に答えていた。

 

 ジェノスはアーマードビビり散らかしゴリラから進化の家の正確な位置を知るとサイタマさんと共に出発した。

 

 

「行ってくる、すぐ戻る」

 

「では行ってまいります」

 

「行ってらっしゃい、やり過ぎないようお願いしますね」

 

 

 ともかくこれで進化の家はおしまいだな、後のことは二人に任せて俺は左腕を治さないとな……ちょっと血が流れすぎたな、フラフラする。

 

 どうすっかな……病院まで歩いていけるか? 

 

 

 

「ちょっとゴリラ」

 

「え? はい……なんでしょうか……?」

 

「病院まで送ってくれ、あ、一応獣王倒せるくらいには強いから隙をついて倒そうとかしないように、俺も疲れたからお互い様にしよう、な?」

 

「は、はい…………それで許してくれるなら……」

 

 

 

 しばし、ゴリラに背中を預け、俺は目を閉じた。サイタマさんが進化の家をボロクソにして帰ってくる光景を思い浮かべながら。

 

 

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